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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 本件は,原告(南京町商店街振興組合 )が,被告(神戸瑞穂本舗株式会社)に対し,①原告の後記商標権を被告が侵害したとの不法行為(民法709条)②被告が,原告商標を含む商標「南京町」を組合規約ないしその他の合意に反して使用した債務不履行のいずれかに基づき,原告に生じた損害の賠償及びこれに対する請求の日(訴状送達日)の翌日から債務不履行に基づく請求に関し,商事法定利率である年6分(不法行為に基づく請求に関しては年5分)の割合による遅延損害金の支払を求めた事案です。
 ただし,このうち②の訴訟物については,撤回し,新たに,「被告は,組合員らしく振る舞った者であるから,原告の規約等に拘束される」旨の主張(以下「組合契約以外の法律関係に基づく請求」という。)を追加しております。
 これに対し,大阪地裁第21民事部(谷さんの合議体です。)は,原告の請求をいずれも棄却しました。

 若干話題になった神戸の中華街である「南京町」の事件ですね。ということで,久々の商標ということもあり取り上げました。

 なお,原告の商標は, この通りです。
 洒落た感じにしているのでしょうかね。指定商品及び役務の区分は,第30類及び第43類で,指定商品及び役務は,「茶,氷,菓子及びパン,調味料,穀物の加工品,ぎょうざ,しゅうまい,肉まんじゅう,ハンバーガー,べんとう,即席菓子のもと,飲食物の提供」です。
 他方,被告の商標も原告の商標の下の6つのやつです。大体,南京町冷麺というのが基本になっているようです。

2 検討
 ま,今回は「南京町」ということで,殆ど一般名詞みたいなやつが殆ど過誤登録と言ってよい登録になった場合の権利範囲って何?ってやつです。

 こういう場合,通常は,商標法26条1項2号3号があります。
第二十六条  商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
二  当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。次号において同じ。)、 価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又は当該指定商品に類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態 様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する商標
三  当該指定役務若しくはこれに類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時 期又は当該指定役務に類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期を 普通に用いられる方法で表示する商標

 例えば,私が,「ローオフィス」なんて商標を出願して,たまたまそのとき特許庁の審査官がXvideosなんかを見ていて,登録されちゃったとしましょう。
 そうすると,ここぞとばかりに,英語でHPとかに表記している同業他社に,おら~使うんじゃねえぞ,これは俺の商標なんだからな,なーんて言ったときに,そんな変な権利行使を防止するためのものです。
 だって,本来普通名称なんてみんな使うわけなので,一人の独占には合わないのですね。

 ただ,今回,南京町は,一般名称と言っていいですけど,指定商品とのマッチングが無かったのですね。法律事務所でローオフィスなら,その普通名称と言えますが,穀物の加工品や飲食物の提供で,南京町が普通名称とは言えませんよね。

 ただ,単なる地名なので,南京町って聞いても誰の何の商売かまったくわかりませんよね。豊後高田や大分と同じです。
 勿論,豊後高田市自身が豊後高田という商標を使えば,豊後高田だってわかりますから,誰の何の商売かわかります。でも,そういう事情すらないと,あ~コリャコリャって所ですね。
 
3 判旨
「ア  原告は,被告標章と原告商標とが類似であることの前提として,原告商標の書体に格別の意味はなく,標準文字で表現される「南京町」も,原告を指すものとして自他識別力がある旨を主張する。
    しかしながら,前記(1)によると,原告商標のロゴデザイン(字体)を捨象して,標準文字「南京町」としてみた場合には,単に神戸市中央区の元町通と栄町通の区域(いわゆる中華街)を指称するものとして,原告設立以前から長年にわたって使用されてきた一般的な名称であるといわざるを得ず,自他識別標識として機能するということはできない(商標法3条1項3号,4号に該当し,登録要件を欠くことに帰する。)。
    そうすると,原告商標は,特徴的な字体を含む外観を一体としてみた場合にのみ出所識別標識として機能するものであり,その範囲でのみ商標権としての効力を有するというべきである。
イ  また,原告は,組合法に基づいて設立された,商店街の振興等を目的とする法人であるところ,原告自身は,原告商標の指定商品等を製造販売等する事業者ではなく,中央区の元町通と栄町通の区域に所在する事業者すべてが原告の組合員であるといった事情も認められない。むしろ,証拠(原告代表者本人)によると,原告の定款上の地区内には約140店の店舗があるが,うち,原告に加入するのは81店舗にすぎない。
    さらに,証拠(甲69ないし76)のほか,本件全証拠及び弁論の全趣旨によっても,原告商標の指定商品の需要者として想定される一般消費者において,「南京町」の語自体が原告を指すものとして,周知性を獲得したとは認められない。原告が,その定款上の地区の復興,環境整備等に尽力したことをもって,そのような周知性の獲得の根拠とすることもできない。
    したがって,原告の主張する事情を考慮しても,「南京町」の語自体は一定の区域を指称する一般的な名称であり,原告商標の識別力は,特徴的な字体を含む外観にあるとの前記アの判断は左右されない。 ・・・」

「被告標章は,「(神戸)南京町」と,「冷麺」「れーめん」「生冷麺」をそれぞれ組み合わせたものといえ,外観上いずれかの部分に特徴的な区分は認められず,観念上も,「冷麺」は,商品そのものの名称であるが,「(神戸)南京町」の部分も,前述のとおり単に神戸市中央区の元町通と栄町通の区域(いわゆる中華街)を指称する一般的な名称であるから,結局一般的な名称の組み合わせにすぎず,いずれの部分にも独立した出所識別機能があるとは認められない。したがって,被告標章において,「南京町」の部分が独立して要部となることはないというべきである。
    なお,上記のとおり,被告標章はそれ自体としてはほとんど出所識別機能を有しない反面,被告商品(甲8)及びその広告(甲9)には,被告の商号が明記されており,これらが出所識別標識として機能するものと言わざるを得ない。 ・・・
  上記を前提として,被告標章と原告商標を対比すると,「南京町」という,一部共通する部分がある称呼,観念を合わせ考えても,同部分は被告標章の要部とはいえない上,被告標章が,いずれも標準的な字体で構成され,原告商標の出所識別機能を果たす特徴的な字体(ロゴ)を想起,感得させるようなデザインがされていない以上,需要者である一般消費者において,被告商品の出所が原告であると誤認混同するおそれはないといわざるを得ず,結局,原告商標と被告標章はいずれも類似しないというべきである。 」

4 検討
 ま,きちきちやると,無効の抗弁で,原告の商標をぶっつぶしてもいいような感じですね。ただ,被告からはそういう主張が出なかったようです。
 それに,仮にこういう主張が出たとしても(口頭弁論終結日には登録日から5年の経過ギリギリOKのようですが,時間のことを考えるとキルビー抗弁も出す必要はあったでしょう。),ややこしいことになりそうなので(原告は商店街の組合),こういう昔の特許でよくあった公知技術除外説みたいな権利解釈をしたのでしょうね。

 ただ,そうすると,この南京町の元に集まれ~♫みたいなやり方には今後反旗を翻すことが多くなりそうですね。やっぱ,これってそういえば単にここの地名だもんなあ,書体を変えればOkみたいなことを裁判所が言ってたもんなあってなると,仮にこの商標権の維持やライセンス料として,幾ばくか払わないといけないってなったらそんなの誰が払いますかいな。バカバカしいってやつです。書体を変えてレッツラゴーです。

 ただし,まだ地裁レベル~今後の高裁があれば,どうなるかはわかりませんよ。

5 その他
 本日は,3/11ですね。あれから3年ですか~。早いですね。今の東京はそのときの影響はほぼないと言ってよいと思いますが,私の生活もちょっと変わりました。

 そのときの模様は,このブログで書いたとおりですが,革靴で,10km程度歩く羽目になりましたので,普段は,軽くて歩きやすく,もはや走れるくらいの靴にしております。しかも,事務所には運動靴を完備です。ま,そんな程度の準備で済んでいるというのは不幸中の幸いと言えましょう。

 あの日,私は東京駅のお客さんの所から,東京地裁までタクシーで行ったのですが,そのときのタクシー運転手は気仙沼からの出稼ぎの方だったのですね。その後の津波で大きな被害があったことを知りましたが,あの運転手の家族の方は無事だったのでしょうかねえ。私を東京地裁で降ろした後,すぐに弁護士と思しき方々が代わりに乗っておりましたが,安否の確認などする暇は無かったでしょうね。私が,津波に気づいたのも,ワンセグのテレビだけでしたもの。

 実は,昨日は昨日で所謂東京大空襲の日で,東京の下町で一晩で10万人以上が死んだ日でした。それまで基地とか工場とか狙っていた米軍が何故か住宅密集地の東京の下町を狙って焼夷弾を無差別に落としたという,まさに戦争犯罪(東京裁判の訴因にもならなかった人道に対する罪ですな。)です。

 昨日今日と多くの日本人が亡くなった日なわけです。ま,あんまり起こっちゃいけねえとは思いますが,備えは常にしておく必要がありますね。

6 追伸
「特許法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました」ということです。早いな~経産省。

 ざっと見ると商標以外は小粒な改正ですが,まとまるとでかいなあって感じがします。意匠での画像デザインのやつは審査基準などで行くんでしょうね。つまり,意匠法2条1項の定義は変わらん,ということでしょう。あと,弁理士法の改正条文を早く見たい所ですね。

 スケジュールですが,前回のH23年改正も3/11に閣議決定(当然上の日ですよ。)して,私がぐじゃぐじゃ書いた記憶もあります。

 今回もこの通りに行くと,4/1に国会に提出され,5月の終わりか6月のはじめに成立するということになると思います。で,施行は来年の4/1からで,この解説本が来年早々出るという感じでしょうね。弁理士試験の受験生は気をつけた方がよいでしょう。

 まあしかし,商標法は本当に改正するんですね。
「 (3)商標法の改正
①保護対象の拡充
他国では既に広く保護対象となっている色彩や音といった商標を我が国における保護対象に追加します。

 他国でやると自国でもやらないといけないんでしょうかね。隣の**ちゃんがDS持っているからうちも買ってよ~っちゅう子供と同じってことですかね。
 ま,確かに官僚も学者も子供みたいな奴が多いので,さもありなんって所ですが,国民の皆さんはよくよく考えた方がいいですよ。
 色彩や音といった商標なんか無くってもこれまでも大して困らなかったし,これからも大して困らないです。弁理士は仕事が増えるだけの話だから,反対しねえか~,とすると反対するのは,やっぱ私みたいな常識派だけってことですかねえ。オホホホ。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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