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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 本件は,別紙商標権目録記載の商標権(本件商標権)を取得した原告が,携帯電話,スマートフォン及びコンピュータ上で行うことができる,「雀ナビ」との名称のオンライン対戦型麻雀ゲーム(本件ゲーム)を提供し,また,本件ゲームの提供に当たり,映像面に別紙被告標章目録記載1の標章(被告標章1)を付し,さらに,本件ゲームの広告を内容とする情報に被告標章1並びに別紙被告標章目録記載2及び3の標章(被告標章2,被告標章3)を付して電磁的方法により提供している被告に対し,商標法36条1項及び2項に基づき,被告各標章の使用の差止め及び抹消を求める商標権侵害訴訟の事件です。

 これに対し,東京地裁民事第46部は,原告の請求をいずれも棄却しました。

 商標にしては珍しい2年ものです。にも関わらず,判決の写しは,たった6pです。長い時間がかかった割にはあっさりの判決というわけですが,判決を読めば,はは~んなるほど,とわかりますね。

 なお,商標ですが,登録商標も,被告の使用商標も,別紙がありますので,ゆっくり見て下さい。
 一応,メモしておきますと,登録商標は,ゴシック体の「JanNavi」及び「ジャンナビ」の文字からなるものです。
 指定商品等は,9,28,41類とありますが,このうち,41類の「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供,通信を用いて行う麻雀ゲームの提供」「麻雀競技会の企画・運営又は開催」「麻雀大会の企画・運営又は開催」「娯楽の提供,娯楽情報の提供」の類否が問題となったようです。

 ですので,一見すると,短期に原告の勝利で決着がついてもよさそうな感もある事件なわけです。

2 問題点
 問題点は,いろいろあったと思うのですが,実はこの登録商標,不使用取消審判などで,侵害訴訟で問題となっている部分があの世行きになっているのですね。
 これが,知財高裁に出訴されたのが,平成25(行ケ)10023~10025号(知財高裁平成25年06月20日判決)です。で,この審決取消訴訟は,これにて確定しております。

 そうすると,判決にもありますが,商標法54条2項
前項の規定にかかわらず、第五十条第一項の審判により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定したときは、商標権は、同項の審判の請求の登録の日に消滅したものとみなす。
により,商標権は一部なくなっているわけです。

 勿論,無効ではなく,取消ですので,損害賠償を請求する分には,ちょっと違う話も出てくるのかもしれませんが,今回,差止ですので,なかなか難しいなあという話になってきます。

 上記の審決取消訴訟の判決を見ましたが,本当に使っていなかったようですね~。となると,結果は見えてきているわけです。

3 判旨
「 本件は,原告が,被告による本件ゲームの提供についての被告各標章の使用が本件各指定役務についての本件商標に類似する商標の使用に当たるとして,被告各標章の使用の差止め及び抹消を求めるものである。
  ところで,証拠(甲4,乙32,35及び36の各1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,本件商標権について,本件各指定役務を含む指定商品等に係る商標登録を取り消す旨の審決が確定したこと及び平成23年8月2日に商標権一部取消し審判の予告登録がされたことが認められる。したがって,本件商標権のうちの本件各指定役務に係る部分は,平成23年8月2日に消滅したものとみなされる(商標法54条2項)。
  以上によれば,本件各指定役務に係る本件商標権の行使をいう原告の請求は,その根拠を欠くものというほかない。 」

4 検討
・多少要件事実っぽい話をしますが,無効の抗弁で請求棄却になった場合は,抗弁ですので,一応請求原因は立った上でのもの,ということになるわけです。
 でも,今回のように,商標権がなくなってしまうと,そもそも請求原因自体が立たなかったという,恐るべきマヌケな話になってしまうわけです。特許の場合は,無効が確定するまで侵害訴訟は一審地裁でペンディング~♫にはとてもなりませんから,今回のようなことはほぼ起きません。
 商標の場合は,若干早いので,不使用取消→審決取消訴訟のルートで結論が出るまで待ったのでしょうね。

 ただ,条文をよく見てもらいたいのですが,商標法39条で準用する特許法104条の3は単純な準用ですので,所謂無効の抗弁って,「商標登録の無効審判により・・・無効にされるべきものと認められるときは」という要件にしかならないのです。

 つまり,明文上は,不使用取消審判で,取消にされるはずのものだから権利行使できない!という抗弁はないのです。

 こういうような場合,権利濫用の抗弁という,所謂信義則に従った抗弁を出すしかありません。
 でも,信義則を出すというのは,ある意味負け筋です。というようなこともあり,被告は訴訟戦略上,このようなグニャグニャの抗弁は出さず,他方,待ってくれるかどうか保証はなかったけど,裁判所に待ってもらったということなのでしょうね。

 ですので,判決はあっさりしておりますが,非常に深いところがあります。
 さて,私のような悪徳金権弁護士なら,どうしたかというと,ちょっと,使用してから,訴訟を提起したと思います。
 こうすれば,少なくとも,カウンターの不使用取消審判をくらうことはありません。勿論,それ以上に権利濫用だと言われる虞はありますが,ま,そんときゃそんときです。

・で,今回問題となった取消審判と,一般的にも知られている無効審判って,まさに,民法でいう取消と無効の概念を引きずっていると思います。

 民法上,無効は,93~95条などが有名ですし,他方取消は,96条などが有名です。そして,取消の効果は,121条などにあります。ところが,無効の効果って,明白には民法には記載されておりません。

 これは,無効というのが,言わずもがな,つまり,誰がいつ何時でも,無効は無効,初めから無効,というのが変わらない,極めて強いものだからです。
 ところが,取消はそうではありません。追認したり,善意の第三者に対してなど,有効になる場合もあります。相対的と言ってもよいですが,平たく言えば無効よりも弱い感じのものです。
 これが,民法上の無効と取消です。

 他方,商標法上の無効審判は,「商標権は、初めから存在しなかつたものとみなす。」(商標法46条の2)というわけで,商標法上の取消審判に比べて,やはり強い効果のものです。同じ言葉ですもの,民法だとか商標法だとかの違いはあっても,共通する部分があるということですね。

 ま,こういうことは,あまり弁理士だと考えないことでしょうね。
 だって,弁理士に民法上の無効と取消なんて聞いてもちゃんとした答えなんて期待すべくもないでしょう。いや,別に弁理士をバカにしているわけじゃないですよ(今回はね。)。

 私は以前弁理士だけだったので,よくわかるのです。例えるなら,こんな感じ~♫
 両目を瞑ってください。そして,片目だけ薄っすらあけてください。薄っすらでも結構は見えますね。これが弁理士。じゃあ,両目を通常とおり,あけてください。これが弁護士。このくらいの違いがあります。

 でも昨日は司法試験の合格発表だったようですが,今や両目を瞑ったまま,弁護士にもなれちゃう時代ですから,いやはやですね。ま,漢字で名前が書けただけで受かるんだから仕方ないか~オホホホ。

・で,無効と取消で思い出しましたが,勉強の初めにわからなかったものに,悪意と善意があります。うん,中身の知った知らない,とかじゃないですよ。
 善意・無過失とか善意・無重過失とか,悪意・重過失とかの話です。初級者のころはこれがわからなかったな~。わかりやすさで有名な内田先生の教科書も,ここは全然書いてなくて,本当苦労しました。いま思うと,問題は,この「・」ですね。これが多義的なのです。

 上の例で最初から行きましょう。
 実は,・の意味は,それぞれ,善意and無過失,善意and無重過失,悪意or重過失の意味です。orとandを同じ記号で表しているので,わからなくなるのです!ですので,3つの状態ではなく,4つの状態なのですね(こういうことも・で書くと,わかりづらい!)。

 更に,分析的に書くと,これらは,善意and無過失,善意and軽過失,悪意or(善意and重過失)となります。
 一番最初は,知らないでしかも何の落ち度もないとき,二番目は,知らないんだけどちょっと落ち度はあるとき,三番目は,知っているとき(一番悪い),四番目は知らないんだけど,すごく落ち度のあるとき,という意味です。三番目と四番目の順番も本来逆ですよね。

 法律って,実は極めて論理的で,理系向きだということがわかりますね~,ってわかんんないか。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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