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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は, 平成24年8月15日,「お客様第一主義の」(標準文字)からなり,第45類「金庫の貸与,ファッション情報の提供,結婚又は交際を希望する者への異性の紹介,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供,・・・・省略」を指定役務とする商標(本願商標)の商標登録出願をした原告が,同年12月25日,拒絶査定され,不服審判請求(不服2013-5424号事件)をしたものの,特許庁は,平成25年7月30日,不成立審決(商標法3条1項6号に該当)を下したことから,これに不服として審決取消訴訟を提起したものです。

 これに対して,知財高裁1部(飯村さんの合議体ですね。)は,原告の請求を棄却しました。要するに,審決とおりでOKということですね。

 今回これを取り上げた理由は,まあそうだろう,あと,典型的な商標法3条1項6号の事案と言えるからです。

2 問題点
 問題点は,簡単です。商標法3条1項6号の該当性です。まずは条文です。

自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
六  前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標

 要するに,識別性がないやつで,1号から5号に該当しないやつも網羅する一般的な規定と言えます。

 で,どういうやつがそうかというと,審査基準に載っているとおり,キャッチフレーズがその典型です。がんばろう東北とか,それに類するやつですね。
 こんなの聞いても,誰の何の商売に関係するかさっぱりわかりませんし,しかもそんな言葉に半永久権の商標権を与えたらとんでもないことになります。

 ですので,こんなん登録でくっか,どうくっちょっやつっちゃ,ということですね。

 ま,とっとと判旨に行きますか。

3 判旨
「 ア  本願商標「お客様第一主義の」(標準文字)は,「お客様第一主義」と「の」の各文字から構成される商標である。
  本願商標中「お客様第一主義」との文字部分は,顧客(役務の提供先)を大切にし,満足度を高めるとの基本理念や姿勢等を表した語であると理解される。同文字部分は,自己を犠牲にしてまで,顧客に尽くすとの印象を与える語であることから,別紙2「『お客様第一主義』の使用事例」のとおり,宣伝,広告等において数多く用いられている。 
  また,本願商標中「の」との文字部分は,前の語句の内容を後続する名詞等に繋げ,後続する名詞等の内容を限定する働きを有する助詞と解される。また,後続する名詞等が省略される場合においては,名詞等の意味を漠然と示唆する代用語として使われることもある(乙31参照)。
  イ  そうすると,本願商標は,指定役務に使用する場合,これに接する需要者は,顧客を大切にするとの基本理念や姿勢等を表わした語であり,場合によっては,宣伝・広告的な意図をも含んだ語であると認識するものと認められ,これを超えて,何人かの業務に係る役務表示であると認識することはないと認められ,自他役務識別力を有しない商標と解するのが相当である。
  なお,本願商標は,商標法3条1項3号に該当すると解する余地もなくはないが,本願商標には「の」の文字部分が含まれ,同文字部分は,普通に用いられる方法で表示する標章とは必ずしもいえないことに照らすと,「お客様第一主義の」からなる本願商標は,同項同号所定の,普通に用いられる方法で表示する標章「のみ」から構成される商標とまではいえない。
  ウ  以上のとおりであり,本願商標は,「前各号に掲げるもののほか,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標」であって,これが商標法3条1項6号に該当するとした審決に誤りはない。 」

4 検討
 検討も何もこのとおり,というしかありません。ま,様々な理由があって,審決取消訴訟まで来ることになったのだと思いますが,昨日の事例と同様,これは代理人が抑えるべき事案と思いますね。

5 その他
 今日,アクセスの解析を見たところ,いつものように理系弁護士ではなく,別なワードが凄い勢いで検索され,このブログに来ていることがわかりました。

 そのワードとは,川口和子先生です。
 昨日,クモ膜下出血のためお亡くなりになったということです。心よりご冥福をお祈りします。

 で,このことに触れた私の感想は,だから言わんこっちゃないっていうところです。

 川口先生と私とは同じ弁護士会に属していますが,まさに正反対です。私は知財中心,川口先生は刑事等で超有名,私は金権派,川口先生は人権派,私はまだ8年目(59期),川口先生は24年目(43期。そうそう,私の小中高の同級生の裁判官が46期ですから,その優秀さがわかりますよね。)・・・です。

 でも共通点もあります。同世代であること(私が昭和40年生まれ,川口先生が昭和39年生まれであること),そして何よりメンタルの弱さです。

 私はこのブログにさんざん書いているように,あんたそれでも弁護士~♫ちゅうくらいメンタルが弱いです。実に弁護士に向いておりません。でもね~,悪いことばかりじゃないのです。

 みなさん川口先生を検索して何故私のブログに来たか,それは夏に一弁の会報に載った川口先生の書いた記事のことを書いたからですよね。
 そして,その一弁の会報の記事には,メンタルが弱いからこそわかることもある旨のことが書かれております。

 そう,これは私も同じですね。メンタルが弱いからこそ,わかることもあるのです。だって,私は川口先生には一度もお会いしたこともありません。
 上記のとおり,右と左で,考え方も正反対!
 でもしかし,一弁の会報という実にオフィシャルな媒体に,ほんのちょっと書かれた文章を見て,この人は相当無理をしているということがわかるということは,それを書いた人間と同じ類の人間なのでしょう。

 弁護士って,基本小さい頃からのガリ勉優等生,真面目タイプが殆どですから,そのイメージと裏腹に,実はメンタルの弱い人は多いと思います。
 私なんか歳をとってズーズーしくなって,そんなのでも売りにしようかなってくらいですが,一般にはそうではないですわな。

 ですので,実に残念です。クモ膜下出血なんて過労死もいい所じゃないですか。何でそこまでしなきゃいけなかったのかなあって実に思いますね。いやいや本当。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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