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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,別紙2原告商標目録記載(「SURF'S UP」の英字の下に,サーフズアップというカタカナ表記の二段組み標章)の登録商標の商標権を有する原告が,被告が指定商品に含まれるシャツに別紙1被告標章目録記載の標章(SURF'S UPの飾り文字に,GOTCHAを組み合わせた標章)を付する行為が原告の商標権を侵害すると主張して,被告に対し,商標法36条1項に基づき,シャツに上記標章を付することや上記標章を付したシャツの譲渡,引渡し等をすることの差止めを求めるとともに,同条2項に基づき,上記シャツの廃棄を求め,さらに,民法709条に基づき,損害金186万7320円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年7月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた,商標権侵害訴訟の事案です。

 これに対して,東京地裁47部(高野さんの合議体ですね。)は,原告の請求を棄却しました。要するに,商標権侵害じゃないってことです。

 問題点はまあそんな大したことないのですが,サーフブランドの争いだったので,取り上げただけです。

2 問題点
 問題点は,ただひとつで,この「SURF'S UP」という言葉の識別力,特別顕著性の具合ということになるでしょう。

 で,この識別力,識別性とも言いますが,ある意味商標の肝の一つと言えます。特許の最大の肝が進歩性なら,商標の最大の肝が類否ですね。特許の次点の肝が明細書の記載要件だとすると,商標の次点の肝がこの識別性となると思います。とにかく重要な概念です。

 定義は,最近の私の商標の種本の,「新・商標法概説」(小野昌延,三山峻司著)によると,「標章が需要者に,何人かの業務にかかる商品又は役務であることを認識させる力のあることを,通常,「識別力」という。」とあります。つまりは誰のやっている商品かわからないとダメ!ってことなんですね。

 例えば,自動車に,「くるま」という商標をつけても,それじゃあ誰が販売しているかわかりません。うちは,くるま株式会社で,自動車を販売しているんだから別にいいじゃないかと言われても,車にくるまだと,識別できないじゃないかというわけです。

 さらに,一旦ある程度,このような識別力が認められたとしても,識別力を発揮するような態様での使用でないと商標権侵害とは認められないのです。

 例えば,ソニーというのは著名な商標だと思います。ですが,私の経歴の説明として,昔ソニーに勤めていましたなーんて書くのは別に私の商品やサービスを識別させるために使っているわけではなく,単なる説明ですから,こういうのは商標的使用じゃない,として侵害にはならないのですね。他方,仮に商標的使用になるとしたら,私の事務所の名前をソニー法律事務所に改名し,このブログやHP等で,ソニー法律事務所~と表示するようになったら,こりゃアウト!でしょうね。

 まま,こんなイメージです。で,裁判所はどう判断したかというと。

3 判旨
 「オ 「SURF'S UP」は,「SURF IS UP」の略であり,直訳すれば,「波が高くなっている」などとなるが,サーフィン関係の言葉として「いい波が来た」といった意味で用いられる。「SURF'S UP」は,ザ・ビーチ・ボーイズの1970年代のアルバムタイトルや曲名に使用されたほか,ペンギンがサーフィンをするアニメ映画,サーフィン情報に関するラジオ番組,サーフィンのオンラインゲームのタイトルに用いられるなど,サーフィンに関連する様々な事項において用いられている。
 また,「SURF'S UP」(「SURFS UP」,「Surf'sUp」等を含む。)の標章は,少なくとも平成23年以降において,原告及び被告が使用するもの以外に,20種類を超える多数のシャツ,Tシャツの胸元,背面部等に使用され,それらの多くは,サーフィンや海に関する図柄と共に「SURF'S UP」が用いられている。(乙15ないし18,20ないし32の各1ないし3,33ないし40,71,89ないし92)
(2) 被告標章は,胸元に目立つように表示され,その中でも「SURF'SUP」の部分が大きく表示されているが,「SURF'S UP」は, 原告の造語などではなく,サーフィン関連のものとして,一般にも,また,Tシャツ等にもしばしば使用されるありふれた表現であり,需要者がその標章により原告の商品であると認識するなど,それが原告の商標として周知又は著名であると認めるに足りる証拠もないから,それ自体が有する出所識別力はもともと弱いものということができる。
 そして,被告標章は,「SURF'S UP」のみからなるものではなく,その「P」の縦棒部分には,白抜きで「GOTCHA」の文字が「C」を左右反転させた人目を引く形態で配され,また,「UP」の上部には波の図やGマーク商標が配され,これらが一体として表示されているものである。Tシャツの出所が一般に表示される襟ネームや前身頃の裾付近に付された2か所のタグには,胸元に付された「GOTCHA」の文字やGマーク商標に対応するGOTCHA商標やGマーク商標等が付され,襟ネームの下方にも「GOTCHA」の文字が記載され,背面側にもGOTCHA商標2等が表示されていて,商品タグにも「GOTCHA」の文字やGマーク商標が記載されている。これに対し,「SURF'S UP」は上記の胸元部分以外には表示されていない。こうした表示態様に照らすと,被告商品に接した需要者は,被告商品を,「SURF'S UP」なるブランドのものとしてではなく,むしろ「GOTCHA」というブランドのものと認識するものと考えられる。とりわけ,被告が,「GOTCHA」の名を冠したサーフィンの大会を協賛し,雑誌にも「GOTCHA」や被告の各商標を頻繁に掲載していることからすると,被告の「GOTCHA」や被告の各商標は,サーフィン愛好家はもちろんのこと,被告商品の需要者と考えられる10代から20代の若者の間においても相当程度周知性を有すると推認される上,被告商品は,被告やその関連会社の直営店で,「GOTCHA」と明示される態様で販売され,かつ,それらの店舗では被告やその関連会社以外の商品は取り扱われていないから,被告商品の胸元に「SURF'S UP」が目立つように表示されているとしても,被告商品に接した需要者は,「SURF'S UP」ではなく,むしろ「GOTCHA」によってその出所を識別するのが普通であると考えられる。
 そうすると,被告標章における「SURF'S UP」の表示は,商品の出所識別機能を果たす態様で使用されていると認めることはできないから,被告標章の使用は本来の商標としての使用には当たらないというべきである。」

4 検討
 問題の「SURF'S UP」ですが,そう言われればそうなのですが,全然意識していなかったですね。意味も知りませんでした。オホホ,本当にサーファーなのかい,という感じですが,服に書かれている文句なんかにあんまし注意して見ませんけどね~。

 ですので,判決の目録だけを見て,結論を見ると,え,これで何故侵害じゃないの,って思いました,正直。
 やはり,こういうのは丹念に事実を主張していくことが重要ですね。「SURF'S UP」はそもそも識別力が弱い上,色んな人が色んなところに使っている~,というところを裁判所に認めさせた代理人素晴らしい!という感じです。

 でも,判旨をよく見ると,「SURF'S UP」自体が何故商標的使用に当たらないのか,その点の説明はイマイチ,不十分のように思えます。類型としては,メッセージ,キャッチフレーズ,に当たるようなもの,ってところですかね。

 ところで,サーフブランドというのは,結構浸透していて,これがサーフブランド?というのがありますね。
 ハンテンなんてその典型なのではないでしょうか(足の裏のワンポイントで有名)。おっさんのゴルフウェア系と思われているかもしれませんが,あれは老舗のサーフブランドで,ハンテンというのも,サーフィンの技の一つです。

 私は主にショートですが,ロングの場合,大きくて重いので,体重を極端にかけて行かないと,スピードが出ず,波に置いて行かれる場合もあります。じゃあ,どう体重をかけるとスピードが出るのかというと,板の前へ体重をかけるとスピードが出るのですね。その最も顕著な例が,板の先っちょに乗り,両足とも板のへりにかけるという,このハンテンという技なのです。両足の指は合わせて10本,それをへりにかけるので,hang ten ということです。ですので,片足だけかけるのは,ハングファイブと言います。

 さてさて,明日は久々サーフィンできるかな~。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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