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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,被告(日亜化学工業)による本件プレスリリース(東京地方裁判所平成23年(ワ)第32488号,第32489号という先行訴訟に関する文章,後の方参照。)の掲載が不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為に該当し,先行訴訟の提起等が不法行為を構成するとして,原告(立花エレテック)が,同法4条及び民法709条に基づき,損害の合計額である500万円及びこれに対する平成26年4月13日(不正競争行為及び不法行為の後日である訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案です。

 これに対して大阪地裁第26民事部は,原告の請求を一部認めました。つまりは,被告のプレスリリースは,不正競争行為に当たるという判断です。

 ちょっと,ニュースにもなった結構大きな会社同士の,特許権侵害VS信用毀損行為の関係の事件です。

2 問題点
 メインの問題点としては,上記のとおり,プレスリリースが,不正競争行為に当たるかどうかというやつです。

 不正競争防止法2条1項14号です。

 「十四  競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為

 これは短くてわかりやすいのではありますが,この「虚偽の事実」っていうのが問題です。これは客観的真実に反する事実のことを言うとされております。

 そうすると,結構厳しいですよね。どういうことかというと,神でもない人間に真実なんてわかるわけがありません。まあそんなことを議論し出すと私の大好きな哲学的諸問題にぶち当たるのですが,そこまでも行かず,初めは,こりゃ絶対真実だと思っていても,後でひっくり返った場合の話です。
 具体的には,特許権侵害の事件で,構成要件充足性がバッチリなので,絶対侵害じゃ,こんなやつの商品は扱うな,模倣者だ,コピーキャットだ~と散々煽ったのはいいものの,構成要件充足性は確かにあったけど,進歩性なしで無効!ってなる場合もあります。

 これは初めにはなかなかわかりにくい話です。でも,侵害じゃないってことがはっきりしたわけで(後々の話ですが。),客観的真実には反することになりますよね。

 まあ,そういうこともあり,訴訟を提起しようとする直接の相手方以外に,何らかのアクションをするのはリスクが高い行為と言えます。

 でもねえ~,結構やっちゃったりするんだよねえ。早い段階で,ここら辺に詳しい代理人が就いていれば,その指示で警告書とか記者発表会とかIR関係をやるならまだしも,独自の考えや,最初に頼んだ弁理士やら弁護士にそこら辺の塩梅がわかってない場合,後で悲惨なことになります。

 ただ,こういうことって,当然,独自に法務部とか持っておらず,スポット的に弁護士などに依頼せざるを得ない中小企業で陥りやすい話です。結構大きな企業,それこそ法務部だけではなく,知財部も有している企業が,迂闊に余計なことをするってことは滅多にありません。
 
 会社内部でモミ,それでも結論が出ない場合は,外部の弁護士等に,こういうプレスリリースやっても大丈夫かねえってことで,案文のチェック等までやりますからね。

 ところが,被告の方は,こんなプレスリリースをしちゃったのですね。

「               プレスリリース目録
 台湾Everlight社製白色LEDに対する新たな特許侵害訴訟の提起について

 2011年10月4日,日亜化学工業株式会社(本社:●●●●●●,社長:●●●●)は,株式会社立花エレテック(本社:●●●●●●,社長:●●●●。以下「立花社」)を被告として,台湾最大のLEDアッセンブリメーカーであるEverlight Electronics社(本社:●●●●●●●●●●,董事長:●●●。以下「Everlight社」)が製造し,立花社が輸入,販売等する白色LED(製品型番:GT3528シリーズ,61-238シリーズ)について,当社特許権(第4530094号。以下「094特許」)に基づき,侵害差止め及び損害賠償を求める2件の訴訟を東京地方裁判所に提起致しました。

 当社は,これまでも当社特許を侵害する企業に対しては,全世界において当社の権利を主張し,とりわけ,日本市場での当社特許の侵害行為に対しては,断固たる措置を取ってまいりました。しかしながら,昨今の中韓台LEDチップ及びパッケージメーカーによる,特許権を無視した日本市場での行動は目に余るものがあります。このような日本市場での当社特許の侵害行為に対する対抗措置の一環として,今年8月にEverlight社製白色LEDを取り扱っていた会社に対する訴訟を提起し,当該事件の被告は当該白色LEDが当社特許の権利範囲であることを認め,その販売等を中止しました。今回提起した訴訟は,この訴訟に続くものであり,立花社に対してもその販売等の中止等を求めるものです。

注:対象特許の概要:現在一般に流通している白色LEDは,青色発光のLEDチップに黄色など様々な色を発光する蛍光体を組み合わせて,白色系の発光を得ております。今回の対象特許(094特許)は,このような白色LED内の蛍光体の濃度について規定した技術であり,蛍光体の種類に限定はありません。

 他方,原告とEverlight社には,白色LEDのディールは全く無かったようです。原告のHPで取扱いメーカの中に,Everlight社が挙げられていたものの,多少のディールがあったからで,詳しくは,有色のLEDのみだったというわけです(今回の特許のポイントは白色LED)。
 つまりは,ちょっと調べりゃ,原告の取扱商品にイ号が全く含まれないってことはもう明白も明白だったような気がするのですが,何故か,被告は,原告を相手取って特許権侵害訴訟を提起するは,上記のプレスリリースはするは,で喧嘩腰だったのですね。

 ちゅうことで,裁判所の判断に行ってみましょう。

3 判旨
「(1)本件プレスリリースの記載内容 本件プレスリリースには,「台湾Everlight社製白色LEDに対する新たな特許侵害訴訟について」との見出しの下,第1段落において,被告が,原告を相手方として,エバーライト社が製造する本件製品を,原告が輸入,販売等したとして,本件特許権に基づいて侵害の差止め及び損害賠償を求める2件の訴訟(先行訴訟)を提起したことが記載されている。被告が原告を相手方として先行訴訟を提起したこと自体は客観的な事実であり,エバーライト社が製造した本件製品を原告が輸入,販売等する旨の記載は,先行訴訟における被告の主張内容をそのまま説明するにとどまる。本件プレスリリースの読み手が,見出し及び第1段落のみに接した場合,原告が本件製品を輸入,販売等したことを理由に本件特許権を侵害するとして被告が先行訴訟を提起した旨を公表するものであると理解するとしても,本件プレスリリースに記載された内容に虚偽の事実があると認めることはできない。
 他方で,本件プレスリリースの第2段落において,中韓台LEDチップ及びパッケージメーカーによる,特許権を無視した日本市場での行動は目に余るものがあり,日本市場での被告の特許権への侵害行為に対する対抗措置の一環として,平成23年8月にエバーライト社製白色LEDを取り扱っていた別会社に対する訴訟を提起した旨とともに,上記別会社が上記白色LEDが被告特許の権利範囲であることを認めて販売等を中止した旨が記載されており,第1段落においてエバーライト社が台湾最大のLEDアッセンブリメーカーであると紹介されていることを併せ考えると,上記別会社が,中韓台LEDチップ及びパッケージメーカーが被告の特許権を侵害していることに関わりを有していたと読み取れる。その上で,先行訴訟が上記別会社に対する訴訟に続くものであり,原告に対しても販売等の中止等を求める旨が記載されている。このように,見出しの下,第1段落と第2段落を併せ読むと,これらの記載は,原告を上記別会社と同列に扱った記載となっており,先行訴訟が上記の対抗措置の一環に含まれるものであり,原告が,エバーライト社製の本件製品を輸入,販売等することにより本件特許権を侵害しており,少なくともその点において,中韓台LEDチップ及びパッケージメーカーによる特許権を無視した侵害行為に関わりを有しているということを意味していると認められる。特に,第2段落では,上記別会社が,被告の提訴直後,被告の特許権侵害を認めて販売等を中止したと記載されているため,読む者をして,原告も上記別会社と同様の侵害行為を行っているものと強く思わせる記載内容となっている。
 このような記載は,被告が,原告を相手に訴訟(先行訴訟)を提起したのに伴って,訴訟提起の事実を公表し,先行訴訟における自らの主張内容や見解を単に説明するという限度を超えており,原告の営業上の信用を害するものである。・・・」

4 検討
 上記の判旨に続き,客観的真実に反する→過失有り,ということで,不正競争行為と認定しています。

 他方,訴訟の提起自体は不法行為じゃないよとしたみたいですね。

 まあしかし,こんな大手がどうしてこう何か焦ったようなことをしたのか非常に疑問ですね。ほんで,更なる疑問はどうしてこれを法務や弁護士が止められなかったのかということです。

 こういう系の事件では,知財高裁平成18(ネ)10040等(平成19年10月31日判決)が有名です。これは特許権者が,小売のスーパー(スーパーですよ!)に置かれた台湾製の液晶テレビに対し仮処分の申立てなどをして,ご丁寧に記者会見までした件の後始末のやつです。

 やっぱこういうのって内部や依頼された弁護士等で,いやあ,これってちょっとマズくないですか~って抑えるべきなんでしょうねえ。あ~あ,クワバラクワバラ。

5 昨日の研修
 ということで,昨日,弁理士会と二弁との合同研修に行ってきました。
 議題は,「電子化された出版物に関する著作権法上の問題」です。

 昨年までは,何故かお金を取る研修だったためか,20~40名程度という非常にほそぼそとした研修だったのですが,今年からお金を取るのをやめて,すごい人の入りでした。100名以上来ていたのではないでしょうかね。

 まあ,弁護士の人は知っていると思いますが,今,研修ってちょっと気の利いたものってほぼ全部有料になっています。テキスト費に500円だ~1000円だ~って感じです。
 でもこれ,おかしくないですかね。会費を払っているにも関わらず,こんなお金を取られるわけですよ。

 現在,弁護士はどんどん増えていますので,会費,つまり売上げはドンドン増えているわけです。勿論,それに応じて,経費も発生しますが,変動費と固定費ってわかりますかね。人が2倍になると売上げは2倍になりますが,じゃあ経費は?2倍になるものと,そうじゃないものに分かれるわけです。
 損益分岐点を越えて売上げが伸びると,通常,利益も大きくなるわけです。日弁連も単位弁護士会だたってそうです。ですので,ちょびっとのテキスト費なんて取らなくても赤字なんかにはなりません。

 その証拠に,司法制度改革の余波で,会員の増えた弁理士会の方は,数年前に,2万円だった会費を15,000円に値下げしたのですよ。3/4です。
 日弁連と弁護士会だって,やろうと思えば,併せて3万円くらいの会費でできるはずです。でも,クソサヨク御用達の,弱者だの人権だのという,狂信的カルト活動にお金をジャブジャブ使っているので,本当に必要なことが見えないのでしょうね。

 ま,これをおかしいと思わない感覚,本当どうかしてます。こんな団体,全中同様潰してもらうのがいいと思いますよ。どうするかな~。大分,土建ネットワークからウシシシって言うのがいいでしょう。大学の先生もそうですが,俺らがこんな目に遭うとは~ってことを弁護士会の幹部連中にも,そのうち味あわせてあげますよ~♡

 おっと議題が逸れました。
 で,そんな大盛況の研修ですが,弁理士会からは,所謂電子出版権の改正法の解説でした。

 この所謂電子出版権って,知る人は知ってますが,出版社がレコード会社みたいに著作隣接権が欲しいよ~って言ったことが発端です。
 で,その後経団連から,著作隣接権には猛反対!でも電子出版権ならいいよ~って言うのが出て,その後結構あっさりと収束して,改正に至ったわけです。

 しかし,そもそもおかしいと思いませんか?

 この電子出版権って,非常に唐突に出てきたわけです。企業法務戦士の雑感さんのブログにも,「あっと驚くようなカウンターパンチ」と書かれておりました。
 いやあ,経団連に,電子出版権なんて構想する力はありませんよ。ねえ,これねえ,元ネタがあったのです。それが,弁理士会のパテントなどに載った記事です。

 この記事などを見た経団連の方がいただき!と思ってこの方向へ一気に進んだようなのですね。いやあ驚きですね。

 弁理士会の自画自賛~しかもデマ?違います,上記の記事を書かれた先生が,経団連の担当者から直接聞いたということなので,間違いないです。
 ですので,その記事を書かれた先生が講師をした昨日の研修は極めて有意義だったわけですね。行きそびれたあなた~残念でした。

 そうだ,そうだ,重要なことを一つ。
 昨日研修に来ていただいた方,特に弁護士の方は,研修終わり間際,こんなことを思ったのではないですかね。何故,妙な質問コーナーを伸ばす??~早く締めろよバカ司会者!
 違いますかね。ちなみにこのバカ司会者は私です。この研修の司会者だったのですね。

 実は,終われない理由があったのです。弁理士会は弁護士会と異なり,監督官庁があります。経産省です。更に具体的にはその外局の特許庁ということになります。
 昨日の研修は,法定の継続研修(弁理士は一定の研修を受けることが法上の義務となっております。弁理士法31条の2です。)になっており,当然に,特許庁の監督を受ける対象です。

 ですので,20分早く終わったからって,研修終了!ってできないのです。1時間1単位で,昨日は2時間の講義で2単位だったので,早く終わったなら,つなぎの出し物をしないといけないわけで,それが質問コーナーだったわけですね。
 まあ,弁護士の皆さんには義務のないことに付き合わさせて悪いなあとは思うのですが,何故早く終わったかについては,弁理士だけの責任じゃありませんので,ね。

 とは言え,全体的になかなか良い研修だったのではないかと思います。今回のこの研修,開催までにも本当一悶着ありまして,昨日盛況のうちに終わったのは非常に良かったと思います。

 で,研修終わりで,講師の弁理士の先生と,会場が弁護士会だったため,地下の桂で懇親会などもやりました。これも実に楽しかったですね。

 先週の金曜も,研修終わりに弁理士の先生と飲みに行ったのですが,実は今日もこれから異議申立の研修があり,その後,またまたまた弁理士の先生と飲みに行くことになっております。いやあ元気だなあ私って。

6 追伸(16/02/15)
 この判決について,知財高裁の控訴審判決が出ました(知財高裁平成27(ネ)10109,平成28年2月9日判決)。
 驚くことに,一審被告が逆転勝訴です。

 どういう論理で,請求を棄却したかというと,過失なし!ということらしいです。

「上記の状況によれば,一審被告は,一審原告のウェブサイト及びこれとリンクされているエバーライト社のウェブサイトを見て,一審原告がエバーライト社のウェブサイトに掲載されている白色LED製品等を取り扱っており,取引業者からその商品を購入したいとの申込みがあり,価格等の条件が合致すれば,これを販売すると理解したものであり,一審原告がエバーライト社のウェブサイトに掲載されている本件製品を含む白色LED製品について譲渡の申出をしていると理解したとしても,無理からぬところである
 そして,一審被告は,その後本件製品と本件製品に使用されているLEDチップの構造,構成材料等を分析し,本件特許発明の当時の請求項1の技術的範囲に属することなどを確認した上で,先行訴訟を提起し,本件プレスリリースを掲載したのであり,一審被告が本件プレスリリースを掲載したとしても,一審被告には過失があったものとは認められない。
 なお,本件特許発明の請求項1については,その後訂正がなされているものの,一審原告は,本件訴訟において,仮に一審原告が本件製品の譲渡等をしていたとしても,本件製品は本件特許権を侵害するものではないから,一審被告による本件プレスリリースの掲載は,不正競争行為に当たる,等の主張はしていないのであるから,本件の不正競争行為の過失の判断において,本件製品が本件特許発明の訂正後の請求項1の技術的範囲に属するか否かに関し,これ以上詳しく判断する必要はない。」

 まあ,私,別にこの一審原告の方の肩を持つわけではないですが,どうですかね~この判示。しかも,このなお書き。

 これ頭に来ませんかね。そう判断するなら,そう釈明でもすりゃあいいのに,偉そうに「これ以上詳しく判断する必要はない。」って所ですからね。本当,バッカじゃねーのって思いますね。

 こういうのって何なんでしょ,事なかれ主義?って言うんですかねえ。まともな審理を期待する方がアホってことでしょうか。
 

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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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