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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,商標権者である被上告人が有する商標登録につき,上告人が,商標法50条1項に基づき,指定役務のうち第35類に属する「広告,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,広告用具の貸与」(本件対象役務)についての不使用を理由に,本件対象役務に係る商標登録の取消しの審判を請求したところ,特許庁が本件対象役務に係る商標登録を取り消すべき旨の審決をし,これに不服の被上告人が同審決の取消しを求めたところ,原審である知財高裁が審決を取り消す旨の判決をしたため,さらに上告人が上告受理を申し立てた事案です。

 これに対して,最高裁は,原判決を破棄し,原審原告である被上告人の請求を棄却しました(つまり,審決のとおりでよい,ということ。)。

 昨日は著作権,今日は商標と,知財では珍しく最高裁の判断が続いております。

 なお,あとの検討のために,商標をあげておきます。
 商標は,「ARIKA」の英大文字の飾り字。
 指定役務は,第35類で,「広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,書類の複製,速記,筆耕,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,文書又は磁気テープのファイリング,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与」です。

2 問題点
 問題点は端的に1つのみです。
 商標法50条の不使用取消審判ですから,ある指定役務について(今回具体的には,「広告,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,広告用具の貸与」です。),登録商標を使用しているのか使用していないのか,どっちなのかということです。

 そして,この上記下線部が特に問題となり,特許庁は使用していないと認定し,他方,知財高裁は使用していると認定しました。
 知財高裁は,この「商品の販売に関する情報の提供」について,
被告は,原告の行為は他人のために行う役務ではなく,各甲号証についても他人のためではなく原告自らの利益のために行う自社広告であるから,本件商標を「商品の販売に関する情報の提供」の役務に使用したことにはならないと主張する。
 しかし,上記(3)で認定した事実によれば,「ザ・ナイトメア・オブ・ドルアーガ不思議のダンジョン」の音楽CDは株式会社スーパースィープが製作,販売するものであり,ゲームソフト「ロックマンエグゼトランスミッション」「ストリートファイターEX plus α」についても株式会社カプコンが販売するものであるから,これらに関する情報の提供は他人のために行う役務ということができ,「商品の販売に関する情報の提供」に該当するものと認められる。被告の主張は採用することができない。
と判示しました。

 要するに,商標権者が自社のHPに上記他社の音楽CDとゲームソフトの内容や購入方法の紹介などを掲記していたのですが,これが,「商品の販売に関する情報の提供」と言えるかどうかが問題なのです。

 何かそう言えるんじゃねえのって気はしますけどね~。

3 判旨
 「政令別表第35類は,その名称を「広告,事業の管理又は運営及び事務処理」とするものであるところ,上記区分に属するものとされた省令別表第35類に定められた役務の内容や性質に加え,本件商標登録の出願時に用いられていた国際分類(第7版)を構成する類別表注釈が,第35類に属する役務について,「商業に従事する企業の運営若しくは管理に関する援助又は商業若しくは工業に従事する企業の事業若しくは商業機能の管理に関する援助を主たる目的とするもの」を含むとしていること,「商品の販売に関する情報の提供」は,省令別表第35類中の同区分に属する役務を1から11までに分類して定めているうちの3において,「経営の診断及び指導」,「市場調査」及び「ホテルの事業の管理」と並べて定められ,類似商品・役務審査基準においても,これらと同一の類似群に属するとされていることからすれば,「商品の販売に関する情報の提供」は,「経営の診断及び指導」,「市場調査」及び「ホテルの事業の管理」と同様に,商業等に従事する企業の管理,運営等を援助する性質を有する役務であるといえる。このことに,「商品の販売に関する情報の提供」という文言を併せて考慮すれば,省令別表第35類3に定める「商品の販売に関する情報の提供」とは,商業等に従事する企業に対して,その管理,運営等を援助するための情報を提供する役務であると解するのが相当である。そうすると,商業等に従事する企業に対し,商品の販売実績に関する情報,商品販売に係る統計分析に関する情報などを提供することがこれに該当すると解されるのであって,商品の最終需要者である消費者に対し商品を紹介することなどは,「商品の販売に関する情報の提供」には当たらないというべきである。」

「そこで,本件各行為について検討すると,前記事実関係によれば,本件各行為は,被上告人のウェブサイトにおいて,被上告人が開発したゲームソフトを紹介するのに併せて,他社の販売する本件各商品を消費者に対して紹介するものにすぎず,商業等に従事する企業に対して,その管理,運営等を援助するための情報を提供するものとはいえない。したがって,本件各行為により,被上告人が本件指定役務についての本件商標の使用をしていたということはできない。」

4 検討
 結局最高裁と知財高裁の結論の違いは,同様の事実認定を元にしても,B to Cじゃ「商品の販売に関する情報の提供」に当たらず,B to Bじゃないとダメよということに尽きます。

 まあ条文の解釈(まさに最高裁の独壇場か~)を丹念にやるとこうなるんでしょうね。
 「35B01の短冊」(この意味がわからない人は近くの弁理士にでも聞いてください。)の中の役務って,どれもB to Bのやつばかりなので,単独で「商品の販売に関する情報の提供」のみを取り出すと,B to Cでも良い気がしますが,ここはきちんとやってちょーよ,知財高裁クン!というところなんでしょうね。

 しかし,勝利した上告人代理人は弁理士のみで,弁護士はいません。審決取消訴訟だからなのですが,代理人弁理士は超有名商標弁理士でもあり,名前だけの弁護士なんていらねーってところだったんでしょうね。
 私も,先生いらないっす,と言われないように,がんばろうっと。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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