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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,原告(興和)が,被告(共和薬品工業)に対し,別紙被告標章目録記載1ないし3の各標章(被告各標章)を付した薬剤を販売する被告の行為は,商標法37条2号により原告の有する商標権(「PITAVA」と標準文字で書してなる商標。指定商品を「薬剤但し,ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤を除く」とする商標登録第4942833号の1に係る商標権と,指定商品を「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」とする商標登録第4942833号の2に係る商標権)を侵害するものとみなされると主張して,同法36条1項及び2項に基づき,同薬剤の販売の差止め及び廃棄を求める事案です。

 これに対して,東京地裁民事29部(嶋末さんの合議体ですね。)は,原告の請求をいずれも棄却しました。要するに,商標権侵害なし!ってやつです。

 おっと,また出たピタバスタチン商標の事件ですね~。以前も,このブログで書きました。

 で,その後もこのピタバ商標の事件はかなりあり,しかもどれもこれも原告興和の側敗訴に終わってました。

 なので,疑問に思っていたのですね。傍から見ると何でこんなもん(商標的使用じゃないとか,普通に用いられるだけ~とかでダメになりそう。)で,こんなたくさん訴訟をするのだろう~,何か悪いもんでも食った?ってなところがあったからです。

 でも,今回の判決を読んで,わかりました~いやあ,こりゃやるかもね,ってことが。

2 問題点
 問題点は,相変わらず,商標的使用です。その他,今回無効の抗弁が効いてます。ですので,メインは無効の抗弁(公序良俗違反)でしょうかね。

 条文はこちらです。
第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
 七  公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標

 パターンはわかりますよね。オ○コ,オマン○,チン○なんてだめでしょうね。
 商標の審査基準を見てみると,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音である場合並びに商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれるものとする。」と書いてあります。

 このブログを見ている知財関係者は多いと思いますので,いちばん馴染みのあるのは,特許管理士でしょうね。弁理士会が会を挙げての撲滅に乗り出して,見事この公序良俗違反で討ち取ることができたものです。

 最近では,剽窃系ですね。よく中国で日本の有名な商標が勝手に出願・登録されて,本家なのに,取り戻しとか登録取り消しに苦労した~っていう例を聞いたこともあるんじゃないですかね。
 でもね~,いまだ日本でも多いのですよ。欧米のこれから来るであろう,アパレルとか商品のブランドを先駆けて日本で取っておいて(そこまで特許庁の審査官もわからない~。フランス語とかドイツ語とかで,辞書で引いて載っているだけだとブランドかどうかなんてわかりませんからね。),日本に進出してきたときに,正規代理店とか日本法人とかに高く売りつける~なんてそこそこ聞きますからね。所謂商標ゴロってやつです。

 こういうのも公序良俗違反でNGとなりえます。

 兎も角も,この公序良俗違反って,くらって一番恥ずかしい拒絶,異議,無効事由じゃないですかね。

 で,本件その一番恥ずかしい事由が問題となったのです。何故か~というとだな~。

3 判旨
「ア 商標法4条1項7号は,商標登録を受けることができない商標として,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」を規定しているところ,ある商標を指定商品又は指定役務について使用することを特定人に独占させることが著しく社会的妥当性を欠くと認められるような場合には,当該商標は,同号に該当するものと解するのが相当である。
イ これを本件についてみるに,前記前提事実,前記2の認定事実及び弁論の全趣旨(当裁判所に顕著な事実を含む。)を総合すれば,①本件商標を構成する「PITAVA」の文字は,医学分野の学会発表や研究報告において,「Pitavastatin」(原告商品及び被告各商品の有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」について,塩に関する記載を省略した「ピタバスタチン」の英語表記である。)の略称として用いられている「Pitava」を大文字で表記したものであること,②被告各標章を構成する「ピタバ」の文字は,被告商品の有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」について,塩に関する記載を省略した「ピタバスタチン」の略称として用いられるものであること,③原告は,平成15年9月以降,ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする原告商品を製造販売してきたが,同商品の販売に当たり,本件商標を使用したことはないこと,④原告は,本件特許権の存続期間が平成25年8月3日をもって満了し,同年12月以降,原告商品に対する後発医薬品の製造販売が開始されたことを受けて,当該後発医薬品の錠剤自体に「ピタバ」との記載を付している会社(キョーリンリメディオを除く。)に対して,商標権侵害訴訟を提起したこと,⑤上記後発医薬品(被告各商品を含む。)の錠剤に「ピタバ」との記載がされた趣旨は,取違えを回避することを目的とした厚労省通知及び日本ジェネッリク製薬協会の要請に従おうとしたものであることが,いずれも認められる。
 そうとすれば,原告による本件商標に係る商標登録出願は,本件特許権の存続期間満了後,原告のライセンシー以外の者による後発医薬品の市場参入を妨げるという不当な目的でされたものであることが推認されるばかりか,本件商標を指定商品「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」に使用することを原告に独占させることは,薬剤の取違え(引いては,誤投与・誤服用による事故)を回避する手段が不当に制約されるおそれを生じさせるものであって,公共の利益に反し,著しく社会的妥当性を欠くと認めるのが相当である。
 なお,付言するに,原告のような先発医薬品を製造販売する者が後発医薬品の市場参入を阻止したいと考えること自体は,無理からぬところであるが,その手段は,特許権など医薬品それ自体に関する権利の行使によるべきであって,化合物の一般的名称である「ピタバスタチンカルシウム」の略称として用いられる「PITAVA」の文字を標準文字で書してなる本件商標と,薬剤の取違えを回避するため被告商品の錠剤表面に印字された「ピタバ」(有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」の略称として用いられることは,前示のとおりである。)との文字からなる標章(被告標章)とが類似する旨主張することは,公益上,容認することができないというべきである。」

4 検討
 まあ,上記の判旨を見て下さいな。
 要するに興和としては,ゾロ品(後発医薬品のことを先発医薬品会社は,侮蔑をこめてこう言うのですね。)を商標で食い止めたかったというわけですわ。

 漸く,わかりましたよ。こんな筋の悪い事件を何度も何度も何度も起こした理由がねえ。
 しかし,原告の代理人見るとわかりますが,超一流の事務所ですね。こんな事務所でもこの手の事件受けるんだねえって感じですね。

 ま,上記判旨のなお書見てください~。嶋末さんのところもよっぽど腹にすえかねたんですね~。とは言え,今回被告が公序良俗違反というのを引っ張りだしたおかげで,事件の真の様相が明らかになったのは良かったと思いますわ。

 知財と言っても実に人間臭いもんですなあ。
 と言っても私は人間嫌いですから,人間臭いものもあんま好きじゃないですけどね。ムハハハ。

 あと,商標的使用の方ですが,この事件でも,原告の主張から書いてあります。他の抗弁事由については,被告の主張から書いているのにも関わらず,ですよ。

 本当,改正法は4/1を過ぎて施行されておりますので,今後どうすんのかなあ。商標法26条1項5号までは抗弁で,6号だけは請求原因になるっていうのも有りかもしれんなあ,立法者の意図とは違っても。

5 追伸
 毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーでございます。
 
 本日はここ北品川の運河に来ております。今日も東京は暑いですね。水木金と,30度近い暑さとなっております。まあ私は暑いの好きなので,どうってことない温度です。
 それに,こういう運河沿いを歩くと結構涼しくて乙なもんです。
 そうそう,現在の元ソニーの本社の模様です。
 
 随分,小さくなりましたね。恐らく殆ど建て壊しは終了したのではないかと思います。シャープといい,人も会社も生成し消滅する定めなのですね~ムホーン。
 
 で,山本橋です。桜も草も青々しています。消滅するものあれば,生成するものもあるってことです。
 いやああっちいあっちい,今日もビールが旨そうだ~。おっと,今年の健康診断の日が決まったから気をつけないといけないなあ。

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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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