忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,化粧品等を指定商品とする3個の商標権(RAFFINEの標準文字,RAffINEの標準文字,RAffINEの飾り文字)を有する原告が,被告が化粧品等に付した別紙被告標章目録記載一ないし六の標章(被告標章)が原告の商標権の各登録商標に類似すると主張して,被告に対し,商標法36条に基づき,被告標章の使用の差止め及び被告標章を付した化粧品やカタログ等の廃棄を求め,民法709条に基づき,損害金7000万円及びこれに対する不法行為の日の後である訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案です。

 これに対して,東京地裁民事47部(高野さんの合議体ですね。)は,原告の請求をいずれも棄却しました。

 よくある商標権侵害事件ではあるのですが,棄却になった理由が結構珍しいため,取り上げました。それは先使用権の抗弁が認められたからですね。

2 問題点
 問題点はそのものずばり,先使用権です(商標は類似ということです。)。
 条文から行きましょう。商標法32条1項です。
 
他人の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた結果、その商標登録出願の際・・・現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。

 ま,条文見ると,要件に色々論点になりそうな所がありますね。
①他人の商標登録出願前から日本国内においてその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていること
②他人の商標登録出願前から不正競争の目的でなく使用していること
③他人の商標登録出願の際・・・現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていること

 これらが要件になるわけです。
 で,①は,結局商標の類否のことですから,ま,商標が類似の場合はあまり問題とならないと思います。②は,主観的なものですが,外国や他業種で有名なものをパクったというような事情が無ければ,通常認められると思います。
 ということで,いつも問題になるのは,③の周知性ですね。

 で,この周知性については,有名な論点がありますよね。商標法4条1項10号の周知性と同じ程度を要求するのか?それとももうちょい低くてもよいのか?というものです。

 ちなみに,商標法4条1項10号では,審査基準が,「ある一地方で広く認識されている商標も含む」とありますので,関東地方とか関西地方とかで周知じゃないとダメってことです。つまり,1県じゃなく数県程度の範囲で周知であることが必要とされています。

 ですので,商標法4条1項10号の周知性と同じ程度を要求するなら,結構厳しいし,他方,ちょっとは低くてもよいなら,1県くらいの範囲で周知でもいいんじゃないの~ってなるわけですね。
 学説は,どちらかというと,ちょっと低くてもよし,という説が多く,判決もそのような判示が多いようです。

3 判旨
「 上記(1)認定の事実によれば,被告は,本件各登録商標の商標登録出願前の平成13年4月頃から,化粧品について被告標章を使用してホームページ等で販売するようになり,平成14年4月頃からは,本件サロンが所在する京都府内を中心に,本件サロンの広告と併せて被告各商品を含む化粧品の広告宣伝を多数回にわたり行うなどしているのであり,不正競争の目的でなく化粧品について被告標章の使用をしていた結果,被告標章は,少なくとも京都府内やその近辺において,本件各登録商標の商標登録出願の際,被告の販売する化粧品を表示するものとして,その主な需要者である女性の消費者に広く認識されるに至っていたものと認められる。
     そして,被告は,現在も,継続して化粧品について被告標章を使用しているから,化粧品について被告標章の使用をする権利を有すると認められる。 」

4 検討
 上記のとおり,この判決も,トレンドに則したもの,ってわけです。周知の範囲は,1県程度でもよろし,ということですからね。

 ところで,上で,珍しいと書きました。先使用権が認められるのが珍しいわけではありません。これが裁判で認められるのが珍しいという意味です。

 どういうことか想像がつきますかね?実務やっているとすぐわかりますよね。

 商標権侵害だと思っても,すぐに訴えるというそんな短気で,アグレッシブな当事者はなかなか居ません。普通は,内容証明郵便とかを出して,警告したり連絡したりして,訴訟でなく何とか納めようとするわけです。そうすると,相手方から,相手の言い分が届きます。

 で,そのとき,普通は,先使用権が認められそうなら,いやいやあんたの商標登録出願よりも,うちの方が早いよ!と言うでしょうね。そして,これについて調べて,おっと周知性は兎も角も,確かに使用は相手方の方が早そうだ~となれば,そこで訴えるのはやめとこうかなあってなるんじゃないですかね。

 ですので,訴訟に行く前に普通は決着がつくのが大半だと思います。
 それが今回は訴訟まで行ったわけです。うーん,これは当事者が強気で行って代理人もイケイケドンドンだったのかよくわかりませんが,もうちょっと調べた方が良かったんじゃね,という判決でしたね。

 あと,福岡の会社と京都の会社の争いなのに,東京地裁で審理しているのですね。これもよくわからないなあ。

5 今日の東京は久々の雨です。いつ以来だろうという感じですね。ま,乾燥してますので,このくらいの雨はいいんじゃないですかね。

6 追伸 12/26
 この事件の原告(新日本製薬)が,本件と異なる当事者(ボディワーク)の商標の使用が商標法53条1項の不正使用に当たるとして,取消審判を請求した事件の審決取消訴訟の判決がアップされております(3件あります。)。

 これを見ると新日本製薬は,Raffine商標に凄い拘りがあることがわかりますねえ。でも,なかなか新日本製薬の意図どおりには世の中いかないようで,本件に続けて別件でも負けております。

 さらに,新日本製薬は,このボディワークに対し,無効審判を提起し,そこで負けたため,審決取消訴訟を提起し,そこでは勝っております(良かったね~)。ちなみに,無効審判合戦は,ボディワークの方も,逆提起しており,それでは,新日本製薬の商標を潰すことはできませんでした。

 ですので,まとめると,審判段階では,両社痛み分けだったのが,訴訟段階(合計67件,すべて設樂さんの3部で判断。ご苦労様でした。)で,新日本製薬の提起した無効審判の結論が覆ったため(無効),最終的には,新日本製薬の勝利と言って良いでしょうね。
PR
789  788  787  786  785  784  783  782  781  780  779 
カレンダー
09 2017/10 11
S M T W T F S
8 9 11 14
15 16 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
iwanagalaw
HP:
性別:
男性
職業:
弁護士
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]