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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 昨日は,首記の研修のため,弁理士会館に行ってきました。講師は,中村合同の加藤先生でした。

 いやあ2時間という弁理士会の研修では短い部類の研修でしたが,非常にためになる,良い研修でしたね。やはり,講師次第ですよね。本当,研修の講師は,せいぜい50代の前半が限界で,できれば本当若手の方がいいですよ。
 というのは,実際に実務をやっている人の話じゃないと,役に立つ話なんて得られないからです。

 要するに,偉くなるってどういうことかというと,自分で仕事をしなくなる,ということですからね。
 例えば,八百屋さんもそうです。店が大きくなり,支店までできるようになると,昔は客前で色々やっていた店主も,そんなことはできなくなります。後ろに引っ込み,各店舗や各従業員のマネージメントに精を出すということになります。
 結局,自分が一から十までやっているとお店を大きくできませんので,この辺痛し痒しのところはありますけどね。

 弁護士でも,弁理士でも同じです。そこそこ人数のいる事務所の経営者やパートナーは,自分では仕事しませんからね。部下や若手の書いた訴状や,明細書や,準備書面や,出願書類を,ちょっと見て,赤を入れるくらいなものです。いや,それでもちょっと見るのはマシな方ですね。大体,もう見ませんよね。
 営業活動(良く言えばマネージメントですかな。),派閥活動,愛人活動などに忙しくて,書面を読んだり書面を書いたりの,そんなかったるく,生産性の低いことはやらなくなるわけですね。

 ですから,そんな人の昔話を聞いても,あんまり役には立ちませんわな。おっと,相変わらず前置きが長いですね。普通のブログだと,この前置きで,一回分くらいなものですけどね。

2 内容に移りましょう。ただ,具体的な話は,さわり程度にとめておきます。というのは,やはり聞いた人の財産なわけですし,変な事を書くと講師の責任になったりもするからですね。

 まずは,この指定商品・役務のことからです。まさか,実務家でこの意味ががわからないって人はいないですよね。弁護士ならいるかな~。いや時々,私も商標出願やっていますという弁護士もいますよ,本当。しかし,こいつ何にもわかってねえなあ,というか,私もよくはわかってないのですが,それでも私がムカつくのは,自分がわかっていないということすらわかっていないからですね。

 商標の定義を見てみましょう。商標法2条1項です。
 「この法律で「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
 一  業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
 二  業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)

 つまり,商標というのは,商というだけあって,商売のものです。そうすると,抽象的な商売っていうのはありえません。どんな商売でも,結局は,具体的な物を売るか,具体的なサービスを売るか,しかありえません。その具体的な商品等に使うものだからこそ,これに財産的価値やら信用やらが生じてくるわけで,それ故にこれを保護する必要も出てくるわけですね。

 ですので,出願のときに,自分の使う商品・役務を宣言し,指定するわけです(商標法6条1項)。わかりましたかな。
 そして,弁護士的に重要なことは,この指定商品・役務というのが,権利範囲でもある,ということですわな。同じ標章でも,指定商品・役務が異なれば,並存できるのですね。

 そういう重要な指定商品・役務なので,出願時にはかなり気をつけて設定しなければいけないわけです。私が,上記で半可通のアホ弁護士をバカにしたのは,そういうことまでわかってやってるんだろうな,てめえらっていうことです。
 そして,今回の研修も,そういうときに留意すべき点が満載だったので,非常に良い研修だと思ったわけです。

3 上記で指定商品・役務が権利範囲だと書きました。そのため,出願時も,同一類似の先登録商標と,指定商品・役務が同一類似だった場合,拒絶されます(4条1項11号)。しかし,商標の場合,同一類似の基準というのは,氷山事件以来,判例・実務とも固まっていると言ってよいと思いますが,商品・役務の類似って??のところはまだまだあり,ここが問題となるわけですね。

 いや,判例はあるのです。橘正宗事件です(昭和36年06月27日 最高裁判所第三小法廷 判決)。
 これによると,商品の類似は,
 「そして、指定商品が類似のものであるかどうかは、原判示のように、商品自体が取引上誤認混同の虞があるかどうかにより判定すべきものではなく、それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞がある認められる関係にある場合には、たとえ、商品自体が互に誤認混同を生ずる虞がないものであつても、それらの商標は商標法(大正一〇年法律九九号)二条九号にいう類似の商品の商品にあたると解するのが相当である。
 という,出所混同で判断するとしたわけですね。これは判例変更されておらず,現在も生きております。

 でもね,じゃあこの判決文でいう同一又は類似の商標って何かというと,上で書いた氷山事件(昭和43年02月27日 最高裁判所第三小法廷 判決)です。これは,
 「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによつて決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によつて取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」です。
 超有名ですよね。

 でも,これ,「同一または類似の商品に使用された場合」という前提です。じゃあ,その商品の類否の基準は,上記の橘正宗事件ですが,これは,「同一又は類似の商標を使用するときは」という前提なのです。

 わかりますか~。つまり,商品の類否の定義に,商標の類否の定義が入り込んでおり,他方,商標の類否の定義に,商品の類否の定義が入り込んでいるです。卵が先か鶏が先か~♪はたまた~。要するに,これはトートロジーの域を出ないものです。実は,本来論理的におかしく使えないものです。

 まあそれもこれも,最高裁が場当たり的で,その場凌ぎの判決を出しているからですね。これは今も変わりませんが。と,書くと,そうだそうだという半可通弁理士からの高い支持を得られそうですが,私はお人好しじゃあないのでね~。
 私も,弁護士になる前は,なんでこんなに東京地裁の判決,東京高裁の判決はマチマチなんだろう,どこの部に係属するかでエライ違うじゃん,こんなんでいいのかなあと思ってました。

 で,今はどうかというと,地裁高裁当たり前,最高裁でも上等,というところです。つまり,裁判所って,何らかの深い意図や,思惑を持って統一的に判断しているわけでなく,まさに,場当たり的でその場凌ぎの判断をし続けており,それはそれでよいのです。
 てなこと書くと,恐らく弁護士からは大体そのとおり,弁理士からは本当か,おい!という感想があるのかもしれません。でも,リーガルマインドがあるかどうか,弁護士にあって弁理士にはない,と言われる場合のメルクマールって,ここにあるんじゃないのかなあと私は思っております。

 司法権が場当たり的でその場凌ぎで,何故よいのか,ま,司法権ってそんなもんだから,だと思います。
 むしろそうじゃないといけないものだから,という所です。仮に,弁理士の思う通り,何らかの思惑や深い意図が入ろうものなら,それはお隣のクレージー国家と同じ,人の支配に他ならないことになってしまいます。処分権主義や弁論主義が何故民事訴訟の原則なのかも,同じことでしょうね。

 と,また本題から外れましたが,でも要するに,最高裁の規範じゃ実務では使えない,ということです。
 そのため,現実,その商品・役務がどの商品・役務と似ているか,これを具体的に示したのが,特許庁の出している「類似商品・役務審査基準」ということになります。

 昨日の研修では,この使い方の説明までありました。私も持っております。加藤先生曰く,商標の出願には,必須の道具らしいですから,半可通の弁護士の方たちも持っていた方が良いと思いますよ(そんなに高くありませんので。1,429円しかしません。しかし,行政庁がある行政目的のために出す書籍は安いなあ。裁判官もちょっとは見習って欲しいもんだ。)。

4 そろそろまとめますが,実務で非常に役に立つものの多い研修でした。私は特許出願はやりませんが,たまに商標の出願はやりますので,実り多いものでしたね。
 昨年やったときには,17分で満席締め切りになったとのことでした。それはわかりますね~。いやあ聞けない人達は可哀想ですね~。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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