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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 本件は,第6類「建築用又は構築用の金属製専用材料,金属製建具,金属製建造物組立てセット」,第19類「セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス」及び第21類「清掃用具及び洗濯用具」を指定商品とする商標(本願商標:標章は下記参照)を登録出願したものの,拒絶査定を受け,さらに,これに対する不服の審判(不服2011-10066号事件)の請求をしたが,特許庁より拒絶審決(商標法4条1項6号に該当)を受けた原告が,これに不服として,審決取消訴訟を提起したものです。

 これに対して,知財高裁3部(芝田さんの合議体です。)は,審決を取り消しました。つまり,4条1項6号該当性なし,と判断したわけです。

 このブログでは時々商標も取り上げます。私の仕事の多くはもはや弁護士プロパーのものですが,たま~に,商標の出願の仕事もあるからですね。

 問題となった条文4条1項6号は,「六  国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標」です。

 他方,問題となった標章は以下のとおりです。72df067a.jpeg

 上が登録出願した標章で,下が,対比された宮崎県日南市の市章です。

 まあこれを取り上げたのは,商標はここの所あまり取り上げていなかったというのもありますが,それよりも,4条1項6号なんて,超珍しいじゃん,というところです。







2 問題点
 問題点は上記のとおりですが,さらに言えば,著名か,類似か,ということが具体的に問題となりました。

 この点について,「新・商標法概説」小野昌延・三山峻司著(青林書院)を見ても,網野先生の「商標」を見ても,裁判例の記載がありません。基本書にもないような,すげえ珍しいものというわけです。
 審査基準だと,「都道府県、市町村、都営地下鉄、市営地下鉄、市電、都バス、市バス、水 道事業、大学、宗教団体、オリンピック、IOC、JOC、ボーイスカウト、 JETRO等を表示する著名な標章等は、本号の規定に該当するものとする。」とありますが,やはり裁判例はありません。

 ただ,上記の条文のとおり,著名じゃないとダメなわけです。というのは,地方自治体の標章はたくさんありますから,著名なものに限っておかないと困るということがあるのですね。

 特許庁の審決は,「「公的な機関である地方自治体を表彰するために用いられる都道府県、市町村の章は、制定時に告示が行われるものであり、そして、告示は、広く一般に知らしめるものであることから、商標法第4条第1項第6号にいう「著名なもの」として扱うのが相当である」(2頁17行~20行)として,日南市章の実際の著名性について認定することなく,「著名なもの」と認めた。」ようです。

 著名かどうかは事実問題ですから,きちんと事実認定しないのはどうかな~って所ですね。

3 判旨
 「・・・しかしながら,商標法4条1項6号は,「国若しくは地方公共団体……を表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」と規定しているから,同号の適用を受ける標章は「著名なもの」に限られると解すべきであり(告示された国又は地方公共団体を表示する標章が当然に著名なものとなるわけではない。),著名であるか否かは事実の問題であるから,告示されたことのみを理由として「著名なもの」とした審決の判断手法は,是認することができない。 そして,同号は,同号に掲げる団体等の公共性に鑑み,その信用を尊重するとともに,出所の混同を防いで取引者,需要者の利益を保護しようとの趣旨に出たものと解されるから,ここに「著名」とは,指定商品・役務に係る一商圏以上の範囲の取引者,需要者に広く認識されていることを要すると解するのが相当である。・・・

・・・したがって,被告の主張する上記取引の実情を考慮しても,上記認定の事実から,審決時に,日南市章が本願商標の指定商品「建築用又は構築用の金属製専用材料,金属製建具,金属製建造物組立てセット」,「セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス」及び「清掃用具及び洗濯用具」に係る一商圏以上の範囲の取引者,需要者に広く認識されていたと認めることは,困難である。」

4 検討
 それなりに有名な地方都市といえども,その市章まで著名かと言われるとそりゃ知らんわい,ってことなんでしょうね。上記の標章を見て,これぞ日南市だ!とわかった人が何人いたことか。

 あと,判決では,類似の論点についても判示があります。でも,これは取消事由として原告が上げてはいるものの,余事記載ですね。恐らく,著名性一本だと後でひっくり返されるかも~と思ったからかもしれません。

 ところで,上記の私が参考にした基本書は本当に使えます。他方,特許で今出ている基本書で本当に使えるものってないですよね。
 理由は簡単。進歩性をきちんと書いているものがないからです。例えば,商標のキモは類否だと思いますが,これを事実認定の問題だとかナンチャラで体系書に馴染まないとして,さらっと書いてしまったら,そんな基本書誰も買いませんよね。ところが,特許の進歩性の場合,何故かそんな欠陥本でも許されているのですね。おかしいな~ったらおかしいな~,ま,私が法学者っていうものをちっとも偉いと思わないのはこんなところにも遠因があるのかもしれませんね。
 あーあいつになったら,私を完璧に跪かせるような,素晴らしい基本書が出版されるのかしらねえ。
 ですので,いまだ当分の間,私の基本書は,特許法概説,これだけです。
 
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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