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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 今朝,日経の朝刊を見て,おーと思った記事ですね。裁判所のHPにアップがあるのかなあと思いましたが,いまだアップはないようですので,詳しくはわかりません(今日の午後にはアップされるかもしれませんが。)。

 特許庁のHPによりますと,商標は「あずきバー」で標準文字,指定商品は,「あずきを加味してなる菓子」です。
 出願日は,平成22年7月5日ですから,結構最近ですね。勿論,このあずきバーは,この出願よりもずっと以前から売られていたわけです(商標のポイントの1つですね。特許庁のHPの審決速報によると,1972年からのようです。)。

 商標っていうのは,特許や意匠と違い,創作物ではないのですね。ですので,先願主義ではあるのですが,新規性は問いません。これは非常に重要なことです。
 例えば,数年前,テレビでパズルの「数独」の創始者が出演し,私も「数独」を商標登録出願でもしていたら,もっと金持ちになったんですけどね~,とよくある,金には興味がないぜ~演出をされておりましたが,ま,違いますよね。

 特許なら使用後に出願しても,新規性を失い,登録できませんが,商標はそんなことはありません。商標制度は,商標に化体した信用を保護する制度なので,むしろ使用されて信用が化体した商標こそ登録に値するのです!アメリカの商標制度なんて,まさにこれ,そのままです。
 ですので,先願がなければ,いまでも数独は登録可能だと思いますよ。

 ということで,あずきバーも,これで使ったんだから,信用が化体し,当然識別性も顕著になったと思い,出願したのでしょうね。

2 しかし,特許庁は,拒絶査定不服審判で以下のように判断したようです。

 「「あずきバー」の文 字からなる本願商標は,これに接する取引者,需要者に「あずきを原材料とする棒状のアイス菓子」を容易に認識させるものであるから,その指定商品中「あず きを原材料とする棒状のアイス菓子」に使用しても,その商品の品質,原材料,形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり,かつ,前 記商品以外の商品に使用するときは,その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある商標である。 
 したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。」


 まず,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当すると判断したわけです。これは拒絶査定と同じです。
 
 で,商標法第3条第1項第3号とくれば,2項の使用による識別性,とくるわけですが,これも以下のとおりです。
 「以上のとおり,「あずきバー商品」の販売期間,販売数量,広告宣伝等としては相当程度の実績があるものと認められる。   
 しかしながら,使用に係る商標は,本願商標と同一の商標と認めることができず,また,実際に使用している商品は,「あずきを原材料とする棒状のアイス菓子」のみであるから,本願の指定商品と同一の商品であると認めることもできないものである。   
 してみれば,請求人の提出した証拠を総合して勘案しても,本願商標が,その指定商品について使用された結果,需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められないものである。」


3 これに対して,井村屋は,平24行ケ10285号として,去年の8/7に出訴したわけです(ところで,出訴日まですぐにわかる,というのは,普通の弁護士には驚きですよね。通常の,判例雑誌にも,判例のデータベースにも,出訴日なんてものは載りません。民事上,実体法的にも訴訟法的にも,出訴日がいつかなんて大して意味はありませんからね。ところが,特許庁のデータベースには,こういうデータも入っております。特許法178条3項の絡みがあるからでしょうね。さらに,どこの部に係属したかもわかります。)。

 そして,4部の土肥さんの合議体は,審決取消の判決を下したわけです。

 でも,使用により,顕著性が認められたとしても,4条1項16号は,通常それだけじゃあ回避できないはずですけどね(具体的には,指定商品を「あずきを原材料とする棒状のアイス菓子」と補正するしかないけど,このタイミングでは補正もできないはず。ただ,分割出願はできますので,これで対処したのかな~商標法10条1項。商標って奥が深いでしょ。この辺は,弁理士の先生がそのまま訴訟代理人をやっていると思いますので,しくじることはないでしょうね。)。判決がわからない以上,あーだこーだ言っても仕方がないので,この辺で。

 ともかくも,井村屋にとってはデカイですね~。実際のマーケットでは,既に井村屋以外のあずきバーはないのでしょうから,大勢に影響がないと言えばないのですが,ブランドイメージってやつは格段に上昇しましたよね。

 これは代理人の方も良い仕事をしましたね。皮肉屋も,珍しく褒めておきます。

3 追伸(1/29)
 漸くHPにアップがありました。事案は上記のとおりです。
 気になったのは,4条1項16号ですが,これを見るとポイントは以下のとおりだったようです。

 「被告は,本願商標が「あずきを原材料とするアイス菓子」を認識させるから,それ以外の商品に使用するときにはその商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあると主張する。
 しかしながら,ある商標が品質について誤認を生じさせるおそれがあるか否かは,当該商標の構成自体によって判断すべきところ,本願商標は,それ自体から「あずきを原材料とするアイス菓子」を直ちに認識させるものではないから,被告の上記主張は,失当である。」


 確かに,「あずきバー」自体でアイスかどうかはわかりませんわな。
 でもこういうのって,結局人が考えてやっているわけですから,特許庁の考えも一理あるし,知財高裁の考えも一理あるし,としか言いようがありません。
 民主主義なら,これを多数決で決するだけだし,多少民主主義とは合わない司法の世界では,裁判官が勝手に決めるだけです。これを是だ非だ,あーだこーだ言っても仕方がありません。そういうのは暇な学者に任せましょ。
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