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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,この概要が非常に重要です。
 判決の概要をそのまま載っけます。
1  本件商標
 原告は,平成13年8月24日,「エコルクス」の片仮名を標準文字で表してなり,第11類「電球類及び照明器具」を指定商品とする商標(以下「本件商標」という。)について,商標登録出願を行い,平成14年8月16日に設定登録(以下「本件商標登録」という。)を受けた(登録第4595453号)。
  2  特許庁における手続の経緯等
(1)  被告は,平成21年4月14日,本件商標の指定商品のうち第11類「LEDランプ」について,本件商標登録の不使用取消審判を請求し,同月30日,審判の請求の登録がされた。特許庁は,これを取消2009-300445号事件(以下「前件審判」という。)として審理し,同年12月9日,前件審判請求が成り立たない旨の審決をした。
 被告は,これを不服として審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成22年(行ケ)第10012号。以下「前件訴訟」という。)を提起し,同裁判所は,平成22年12月15日,審決を取り消す旨の判決を言い渡し,同判決は,その後,確定した。
 そこで,特許庁は,平成23年3月23日,本件商標の指定商品のうち第11類「LEDランプ」について,本件商標登録を取り消す旨の審決(以下「前件審決」という。)をし,同審決は,その後,確定した。

(2)  被告は,平成22年6月14日,本件商標の指定商品のうち第11類「LEDランプを除く,電球類及び照明器具」について,本件商標登録の不使用取消審判を請求し,同月30日,審判の請求の登録がされた。特許庁は,これを取消2010-300651号事件(以下「本件審判」という。)として審理し,平成24年2月13日,本件審判請求が成り立たない旨の審決(以下「第一次審決」という。)をした。
 被告は,これを不服として審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成24年(行ケ)第10102号。以下「第一次訴訟」という。)を提起し,同裁判所は,同年9月12日,第一次審決を取り消す旨の判決(以下「第一次判決」という。)を言い渡し,同判決は,その後,確定した。
 そこで,特許庁は,平成25年8月9日,本件商標の指定商品のうち第11類「LEDランプを除く,電球類及び照明器具」について,本件商標登録を取り消す旨の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月19日,原告に送達された。
  (3)  原告は,平成25年9月10日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。

 これに対して,知財高裁4部(富田さんの合議体ですね。)は,原告(アイリスオーヤマ)の請求を棄却しました。要するに,審決とおりでOKってことです。

 これは上記のとおり,前訴と前審決があり,そこでのつながりからここで紹介するものです。
 しかし,それよりも大きな理由があります。これ,原告切ないなあ,染みるわ~ということからです。

2 問題点
 こういう不使用取消審判の審決取消訴訟での,普通の論点というと使用したか使用していないかという論点です。
 ところが,今回の論点は,「 (1)  被告による本件審判請求が権利の濫用に当たるか(取消事由1)
  (2)  本件審決には,原告に意見陳述の機会を付与しなかったとの手続の違法があるか(取消事由2)。
  (3)  原告による本件訴訟の提起が訴権の濫用として不適法なものといえるか。」ということです。何やら,一般民事のような有り様です。

 ですので,概要,経緯が問題になるのですね。

 まず,前件訴訟までの復習です。
 ・H21.4.30 被告(訴外鳥海工業㈱の代取)が,「エコルクス」の片仮名を標準文字で表してなり,第11類「電球類及び照明器具」を指定商品とする本件商標(登録4595453号)について,不使用取消審判を請求して登録。対象は,「LEDランプ」。

 ・審決では使用あり,訴訟では使用無しとして,判決は確定。審決はその後,「LEDランプ」を取り消して確定。→商標法54条2項により,H21.4.30~本件商標の指定商品は,第11類「LEDランプを除く,電球類及び照明器具」となった。
 
 ここまではいいですよね。

 その後,被告は第11類の残りの指定商品まで不使用取消審判を請求したので,切ないことになりました。

 ・H22.6.30 被告が,本件商標の残りの部分の不使用取消審判を請求して登録。

 で,何が切ないかというと,原告の意識は,「LEDランプ」というのは,LED電球類のみを指し,アプリケーションである例えば,LEDを光源とする「乾電池式LEDセンサーライト」(本件商品)なぞは含まれない,という意識だったのですね。
 ですので,原告としては,H22.6.30前3年以内に,「乾電池式LEDセンサーライト」に「エコルクス」の商標を現に使っていましたので(ただし,H21.4.30以降です。),登録商標は,LED電球類の所のみ穴ぼこになったものの,それ以外の「電球類及び照明器具」について使用していたんだから,絶対不使用取消なんかならない!って思っていたんでしょうね。

 ところが,こういう原告の期待というか希望というか単なる一人よがりというか自分の良いような解釈というかは,今回の審決で裏切られます。

 その審決では,「「LEDランプ」の用語は,第一次審決が説示するようにLED電球類を指称するものに限定して使用されているものとは認め難く,むしろ取引者により,本件審判の請求の登録前3年間において,光源としてLEDを使用した多様な商品又は部材を指称するものとして広く使用されており,それ以上に対象に応じて厳密に使い分けられているものではないばかりか,少なくとも,防犯等を目的として室内又は室外に設置するために作られた,人の動きを探知して自動的に点灯する乾電池を電源とするセンサーライトであって,LEDを光源とするものも指称すると認識されていたものと認められる。」と認定されました。

 どういうことかというと,「LEDランプ」というのは,LED電球類のみを指すのではなく,アプリケーションである例えば,LEDを光源とする「乾電池式LEDセンサーライト」(本件商品)も含まれる,ということです。ギャー原告の意識とは真逆です。イヤ~怖い,逃げて~,って感じです。

 つまり,「乾電池式LEDセンサーライト」に「エコルクス」の商標を現に使っていたとしても,それは「LEDランプ」での使用に他ならず,しかも,H21.4.30以降の使用のため,権利を持っていないのにも関わらず,謂わば禁止権の範囲を事実上使用していたに過ぎず,登録商標の同一の範囲の使用じゃないね,ということになったわけです。ガーンです。

 実は,このH21.4.30以降については,原告のアイリスオーヤマは,このアプリケーションについて,かなり広告費を費やして宣伝しております。本来穴ぼこは,電球だけで,アプリケーションはOKなんだもんーんと思っていたからでしょう。それに,そういう意識で,前訴も戦ったんだもーんって所でしょうね。

 ところが審決は上記のとおりでした。

 いやあだったら,前の訴訟のときに言ってくれよ・・・とは思うかもしれませんね。

3 判旨
「1  事実認定
 ・・・この前件審判及び前件訴訟において,原告は,特定のLED電球の包装に本件商標を付したとの事実を主張し,それ以外の使用に関する事実を主張しなかったため,被告は,原告によるLED電球に関する本件商標の使用事実を否認して争ったものの,それ以上に,「LEDランプ」との用語が,例えば防犯等を目的として室内又は室外に設置するために作られた,人の
動きを探知して自動的に点灯する乾電池を電源とするセンサーライトであって,LEDを光源とするもの(本件商品)を含むものである旨を主張はしなかった。・・・

 第一次訴訟において,原告は,本件商標の指定商品中の「LEDランプ」とは,「LED電球類(電球型LEDランプ又は蛍光灯型LEDランプ等のLEDを用いた一般的に光源として利用される電球類)」の意味であり,「LEDを使用した照明器具」を含まない旨主張する・・・

 第一次判決の理由の要旨は,以下のとおりである。 ・・・「LEDランプ」の用語は,第一次審決が説示するようにLED電球類を指称するものに限定して使用されているものとは認め難く,むしろ取引者により,本件審判の請求の登録前3年間において,光源としてLEDを使用した多様な商品又は部材を指称するものとして広く使用されており,それ以上に対象に応じて厳密に使い分けられているものではないばかりか,少なくとも,防犯等を目的として室内又は室外に設置するために作られた,人の動きを探知して自動的に点灯する乾電池を電源とするセンサーライトであって,LEDを光源とするものも指称すると認識されていたものと認められる。 ・・・

  したがって,本件商品は,前件審決の確定により前件審判の請求の登録の日(平成21年4月30日)に本件商標の指定商品から消滅したものとみなされる「LEDランプ」に該当するから,同日から本件審判の請求の登録の日までの間において,本件商標の指定商品に該当しない。そして,原告は,上記期間内における本件商品に対する本件商標の使用のほかに,本件商標又はこれと社会通念上同一の商標を本件商標の指定商品について使用したとの事実を何ら主張立証していない。
 以上によれば,原告は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品「LEDランプを除く,電球類及び照明器具」のいずれかについて,本件商標を使用していたことを証明していない。したがって,この点の認定判断を誤る第一次審決は取消しを免れない。・・・ 」

「2 争点(1)(被告による本件審判請求が権利の濫用に当たるか(取消事由1))について
 ・・・原告は,前件審判及び前件訴訟において,特定のLED電球の包装に本件商標を付したとの事実を主張し,それ以外の使用に関する事実を主張しなかったため,これを争う被告は,原告によるLED電球に関する本件商標の使用事実を否認して争えば足り,それ以上に「LEDランプ」との用語が,乾電池式LEDセンサーライト(本件商品)のようなものを含むものであることを主張する理由も必要もなかったのであって,被告が前件審判及び前件訴訟において,「LEDランプ」の用語についてこの点を明確に主張していないからといって,そのことは,何らかの意味において原告の信頼の根拠となるものではない。また,訴外会社は,平成19年7月10日頃には,LEDを光源として使用する青色防犯灯を販売するようになり,平成20年8月11日頃から,当該青色防犯灯に被告商標を付し継続して使用しており,被告は,前件審判の請求に当たり,「LEDランプ」との用語が光源としてLEDを使用する防犯灯を含む意図を有していたものである。
 そうすると,原告において,LED電球以外の照明器具については,前件審判の取消しの対象である「LEDランプ」には当たらないと信じ,本件商標を本件商品その他の照明器具について使用し,平成22年ないし平成24年6月までの期間に,総額16億円以上の費用を負担して宣伝広告を行い,その結果,取引界において,本件商標が原告の出所を表示するものとの幅広い信用が形成されていたとの原告の主張を前提としたとしても,被告による本件審判請求が権利の濫用に当たるということはできず,他に被告による本件審判請求が権利濫用に当たることを基礎付けるに足りる事実を認めることはできない。」

4 検討
 誰が悪いんでしょうね。
 いやあ誰かがきちんと説明して原告が納得できていたら,禁止権の範囲(今となっては全部消えてしまいましたので,禁止権もクソもないのですが。)での広告宣伝に16億円も支払わなくても済んだということですかね。

 それとも,どっかで和解していれば良かった?

 色々考えさせられます。アイリスオーヤマは,結構大手企業なので,自前で判断できると思います。
 それに,アイリスオーヤマの出願情報検索しましたが,代理人を使ってませんね。
 審判請求時には,さすがに被請求人なので使っているようですが,普段使いの弁理士はいないのかもしれません。
 他方,相手方の被告は,出願から代理人を使っております。アイリスオーヤマに比べて小さい企業なので,弁理士を頼るしかなかったのでしょうが,逆にそれが幸いしたのでしょう。

 上手の手から水は溢れるとも言います。普段,調査やら何やらをきちんとして,弁理士を頼まないでよいくらい商標登録出願には長けていたのでしょうね。だから,取消審判になったときだけ依頼した,だから,審決の解釈も自分達でやった,だからこの商品に使えば登録商標の使用と言えると思った,なんつっても,アホな弁理士なんか依頼しなくても何でもできる僕だから~♫弁理士なんか頼んでも金ばっかかかるだけでな~んもいいこと無いもんね,そうでしょ。

 だけど,虚心坦懐に何でもやらんといかんのじゃないですかね。私も,大きな事を書いているようですが,普段は意外と謙虚ですのでね。
 
 おかげで,エコルクスの商標登録はなくなりましたよ(まだ最高裁があるか。),いやあこれは知財部,法務部,全員のクビが飛んでもおかしくないと思いますねえ。
 ま,人の不幸は蜜の味~,無責任な第三者としては,まだまだ楽しませてもらいまっせ~♫

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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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