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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 原告は,「NTTデータ」の文字を標準文字により表してなり,第35類ないし第45類に属する別紙1記載の役務を指定役務とする登録第4657563号商標の商標権者たる被告(NTT)を被請求人として,商標法53条1項の規定により本件商標の登録の取消しを求めて審判を請求したものの(本件商標権の通常使用権者たる株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・セキスイシステムズが,本件商標に類似する商標の使用であって役務の質の誤認を生ずるものをしたと主張),特許庁から不成立審決を受けたため,知財高裁に出訴したものです。

 これに対して,知財高裁3部は,原告の請求を棄却しました。要するに,審決のとおりでよい,ということですね。

 商標法53条の審判は結構珍しいのですが(ライセンスの濫用防止という趣旨),これは事件の経緯を知るとさらに,珍しいことがわかります。そして,その経緯を知った多くの人がこう思うでしょう,おまえ等中学生か?!

2 問題点
問題点は,判旨にも載っている経緯を見た方が早いです。

原告は,工業所有権,映像,文芸,美術,音楽に関する著作権などの財産権の取得,譲渡並びに貸与等を目的とする株式会社であり,**国際特許商標事務所の業務を受託している(弁論の全趣旨)。・・・

被告補助参加人株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・セキスイシステムズ(以下「補助参加人B」という。)は,情報システムの受託開発,運用保守の販売ならびに賃貸等を目的とする株式会社であり,補助参加人A(NTTデータ)が60%,積水化学工業株式会社(以下「積水化学」という。)が40%を出資しており,各種会社の業務支援システム(コンピュータプログラム)の開発などを行っている。

原告は,原告及**国際特許商標事務所における工業所有権の出願手続等を支援するコンピュータシステムの作成業務を補助参加人Bに委託することとし,そのために,補助参加人Bとの間で,平成18年11月1日,取引基本契約を締結し,平成19年6月1日,同日付け個別契約により,「国内出願業務支援システム開発第1段階(サーバ開発)」に関する業務を補助参加人に委託し(甲8),同年9月1日,同日付け個別契約により,「国内出願業務支援システム開発第2段階(クライアント開発)」に関する業務を補助参加人に委託した(甲23)。
補助参加人Bは,上記コンピュータシステムを開発し,平成20年(2008年)5月,原告に納入し,原告は,「国内出願業務支援システム開発第1段階(サーバ開発)」,「国内出願業務支援システム開発第2段階(クライアント開発)」について検収書を作成し,補助参加人に交付した(甲25の1,2)。
しかし,原告は,納入されたシステムには不備があると主張している。

 要するに,NTTグループであるNTTデータと積水との子会社であるBさんに,システム開発を委託したけれど,納得いくものができなかったのですね(システム開発ではよくある話ですね。)。

 ですので,「高質な役務を提供するという印象を需要者に与えていたにもかかわらず,補助参加人Bが原告に提供した役務の質は,極めて低質であった」じゃねえか,こんちくしょう,こうなったら,てめえの親会社の商標をこれを理由に取消してやる!となったのが本件ですね(53条の要件に,「役務の質の誤認」があります。)。
 なので,俺を馬鹿にすんじゃね~と言ったか言わないか知りませんが,得意分野で戦おうということもあったと思います。

 しかし,そりゃ筋が悪いですね~,普通これは,システム開発契約に基づき,債務不履行の損害賠償とか,完全履行請求とかやるパターンです。もちろん,それもやっているとは思いますが,だったらそれだけでいいじゃん,という話でもあります。

3 判旨
「本件商標は,「NTTデータ」(6文字)の文字を標準文字により表してなるものであるのに対し,使用標章1は,「株式会社」(4文字)と「NTTデータセキスイシステムズ」(15文字)の文字を二段に横書きしてなるものであるから,本件商標と使用標章1は,外観において異なる。本件商標は,「えぬてぃてぃでーた」との称呼を生ずるのに対し,使用標章1は,「かぶしきがいしゃえぬてぃてぃでーたせきすいしすてむず」又は「えぬてぃてぃでーたせきすいしすてむず」との称呼を生ずるから,本件商標と使用標章1は,称呼において異なる。
本件商標は,データ関係の名称であるとの推測を生ずる余地があるとしても,格別の観念を生じない。また,使用標章1も,電子計算機のプログラム関連の会社の名称であるとの推測を生ずる余地があるものの,むしろ,格別の観念は生じないというべきである。したがって,本件商標と使用標章1とは,観念において同一とはいえない。
上記のとおり,本件商標と使用標章1は,外観,称呼において異なり,観念において同一とはいえない。また,その取引の実情を考慮した場合に,本件商標と使用標章1の類似性を肯定すべき格別の事情があることを認めるに足りる証拠はない。
そうすると,本件商標と使用標章1は,類似しないというべきである。」

4 検討
 裁判所は,役務の質については判断しておりません。飯村さんも呆れたのでしょうか。

 さらに,この原告は,同様の訴訟を2件起こしております(要するに,3件取消審判を提起したということです。)。
 本件の10157号が「NTTデータ」,他の1件の10279号が「NTT」,さらにもう1件の10127号が「セキスイ」についてのものです。どれも同じ2/28に請求棄却になっております。

 まあ何がやりたいのか一目瞭然というわけですね。

 さてさて,今回さらに呆れることがあります。上述のとおり,今回の原告は或る事務所と極めて関係の深い会社です(判旨には伏せ字はありません。いつものとおりの武士の情けです。)。
 特許業界に詳しい人ならわかるでしょうが,ソレ系の会社であろうことが推測されます(この話もそのうち書きましょう。あまりに大きな話すぎて,ここでは発散してしまいますので。サルでも弁護士なんぞ比べものにならない構造的な闇の話です。)。
 そういうような会社がこんな筋悪事件やっていてよいのですかね~。他にやることがあるんじゃないの~。ほんで,上記の事務所は,この件と全く関係なしなんですかね~。いやはや同じ業界人として恥ずかしいたりゃありゃしない。

 ですので,中学生かおい,というわけです。

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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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