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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護土の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 首記は,昨日,ニッショーホールで行われた弁理士会主催の研修です。講師は,北大の田村先生ということで,私も聞きに行ってきました。
 
 田村先生は,普段大学で教鞭をとっており,あまたの講演も担当しておりますので,講師慣れは当然で,聞きづらいということはありませんでした。ただ,弁理士相手にしては,ちょっと普段の弁理士の仕事とは離れている内容故か,出席者は意外と少なかったですね。
 
 ということで,支障のないレベルで,内容も若干紹介しましょう。
 
2 営業秘密ということで,基本不競法の話です。裁判所の統計によると,一定の割合の訴訟もあるようですが,確か近時すごく減ったのですよね。その上,不競法の訴訟って,色んなタイプがあり,この営業秘密の争いに絞ると,更に非常に少ないのではないかと思います。

 と言いますのは,田村先生も話されていましたが,営業秘密って,何が営業秘密かわからないと請求を立てられず,他方,きちんと営業秘密として立てると,公開の法廷で公けになってしまうというジレンマがあるのですね。
 もちろん法改正で,秘密保持命令(10条),当事者尋問等の公開停止(13条)等が加わり,ジレンマを緩和するようになりましたが,やはり,いまだ不十分さは拭えません。それに,何とかそのジレンマを乗り越え,営業秘密の立証に踏ん切りをつけても,実際の立証は,本当大変です。自分の所で,営業秘密として,厳重に管理していたわけですから,相手方もそれ相応に管理している筈です。とすると,なかなか尻尾をつかむことなんてできないわけですね。

 田村先生の講義では,現在の裁判例に関し,この辺のことを,秘密管理性について,緩和説→厳格説→緩和説となり,今また緩やかとなってきており,さらに立証としても直接証拠だけでなく,いくつもの間接証拠積み上げ型がデフォーなので,ある程度は,原告の負担を下げるようになっている旨を話されておりました。

 でもねーとは思いますね。上記のとおり,訴訟の数は少ないと書きましたが,企業からの相談は結構多いのですね。でも,なかなか上記のとおりで,訴えるまでも行かない,内容証明すら出せない,これが現実です。
 
3 後半は,営業秘密とは勿論関係がありますが,どっちかというと労働問題的な話で,弁理士の皆さんわかったのかなあという感じの話でした。

 その一が,退職時の競業避止契約の有効性の話です。近時は,韓国・台湾・支那の会社へ,技術者が転職し,そのときに前に勤めていた日本の会社のノウハウがダダ漏れしているのではないかという話もあり,ある意味ホットイシューなものです。まあでも,こういう話を弁理士に相談しますかね~という感が非常にしますね。それに,これで弁理士が具体的に事件処理をすれば,特定不正競争の事件に当たらず,非弁の可能性が強いですしね。

 むしろ,弁理士が当事者になる場合があるので,気をつけた方がいいですよ,と言う方がいいでしょうね。あ,もう最近の人は知りませんかね。大阪の某有名な特許事務所が,その事務所を辞めた従業員に課したそのような競業避止契約の有効性が問題になった件を(平成17年10月27日大阪地裁決定平成17年(ヨ)第10006号)。恥ずかしいたっりゃありゃしませんね。
 
 そして,その二が,従業員の引き抜きの件です。さらに,知財から離れていきますね。弁護士だったら,債権侵害の一事例として,すぐに頭に浮かぶと思いますが,これまた,こういう話を弁理士に相談しますかね~という感が非常に強いですね。
 
 実は,今回の話は,東弁の知的財産権法部の定例部会で,昨年11月にやった講演と基本同じものなのですね。弁護士相手なら,後半の労働問題も,ホットイシューとなりますが,弁理士にとっては,雑学の範囲かなあというところじゃないでしょうかね。
 ま,同じネタを何度もやらなきゃ元が取れないというのは,メーカーでも,芸人でも同じですから,そこは責めるつもりはありませんけど。
 
4 今回の講演は判決の紹介がかなりありましたので,具体的な事件に応用する分はいいでしょう。ただ,その数が少ないので,実戦で試すのはいつになることやらって所ですね。
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1 首記は,昨日今日と,日経の「経済教室」の記事です。要するに,新日鉄VSポスコ,全滅に近い日本のテレビメーカー勢,というような事象を前にして,どうしたら防げるんだ~というような記事です。

 私も知財得意な弁護士ということになっておりますので(まあ自分で言っているだけなのですけどね。),昨日のものと今日のものを読んでみました。
 ちなみに,昨日は,日大の教授の土肥一史先生,今日は,最近支店を出すことで話題の西村あさひ法律事務所の梅林啓先生ですね。

2 その感想ですが,昨日の土肥先生のは,正しいのだけど,まあそれがどうしたというような話に終始していましたね。
 これはしょうがありません。企業勤めをしたこともなければ,実際の技術情報に接したこともないでしょうからね。そうそう,来月からは夏休みですが,中学2年の,若干マセガキの夏休み前っていうような感じです。

 他方,そこいくと,梅林先生のは実践的でした。真似されるなら,こちらの方がよいと思います。勿論梅林先生も企業勤めの経験はないでしょうが(結構なエリートコースの検事だったようですね。),実務家としての経験はあるようで,そつがないなあというところです。
 ただ,知財の知識と経験はイマイチですね~。「特許発明」を使う場合,ちゃんと条文を見て欲しかったですね。特許法,2条2項です。「この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。」です。
 ですので,特許発明だけでなく,特許を受けていない発明でも,保護する価値はありますし,それにそもそも特許発明なら,特許法100条等で捕捉可能なんだから,技術流出で大騒ぎすることもないって気もしますね。

3 この技術流出は,ちょっと前にも書きましたが,本当に難しい話です。
 どう難しいかというと,結局,技術流出した相手に対し,訴訟で勝つにはどうすればいいという話ではないからです。法律家と学者の皆さんにとっては,まあ専門がそういうところだから,知っている事を並べるしかないとは思いますけどね。

 ただ,契約で縛れば何とかなる,少なくとも脅しにはなる,ってえのは,正直言って,お前らグランド10周!と言いたくなるくらい,三流の企業法務ですね。

 頭でっかち,秀才君タイプが陥りそうな罠ですよ。勿論,それが全くの効果がないとは言いませんよ。でも本質的解決になりません。

 似たような話あるでしょ。著作権の権利者側が違法ダウンロードの刑事罰を進めようとしている件です。要するに,CDとかの売上が下がっているのは,違法ダウンロードに需要を食われているからだ~という奴です。
 でも本当ですかね。魅力がないから下がっているだけなのじゃないかと思いますよ。つまり,間違った立法事実に基づいて立法を進めている可能性があるわけです。本当は,魅力ある歌手等を始めとするクリエイターを発掘したり,育てたりしないといけないのに,そして,それらがうまく行けば売上なんてすぐに伸びるのにもかかわらず,変な所をゴニョゴニョしているだけですわな。まあ人間,不労所得を気にするようになったらオシマイですよ。

 ですので,今回の技術流出も同じです。魅力ある職場,魅力ある製品,それを生み出すようにしていけば,そんなもん,たちどころになくなります。それに,どっちにしろ,熱平衡よろしく,そのうち流出を危惧されるような価値ある技術なんて,日本からなくなりますから,こんなことは問題にならなくなりますしね。へへへ。

 だからこそ,今のうちに技術のポジティブスパイラルに無理しても入っておかないと(魅力ある職場,製品が出せる→働きたい人が集まる,入った人はやめない→さらに魅力ある職場,製品となる→ますます優秀な人材が集まる,勿論やめない,→・・・・),あとはクソしか残りません。それには,法務部門でなく,経営者,トップがしっかりしないと駄目だと思いますね。
 おっと,最後はらしくもなくマジでしめましたな。
1 首記は,本日の日経紙朝刊の法務面の記事です(法務は週一月曜で,休刊日と重なり,なくなることも多いですね。)。

 内容は例の新日本製鉄VSポスコの訴訟の話です。ですので,新聞見てくださいと言うしかありませんが,折角の法務面の特集と思いきや,特に踏み込んだ話もなく,何のための特集じゃあという感じです。

 あ,1つありました。「公認不正検査士」って知ってますか?
 いやあ私は今回の記事で初めて知りましたね。ちょっと調べると,また例によってアメリカ発の資格ですよ~。

 ところで,アメリカ発の最大の資格商法って知ってますか?
 それは,MBA(Mac Book Airじゃなかった,Mattaku Baka de Aho)ですね。まあ,これは,取得するとそこそこ今でも儲かるようですから,それはそれでいいのですかね~。オホホホ。

2 また,本題からずれそうなので,戻しますと,本件アメリカでは特許権侵害の事件なのですね。特許番号がわからないので,何とも言えないのですが,そうすると,日本国内で特許を出願せず,アメリカでも優先権主張をせずに出願したのかもしれません。

 そうすると,何がいいか,と言いますと,アメリカ国内のみの出願に対しては,出願公開がなされないのです!(USC35,122(b)(2)(B)(i) If an applicant makes a request upon filing, certifying that the invention disclosed in the application has not and will not be the subject of an application filed in another country, or under a multilateral international agreement, that requires publication of applications 18 months after filing, the application shall not be published as provided in paragraph (1).)。

 で,出願公開がされないと何がいいって,出願人にとっては基本良いことばかりです。
 普通,特許を出願するのは真似されたくないからですが,特許制度自体,マネを前提とする制度なのです。矛盾するようですが,そのとおりです。
 ほんで技術というのは,マネをされて発展するものです。何でもそうです。いいものなんだけど,ちょっと不満だ~,あとから来る人はそういうところを良くしようとして技術って発展するのですね。

 ですので,特許制度の趣旨を一言で言うと(弁理士試験の口頭試験のようですね,司法試験には口頭試験はなくなりましたので。),公開の代償としての特許権の付与,となります。ただ,出願人にとっては痛し痒しであり,権利だけもらいたい,こちらの技術なんて公開したくないってえのが本音ですよね。
 まあただ,結局上市して販売等をした場合,実際の商品からリバースエンジニアリングできるものについては,あまりとやかく言っても仕方ないところがあります。特許の公開された明細書で隠れてても,商品からわかるのですからね。

 他方,リバースエンジニアリングできない場合は別の考慮が必要です。こういうものを出願公開されてしまう特許出願にしてしまうと,その虎の子の技術がタダで知られてしまうわけです。そうすると,特許を取得しても,真似した他社のものも,リバースエンジニアリングしても当然わかりません!。
 ですので,こういう場合は,特許出願せず,営業秘密(ノウハウ)として,厳重に管理する,ということがデフォーになります。

 そうそう,時々相談があるのですが,特許出願した方がいいかどうか,メルクマールはただ1つです!リバースエンジニアリング(解析)してわかるかどうか,です。わかるものは特許出願で,わからないものは特許出願しない方がいい,ということです。

 やっと最初の話に戻ります。
 特許出願にはこういうメリットデメリットがありますが,上記のとおり,アメリカのみの出願の場合,特許権を取得できるまで秘密にできるわけです。特許後公開されてはしまうのですが,公開のスケジュールをかなり後ろ倒しにできます。
 今回新日鉄が,アメリカのみ特許権侵害訴訟を提起したのは,そのような特許戦略で動いたのではないかと推測できるわけです。
 日本でも特許出願して特許権があり,その上での特許権侵害訴訟の方が,戦いやすいことは確かですからね(こういう製法の不競法訴訟で,きちんと認められたのは,おそらくこの,出光興産のポリカーボネート事件くらいしかないのではないかと思える位にハードルが高いものです。)。

3 あと,技術流出ってえのの対策は本当難しいです。
 退職時に守秘契約,ってのもありますが(私もソニー辞めるとき結ばされましたね。),実効性はどうなのかなあ~って気がします。

 結局,技術者の頭の中まで縛ることなんてできませんし,会社のノウハウか,それともその人のノウハウかって,明瞭でないことも多いわけですしね。
 ですので,後付けの契約よりも,属人のノウハウを極力削ぎ落とし,会社のノウハウということに構成し直すことがまず第一です(難しいですけどね。)。

 次に,人からの技術流出を阻むため,サンクションでない,対策を十分に施すことです。流出させたら,罰則だ賠償金だ,というのは頭の悪いやり方です。会社を辞めさせずに済むようにしなきゃ,そもそもリストラで人を減らすというのはアホですね(そういう会社があとで技術流出というのは,信義則違反ですわな。)。
 そうでなく,うまい具合に持っていかないと。勿論,それでも整理解雇等が必要な場合もあると思いますが,そのときでも,会社に恩義を感じさせるようにやらないとね。
 基本,人からの技術流出なんてえのは,モラルハザードの典型ですから,訴訟だとか弁護士だとかよりもよい処方はある筈です(身近にね。)。

 今回の件は,法律だ~弁護士だ~で済む話ではないのです。
1 概要
  本件は,原告が,被告商品たるデジタル歩数計は,原告の販売する原告商品たるデジタル歩数計の形態を模倣したものであり,被告による被告商品の輸入,販売が,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当する旨主張し,被告に対し,同法4条に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払を求めた事案です。

  これに対して,東京地裁46部(大鷹さんの部ですね。)は,原告の請求を9割がた認めました。

  ここでは珍しい,不競法の事件です。さらに,今回は形態模倣というありそうで無かった類型のやつなので,何がポイントか楽しみですね。

2 問題点
不競法2条1項3号は,
他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為
を不正競争行為と定義しております。
そして,ここでいう「商品の形態」と「模倣」については,不競法2条4項及び5項で,
4  この法律において「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。
5  この法律において「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。
と定義があります。

  まあこの辺ドラゴンソード事件 (東京高裁 平10.2.26)で示したとおり,デッドコピーでないとダメなのですね。
  ちなみに今回の原告製品は,ここをどうぞ。
  他方,被告製品は,ここをどうぞ。

  おっと,力いっぺ似ちょっ,よう似ちょんなあ,というところではないでしょうか。
  内側のボタンの位置が上と下で違いますが,あとはほぼ同じって感がします。そうすると?

3 判旨
「・・・,被告商品と原告商品は,商品全体の形態が酷似し,その形態が実質的に同一であるものと認められる。
(イ)  もっとも,原告製品と被告製品は,操作ボタンの形状及び配置構成(F,F’)に関し,①三つの楕円形ボタンが,原告製品は,中央ボタンの右斜め上,右斜め下及び「左斜め下」に配置されているのに対し,被告製品は,中央ボタンの右斜め上,右斜め下及び「左斜め上」に配置されている点,②中央ボタンの形状が,原告製品は隅丸四辺形であるが,被告商品は円形である点,③楕円形ボタンの形状が,原告製品は長楕円であるが,被告商品は端部が尖った楕円である点,④中央ボタンの表面文字が,原告製品は,「設定」の漢字2文字であるのに対し,被告製品は,「MODE」の英字4文字である点で相違する。
  しかし,①の点は,三つの楕円形ボタンのうち,二つの配置は共通し,一つの配置が「左斜め下」か,「左斜め上」かの相違であり,三つの楕円形ボタンを中央ボタンから三方に放射状に配置するという基本的な構成が共通し,楕円形ボタン自体の形状もほとんど変わらないことに照らすならば,商品の全体的形態に与える変化に乏しく,商品全体からみるとささいな相違にとどまるものと認められるから,原告商品及び被告商品の形態の実質的同一性の判断に影響を及ぼすものではない。
  また,②ないし④の点も,商品全体からみるといずれもささいな相違であって,両商品の形態の実質的同一性の判断に影響を及ぼすものではない。 」

4 検討
  あと,被告は,適用除外の19条1項5号ロの善意無重過失の譲受を主張したようですが,原告商品が超有名ヒット商品だったらしくNGでしたね。
  まあここまで似ているものをやるとは,何というかですね~。この形態模倣は,意匠権がない場合には結構有効ですね。そりゃデッドコピーにしか使えませんが,十分効果があるようです。
1 概要
  本件は,出光石油化学株式会社を吸収合併した原告が,被告らが,株式会社ビーシー工業及びその代表取締役であるB並びに有限会社C商事及びその代表取締役であるC1と共同して,出光石油化学が保有していた営業秘密であるポリカーボネート樹脂(PC樹脂)の製造装置(PCプラント)に関する別紙目録1ないし3記載の各図面及び図表に記載された情報(本件情報)を出光石油化学の従業員をして不正に開示させて取得し,その取得した情報を他社に開示した行為が,不正競争防止法2条1項8号の不正競争行為又は民法709条の不法行為に該当する旨主張して,被告らに対し,不正競争防止法3条1項に基づく上記各図面及び図表の使用,開示の差止め,同条2項に基づく上記各図面及び図表が記録された記録媒体の廃棄,同法4条(予備的に民法709条)に基づく損害賠償を求めた事案です。

  これに対して,東京地裁46部(大鷹さんの合議体です。)は,原告の請求をほぼ認容しました。

  久々の不正競争防止法の事案ですね。しかも,内容がトップ企業の技術漏洩に関するものですから,ある意味現在の不正競争防止法の改正の論点とも言えるものですね(ただし,本件は民事)。

  こういう件があると,巷では,営業秘密の要件の秘密管理性にすぐ目が行くのですが,マニアックな私はそんなところにはあまり興味がありません。では何に興味があって,本件を取り上げたかというと・・・。

  なお,本件に関しては,他の被告についての,東京地方裁判所平成19年(ワ)第4916号,平成20年(ワ)第3404号不正競争行為差止等請求事件も存在します。

2 問題点
  不正競争防止法で保護される営業秘密に関する類型(要するに,不正競争行為のこと。)は,6種類あります。前半3つ(2条1項4号~6号)が不正な手段によって,営業秘密を取得した場合の類型です。
  他方,後半3つ(同項7号~9号)は,営業秘密を正当に示された場合の類型です。

  そしてその類型中,4号と7号が,主として取得者(従業員など)の行為を捕捉する類型,5号と8号が従業員などから取得した第三者の行為を捕捉する類型,6号と9号が同じく第三者の行為ではあるが後発的に悪意などになってしまった場合の類型となっています。

  こう書くと知っているひとにはわかるのですが,なじみのない人には何のこっちゃさっぱりわかりませんね。パラレルな構造になっておりますので,文字より図の方がはるかにわかりやすいと思います。ということで,経産省のリンクはこちらです。この図はわかりやすいと思います。

  そして,本件で問題となったのは8号です。以下,条文を示します。

その営業秘密について不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその営業秘密を開示する行為又は秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為

平 たく言えば,正当に営業秘密にアクセスできる従業員から,技術漏洩を唆すなどして営業秘密を取得し,使用した第三者の行為が問題となったわけですね。

  さてさて,このような場合で私が注目したのは,この従業員の行為部分,つまり条文上「不正開示行為」の特定の程度です。
  刑法でいうと,このような従業員の行為は,権限があれば背任的ですし,権限が無ければ横領的になるというところだと思います。他方,それを唆すなどした第三者は,関与の程度によって,教唆や共同正犯になるわけですが,通常この第三者を問責する場合,共犯者の従業員についても一定程度の特定が必要です。
 例えば,昔の有名事件においても,「氏名不詳な者との殺人の共謀」では,罪となるべき事実の特定としては不十分だとして高裁で逆転無罪になったことがありました。この場合,問責されている被告人が実行正犯でなかったため,このような判断に至ったのだと思います。

 では,民事,しかも独立の構成要件化されている類型においては,共犯的な人物の特定の程度としてはどの程度で十分なのでしょうか?というのが,私の問題意識なわけです。

3 判旨
 「もっとも,本件証拠によっても,C1の働きかけにより出光基本設計図書のコピー又は電子データの持ち出しを実際に行った出光石油化学の従業員が具体的に誰であるのかは不明であるといわざるを得ない。しかし,このことは,C1が上記の行為を行ったとの事実を推認することを妨げるものではないというべきである。
エ  まとめ
  以上によれば,C1は,出光石油化学千葉工場の従業員に働きかけ,当該従業員をして出光石油化学の千葉工場から出光基本設計図書全部のコピー又は電子データを持ち出させてこれを取得したものであり,他方,被告会社は,C1が上記のように不正な手段により出光基本設計図書全部のコピー又は電子データを取得したことを知りながら,C1から当該コピー等を取得した上で,これらを複製して被告基本設計図書を作成し,ビーシー工業に提供し,更にビーシー工業を介して藍星に提供したものであることが認められる。 」

4 検討
 特定の程度としては,属性不詳・氏名不詳ではだめだけど,属性が推認できる場合(他の流出経路の可能性がない。)などには,誰それまでの特定までは不要ということですかね。まあ条文上も不正開示行為をやった者が誰かというところは要求していないようですから,とにかく,条文上の要件事実が整えば,よいということになるのでしょうね。民事でもありますし,これはこれでよいのでしょうね。

 ただ,せっかくちょっと刑法の話が出たので,その話もします。というのは,今回のような類型は,不競法上の刑罰規定でも捕捉できる可能性があるからです(21条1項7号)。以下,示します。

不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、第二号又は前三号の罪に当たる開示によって営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示した者

 このような場合の第三者は,開示した従業員の共犯とも言えるわけですが,まさに独立の構成要件化しております。さて,そのような場合,開示した従業員の特定の程度は今回のような民事と同じ程度でよいのでしょうかね?条文上は,やはり,「前三号の罪に当たる開示」とだけしかありませんから,絶対誰だか特定しなければならないとまでは言えないとは思います。ただ,刑事ですからね~。しかも,現在審議中の上記改正では,秘匿決定という刑事手続に新たな制度が加わるわけです(さらに,本件でいえば,ポリカーボネート樹脂の製法が問題になりますが,それをオナラブーブー樹脂なーんてわけのわからない呼称をつけるということもできるようです。)。とすると,やはり今後はこういうところまで問題となってきそうだなあという気がしますね。

 なお,本件では,従業員を被告とはしていないようです。ここはネゴができているわけですから,本件ではそのような事情も特定の程度に関係があったのかもしれません。

1 本日の10時~うちの事務所とは五反田駅を挟んで反対側のゆうぽうとホールにて,平成22年度知的財産権制度説明会(実務者向け)が,特許庁,経済産業局及び内閣府沖縄総合事務局を主催として,開催されます。

  こういうのは,毎年毎年やってはいるようですが,今回のものは,不正競争防止法,特に営業秘密に重きを置いた点が特徴だと思います。というのは,今年の7月から改正不正競争防止法が施行となり,営業秘密侵害罪の処罰範囲が拡大されたため,主任の経済産業省としては,広く周知させる必要があると踏んだのでしょうね。

2 私は,特段ゆうぽうとにその話を聞きにいく,というわけではありません。
 実は,その説明会,「営業秘密の適切な管理に向けて」の講義終了後、午後3時~営業秘密に関する、弁護士による無料相談会を行う,のです。その無料相談の担当弁護士として選んでいただいたので,そのためにゆうぽうとホールに行く,ということになります。

  まあ別に私が偉いとか権威があるというので選ばれたのではないことは言うまでもなく,単に,事務所が同じ五反田にあるから,ということです。
  そして,担当の経産省の方によると,相談者が少ないということでしたので,自分のブログで若干宣伝させてもらったということですね。ですので,午前の講義はもう始まっていますので,午前から行かれる方には意味のないものでしょうが,午後から行かれる方はちょっぴり参考にしていただければと思います。
1 概要
  本件は,原告商品たる角質除去具(「SCRATCH」という商品名です。)を販売する原告が,被告商品たる角質除去具(「夢見るかかとちゃん」という商品名です。)を販売する被告に対し,被告商品の形態は原告の商品等表示として周知な原告商品の形態と類似し,被告商品の販売は原告商品との混同を生じさせるものであり,また,被告商品は原告商品の形態を模倣した商品であるから,被告による被告商品の販売は,不正競争防止法2条1項1号又は3号の不正競争行為に当たる旨主張して,不競法3条1項に基づき,被告商品の譲渡等の差止めを求めるとともに,同法4条に基づき,損害賠償を求めた事案です。

  要は,周知の商品等表示についての混同惹起行為,及び形態模倣だ!として,訴えたわけです。

  これに対して,東京地裁は,差止め及び賠償の一部を認容しております。

2 問題点
  原告の具体的商品については,商品名を検索すれば,すぐに検索できますので,それを見ていただくこととします。
  そうすると,結構斬新で,お!これは,と思うような部分もあります。

  ただ,この形態を真似されたからと言って,すぐに不正競争行為となるかどうかは疑問が残ります。特に,周知の商品等表示についての混同惹起行為については,判旨にも「商品の形態は,本来的には商品の機能・効用の発揮や美観の向上等の見地から選択されるものであり,商品の出所を表示することを目的として選択されるものではないが,」とあるとおり,出所表示機能を持つためのハードルは結構高いと思われるからです。

  ただ,上記のとおり,請求一部認容ですから,どこがポイントだったのか,気になったわけですね。

3 判旨
「特定の商品の形態が,他の同種の商品と識別し得る独自の特徴を有し,かつ,その形態が長期間継続的・独占的に使用され,又は短期間でも効果的な宣伝広告等がされた結果,出所識別機能を獲得するとともに,需要者の間に広く認識されるに至ることがあり得るというべきである。このような商品の形態は,不競法2条1項1号の他人の商品表示として需要者の間に広く認識されているものといえるから,同号によって保護される他人の周知の商品等表示に該当するものと解される。」

「以上の検討によれば,原告商品の前記(ア)の形態は,原告が原告商品の販売を開始した平成18年9月26日当時,他の同種商品(角質除去具)には見られない独自の特徴を有する形態であったものと認められる。」

「販売開始後平成19年11月26日ころまでの約1年2か月の間に,多くの全国的な雑誌,新聞,テレビ番組等で繰り返し取り上げられて,原告商品の形態が写真や映像によって紹介されるなど効果的な宣伝広告等がされるとともに,原告商品の販売数も販売開始当初から飛躍的に増加し,平成19年11月の時点では約89万本に達し,美容雑貨の全国的なヒット商品としての評価が定着するに至ったものと認められる。」

4 検討
  私が,原告商品を全く知らなかっただけで,だからこそ,何故これで・・・?と思ったのですが,実は,すごく周知だったのですね。何がポイントかって,そりゃ,単純に周知だった,ということのみでした,チャンチャン。

  あと,形態模倣については,全く判断しておりませんね。言うまでもないということだったのでしょうか。

  ところで,不競法については,数年前は,結構種々の訴訟等があり,活況を呈していたのですが,近年あまりパッとしません。判例タイムズの1324号清水裁判官の論文によると,東京地裁で,不競法の事件は,平成16年が98件,平成17年が81件,平成18年が80件だったのに,平成19年が48件,平成20年が41件,平成21年が53件となっております。私がピックアップするほどの判決もなかなかないのが実情であり,ブログ開始以来約半年で,漸くピックアップできるだけの最初の判決にぶち当たったというところです。

  ともかくも知財関係はあんまりパッとしないなあ,こりゃ別の柱を探した方が良さそうだなあ,と悩む秋の午後でした。
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弁護土・弁理土
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サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を目指したのはもう30年以上前のこと。某メーカーでの液晶ディスプレイのエンジニアを経て,弁理土に。今は,弁護土です。次は何かな。
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