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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。

1 はじめに
 NBLは,(株)商事法務が発行している企業法務系の法律雑誌です。NBLとは,New Business Lawの略のようです。私のイソ弁時代お世話になっていた事務所でも定期購読しておりました。
 その内容は,いわゆる判例雑誌ほど固すぎず,かといって,企業法務部向けの雑誌ほど柔らかすぎず,インハウスでないビジネスローヤーにとってちょうど良いものだったと思います。また,新しい法制度,ガイドライン,運用などについて,早い段階での裁判官や立法者の執筆記事も多く,その読者層はかなり広範で評判の良い雑誌でした。

 

 そのNBLに,にわかに問題が生じました。NBLの2010 1 1日号に掲載された編集部名義の「東証売買システムの不備によるみずほ証券の取消注文の不処理をめぐる損害賠償請求訴訟の検討」という記事について、①その内容が他誌(金融・商事判例 1330 号(2009 12 15 日号)の判例コメントの内容と著しく類似していること(金融・商事判例誌の発行社は,(株)経済法令研究会という(株)商事法務の同業他社にあたります。)、②その内容が、編集部によって書かれたものとしては、不自然に当該訴訟の一方当事者の立場に偏りすぎていること,という問題が生じたのです。

 要は,①は,ぱくりとして著作権侵害の問題,②は不公平な記事の問題,ということですね。そこで,(株)商事法務は,第三者委員会を設置することとし,その報告書が先月末にアップされました。

 

2 当該損害賠償請求訴訟について

 NBLの問題に入る前に,問題となった記事が対象としている損害賠償請求訴訟について,若干検討してみます。

 事案は、平成17年12月8日、みずほ証券が,東証の開設するマザーズ市場 において、新規上場したジェイコム株について、「61万円1株」の売り注文をするつもりのところを誤って、「1円61万株」の売り注文をし、その後、みずほ証券が本件売り注文を取り消す注文を発したものの,東証になかなか受け付けてもらえず,結局,売却損として,415億7892万4570円が生じたことへの損害賠償請求です。

 東京地裁は,平成21年12月4日,一部請求認容として,107億1212万8508円を認めました。認容額は,かなり高額なのですが,訴訟費用の負担割合からすると,原告は75%負けてしまったということになります。

 

 ところで,重要なことですが,みずほ証券側の代理人は,筆頭代理人の重鎮の方を除けば,残り全員,所属弁護士の数が日本一である法律事務所の方々です。そして,実質的な筆頭代理人は,明治維新の元勲の子孫と言われている有名弁護士です。
 他方,東証側の代理人は,日経ビジネス誌での弁護士ランキング1位をとったことのある,これまた有名弁護士が筆頭代理人です。つまり,今回の事件は,日本一対日本一の仁義なき戦いと言えるでしょう。

 

3 第三者委員会の報告書

 報告書は,(株)商事法務のHPにアップされているので,詳細はそちらをご覧ください。端的に言うと,①の論点について,編集部名義の記事であったものの,執筆者は,一方当事者の代理人弁護士であった,ただし他誌と類似であることの確認はとったものの,執筆者が金融・商事判例誌と同一であるかどうかはよくわからない,②の論点については,記事を編集部名義にすることへの明確な基準がなかったこと,編集長の判断が不適切であったことなどを報告するに留まりました。

 ①については,報告書の全趣旨からすると,執筆者が同一であったことは強く推認できます。私も知財弁護士の端くれですから,この業界の著作権問題の対応はよくわかっているつもりです。ちょっとでも似ていたりすると,すぐに内容証明の依頼が来ます。報告書によるとそのようなこともないようですから,誰がどう見ても,金融・商事判例誌と同一の執筆者ですね,こりゃ。とすると,著作権の問題は取りあえず,クリアということになります。

 ②については,よくわかりません。どうでもいいよ,というのが,正直なところです。というのは,マニアックな私からすると,以下のとおり,どうも別のところが気になるからです。

 

4 私的論点③ズブズブの問題

 冒頭にイソ弁時代お世話になっていた事務所でNBLを定期購読していたと書きました。そのときに,以下のような出来事がありました。

 ある朝,ボス弁から,「NBLにこんなのが載っているよ。」と最新号のNBLを渡されました。読むと,そのボス弁と私が担当していた事件の相手方弁護士が顕名で,その事件の論点に関する記事を書かれておりました。
 確かにその論点は,目新しいものでしたが,事件はいまだ係属中です。タイムリー過ぎる,早すぎる,というのが一番の感想でした。なお,その相手方弁護士は,上の有名弁護士とは異なりますが,有名弁護士には変わりなく,NBLでもよくお名前を拝見できる方です。

 ですから,今回のNBLの問題を初めて聞いたときは,あのNBLが何故?というのではなく,ああやっぱりな~,というものでした。

 

 私は,マニアックなおたくなものですから,ときどき,法律雑誌に投稿することがあります。しかしながら,弱小無名弁護士のためか,「先生からの玉稿を承りました。」との連絡後,放置されるのが,デフォルトです。酷いものになると,本日現在に至るまで,3年近く何らの音沙汰のないところもあります。私にだってプライドがありますから,こちらから,あの原稿どうなりましたか,なんてとても聞けません。

 ところが,本件の有名弁護士その他の人達にかかれば,出したいときに出したいだけ,顕名・非顕名も思いのまま,内容を編集部にチェックされることもなく,さら~っと、投稿できるというのですから,羨ましいったらありゃしない。私も早くそのような有名弁護士になり,ボツの嵐から脱出したいものです。

 以上から,小見出しの意味がわかってもらえたことと思います。

 

 なお,当事者は双方いますので,ズブズブでない方への配慮を忘れてはいけません。本件記事については,2頁目の「本判決の問題点」を読めば,みずほ証券側か東証側か,どちらのサイドに立った記事かは,すぐにわかります。
 断定はしませんが,通常の感覚から言うと,みずほ証券側の嘆き節としか思えません。とすると,執筆したのは,どちらの日本一か,もうおわかりですね。

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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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