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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,別紙【2-1】記載の構成から成り,指定商品を「第3類 化粧品,せっけん類,香料類,歯磨き」とする商標登録第4671440号の登録商標(引用商標1),別紙【2-2】記載の構成から成り,指定商品を「第3類 せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」とする商標登録第1822150号の登録商標引用商標2),別紙【2-3】記載の構成から成り,指定商品を「第3類 せっけん類,歯磨き,化粧品,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料」とする商標登録第1881500号(引用商標3)の商標権者である原告(資生堂)が,別紙【1】記載の構成から成り,指定商品を「第3類 洗濯用漂白剤その他の洗濯用剤,洗浄剤(煙突用化学洗浄剤を除く。),つや出し剤,擦り磨き剤及び研磨剤,せっけん,香料類及び香水類,精油,化粧品,ヘアローション,歯磨き」(本件指定商品)とする国際商標登録第1044057号の登録商標(本件商標)の商標権者である被告に対し,無効審判を請求した(無効2012-680001号)ものの,特許庁から不成立審決を受けたため(商標法4条1項11号又は15号に該当しない。),知財高裁に審決取消訴訟を提起したものです。

 これに対して,知財高裁第3部(芝田さんの合議体ですね。)は,原告の請求を棄却しました。要するに,審決とおりで,商標登録は有効,としたわけですね。
 ab818869.jpeg
商標そのものは,左図のとおりです。

1が被告の商標で,2が原告の引用商標です。ま,エリクシールに似ているのが気に入らなかったわけですね。

 特段凄い論点があったわけではありませんが,たまには商標もいいんじゃないの,ってことで,大手企業が当事者だったこともあり,取り上げました。


2 問題点
 問題点は,上記のとおり,商標法4条1項11号(又は15号)の該当性です。さらに具体的に言えば,SONYとKUSONYのように,ある程度知られた商標を構成として含む場合の類否判断が問題になるわけです(本件は,ELIXIRとNINA L’ELIXIRですね。)。

 まず,特許庁の審査基準ですが,4条1項11号の6の(6)には,以下のような記載があります。
 「(6) 指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。
 ただし、その他人の登録商標の部分が既成の語の一部となっているもの等を除く。
(例) 類似する例
 テープレコーダについて「SONYLINE」、「SONY LINE」又は「SONY/LINE」と「SONY」
 化粧品について「ラブロレアル」と「L‘0REAL」「ロレアル」
 かばん類について「PAOLOGUCCI」と「GUCCI」
 航空機による輸送について「JALFLOWER」と「JAL」
 映画の制作について「東宝白梅」と「東宝」

  類似しない例
 金属加工機械器具について「TOSHIHIKO」と「IHI」
 時計について「アルバイト」と「ALBA/アルバ」
 遊戯用機械器具について「せがれ」と「セガ」」


 ま,ですので,周知著名商標が中に入っていると,その周知著名商標と類似しやすくなる,ってえのはいいと思います。
 結局商標は,識別標識なわけですから,周知著名商標というのは基本識別力が強くて,それを含むものと誤認しやすくなるのは確かでしょうからね。
 ただし,この審査基準で例外もあるように,まとまりよく一体のものは,さすがに,類似しないとしたわけです。例えば,パナソニックの中にはソニが含まれておりますが,これとソニーが類似っちゅうのもねえ~と言えばわかりやすいでしょうかね。

 となると,知財高裁がどう判断したかは予想がつくっちゅうもんです。

3 判旨
「(1) 本件商標
ア 本件商標は,別紙【1】記載のとおり,「NINA」の文字部分と「L’ELIXIR」の文字部分を横書きして成るものであり,複数の構成部分を組み合わせたいわゆる結合商標と解されるものである。このような結合商標について,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されない(最高裁平成20年9月8日第二小法廷判決)。
イ これを本件商標についてみると,外観上,本件商標を構成する各文字の大きさ及び書体は同一の全角で,等間隔でまとまりよく一体的に表されており,「NINA」と「L’ELIXIR」の間に空白部分があるものの,その広さは,半角程度にすぎず,全体として横に一行でまとまりよく表されているものであり,「L’ELIXIR」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできず,まして,「ELIXIR」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない。
ウ これに対し,原告は,「ELIXIR」の文字部分が識別標識として強く支配的な印象を与え,全体から独立して看取される旨主張するが,以下のとおり,いずれも採用することはできない。・・・・
エ 以上のとおり,本件商標は,「L’Elixir」の文字部分あるいは「ELIXIR」の文字部分だけが独立して看取されることはないから,本件商標の「L’ELIXIR」の文字部分又は「ELIXIR」の文字部分が独立して,本件指定商品の取引者や需要者に対して,引用商標の商標権者である原告が本件指定商品の出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったということはできず,他にこのようにいえるだけの事実は認められない。さらに,「NINA」の文字は,本件商標の指定商品に関連する一般的,普遍的な文字であるとはいえないから,「NINA」の文字部分に自他商品を識別する機能がないということはできない。
 このほかに,本件商標について,その構成中の「L’ELIXIR」の文字部分あるいは「ELIXIR」の文字部分を取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすことはできないから,本件商標と引用商標の類否を判断するに当たっては,その構成部分全体を対比するのが相当であり,たとえ,引用商標が,本件指定商品の取引者や需要者の間で周知であったとしても,本件商標の「L’ELIXIR」の文字部分あるいは「ELIXIR」の文字部分だけを比較の対象として類否の判断をすることは許されないというべきである。
オ そうすると,本件商標は,構成全体として造語と解されるものであるから,特段の観念を生じないものといえる。もっとも,本件商標の称呼については,一般人であれば,我が国においてなじみのあるローマ字読みにするのが通常であると考えられるから,本件商標からは,「NINA L’ELIXIR」をローマ字読みにした「ニナレリクシール」の称呼を生じるものと認められる。
(2) 引用商標
 引用商標1及び3は,別紙【2-1】及び【2-3】記載のとおり,「ELIXIR」の欧文字から成るものであり,引用商標2は,別紙【2-2】記載のとおり,「エリクシール」と「ELIXIR」を上下2段に書いたものである。
 「ELIXIR」は,「錬金薬,万能薬」を意味する英語であるが,英単語として必ずしもなじみのある語ではなく,本件指定商品の取引者はさておき,本件指定商品の需要者において,「ELIXIR」が「錬金薬,万能薬」を意味するものとして一般的に認識されていることを認めるに足りる証拠はないから,引用商標は,特段の観念を生じないものといえる。もっとも,引用商標の称呼については,一般人であれば,我が国においてなじみのあるローマ字読みにするのが通常であると考えられるから,引用商標からは,「ELIXIR」をローマ字読みにした「エリクシール」の称呼を生じるものと認められる。
(3) 本件商標と引用商標との類否
 以上によれば,本件商標と引用商標は,いずれも特段の観念を生じないものであり,その外観,称呼において異なるものであることは明らかであるから,全体として類似する商標であるということはできない。」

4 検討
 気に入らないからって,勝手なところで切っちゃダメよ~♪という感じでしょうかね。
 外観は若干似ていたとしても,エリクシールとニナレクシールと,全然違うわけですから,これでいいのではないかと思います。つまりは,誤認混同も生じないのでしょうからね。

 ま,大きな会社の場合,ブランドというのを本当に大事にしますので(私がもと居た会社なんて,当時のトップ(顔のデカイ指揮者)が,一番の財産はS/O/N/Yの4文字だって言ってたくらいですから。いやあぶっ飛びましたね。社員も技術もどうでもよく,ブランドが残ればいいわけですからね。),ちょっと似ていたくらいでも,念には念を入れて~♪ということで,負けて元々の異議や不使用取消や無効審判を請求することがあります。こういうところは特許とは相容れない考えですよね。

 それはしょうがありません。今流行りのスマホやタブレットにしろ,使われている特許は何千何万でしょうが,使われている商標は,通常1個!です。つまり,特許は持ちつ持たれつで併存の可能性は大いにあるのですが,商標の場合,そんなことはあり得ませんよね(ある商品を買って,アップルかつサムソンの商品は凄いなあって??思いもしませんわな。)。
 ですので,傍から見ると,あの大手の企業で,こんな判決と思われるかもしれませんが,それなりのビジネス的合理的意図の下,やっていることなんですね。

5 追伸
 さて,5月に入ったのですが,昨日といい今日といい,この寒さは何なのでしょう。いつもはGWには冬物をなおし(大分弁),暖房もなおし,サーフィンにも行き始めるのですが,今年は無理!です。
 ああ,冬物などをなおさなくて良かったなあって思います。
 ま,昼すぎて朝の寒気は抜けたようですが,変な気候だなあ。
 
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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