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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
  本件は,原告商標1ないし3(原告各商標)について商標権(原告各商標権)を有する原告が,被告に対し,被告が別紙被告商品目録1及び2記載の各商品に関する広告に別紙被告標章目録記載1及び2の各標章(被告各標章)を付して頒布するなどした行為が,原告各商標権を侵害すると主張して(商標法25条,37条1号,2条3項1号,8号),民法709条及び商標法38条3項に基づき,平成19年11月から平成22年4月までの損害賠償として1億0200万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成22年6月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案です。

 要するに,商標権侵害訴訟ですね。ここで紹介するのは珍しいのですが,これは私の好みもさることながら,知財全体が沈みがちで,侵害訴訟の数自体少なくなってきているためですので,致し方ありません。

 さてさて,問題点ですが,侵害訴訟なのに,差止を求めておりませんね。ここであれ?っと思いますが,さらに,被告が実はアップルの日本法人なのですね。さらにキナ臭くなってまいりました。

2 問題点
 上の問題点はあくまで,マニアの問題点で,訴訟での問題点は,商標的使用か否かです。
 商標的使用というのは,今まで何度か説明しましたよね。商標というのは,文字列などですが,ただの文字列にとどまりません。それを見た人が,おおこれはあの企業の・・だとか,そうそうこれを探してたのさ・・とか,これだったら安心なのよねえ・・とか,辞書的な意味にとどまらない様々意味を把握します。これらは商標の機能と言われるものです。

 他方,逆に形式上は商標そのものだとしても,そういう上記の機能を発揮しないような使い方をしている場合には,特段商標侵害とするわけにはいかないでしょうね。例えば,私がこのブログでしょっちゅう書いているソニーに居たとかいう話のときの,「ソニー」の使い方のようなときです。別に,商標の機能を損ねたり,タダ乗りしているわけではないからです。

 本件では,原告の登録商標は,「QuickLook」のロゴと標準文字,「クイックルック」(標準文字)で,指定商品等は第9類などです。他方,被告が使っていた文字列は,「QuickLook」と「クイックルック」と,形式的には,同一と言えるわけです。

 と,いかにもよくわかっているように書きましたが,事実認定として,かなり微妙なところの判断であり,上記の私の例だとさもありなんですが,わざわざ訴訟になっている程の話だと,非常に難しいところがあるのですね。
 ですので,類型化して判断した方がよいと思います。例えば,「知的財産権としてのブランドとデザイン」青木博通著(有斐閣)では,商標的使用態様を否定した裁判例として,6つの類型化をしております(ところで,これは本当によい本ですね。近時の商標・意匠に関する実務で争いになる論点のほぼ全てが網羅しております。私のこの分野におけるネタ本と言ってよいでしょうね。でも,もう最初に出版されてから4年も経つのですね。)。

 本件ではどうだったんでしょうね。

3 判旨
典型的な判旨のみ
「以上によれば,「“img08524.pdf”をクイックルック」との表示は,被告OSソフトウェア商品あるいはこれを搭載した被告コンピュータ商品が有する,ファイルを開かずにファイルの内容をすばやくプレビュー表示するという機能を利用する際の案内表示であり,被告標章2が,被告コンピュータ商品あるいは被告OSソフトウェア商品の自他商品識別機能,出所表示機能を有する商標として表示されているものでないというべきである。
          したがって,被告標章2は,甲49の被告コンピュータ商品のディスプレイ上において,被告コンピュータ商品あるいは被告OSソフトウェア商品の自他商品識別機能・出所表示機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから,甲49の被告コンピュータ商品のディスプレイ上における被告標章2の使用は,商標としての使用(商標的使用)に当たらない。」

「そうすると,甲47のウェブページの「Quick  Look」との表示は,被告のOSソフトウェア商品が有する機能の一つを表示したものであり,甲47のウェブページに接した被告コンピュータ商品あるいは被告OSソフトウェア商品の需要者は,「Quick  Look」が,被告のOSソフトウェア商品がアプリケーションとして有するファイルを開かずにファイルの内容をすばやくプレビュー表示するという機能を表示するものであると認識するものと認められるが,他方で,被告のOSソフトウェア商品の出所については,甲47のウェブページの「Quick  Look」の表示がその左上部に記載された,「Mac  OS  X」の一機能として記載されていることからすると,被告のOSソフトウェア商品の出所については,その左上部に記載された「Mac  OS  X」の標章から想起し,「Quick Look」の語から想起するものではないものと認められる。」

4 検討
 判決は,結局,機能の表示だからセーフとしたようですね。ただ,どうなんでしょう?私は本当かな~,と思いますね。青木先生の上記の著書での類型化したところに挙げられていた例に比べて,単なる表示・説明などとは言えないような感がします。商品等の機能の表示と,品質保証・広告宣伝という商標の機能との間は,本当に川幅狭いですよ~。

 例えば,同じ「LOOK」が含まれているOUTLOOKというメールソフトの説明を本件と同じようにウェッブサイトなどでマイクロソフトがした場合,これで商標的使用じゃないって言えますかね(ただ,OUTLOOKはマイクロソフトが商標権を持っております。)。

 私は,裁判所が,マニアックな論点にひかれすぎて(つまり原告が金せびりに来ただけじゃねえのという先入観),逆に客観的な判断を鈍らせたような気がするのです。

 これは控訴してもよいのではないかと思いますね,もう控訴しているかな。

5 追伸7/8
 同じ原告が日本HPを訴えた商標権侵害訴訟の判決もアップされました。東京地裁の民事29部の大須賀さんの合議体ですので,本件と同じですね。
 そして,やはり,商標的使用でないとして,請求を棄却しております。

 理由は,同じように,商品の機能の説明に過ぎない等ですが,うーん,本当かなあと思ってしまいます。まあ,この原告おそらく同じような訴訟を複数起こしていると思われますので,あまり肩入れする必要はないですが,合議体が違えば,ちょっと違う判断もあったのではないかなあと思います。ですので,今後の推移に注目ですね。


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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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