忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護土の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 最近の知財の話題というと,職務発明の話と,この営業秘密という概ね2つが中心と言ってよいでしょうね。

 著作権は様々な話があるのですが,TPPが座礁しそうなので(ザマアミロ),取り敢えず小休止でしょうかね。

 ほんで,今日は営業秘密の方です。

2 まあ,今週の月曜にも書いたのですが,厳罰化だけでは限界があり,様々な方策が必要だとは思います。

 そういうこともあって,経産省の産業構造審議会 知的財産分科会 営業秘密の保護・活用に関する小委員会の議事録等を振り返って読んでいたのですが,まあちょっとマニアック過ぎるような話ばかりです。

 特に,管理指針をもっとわかりやすいものにしようという考えはもうそのとおりですが,いやあ船頭があまりに多くて陸を走らなきゃいいがねえって所です。

 やはり,実際にやるのは,法務部員でもなく知財部員でもないんですから,シンプルでわかりやすいものがいいですよね。例えば,秘密管理性が認められるためには,物には,厳秘とかCONFIDENTIALとかの表示で済ませるようにして,物じゃないデジタルデータとかはそれに代替するもの(パスワード,データ内表示とか)で済ませるようにしてほしいものです。

 で,それとは異なる話ではあるのですが,これ,勘違いというか誤解というか,そういう人が出てくるなあ,この書き方じゃということがありましたので,それを指摘しておきます。

3 それは特許と営業秘密(ノウハウ)の切り分けです。
 
 それはここで何度も書いているし,「知財実務のセオリー」でも書いていますが,たった1つの基準です。何かというとリバースエンジニアリングでわかるかどうか,それだけです。

 商品を手に入れて解析しても全くわからないというのが典型例ですが,巨大プラントや極端な高価品のように,現実的にリバースエンジニアリング不可能という場合も含みます。

 本来,営業秘密で技術情報を守るのはそういうときだけです。

 他方,上記の議事録のような書き方だと,それ以外の観点から営業秘密化した場合でも効果的に技術情報が守られると勘違いしてしまいます。
 例えば,中小企業が,特許出願する金がなくて止む無く営業秘密化するような場合です。勿論,営業秘密化しないよりもマシですが,これは100%完全じゃないのです。

 どういうことかというと,このような場合は,営業秘密化したとしても,リバースエンジニアリングしてわかるわけですね。だったら,他社は,リバースエンジニアリングして真似をします。そして,それを不正競争防止法では止められません!

 え!営業秘密を使っても止められない?って??
 そりゃそうですよ。不正競争防止法では,盗用とかの不正取得行為があったり,開発者から正当に開示を受けたものの後でこじれた場合等を規制しているだけです(民事も刑事も)。
 だから,楽天やアマゾンで正規品を買って,それをリバースエンジニアリングして,内容を把握し,全く同じ模倣品を作っても何の制約もありません~当たり前ですね。

 独自開発のものまで侵害になるかどうかってことを遮断効と呼ぶらしいのですが,その観点から,強度を示すと以下のとおりです。

 特許権 > 著作権 > 不正競争防止法(営業秘密)

 特許権は一番強いです。独自開発だろうが同じもの(特許法70条)だった場合には,もうそれだけで侵害になります。模倣してないとか真似してないとか付け入る余地がありません。

 著作権は,ご存知のとおり,遮断効があります。独自開発品には著作権は及びません。ですので,侵害というには,模倣したとか真似したとかいう要件が必要です。

 営業秘密は,そういう意味からすると一番弱いです。正規品をリバースエンジニアリングしてそっくりそのまま作ると特許権があっても著作権があっても(プログラムとか),通常それぞれの侵害になります。それを避けるために,ソフトウェア会社では,解析担当と開発担当を分け,さらにアルゴリズムから全く別物にするなど,対策を講じているわけですね。でも,営業秘密だけの場合,リバースエンジニアリングをして,それをそっくり模倣しても何の侵害等にもなりません。そんなの誰も禁止してないもん。

 だから~,上記のとおり,金がないからって特許出願の代わりにノウハウ化しても100%完全じゃないってことになります。わかりましたかね。

 兎に角,特許と営業秘密(ノウハウ)の切り分けは,リバースエンジニアリングでわかるかどうかだけです。本来,リバースエンジニアリングでわかるものを営業秘密としてもダメ元の方策にすぎないってことです。真似されて嫌なら,お金というリスクを取って特許出願するしかないのです。

 こういうことって本当はっきりした方がいいのに,あんまり誰も言わないんだよなあ,何でかなあ。
PR
1 知財関係が日経の1面に来るということは少ないのですが,今日は不競法絡みのでしたね。

 中身としては,例の最近至る所で,どうにかせんと~と言われている情報漏えい対策として,不競法の罰則の厳罰化の話です。

 慌てて,経産省のHP見たのですが,今回の改正案とかの骨子もそれに関係するようなことも一切載ってませんでした。ただ,当然ガセというわけではなく,経産省の政策室か何かからのリークなんでしょうね。これもある意味情報漏えいなんですが,こういうのはいいんでしょうかな~と私得意のメタ議論も少し。

 で,細かい話ですが,改正案は結構ケアされています。海外企業に漏らした場合は,併合罪みたいに1.5倍になるそうです(最長懲役15年)。法人の罰金の上限も6億円~と,特許侵害罪とくらべても,窃盗罪とくらべても,一段重いものになるってことです。また,情報の3次取得者以降も罰則の対象になるようで,抑止力としては考えうるところを全部盛りしたような感じです。

2 私は,保守派ではあるのですが,罰則を重くして抑止力を高めようというのはそんないい方法とは思いません。

 こういう企業秘密の漏えいが何故起きるか,それは2つの原因があると思います。一つは通りすがりの第三者によるもの,この前のベネッセとかの件ですね。これは要するに,泥棒と同じで,金目のもの(流動性の高い資産)があればやってしまうというやつですね。
 これにはある程度の重罰化も役に立つことがあるかもしれません。ただ,刑法犯をどうやって減らそうかという同じ話ですので(窃盗や強姦を減らそう~),時代背景とか景気とかそういったものによる影響の方がデカイと思いますね。
 
 で,問題はもう1つで,密接な関係を有する者によるもの,東芝や新日鉄住金とかの件ですね。これは要するに,裏切り者で,労使関係を初めとする様々な動機で,コンチクショーってことからやってしまうというやつですね。
 私は,これには重罰化は役に立たないのではないかと思っています。つまりは,人を呪わば穴二つってことを本人も自覚しているでしょうからね。いやあ別に犯罪になるかもしれんということは百も承知~,でもこの会社に一泡吹かせてやる!ってことでやることも多いでしょうからね。

 これを防ぐには・・・そう,職務発明の相当対価請求と同じなのですよね。不満を持つ社員からどう不満を除き,うまく次の職場に行ってもらうかっていう話なんですよね。
 例えば,大学には名誉教授という制度がありますが,会社でもある程度の実績のある退職者に対して,名誉従業員(これじゃああんまり名乗りたくないなあ,名誉技師とかがいいですかね。)とか称することを許すとかね。そうすると,心理的に裏切るってことは難しいですよね。
 誰かが,いやあ国民栄誉賞とかもらったら,もうソープランドとか行けないなあと言ってたのを思い出しますが,それと同じです。

 厳罰化もある程度しょうがないかなあとは思いますが,それと同時にうまい対策をしないといけないなあってことですね。

 あとは,経産省に早く改正案を公開してもらうって所でしょうか。
1 概要
 本件は,別紙2記載の被告の商品(商品名:ハッピー★ベアー,Happy★Bear,JANコード:4582302052773,色:①ピンク・②ベージュ・③ブラウン。被告商品)が,別紙1記載の原告の商品(商品名:シュエッティーベア,Chouettie  Bear:マネしておしゃべりぬいぐるみVer.5,JANコード4994793049468。原告商品)の形態を模倣したものであり,その販売は不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為にあたるとして,被告に対し,同法3条1項及び同2項に基づき被告商品の販売等差止め及び廃棄を求めるとともに,同法5条2項に基づく損害賠償,弁護士費用及び遅延損害金の支払を求めた事案です。

 これに対して,大阪地裁第21民事部(谷さんの合議体ですね)は,原告の請求の一部を認容しました(殆どの認容)。

 いやあ,ぬいぐるみの形態模倣2ですよ(原告は一緒)。1は,こちらです。

 で,今回紹介したのは,何だそういうことだったの~でもそうすると更にレベルが低いんじゃないのかなあ,ってところだったからです。

2 問題点
 問題点は,不正競争防止法の2条1項3号の形態模倣に当たるかどうかです。
 条文を示します。

 「他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

 ちなみに,これは平成17年に改正されておりますので,昔の条文も示します。

 「他人の商品(最初に販売された日から起算して三年を経過したものを除く。)の形態(当該他人の商品と同種の商品(同種の商品がない場合にあっては、当該他人の商品とその機能及び効用が同一又は類似の商品)が通常有する形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入する行為
 
 
若干細かい点が違うのですが,それはいいとして,大きく違うのはカッコ書きの中身です。同種の商品云々が,機能を確保するために・・・に変わったのですね。

 なので,本件のように最近の事例は当然改正後の条文が適用になるはずですよね~。

 厭味ったらしく条文を比較したところで,判旨に行きますか。

3 判旨
「(1)  はじめに
  不正競争防止法2条1項3号は,他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡等を不正競争行為と定めるところ,「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいい(同条4項),「模倣する」(同条1項3号)とは,他人の商品の形態に依拠して,これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいうとされる(同条5項)。
  前記商品形態の模倣を不正競争行為と定める趣旨は,資金,労力を投入して新たな商品の形態を開発した者を,資金,労力を投入せず,形態を模倣することでその成果にただ乗りしようとする者との関係において保護しようとする点にあるから,前記不正競争行為が成立するためには,保護を求める商品の形態が,従前の同種の商品にはない新たな要素を有し,相手方の商品がこれを具備するものであると同時に,両者の商品を対比し,全体としての形態が同一といえるか,または実質的に同一であるといえる程度に酷似していることが必要であり,これらが認められる場合に,後者が前者に依拠したといえるかを検討すべきものと解される。 」

「(7)  実質的同一性
ア  被告は,原告商品の特徴が,他の市場に存在する類似商品と概ね一致するもので,「当該商品の機能を確保するために不可欠な形態」として,クマのぬいぐるみを制作販売する場合,その外見的特徴として似てしまうのもやむを得ないものである旨主張する。しかし,被告が類似商品と指摘するものが原告商品より以前に存在したと認めるに足る証拠はなく,また,熊のぬいぐるみであれば,上記で認められる原告商品の形態を備えることが不可欠といえるものではないことは明らかであり,原告商品の具体的形態からしてもありふれたものとまではいえず,前記(2)で認定した開発の経緯に照らしても,原告商品の形態は,不正競争防止法2条1項3号の保護の対象となるものといえる。
イ  原告商品と被告商品とは,上記(5)のとおり,その形態全体にわたり多数の共通点が認められ,できあがった原告商品と被告商品の全体の寸法もほぼ同じであることからすれば,本体の形状はほぼ同一であるといえる。・・・
 したがって,原告商品と被告商品の形態は,全体のつくり及び顔のつくりにおいて酷似しており,その相違点を考慮しても,実質的に同一であるといえる。」

4 検討
 いやあ何ちゅうかさあ,自分で規範を提示したなら,その規範どおりに当てはめましょうよ。そう研修所で習わなかった~?
 前回は棄却だったから一部の規範を使わずに済んだけど,今回一部でも認容でしょ。判旨で提示した規範に全部当てはまらないと認容できないはずだと思いますがね。

 前回私はここで,創作的法的なものと混同したのではないかと述べましたが,ゴメンゴメン一旦ごめ~ん~♪(元ネタわかるかな。)
 そうじゃないですね,そんなレベルの高い話じゃありませんね,これ。こんな規範を用いた下級審はないと前に書きましたが,そりゃ現行法になってからはないと思います。でも,以前はありました~。だって,上記のとおり,平成17年法改正の前は,条文上,「同種の商品」ウンたらという文言が入っていたのですから。

 ですので,前回の判決も今回の判決も,単に,法改正前の,昔のテンプレート集・雛形集を,特段の検討無く使っただけですね。何ちゅうレベルの低い仕事なんだろう。

 裁判官って本当悪しき先例主義者というのがよくわかりますね。法改正しているっちゅうのに,改正前の規範を何食わぬ顔で使い,それを徹底するんだったらまだいいですよ!上記のとおり,そういう徹底もなく,当てはめのところでは,改正後の条文「不可欠」何たらの方を使っているのです!

 もう開いた口が塞がらないとはこのことですね。いやあびっくりしますね。法改正のこと知らないのかなあ,いやあ知っているはずですよ,いくら何でも。当てはめのときに不可欠・・・って書いてますからね。

 それなのに,この有り様~。石頭っていうか融通が効かないっつうか・・・ですね。日本の夜明けは遠いぜよ~♡

 
 あ,そうそう,具体例を離れて空中戦で裁判官の悪口を言っても仕方がありません。前回は同じ原告で棄却だったのに,今回は認容です。

 その違いは,やはり被告のぬいぐるみの似てる具合ですね。前回の被告のぬいぐるみは,チューバッカというかビッグフットというか,鼻口部も毛むくじゃらなのですね。他方,今回の被告のぬいぐるみは,原告のぬいぐるみ同様,鼻口部がクマっぽい感じになっております。ですので,今回の被告のぬいぐるみは,似ているな~って感じがします。
 写真は,このブログで見れるようになっているので,見比べてください。

 じゃ,ということで。

1 概要
 本件は,原告が,被告による商品名を「キューティーベアー  チャビー(ブラウン)」とする別紙5記載の商品(JANコード:4994372129154,被告商品1)及び商品名を「キューティーベアー  チャビー(ベージュ)」とする別紙6記載の商品(JANコード:4994372129161,被告商品2)の販売が,原告の商品の形態を模倣した商品を販売する不正競争行為(不正競争防止法2条1項3号)に当たるとして,不正競争防止法3条1項及び同2項に基づき被告商品の販売等の差止め及び廃棄を求めると共に,同法4条に基づき,1100万円の損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成25年7月9日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める事案です。

 原告の商品と被告の商品は,こちらになります。別紙1から4が原告の商品(しゃべる熊のぬいぐるみ)で,別紙5と6が被告の商品(しゃべる熊のぬいぐるみ)になります。

 これに対して,大阪地裁第21民事部(谷さんの合議体ですね。)は,原告の請求をいずれも棄却しました。つまりは,形態を模倣したものじゃないよということです。

 何だか久々の判決の紹介です。それもそうですね。新年度,一発目のようですから。

 これを紹介したのは,え!,そうだっけ?そうじゃないんじゃないの~?!っていう所があったからです。

2 問題点
 問題点は,上記のとおり,被告の商品が,原告の商品の形態を模倣した商品,と言えるかどうかです。

 ほんで,形態模倣の不正競争防止法2条1項3号は,こんな感じです。

他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

 商品の形態と模倣についても,定義があります。

この法律において「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。

この法律において「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。

 まあ,ですので,実質的に同一じゃないとダメで,これは判決などから,デッドコピーじゃないとダメって言われています。

 ところで,不正競争防止法って,意匠法と違って,創作を保護するものではありませんので,特段独自の創作であることは必要ないとされているのです。例えば,知財高裁が出来た当時の,知財高裁平成17年12月05日判決(カットソー事件)というのがあり,そこでは,「同号の規定によって保護される商品の形態とは,商品全体の形態であり,また,必ずしも独創的な形態である必要はない。」と判示されています。
 
 他方で,形態模倣の規定には,カッコ書きで,(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)とあるわけで,その形態をとらない限り,商品として成立しえないような形態については,そもそも形態模倣の「形態」から外れるようになっております。こういう所からしても,創作的なものを保護するのではなく,公益的な面があることわかります。つまりは,意匠法や著作権法ではなく,商標法(特に4条1項18号参照)に近いかなあって感じがします。

 そうすると,どうなるかというと,独自だとかありふれていないとかは,創作法(意匠法や著作権法)ではその創作物の本質みたいな話ですが,商標法や不正競争防止法では,独占不適とかの政策的な話にならざるを得ず,逆に言えば,明確に規定する必要があるわけです(今回のカッコ書きのやつとか,商標法の3条とか,ですね。)。
 ですので,仮に,こんなありふれた形態,まったく独自でない形態なので,保護したくないなあという場合は,明文規定のこれ!に該当するので,保護しないのだよ~♫ってきちんと言う必要があると思うのですね。

 さて,判決はどう言ったのでしょうか。

3 判旨
「 不正競争防止法2条1項3号は,他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡等を不正競争行為と定めるところ,「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいい(同条4項),「模倣する」(同条1項3号)とは,他人の商品の形態に依拠して,これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいうとされる(同条5項)。
  前記商品形態の模倣を不正競争行為と定める趣旨は,資金,労力を投入して新たな商品の形態を開発した者を,資金,労力を投入せず,形態を模倣することでその成果にただ乗りしようとする者との関係において保護しようとする点にあるから,前記不正競争行為が成立するためには,保護を求める商品の形態が,従前の同種の商品にはない新たな要素を有し,相手方の商品がこれを具備するものであると同時に,両者の商品を対比し,全体としての形態が同一といえるか,または実質的に同一であるといえる程度に酷似していることが必要であり,これらが認められる場合に,後者が前者に依拠したといえるかを検討すべきものと解される。 」

「 ア  前記(4)のとおり,原告商品1と被告商品1は,全体が毛で被われた動物の座った状態をかたどったぬいぐるみであり(共通点ア),首付近に設けられたリボンの形状及び色彩(共通点イ)や全身を覆う毛の色や巻の態様(共通点ウ)のほか,目の位置,形状及び色彩(共通点オ),口鼻の位置及び形状(共通点カ)に共通点が認められる。しかし,これらの点は,原告商品1の販売に先立って市場に存在した同種商品にも認められるものであり(乙1~9),これらの点が共通することを理由に,原告商品1の形態と被告商品1の形態が実質的に同一であるとすることはできない。
      イ  原告商品1では,口鼻部の突出が約30mm と比較的大きく,需要者は正面視及び側面視のいずれでもこの突出を容易に認識することができ,この点を捉えて,原告商品1を熊のぬいぐるみとして認識するものと思われる。ところが,被告商品1は,口鼻部の突出の程度が原告商品1と比べて元々小さいことに加え,顔部全体を毛が深く覆っているため,需要者において,正面視及び側面視のいずれからも,原告商品において熊であることを認識させる要素となる口鼻部の突出を容易には認識することができない態様であり,顔部全体が平坦な印象を与える。また,被告商品1の顔部は,目,口,鼻が長い毛である程度覆われているため,原告商品1を含め,熊のぬいぐるみとして一般に商品化されているものとは(乙1~9),異なる印象を与える。結果として,被告商品1の形態については,毛むくじゃらの種類不明の動物と認識しうるものではあるとしても,当然にこれを熊と識別しうるようなものではないといわざるをえない。
      ウ  被告商品1は,熊を意味する言葉(ベアー)を商品名に使用し,言語を再生する機能を有することから,外装等に接した需要者はこれを熊と認識するため,実質的に原告商品1と競合することが考えられる。しかしながら,不正競争防止法が形態模倣を規制する前記趣旨に照らすと,両者の同一性の問題は,商品に付された表示や商品の機能を考慮することなく,商品の形態それ自体の対比により,判断すべきものである。
      エ  原告商品1と被告商品1は,いずれも動物のぬいぐるみであり,その顔部は需要者が特に注意を払う部位であるが,そのような部位において特徴的な共通点が認められない一方で,上記のように需要者への印象を異にさせる差異が存在する以上,両商品を対比して,その形態が同一である,あるいは実質的に同一といえるほど酷似しているということはできない
      オ  以上によれば,原告商品1の形態において,従前の同種の商品にはない新たな要素は何であり,被告商品1がこれを具備しているか,あるいは,被告商品1が原告商品1に依拠するものであるかを論じるまでもなく,被告商品1が,原告商品1の形態を模倣したということはできない。」

4 検討
 何か変な判旨ですね。わざわざ規範の所で,従来の下級審判決にない「保護を求める商品の形態が,従前の同種の商品にはない新たな要素を有し,相手方の商品がこれを具備するものであると同時に」という規範を創作したのにも関わらず,実際のあてはめでは,従来のデッドコピーか否かだけを判断し,「従前の同種の商品にはない新たな要素は何であり」については,論じるまでもなく~なーんて言ってるわけですからね。

 こりゃ,完全に創作法的なものと誤解をしていますね~,裁判官達が。創作法では,同一性の議論と,ありふれているものかの議論は,渾然一体となるものですが,商標法とか不正競争防止法とかでは,全く別異の議論になります。

 つまりは,規範のところに,「従前の同種の商品にはない新たな要素」というのをくっつけたのがそもそもおかしかったわけです。この要件は,明文のカッコ書き(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)で,判断すればよいことです。

 これが何故カッコ書きになったか,恐らく,裁判官らは知らないんじゃないですかね。
 平成17年改正法でこうなったのですが,その前は,「当該他人の商品と同種の商品(同種の商品がない場合にあっては、当該他人の商品とその機能及び効用が同一又は類似の商品)が通常有する形態を除く。」とあったわけです。今回の要らん要件とよく似ていますね。
 改正法で今の条文になっても,以前除外されていた形態はそのまま除外されることに変わりなんかありません。

 本件では,同種の商品によくあるありふれた形態(モコモコした毛のぬいぐるみなんて,ぬいぐるみには不可欠な形態ですわな。)と思えば,カッコ書きで切ればいいし,同一性の方がねえなあと思えば,模倣じゃないとして切ればいいだけの話です。

 ですので~言いたいことはただひとつ,上手の手からも水が漏れる~♫分かり切ったことでも死ぬ気で調べんかこんバカタレが,コンメンタールを読みゃあ,誰でんがわかっちゃ。

1 概要
 本件は,原告が,別紙被告商品目録記載の各商品(被告商品)について,別紙原告商品目録記載の各商品(原告商品)の形態を模倣しているから,不正競争防止法2条1項3号に該当するなどと主張して,①被告会社に対し,同法3条1項に基づく差止請求権として,被告商品の製造,譲渡,販売等の禁止,②同条2項に基づく廃棄請求権として,被告商品の廃棄,③被告らに対し,同法4条及び不法行為に基づく損害賠償9391万4788円(逸失利益8891万4788円と弁護士費用500万円の合計額)の一部である5627万1781円(附帯請求として不法行為の後である平成24年3月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の連帯支払を求めた事案です。

 これに対して,東京地裁民事29部(大須賀さんの合議体ですね。)は,損害賠償請求の一部を認めました。要するに,不正競争あり(形態模倣あり)ということです。

 この前の判決に引き続き不正競争防止法の事案で,しかも今回も形態模倣の事案です。
 何か,意図がありそうですが,実はありませんで,他に著作権で若干面白いもの(某漫画家のネットでのイザコザ,ファッションショーを写したもの著作物性)がありましたが,ここで紹介しなくても誰かがやるだろう,ということで,こちらはやはりマニアックな方を選んだ,ということです。

2 問題点
 問題点は,基本1つです。不正競争防止法の2条1項3号で保護される「商品の形態」って何?という論点です。
 ちなみにこの前の判決(ドメイン名じゃないやつ)の論点は,「模倣」って何?でした。ですので,微妙に違うのですね。

 条文です。
他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

 今回更に具体的には,ありふれた形態かどうかが論点です。というのは,若干法改正の経緯を知らないといけません。

 昔のこの条文は,こうでした。
他人の商品(最初に販売された日から起算して3年を経過したものを除く。)の形態(当該他人の商品と同種の商品(同種の商品がない場合にあっては,当該他人の商品とその機能及び効用が同一又は類似の商品)が通常有する形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し,貸し渡し,譲渡若しくは貸渡しのために展示し,輸出し,若しくは輸入する行為

 つまり,同種の商品が通常有する形態は保護されない,としてあったのです。法改正(H17年)の目的は,この規定の明確化だったのですが,じゃあ,昔保護されなかったものが,今保護されるかというと,そんなことはありません。

 この通常有する形態って,何かというと,例えば上に言うありふれた形態のことで,これは今も昔も保護されない,ということです。

 ですので,今回の論点を更に敷衍すると,原告商品の形態がありふれた形態かどうか,これが論点です。

3 判旨
「不正競争防止法2条1項3号の「商品の形態」が保護されるのは,先行者が商品形態の開発のために投下した費用・労力の回収を可能にすることにより,公正な競業秩序を維持するためであると解される。商品の形態がありふれた形態であって,その開発のために特段の費用・労力を要しないような場合は,同号による保護の必要が認められないから,そのような場合には,同号の「商品の形態」には当たらないものと解するのが相当である。
 本件において,被告らは,原告商品の形態は,原告商品に先行して販売されていた電気マッサージ器「フェアリーポケットミニ」(対照商品)の形態と実質的に同一であり,その他電気マッサージ器の形態とも実質的に同一であって,ありふれたものであるとして,不正競争防止法2条1項3号の「商品の形態」に当たらない旨主張する。・・・・
 
 そうすると,原告商品は,その全長を極端に小さくした構成を採用することによって,電気マッサージ器としてのみならず携帯ストラップとしても使用できるものとしたことに形態的特徴があり(原告は,このような新たな用途の商品として開発するため,小型化のための工夫等を含めて費用・労力を投下したものと認められる。),そのような商品は原告商品の発売以前においては存在しなかったのである。したがって,先行商品として「フェアリーポケットミニ」存在するからといって,原告商品の形態がありふれた形態であるということはできず,他に原告商品のような用途の商品について類似の形態の商品が流布していたことを認めるに足りる証拠もない。
 以上のとおり,原告商品の形態は,不正競争防止法2条1項3号によって保護される「商品の形態」に当たると認められる。」

4 検討
 原告商品の前に,フェアリーポケットミニという先行商品があったようですね。でも,このフェアリーポケットミニ,原告商品より倍以上の長さ(14.6cm)で,スラっとした形態です。他方,原告商品は,長さが6.4cmでズングリムックリで,しかも,携帯につけても良いくらいの大きさに仕上がっております。

 ですので,全然違うわけです。

 他方,原告商品と被告商品(コデンマ/CODENMAという商標らしいです。)の形態は,実質同一ということで,これは問題無かったようですね。
 ま,経緯を見るとわかるのですが,要するに,被告はもともと原告商品の販売業者だったのですが,原告を裏切り,独自で同じようなものを他所で作ってもらい,それを売り始めたわけです。論点は,違いますが,この辺の経緯は,前回と似たようなところがありますね。
 つまり,あんなに仲の良かった二人なのに,欲に目が眩んで,一方を裏切る~,その後,ときには債務不履行で,ときには知財法で懲らしめられる~♪てな具合です。

 本当,この債務不履行がねじれて知財法が使われるというパターンはしょっちゅう見かけます。

 ところで,今回の製品,電気マッサージ器なのですね。なのに,14.6cmだとか,6.4cmの大きさ,何に使うのだろうと思う人が多いでしょうね~。
 でも私のような変態エロ弁護士は,すぐにわかります。だって,被告商品の謳い文句を見れば一目瞭然です。「紳士の玩具」ですからね。ま,早い話,女性の体のあっちやらこっちやらに当てて,女性のあっちやらこっちやらを喜ばせるというバイブレーターなわけですね。
 ま,そんな明け透けな使い方は実際にはそんなにされないとは思いますが,合コンとか,その他の飲み会でのウケ狙いアイテムっちゅうことで,よろしいんじゃないでしょうかね。

 で,折角エロ方面に話が行ったところで,日本のAVと洋物で非常に大きな違いがありますね。まあ,マニアの人は先刻ご承知だと思いますが,日本のAVは,本当バイブレーターをよく使いますよね。
 中に入れるタイブのものから,マジのマッサージ器まで,まさかのマッサージ器見本市状態です。

 ところが,洋物は決してそんなことはありません。ナチュラルな竿で勝負できるからでしょうか,機械は使いませんよね。
 ただ,洋物の特徴としては,必ずアナルに行くというパターンがあります。日本のAVだと,本当マニアものくらいしかアナルセックスしませんが,洋物は,ほぼルーチンです。特にアメリカものは顕著ですかね。

 で,私が驚いたのは,アメリカ人は普段のセックスでもかなりアナルセックスをするらしいということがわかったからです。日本人がバイブレーター使うのはまあビデオの中だけですよね(え,今は違うんですか?)。

 ほんで,それがわかったのは,NHK BSで昨年放送された「ホットコーヒー裁判の真相 ~アメリカの司法制度~」です。

 これは,法曹の間でも結構話題になりました。アメリカで,コーヒーが熱すぎるという理由で,マクドナルドを訴え,巨額の賠償を勝ち取った人がいるということで,クレージー訴訟社会のアメリカここに極まれり,というイメージが定着しているとは思いますが,実情は,それとは異なり,実はすごい火傷で,その後のネガティブキャンペーンがすごかったので,いまのようなイメージが定着したというような内容でした。

 で,その後編は,私企業のゼロハリバートン社に就職した女性が,米軍について行ったイラクで同僚からひどいレイプをされ,それを裁判に持ち込もうとするものの,契約で裁判を排除した強制仲裁条項があるため,裁判をしたくてもできない,というような内容です。
 ま,イメージと内実は違うというのはよくあるのですが,まさに良い番組だったと思います。チャンチャン。

 で,話がずれた上に更にずれてる?そうでしたそうでした。そのひどいレイプの内容が,睡眠薬を飲まされ記憶を失い,朝起きたら,膣も肛門も裂傷を負わされているというものだったのです。
 ということで,多少上に戻ります。アメリカ人って,普段からアナルセックス好きなのね~,ムフフフ,というわけです。

 今日は話がずれたまま,このまま終了です。

5 追伸
 この事件について,控訴審の判決が出ました(知財高裁平成25(ネ)10075,平成26年02月26日判決)。
 一審に続いて原告が勝ったのですが,お金が上がっております。

 まあ,しかし,上記に書いたように,「 原告商品と同程度の大きさの電気マッサージ器は,女性器を刺激するピンクローター,いわゆる大人のおもちゃとして,」とか,「 また,検乙5から8までの商品は,女性器を傷つけることなく,同商品の全部又は一部を女性器に押し当て,または膣中に挿入して振動を与えるという用途に特化した形態が選択された商品であり,」とか,全く私好みとしか言うしかありません。

 検*ということは,実際に裁判所で使ってみせたのかな~。うーん,どうやって??
 おかしいなあ,これは膣中に挿入して振動を与える筈なのに,アナルの方に入れやすいじゃないか~,被告代理人~いえいえ,裁判官,これはこうして使うのですよ~,おーそうか,そうかという風なことをやったんですかねえ。

 しかもこれは知財高裁の2部の清水さんの合議体なのですが,陪席に女性裁判官が入っておりますね。もしかしてだけど~♫もしかしてだけど~♫裁判所でHなことをしちゃったんじゃないの~。
 ムフフフ。
 

 

1 概要
 本件は,「CENTURY21」の名称を用いてフランチャイズチェーンを営む原告(株式会社センチュリー21・ジャパン)が,別紙ドメイン名目録記載のドメイン「CENTURY21.CO.JP」(本件ドメイン)の登録名義を有する被告(センチュリー住宅販売株式会社)に対し,フランチャイズ契約又は不正競争防止法2条1項12号,3条,4条に基づき,本件ドメインの使用差止め,登録抹消及び損害賠償を求めるとともに,原告は横浜不動産株式会社に未払サービスフィー請求権を有しているところ,被告の法人格は濫用であって横浜不動産と同視すべきものであるとして,被告に対し,原告が横浜不動産に有する,平成22年3月8日付け支払合意に基づく未払サービスフィー5162万2641円及び同支払合意後に発生した未払サービスフィー370万6534円,並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成24年3月31日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案です。

 これに対して,東京地裁民事第29部(大須賀さんの合議体ですね。)は,請求を全部認めました(珍しい!)。

 ま,今更のドメイン名,また今更の法人格否認,という珍しさもあって取り上げました。

2 問題点
 問題点としては,端的に,被告の使っているドメイン名「CENTURY21.CO.JP」が,不正競争防止法2条1項12号でいう原告の特定商品等表示に類似するかどうかという点と,被告(センチュリー住宅販売株式会社)の法人格を否認し,原告→横浜不動産間の債権を請求できるかどうか,ということになります。

 それはそれで重要な話なのですが(判旨もそのことについてです。),私が取り上げたのは,それだけじゃないのですね。実は,この事例,典型的,本当ど典型の企業間の債務不履行事例だからです。

 企業やそれに類した団体間で,色んな思惑の下,色んな提携系の契約を結び,色んな皮算用をします。しかし,うまくいくことはそれ程多くありません。いや,問題となるのは,うまくいかない場合ではなく,うまくいった場合の方が結構多いと思います(本件はその辺定かではありませんが。)。

 というのは,うまく行かなかった場合って,後始末が問題になるだけで,別に事業も大きくなってないし,当事者の皮算用も大きくなってないので,折り合いはつけやすいわけです(損をどう配分するかだけの話ですからね。)。ところが,うまく行った場合は,本当にトラブルになります。例を挙げましょう。

 研究段階 → 一方の企業,研究機関,大学等が,他方の企業,研究機関,大学に黙って特許を出願した
 開発段階 → 一方の企業が他方の企業に無断で,第三者に試作させた
 上市段階 → 一方の企業が独断先行して販売した
 成熟段階 → 一方の企業が提携先の企業ではなく,第三者の企業と提携した

 本件の例は,成熟段階での違うパターンとして,これも結構よくある例だと思います。ま,このように提携系での事例だけではなく,単なる取引関係(売買,請負,委託)だけでも,トラブルとなることがあるのは当然です。

 で,問題なのは,こういう裏切り行為があった場合,何で,相手方を追及していくか,ということです。普通は,契約当事者間でのトラブルなので,債務不履行(契約違反)で追及するのが第一義です。ところが,様々な理由で(多くは,契約書の文言の詰めが甘いことが要因ですが。),契約当事者間の話であるにも関わらず,知的財産権法を使うという場合もあります。

 こう書いていると,知財部員やら弁理士やらは,はあ何が問題なんだろう??と思われるかもしれませんね。でもそれは契約というものを本当に理解していないからでしょう。
 だって,面倒な契約書を何故作成するか,それは,すべて契約違反のときのためです。永久に仲の良い両者ならば,契約書は要りません,当然ですよね。契約書は,違反されたときにどうなるのだ?どういうことが契約違反になるのか?これらのことが明白に書かれていないと全く意味がありません。

 ですので,契約当事者間での紛争にも関わらず,知的財産権で追及しなきゃいけないというのは,イレギュラーつーか,上記のとおり契約書が甘かったという情けない事案なわけです。

 とは言うものの,結構,この契約当事者間での話に関わらず,債務不履行で行こうか,知的財産権法で行こうか,迷う事案は多いです。で,その場合の切り分けとしては,相手のやっていること(ダマの特許出願,外部への試作,自分だけ先行販売,浮気)が外から捕捉可能ならば,知的財産権法を考えてもよいと思います。

 今回の事例も,被告の保有し,使用しているドメイン名が外からわかりましたので(そりゃドメイン名なので当たり前ですが。),知的財産権法が使いやすかったと思うのですね。
 恐らく,契約書には,契約終了後,同一類似の標章を使ってはいけないという条項はあったのでしょうが,同一類似のドメイン名を使ってはいけないという条項まではなかったのだと思います。

 他方,被告のやっていることが外からわからない場合は,債務不履行で行った方がいいんじゃないかなあ,と思います。
 知的財産権法は,基本的には不法行為の特別法なので,見ず知らずの第三者との間の紛争前提のため,契約関係にあった当事者間では,契約書の条項で追及した方が普通は早いからです(契約書には,開示義務だとか,あるはずですから,通常相手の手の内はわかるはずです。)。

 ま,兎も角も,最新の債務不履行事例では,必ず,契約違反だけではなく,知的財産権法も考えるべきだということです。ですが,そのような事例は,知的財産権法が分かっていないとなかなか発想できません。
 というわけで,そのような事例の場合は,私にご用命頂ければ馳せ参じます,というステマですね。

3 判旨
 「甲13及び弁論の全趣旨によれば,原告は,米国法人であるセンチュリー21・リアルエステートLLCから,「センチュリー21」の名称を含む商標サービスマークの再使用許諾権を与えられ,日本国内において,原告及びそのフランチャイジーが,建物の賃貸の媒介,建物の売買の媒介,土地の賃貸の媒介,土地の売買の媒介等の役務に,「センチュリー21」「CENTURY21」等の標章を使用していることが認められる。
 そうすると,「CENTURY21」は,原告の標章その他の役務を表示するものであり,原告の特定商品等表示であると認められる。」

「原告は法人格濫用による法人格否認を主張しているところ,被告が法人格を濫用しているものと認めるためには,①法人格が支配者により意のままに道具として支配されており(支配要件),②支配者が違法又は不当な目的を有すること(目的要件)が必要であると解される。・・・
 横浜不動産が原告に対する5000万円を超える債務の返済を滞らせた(上記(2)カ)直後に被告が設立され(上記(2)ア),特段の契約関係や対価の支払いを伴うことなく営業所や従業員を引き継ぎ(上記(2)ウ,オ),横浜不動産が契約した案件の手数料等や横浜不動産が代理店として契約した案件の火災保険料の振込先を横浜不動産の口座から被告の口座に変更するよう指示があった(上記(2)キ,ク)というのであるから,被告は,横浜不動産の資産を移転し,原告の横浜不動産に対する強制執行を妨害するという違法不当な目的のために設立されたものと認めるのが相当である。
イ また,横浜不動産の代表者であったAは,被告の代表者であるBに指示,命令を出せる立場にあったというのであるから(上記(2)ケ),被告は,Aにより意のままに道具として支配されているものと認めるのが相当である。」

4 検討
 判旨の方は,まあ,こりゃあまりに確信犯的な事例で,そりゃそうでしょ,という特段問題になるようなものではありません。

 ですが,事実の話として,債務不履行があったとき,契約書の条項だけではなく,知的財産権法についても一顧はする,という最近の傾向がわかる事案ということでした。
1 本件は,別紙原告商品目録記載の各バッグ(原告商品①,原告商品②)を販売する原告が,別紙被告商品目録記載の各バッグ(被告商品①被告商品②)の輸入販売等が不正競争防止法2条1項3号の不正競争に該当する旨主張して,同法3条1,2項に基づき,被告らに対し,被告各商品の輸入販売等の差止め,廃棄等を求めると共に,同法4条に基づき,被告1に対し,損害賠償金482万2054円及びこれに対する不法行為の日の後である平成24年9月21日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払(うち元金160万0688円及びこれに対する平成24年9月21日から支払済みまでの遅延損害金の限度で被告2との連帯支払)を,被告2に対し,損害賠償金160万0688円及びこれに対する不法行為の日の後である平成24年9月1日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払(うち元金160万0688円及びこれに対する平成24年9月21日から支払済みまでの遅延損害金の限度で被告1との連帯支払)をそれぞれ求める事案です。

 これに対して,大阪地裁21部(谷さんの合議体です。)は,原告の請求を一部認めました。要するに,形態模倣あり,ということです。

 ここでは,あまり不競法の判決を取り上げることは少ないのですが,珍しく取り上げました。それはやはり,形態模倣を認めたという珍しい事案だからです。

2 問題点
 裁判官の誰だったかな~,最近のだから,東海林さんの講演だったかな~,不競法の事件は凄く少なくなっているという話がありました。
 だから,ここで取り上げることも少ないのでしょうね。そもそも,今も,東京地裁の3Fに行くと,シーンとしていますもんね。全く活気がありません。

 で,議題から本格的にそれる前に戻りますと,形態模倣は,不競法2条1項3号です。

 「他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為」

 そして,商品の形態については,2条4項があります。

 「この法律において「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。」

 ですので,見ることができるのであれば,内部の形状でもいいし,他方,意匠法3条2項のような創作非容易性は求められていないということがわかります。

 ただ,そうは言うものの,クレームで,ピシっとわかる特許や,読んだり見たりすれば,これもピシっとわかる商標(ないし商品等表示)などと異なり,意匠や,この形態模倣というのは独特の難しさがあります。つまり,モノのデザインが似ているとはどういうことで,どのくらい似ている場合に,NGかってことが,条文そのものからはようわからんのです。勿論,形態模倣にも,模倣の定義はあります。

 「この法律において「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。」

 つまり,実質的に同一って何??どの程度似ていたら,実質的に同一と言っていいの,ということが問題ですので,結局,判決でどういうのがNGになるのか,そういう蓄積を待たないと,この条文だけじゃあ,解決できないということです。

 で,その判決で,よくリーディングケースなんて言われているのは,ドラゴンソード事件でしょうね(東京高裁平成10年02月26日判決)。

 これで,東京高裁は,「ここで、作り出された商品の形態が既に存在する他人の商品の形態と相違するところがあっても、その相違がわずかな改変に基づくものであって、酷似しているものと評価できるような場合には、実質的に同一の形態であるというべきであるが、当該改変の着想の難易、改変の内容・程度、改変による形態的効果等を総合的に判断して、当該改変によって相応の形態上の特徴がもたらされ、既に存在する他人の商品の形態と酷似しているものと評価できないような場合には、実質的に同一の形態とはいえないものというべきである。」と判示しました。

 要するに,デッドコピー,ないし準デッドコピーしか認めん!というわけです。ということで,形態模倣が認められた判決はかなり少ないです。勿論,形態模倣には,19条の適用除外というやつもありまして,「日本国内において最初に販売された日から起算して三年を経過した商品について、その商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為」については,適用除外になるのですね。さらには,形態模倣の趣旨は,この「三年」に現れるように,先行者(開発者)の先行利益等を保護するということになっており,そうすると,単なる輸入者とか販売者なんて者は,保護しなくてもよいとも思え,その考えに沿った判決もあるため,余計少なくなっているような気がします。

3 判旨
 「不正競争防止法は,先行者の開発利益を保護することを目的として,新たな商品の形態を模倣する行為は,その形態が当該商品の機能を確保するために不可欠である場合を除き,新たな商品が最初に販売された日から3年を経過しない範囲で,これを不正競争とする旨を定めた(同法2条1項3号,19条1項5号イ)。・・・,個別にみると同一の部分的形態を有する商品が,原告各商品の販売以前に存在したことが認められるとしても,全体としての形態において,これらを組み合わせた商品が存在していなかった以上,当該商品を初めて市場に出した者は,その形態を模倣する者との間では,先行者として保護されるべきである。」

「原告商品①と被告商品①は,いずれも,基本的形態のうち,①バッグ本体及び左右の一対のハンドルからなる婦人用ハンドバッグであること(A1,a1),②バッグ本体の寸法は,高さ22cm,幅30cm,奥行き12cmであること(E1,e1),③バッグ本体のデザインは,側壁を取り巻く帯状の合成皮革を上下方向に3段に重ねた,いわゆる3段のティアード型であること(B1,b1),④バッグ内部は,幅方向に3つの収納部に分割されており,その中央にある開口部をファスナーで開閉可能にした主収納部,その両サイドにある開口部をオープンにした副収納部からなる,いわゆる両あおりであること(C1,c1)において共通する。
 また,具体的形態のうち,⑤バッグ本体の底面は,略角丸横長長方形状であること(H1,h1),⑥左右一対の各ハンドルは,バッグ本体と同一素材で,バッグ本体の開口部の両内側から,逆U字状にバッグ本体と同程度の高さで突出して設けられていること(I1,i1),⑦各ハンドルは,バッグ本体と同一素材を長手方向に折重ねて,縫い目を内側幅方向中央に形成していること(J1,j1),⑧一方のハンドルの一端には吊り飾りが吊り下げられていること(K1,k1),⑨バッグ内部の主収納部のファスナーの終端部は,主収納部の上縁端部に配されていること(L1,l1),⑩一方の副収納部の主収納部に対向する壁面には,上縁開放の横幅の長さが異なる大小の小ポケットが横方向に連続して設けられ,他方の副収納部の主収納部に対向する壁面にはファスナーポケットが設けられていること(M1,m1)において共通する。
 このように,原告商品①と被告商品①は,基本的形態及び具体的形態の多くが共通し,全体としての形状も同一であることから,両者の形態は実質的に同一であるというべきである。
 確かに,原告商品①と被告商品①との間には,①ショルダーベルトの有無(A1,a1),②質感(D1,d1・G1,g1),③色(F1,f1),④本体の底面と側面との縫い面の加工の違い(H1,h1),⑤吊り飾りの形状の違い(K1,k1),⑥副収納部の小ポケットのマチの有無(N1,n1),⑦収納部の布地の模様,タグの違い(O1,o1)があるが,これらはいずれも外観の相違に影響を与えない些細なものに過ぎず,実質的同一である旨の判断を覆すものではない。」

4 検討
 上記の概要のところから,それぞれの商品の写真のpdfをたどれますので,ちょっと見て下さい。
 このハンドバックは,3段のティアード型というらしいですが,平たく言うと,カネゴンの腹みたいなものが3段あるような形態です。で,印象としては,ほぼ一緒ですね。そりゃ細かいところで,違いはあるのでしょうが,デッドコピーと言ってよいくらい似ているという印象です。

 つまりは,そのくらい似ているので,この判断もしょうがないかなあという気がします。

 ただ,気になるのが,保護主体の方です。上記のとおり,不競法2条1項3号の趣旨は,開発者利益の保護です。とすると,厳密な開発者とは言えなくても,独占的販売者や,独占的輸入者については,保護してもいいとは思います。でもね~,今回は,そういう認定はありません。原告は単なる輸入販売業者です。とすると,おまえは開発者でもそれに準じる者でもないじゃんかよ~,と被告の方で主張できたのではないかという気がしますね(被告のそのような主張はないようです。)。

 もっとも,ユニクロ程度まで,きっちりとはいかなくても,アパレルの業界での製造小売の一形態として,ある程度アラアラのデザインやスタイルを製造先(中国やバングラデシュなどの工場)に出し,そこで製造されたものをほぼ全量買い取りしているような場合もあり得ます。
 このような場合は,そういう発注を出した会社は,不競法2条1項3号で保護される者と言ってもよいかもしれませんね。でも,これも程度問題ですので,被告がそこをもっと争えば良かったんじゃない~という感想は変わりませんね。
 
1  2  3  4 
カレンダー
05 2019/06 07
S M T W T F S
2 3 8
9 12 13
16 19 22
23 26 27 28 29
30
ブログ内検索
プロフィール
HN:
inagawaraw
性別:
男性
職業:
弁護土・弁理土
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を目指したのはもう30年以上前のこと。某メーカーでの液晶ディスプレイのエンジニアを経て,弁理土に。今は,弁護土です。次は何かな。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]