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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護土の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,原告(レースクイーン・インク)が,被告(ひろゆき氏)の有する商標登録(第5843569号,出願日平成26年3月27日 ,2ch(標準文字),38類と42類)に対し,無効審判を請求(商標法4条1項10号)したところ,不成立審決が下されたため,これに不服の原告が,審決取消訴訟を提起した事案です。

 これに対して,知財高裁3部(鶴岡さんの合議体ですね。)は,原告の請求を棄却しております。つまり,審決のとおりでOKということです。

 なお,本件と同様,2ちゃんねる (標準文字)の登録商標(第5851035 号)にも同様の無効審判→審決取消訴訟がありましたが,同様の結論です(知財高裁平成30(行ケ)10029号)。

 いやあ,ここで判決紹介するのは久々ですね~。もうマジな判決を紹介することはありませんので,今回もおもしろ系ですね。

 で,問題点は,ただ一つ,2ch(掲示板の方ね。電子掲示板「2ちゃんねる」(ドメイン名は2ch.net,本件電子掲示板のこと。))って誰のもの?ってことです。

2 問題点
 端的な問題点は,商標法4条1項10号該当性です。

 商標法4条1項10号は以下のとおりです。
他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

 つまり,未登録周知商標と同一・類似の商標は登録できない,ってことです。

 だって世の中,商標を登録するのが義務ではありません。そういう細かいことを気にせず,律儀に真面目に商売に精進したところ,ブランドが超有名になった場合もあり得る所です。そんなときに,しめしめ,あの野郎,商標登録してねえわ,いっちょオイラが登録しちゃるか~みたいな奴が出てくるといけませんので,こういう条項があるわけですね。

 なので,”あの野郎”の商標じゃないといけないわけです。つまり条文上の「他人」ってことですね。
 自分ならいいわけですよ。

 あ,商標って特許と違いますからね。別に商売を始めたあとで商標を出願しても登録できる場合があります。つーか,そういうのが不登録事由になっていません。
 他方,特許の場合,商品を売り出すと,それで新規性が失われてしまうので(これは不登録事由です。),登録できないのです。

 なので,先程の,律儀に真面目に商売していた人が,そろそろ落ち着いたので,自社ブランドを商標登録出願しよう,もう商売を始めてから100年にもなるけどね~~でも登録しうるのです。勿論,昨今の兎に角なんでも早め早めというブランド戦略からすると,オススメできないことは確かですけど。

 ということで,周知ブランド(2ch)は,他人のものに当たり,ひろゆき氏の有している2chの商標権は本来登録できなかったものなのか,そこが問題になったというわけです。

3 判旨
「2  原告は,需要者を基準にする限り,平成21年1月までに本件電子掲示板に係る本件引用商標の使用により獲得された業務上の信用が一義的には被告に帰属していたことは争わないとした上で,本件電子掲示板運営事業は,本件各事業譲渡により,被告からパケットモンスター社を経て原告に承継された旨主張する。
  (1)  そこで,まず,本件各事業譲渡の有無について検討する。
ア  電子掲示板に係る事業は,電子掲示板の名称等の商標のほか,ドメイン名を使用する権利,電子掲示板に表示される広告に関する契約及びインターネットサービス提供に関する契約を含む複数の財産を用いて行われているものであるから,電子掲示板に係る事業を譲渡するに当たっては,これらの複数の財産を移転し,その対価を支払うことを内容とする合意をするのが通常であるところ,本件各事業譲渡の合意の具体的な内容は明らかで
はない。
 そして,事業譲渡をするに当たっては,移転の対象となる具体的な財産を特定し,事業譲渡の対価を定めるほか,対価の履行期及び履行方法,譲渡の対象となる財産の移転方法(第三者の承諾等を要する場合にはその手続の履行期及び履行方法等)を定めるのが通常であり,移転の対象となる財産の内容によっては事業譲渡の基準日時点での債権債務の処理について定める場合も考えられる。さらに,本件各事業譲渡のように,当事者の少なくとも一方が法人である場合には,なおさら慎重な手続がとられるのが一般であるし,本件各事業譲渡は渉外法律関係(パケットモンスター社はシンガポール法人,原告はフィリピン法人である。)を含むから準拠法の問題を生じ得ることからしても,口頭のみで契約を行うことは考えにくい。
 以上に照らせば,本件各事業譲渡につき契約書等の書面を作成せずに契約を締結するとはにわかに考え難いというべきところ,本件各事業譲渡に係る契約書等の処分証書の提出はない。
      イ  本件事業譲渡1の時期から5年以上経過した平成26年3月5日当時の本件電子掲示板のトップページには「Y日記」との文字が記載されており(上記1(5)イ),この記載からすれば,平成21年1月以降平成26年3月まで本件電子掲示板のトップページに本件ブログへのリンクが貼られていた可能性もある。また,本件記事には,①  平成24年12月に,被告が本件電子掲示板上の違法薬物に関する書き込みを放置したとして検察庁に送致された旨,②  平成25年3月に,本件電子掲示板上の違法薬物に関する書き込みの削除措置がとられたために被告が不起訴処分となった旨,③  同年8月に,被告が本件電子掲示板に係る高額の広告収入をパケットモンスター社から受領したとして東京国税局から指摘を受けた旨が記載されている(上記1(7))。
 これらの事実によれば,被告は,平成21年1月以降も本件電子掲示板の運営を含む本件電子掲示板に係る事業に実質的に関与していたことがうかがわれる。
ウ  以上のとおり,本件各事業譲渡の合意の具体的な内容が明らかでないこと,本件各事業譲渡に係る契約書がないのはそれ自体不自然であること,本件事業譲渡1がされたという時期以降も被告が本件電子掲示板に係る事業に実質的に関与していたことがうかがわれることに照らせば,本件事業譲渡1がされた事実や,原告が本件各事業譲渡により本件電子掲示板に係る事業を承継した事実を認めることはできない。
・・・
  (2)  原告は,仮に全面的な事業譲渡又は承継がされていなかったとしても,パケットモンスター社が本件電子掲示板の運営管理を行っていたことからすれば,本件電子掲示板に関連した周知,著名商標から生じる権限を含めた事業譲渡又は承継がされたといえると主張する。しかし,パケットモンスター社が本件電子掲示板の運営管理を行っていたとしても,同社が事業主体であるかどうかが明らかでないのは上記(1)エ(ウ)のとおりである。また,本件全証拠によっても,被告がパケットモンスター社に対し,本件電子掲示板に関
連する周知,著名商標から生じる権限を譲渡した事実を認めることはできない。
・・・
4  以上によれば,本件商標が「他人」の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であるとは認められない。 」

4 検討
 私も昔はパカ弁ってやつをやっておりまして,特に独立したてで仕事も金も今以上に全くないころ,結構な頻度でやっておりました。
 ところが,ある時期を境に,全く仕事の依頼が来なくなりました~。
 
 ま,わかりますよね。このパカ弁の仕事関係が実にお金になる~ってことで,猫も杓子も,非弁も業者も参入したころです。 
 今も,「弁護士 誹謗中傷」とかで検索すると,むちゃくちゃ広告が出て,その後SEO対策している事務所しか検索表示されません。
 うちの事務所なんか~もう探すのはやめた~ってなります,本人でも。だとしたら,一般の人がうちの事務所まで辿り着くわけがありません。

 ということです。

 ですが,何事も勉強ですし,またデタラメな検索して偶然辿り着いたお客さんが来るかもしれませんので,コソ勉はしています。

 例えば,この分野での有名な弁護士の中澤祐一先生の「誹謗中傷 法的対策マニュアル 第2版」,1版が良かったので,こちらも買っております(1版に比べてずいぶんページ数が増えましたが。)。

 で,この本にも2chに対する対策が書いております。その箇所によると,仮処分の相手方,つまり債務者は,ひろゆき氏ではないのですね。
 ですが,特段の問題はなく,仮処分の決定は下りているようです。

 ムフフフ,どうですか?あっちでは,俺じゃないと言い,こっちでは俺だと言い( 「被告は,本件電子掲示板に関連する周知,著名商標から生じる権限を譲渡したことはない。 」そうです。),そういうことなわけです。

 私は倫理を説く者ではありません,みなさんが各々考えればいいことですけどね~。ムフフフ。

5 追伸
 毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーでございます。
 本日は,ここ山本橋に来ております。
 
 散歩中,ちょっと雨が降ってきたりしてましたが,今はスッキリした天気です。
 昨日の夜遅く東京は結構な雨が降りましたね。雨音で目が覚めたのですが,今日の未明だったかもしれません。これは久々の雨でした~。

 さて,ほんで,夏の特別編,いってみましょう。
 
 アブラゼミ,オスです。しまった~子供じゃなくオヤジに捕まるとは・・・という感じでしょうか。
 
 
 続いて,これもアブラゼミ,オスです。こちらはまったく観念せず,離せこんにゃろーです。

 そう言えば,昨日捕まえたアブラゼミは,目が赤かったですが,今日のどちらも真っ黒です。

 ネットの記事によると,死にかけのアブラゼミは目が赤いらしいですけど,ほんまですかねえ。何ともよくわかりません。

 夏の終わりには,このセミのまとめをやろうかな~って所です。

6 追伸2
 大分の甲子園の出場校が決まりました。藤蔭でした。
 実家の近くの柳ヶ浦が決勝まで行ってたのですが,惜しくも0-1で破れたようです。

 藤蔭のあるところは,日田。よく最高気温で出る所です。盆地で,暑くなるのです。実家に帰ったついでにちょっと足を伸ばすこともあります。いい所です。でも,まあちょっと遠いかなあという感じです。
 兎も角もおめでとうございます。

 で,私と白ブリーフの母校は,一回戦シードで2回戦からの登場だったのですが,惜しくもサヨナラ負け,でも結局1勝もできなかったということですね。しょうがない~。
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職業:
弁護土・弁理土
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サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を目指したのはもう30年以上前のこと。某メーカーでの液晶ディスプレイのエンジニアを経て,弁理土に。今は,弁護土です。次は何かな。
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