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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護土の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,第5類「薬剤」を指定商品とする商標権(出願年月日  平成17年8月30日,登録年月日  平成18年4月7日 ,登 録 番 号  第4942833号 ,登 録 商 標  「PITAVA」(標準文字) を有する原告(興和)が,被告( Meiji  Seika ファルマ)が薬剤に付した別紙被告標章目録1ないし3の標章(被告標章)が原告(控訴人)の商標権の登録商標に類似すると主張して,被告(被控訴人)に対し,商標法36条に基づ き,被告標章の使用の差止め及び被告標章を付した薬剤の廃棄を求める事案の控訴審です。
 なお,問題となる商標権は,本件控訴の提起後,本件商標権の分割の申請をし,本件商標権は,指定商品を第5類「薬剤但し,ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤を除く」とする別紙商標権目録2記載の商標権と指定商品を第5類「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」とする同目録3記載の商標権(本件分割商標権)に分割されております。
 とは言え,本質的な変更ではありません。

 まず,原審の東京地裁平成26年(ワ)770号(平成26年8月28日判決)(民事47部で高野さんの合議体でした。)は,商標的使用に当たらないとして,原告の請求を棄却しております。
 このとき,実は,商標法26条1項6号が改正される前ですので,商標的使用は,書かれざる構成要件として,請求原因事実で判断されています。

 ほんで,これが気に入らない原告(控訴人)が控訴を提起したのが本件ということです。
 これに対して知財高裁4部(富田さんの合議体です。)は,控訴をいずれも棄却しました。要するに,原審とおり,商標的使用に当たらない~ってことです。
 

 ということで,ポイントは,改正後で加わった商標法26条1項6号の適用が真っ正面から判断される,しかも知財高裁で判断されるということで,ある程度先例的意味があるのではないだろうか,というところです。

2 問題点
 問題点は一審と変わりません。商標的使用に該当するかどうかです。

 まあ,この商標的使用はいいですよね。
 私が,このブログで,散々ソニーでエンジニアやってました~ソニーの知財部にいました~ソニーではこう~ソニーではああ~とかグダグダ述べていても,別にソニーから商標権侵害だと訴えられることはありませんよね。

 経歴の説明のために,ソニーって使っただけで,ソニーと同じ商売をして,そのときにあわよくば,ソニーと間違ってうちの商品を買ってくれないかなあ~♡という使い方(これが商標的使用)をしているわけではありませんからね。

 ただ,これも散々述べてきましたが,改正されて加わった商標法26条1項6号(商標的使用を規定するもの)は,抗弁のように書かれています(従前は,請求原因事実でした。)。
 そこで,素直にもう抗弁で決着がつくのか,それとも従前の実務を踏まえ,商標法26条1項にあるとしても,例外的に請求原因事実となるのかが一応問題になるわけです。

 商標法26条1項6号を見ましょう。
第二十六条  商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
六  前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標

 まあ,規定としては,まさに商標的使用ですが,この条文の位置は明らかに抗弁事実の所ですね。

 さあ,どっちなのでしょうか?

3 判旨
「第3 争点に関する当事者の主張
2 争点2(被控訴人各標章の商標法26条1項6号該当性)について
(1) 被控訴人の主張
ア 商標法26条1項6号の商標に該当すること
・・・
(2) 控訴人の主張
ア 商標法26条1項6号の商標に該当しないこと
・・・」

「2 被控訴人各標章の商標法26条1項6号該当性(争点2)について
(1) 被控訴人は,被控訴人が被控訴人各商品の錠剤に被控訴人各標章を表示しているのは,服用者が服用する際に他の薬剤と間違えないよう誤飲防止のためであって,自他商品識別機能を奏するために表示しているものではなく,被控訴人各商品における被控訴人各標章の使用は,いわゆる商標的使用に当たらないから,被控訴人各標章は,「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない商標」(商標法26条1項6号)に該当する旨主張する。
ア そこで検討するに・・・

 以上によれば,被控訴人各商品の需要者である医師,薬剤師等の医療従事者及び患者のいずれにおいても,被控訴人各商品に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)から商品の出所を識別したり,想起することはないものと認められるから,被控訴人各商品における被控訴人各標章の使用は,商標的使用に当たらないというべきである。
ウ したがって,被控訴人各標章は,「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない商標」(商標法26条1項6号)に該当するものと認められる。」

4 検討
 細かい中身はいいでしょう。事実認定次第ですので。
 重要なのは,上記のとおり,判旨でも,被控訴人の主張から書いているということ,そして,商標法26条1項6号の該当性を認めているということです。

 つまり,商標的使用は,明白に,抗弁事実であると,少なくとも知財高裁の4部は判断したということです。

 ということは,ないこと,つまりは悪魔の証明を課しているわけです。
 本当はこんなことは不可能で,証明することはできません。だって,存在しないことの存在をどうやって立証すればいいのでしょう。どう考えたって無理です。

 では,本件ではどうしたか?というと,上記のとおり,被控訴人各標章を表示しているのは,服用者が服用する際に他の薬剤と間違えないよう誤飲防止のため,という事実の証明で替えております。

 これはアリバイの証明と同じです。アリバイというのは,犯行時間に別の場所に居た,という証明なのですね。犯行時間に犯行場所に居なかった,という存在しないことの存在の証明はできないわけです。ですので,それと相反する,別の場所に居た→ならば犯行場所には居なかった,という証明で替えるわけです。

 なので,本来は,誤飲防止ということが商標的使用と相反する,つまりは,誤飲防止の要素もあるが商標的使用の要素も有り得るなんてことは決してないってことまで言わないといけないわけです(アリバイの場合は,ドッペルゲンガーでもない限り,同一人が同時に異なる場所に存在できませんので。)。

 しかし,さすがにそこまでは裁判所も要求していないようですね。やはり,従来と証明責任があべこべになったのに,厳密なことまでやらせちゃあそりゃ酷だし,理屈っぽい被控訴人が,従来俺らに証明責任がないんだから,26条に規定されたからって請求原因事実だ!とか主張すると面倒臭いですもんね。

 ただ,本件の被控訴人の立証方法って何かイマイチのようにも見えます。
 黒い白鳥などこの世に居ないことの証明(ニコラスタレブのブラック・スワンを想起してください。)として,日本にも居ない,アメリカにも居ない,中国にもヨーロッパにも居ない・・・的な立証ですから。

 今回は,これで良かったけれど,今後商標的使用を否定する方(主として被告側)が,どんな立証方法をとるか悩ましい所です。
 今回の被控訴人(被告)のように,①日本にも居ない,アメリカにも居ない,中国にもヨーロッパにも居ない・・的な立証をするか,それとも②裁判所が救済したような,アリバイ的立証でよいとするのか~ですね。

 ただ,論理学にちょっと詳しい人なら,①のやり方はたった1つの反証で覆るし,②のやりかたは上記のとおり,相反するという前提が必要だということがわかりますよね。
 要するに,やはり難しいのです。

 本来は,黒い白鳥が居るって言う人に捕まえてこさせるのが一番だと思います。私は,どこかでこのような論理的矛盾が爆発するのではないかと思っております。

5 追伸
 毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーでございます。
 本日はここ山本橋に来ております。
 
 今日は天気がイマイチだという話だったのですが,今のところ雨も降っておりません。非常に暑いです。
 まあ,しかし,散歩も結構長く続いております。おかげ様で,健康診断の結果も良かったですね。昨年は,血圧,総コレステロール,中性脂肪,クレアチニン,尿酸,CRPと,高かったのですが,散歩のおかげか,これはいずれも普通の値になっております。

 となると,散歩はやめられませんね。今日みたいに暑いとサボりたい感もあるのですが,仕方ありません。いい人が惜しまれつつ世を去るのをほくそ笑み,憎まれっ子世にはばかるためには,地道さも必要ですからね。
 
 ところで,午前中,事務所のベランダの鳩よけネットに,珍客が来ておりました。ミンミンゼミ,オスです。うるさいなあと思ったら,こんな近くで鳴いておりました。捕まえようとしたら逃げましたので,小癪なやつでした。

 
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1 概要
 本件は,被告(IBEX)が商標権者である5件の商標について,原告(双日ジーエムシー)が,商標法53条1項に基づき,各商標登録の取消審判請求をしたところ,特許庁がいずれについても審判請求は成り立たないとの審決をしたことから,原告が各審決の取消しを求める事案です。

 これに対して,知財高裁1部(設樂さんの合議体ですね。)は,原告の請求を認め,審決を取消しました。つまり,被告のライセンシーに登録商標の濫用があったということですね。

 商標法53条の取消審判ですので,結構珍しいです。ただ,事案の経緯も結構珍しいですね。
 商標権は,ADMIRALという商標をめぐる紛争です。この標準文字の商標もあります。

 まあ私はよく知らなかったのですが,スポーツブランド,特にサッカー系で有名なイギリスのブランドらしいです。

 ですので,元々,商標権者はこの原被告とは別に居たのですね。
 最初は,スイスの法人「アドミラル スポーツウエア ライセンス アーゲー」が商標権を有し,その後→IBL社→IPGI社と移転されました。
 そして,ここからが重要なのですが,原告は,IPGI社から,5つの商標権について,「履物(「サンダル靴,サンダルげた,スリッパ」を除く)」を指定商品として,分割移転を受けました。

 他方,被告も,IPGI社から,上記のとおりの分割した残りの商標権の移転を受けたのです。

 つまり,原告も被告もADMIRAL商標の商標権者~ただ,一方は,指定商品が,「履物(「サンダル靴,サンダルげた,スリッパ」を除く)」で,他方は,「サンダル靴,サンダルげた,スリッパ」という凸と凹みたいな感じの商標権者なのですね。

 で,このような状況で,原告は,スニーカーに原告商標を付して,販売していたわけです。
 他方,被告は,株式会社チヨダ(靴の量販で有名なあのチヨダです。)に対し,指定商品であるサンダルについて本件商標の独占的通常使用許諾をし,チヨダはその商標を付して販売していたわけです。

 
 その原告商品が左で,右がチヨダの商品です。

 どうですか~結構似ていますよね。ちなみに,チヨダの商品は,これスニーカーっぽいですけど,スニーカーではなくサンダルとのことです。「クロッグサンダル」というタイプのサンダル(つま先側の部分は通常の運動靴と同様に覆われているが,踵側の立ち上がり部分が靴と異なって低くえぐれており,簡単につっかけて履くことができるような形状のもの。)というらしいです。

2 問題点
 以上のような状況の元,53条1項にいう「商品と混同を生ずるものをした」かどうかが問題となったわけです。

 まずは53条1項です。
専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。ただし、当該商標権者がその事実を知らなかつた場合において、相当の注意をしていたときは、この限りでない。

 ですので,ポイントが,「通常使用権者が・・・他人の業務に係る商品・・・と混同を生ずるものをした」かどうかなわけです。

 その前に条文上,重要なことがあります。53条は不正使用による商標取消の制度です。この不正使用による商標取消の類型は他に2つあります。
 まずは,51条の不正使用です。これは商標権者そのものの不正使用です。しかし,この51条は,所謂専用権(同一の範囲)は除外され,禁止権(類似の範囲)での使用のみがペナルティを課されます。当たり前ですよね。
 商標権者が自分の同一の権利範囲で使用していて,誰かに文句言われる筋合いはねえってわけです。

 つぎに,52条の2です。これは,1つの商標権が今回のように分割された場合です。これは,同一の範囲の使用でも請求されうるのですが,その代わり,「不正競争の目的」という要件が加重されております。
 これもそうじゃないと,分割当事者がお互いに請求しうることになり,いずれが○✕かがわからなくなりますので。

 最後に,本件のやつです。これは使用権者の不正使用ですので,禁止権での使用だけでなく,専用権での使用もペナルティを課されます。使用権者を監督できない商標権者が悪い!ってわけです。

 とは言え,通常は,不正使用された側っていうのは,不正使用したという側とは何の関係のない第三者であることが多いと思います。

 例えば,ンニ―という商標を取った人が,どこか胡散臭い業者に使用権を設定した所,その業者が,商標はンニ―であるにも関わらず,「ソニー」という書体を使っちゃった場合なんかが典型です。この場合,商標権者とソニーは普通は縁もゆかりもないですよね。

 他方,今回は,分割した商標権が,凸凹的に帰属し,他方から使用権を得た者が色々やったという所がポイントです。

 つまり,不正使用とは言え,分割した商標権に基づくものなのだから,52条の2のように,要件を加重する必要はないのだろうか?ということが問題になってくるわけです(53条は,条文上,不正競争の目的とか故意とかの要件はありません。客観的な混同のみが要件なのです。)。

3 判旨
「(1) 法53条1項は,商標権者から専用使用権又は通常使用権の設定を受けた者が,登録商標又はこれに類似する商標を,指定商品・役務又は類似商品・役務について使用した場合であって,その使用が,「他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるもの」であるときには,当該商標権者が,その事実を知らず,かつ,相当な注意をしていたときを除いて,当該商標登録を取り消すことができると規定している。同規定の趣旨は,専用使用権者又は通常使用権者といえども,登録商標の正当使用義務に違反して登録商標を使用した結果,他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるものをしたときは,そのような行為は,当該他人の権利を侵害し,一般公衆の利益を害するばかりでなく,商標権者の監督義務に違反するものであるから,何人もその商標登録を審判により取り消し得ることとしたものである。
 ところで,現行の商標法は,指定商品又は指定役務ごとに商標権の分割及び移転を認めており(法24条1項,24条の2第1項),分割に係る商標権の指定商品又は指定役務が,当該指定商品又は指定役務以外の他の指定商品又は指定役務と類似している場合であっても,商標権の分割・移転を制限していない(平成8年法律第68号による改正前の法24条1項ただし書は,同一商標について,類似関係にある商品・役務に係る商標権の分割移転を禁止していた。)。したがって,同一の商標について,類似する商品・役務を指定商品・役務とする商標権に分割され,それぞれが異なる商標権者に帰属することもあり得る。法52条の2は,このような商標権の分割・移転の場合において,商標権者について,「不正競争の目的で」他の商標権者,使用権者等の商品又は役務と混同を生ずるものをしたときは,何人もこのような商標登録の取消しの審判を請求することができる旨を定めたものである。そして,このような商標権の分割・移転の場合における使用権者による使用については,従来から存在している法53条1項の規定の適用に委ねられている。したがって,法53条1項は,このような商標権の分割・移転に係る商標の使用についても適用され得るが,このような場合には,各商標がもともと同一であるため,商標の同一性又は類似性及び商品・役務の類似性のみに起因して,一方の登録商標の使用によって,他方の商標権者と業務上の混同が生じる場合も予想される。
 しかし,商標法がこのような同一商標の類似商品・役務間での商標権の分割及び別々の商標権者への移転を許容するものである以上,使用された商標と他人の商標の同一性又は類似性及び商標に係る商品・役務の類似性のみをもって,法53条1項の「混同を生ずるものをした」に該当すると解することは相当ではない。また,このように解すると,類似関係にある商品・役務について分割された商標権の譲渡を別々に受け,それぞれの登録商標又はその類似商標を別々の使用権者に使用させた各商標権者は,法53条1項に基づき当然に相互に相手方の有する商標登録の取消しを請求することができることとなり,不当である(立法としては,上記のような商標権の分割・移転に関する法52条の2を法53条の特則としても位置づけ,商標権者だけでなく,使用権者にも,「不正競争の目的」を要求した方がより明確であったと解されるが,現行法の解釈としても,できる限り,これと同様の結果となるように解釈すべきである。)。
以上によれば,分割された同一の商標に係る二以上の商標権が別々の商標権者に帰属する場合に,一方の専用使用権者又は通常使用権者が,法53条1項における,「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるものをしたとき」に該当するというためには,法52条の2の規定の趣旨を類推し,使用商標と他人の商標の同一性又は類似性及び使用商品・役務と他人の業務に係る商品・役務の類似性をいうだけでは足りず,専用使用権者又は通常使用権者が,登録商標又はその類似商標の具体的な使用態様において,他人の商標との商標自体の同一性又は類似性及び指定商品・役務自体の類似性により通常生じ得る混同の範囲を超えて,社会通念上,登録商標の正当使用義務に反する行為と評価されるような態様,すなわち,不正競争の目的で他の商標権者等の業務に係る商品ないし役務と混同を生じさせる行為と評価されるような態様により,客観的に,他人の業務に係る商品・役務と具体的な混同のおそれを生じさせるものをしたことを要するというべきである。
(2) そこで,チヨダによる使用権者商標の具体的な使用態様が,引用商標と本件商標自体の同一性や,「サンダル等を除く履物」(具体的には,スニーカー)と,「サンダル」という原告商品と使用権者商品の種類自体の類似性により通常生じ得る混同の範囲を超えて,社会通念上,本件商標の正当使用義務に反する行為と評価されるような態様,すなわち,不正競争の目的で他の商標権者等の業務に係る商品ないし役務と混同を生じさせる行為と評価されるような態様により,客観的に,原告の業務に係る商品等と具体的な混同のおそれを生じさせるものといえるかどうかについて,検討する。・・・
ウ 上記イのとおり,使用権者商品は,原告商品と,商品の3箇所に商標を付しているという点で共通するのみならず,複数存在する本件ブランドに係る商標のうち,各箇所に使用された商標の種類も,商標を付す位置もほぼ同一の商標を,原告商品と酷似する形状・デザインの類似の種類の商品に付しているものである。このような使用権者商標の具体的な使用態様に加えて,使用権者商品(サンダル)の性質や使用権者商品が紹介されていた雑誌が原告の商品が紹介されていた雑誌と共通すること(前記1(3)ウ及び(4)ウ)からすれば,使用権者商品の需要者も原告商品と同じ20歳前後の若年層を含むと認められ,両商品は需要者及び取引者を共通にしていること,両商品は,大手靴量販店であるチヨダの店舗で同じ棚に並べられて販売されていたという取引の実情をも考慮すれば,チヨダによる使用権者商標の使用態様は,単に原告使用商標と同一又は類似する,及び「履物(サンダル等を除く。)」と「サンダル等」という商品の種類が類似すること自体により通常混同が生じうるという範囲を超えて,当時,需要者及び取引者の間において原告の販売する商品の表示として認識されていた原告使用商標の具体的な使用態様と酷似していたものというべきであり,そのような使用権者商標の使用により,取引者及び需要者に,使用権者商品も,「Admiral」商標に係るスニーカーを販売する者(原告)と同一の出所に係るものであるとの認識を生じさせる具体的な混同のおそれを生じさせたものといえる。
 以上によれば,チヨダによる使用権者商標の使用は,社会通念上,本件商標の正当使用義務に反する行為と評価されるような態様,すなわち,不正競争の目的で他の商標権者等の業務に係る商品ないし役務と混同を生じさせる行為と評価されるような態様により,客観的に,原告の業務に係る商品等と具体的な混同のおそれを生じさせたものということができ,法53条1項本文の「他人の業務に係る商品・・と混同を生ずるものをしたとき」に該当するというべきである。」

4 検討
 スニーカーと「クロッグサンダル」とは違うとは言え,チヨダのクロッグサンダルは,ほぼスニーカーと言ってもよい位似ているし,商標を付する位置も似ているのでダメだ~ってわけですね。

 まあ,こりゃ仕方がないですね~。上の写真を見ると,こりゃスニーカーの方にフリーライドしたかなあって感じがしますね。

 とは言え,条文にはない要件を課したことで,そりゃそうなんだけど,これからいちいち分割の商標権的なものなのか,そうじゃないにせよ要件を加重すべきものなのか,いやいや通常とおり,書かれざる要件など課す必要はないなどの検討をせねばならない~ってわけですかね~。そりゃ面倒くさいですなあ。

 ちなみに,これ,原告の方が,チヨダに対して,侵害訴訟を提起してもいけるのではないでしょうかね。使用権の抗弁等は成り立たないでしょう。
 ですので,むしろ今回の審決取消訴訟は,侵害訴訟等への地ならしなのではないかと思います。恐らく,チヨダは,和解等せざるを得ないって感じですね。

5 追伸
 そうそう,昨日の大阪の住民投票の話もしておきましょう。なんつっても,このブログ,政治も宗教もどんと来い~,つまりは,人の心がざわつくような所も,射程内ってわけです。

 個人的には橋下っちゃんのファンなので,実に残念な結果でした。ま,男の批判の9割は嫉妬ですから,橋下っちゃんを批判する人が多いのはよくわかります。弁護士でも多いですから,びっくりですな。

 まあ橋下っちゃんはそれとして,今回の結果で実に気になることがネットで話題になっておりました。
 それは横と縦です。

 まずは,横です。
朝日新聞のデジタル版にこんな記事がありました。
 「年代別にみると、とくに賛成した人が多かったのは20代(61%)と30代(65%)。40代(59%)、50代(54%)、60代(52%)も賛成が過半数を占めた。一方、70歳以上は反対が61%で賛成を上回った。」

 つまり,60代までは全ての年代で,賛成が上回っていたのです。ところが70歳以上の反対で,全てはおジャンってことです。各世代の人数がわかりませんが,この結果を見ると,70歳以上で投票した人は無茶苦茶多いってことがわかります。
 結局,各世代の意向とは関係なく,70歳以上の人達の意向で決まったと言えます。

 もしかすると,上記の地図による横の分布にしても,単に若い人が多い地域と年寄りの多い地域の分布に過ぎないのかもしれませんね。

 いやあ,しかし,このようなことだと非常に頭が痛いです。今回の住民投票も,あと10年,いや5年後にやれば,相当に違った結果になったのではないでしょうかね。

 まあこのような結果は分かっている人には分かっていたのかもしれません。そう,日本の今イチバン大きな問題は,この老若問題じゃないでしょうか。

 イノベーションをイチバン阻害するのは何だと思いますか?それは過去の成功です。シャープもソニーもそれに囚われ,パナソニックは一から始める所で,漸く立て直したわけです。
 人間も同じですね。私ねえ,またはっきり言いますけど,年金をもらえる歳と選挙権の歳ってトレードオフにした方がいいと思いますよ。
 20歳未満の人に選挙権はないのですよ。70歳を超える人は選挙権なしにしてもいいんじゃなーいかなあと思います。

 私の業界,弁護士もそうですよ。70歳を超えたら,一律資格停止にしたらいいんじゃなーいですかね。強制定年ですわ。
 過去の成功体験なんぞクソ食らえ,果敢に失敗できるようにするためにも年寄り連中を早い所墓場に連れていくことが是非とも必要ですよ。

1 概要
 本件は,原告(興和)が,被告(共和薬品工業)に対し,別紙被告標章目録記載1ないし3の各標章(被告各標章)を付した薬剤を販売する被告の行為は,商標法37条2号により原告の有する商標権(「PITAVA」と標準文字で書してなる商標。指定商品を「薬剤但し,ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤を除く」とする商標登録第4942833号の1に係る商標権と,指定商品を「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」とする商標登録第4942833号の2に係る商標権)を侵害するものとみなされると主張して,同法36条1項及び2項に基づき,同薬剤の販売の差止め及び廃棄を求める事案です。

 これに対して,東京地裁民事29部(嶋末さんの合議体ですね。)は,原告の請求をいずれも棄却しました。要するに,商標権侵害なし!ってやつです。

 おっと,また出たピタバスタチン商標の事件ですね~。以前も,このブログで書きました。

 で,その後もこのピタバ商標の事件はかなりあり,しかもどれもこれも原告興和の側敗訴に終わってました。

 なので,疑問に思っていたのですね。傍から見ると何でこんなもん(商標的使用じゃないとか,普通に用いられるだけ~とかでダメになりそう。)で,こんなたくさん訴訟をするのだろう~,何か悪いもんでも食った?ってなところがあったからです。

 でも,今回の判決を読んで,わかりました~いやあ,こりゃやるかもね,ってことが。

2 問題点
 問題点は,相変わらず,商標的使用です。その他,今回無効の抗弁が効いてます。ですので,メインは無効の抗弁(公序良俗違反)でしょうかね。

 条文はこちらです。
第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
 七  公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標

 パターンはわかりますよね。オ○コ,オマン○,チン○なんてだめでしょうね。
 商標の審査基準を見てみると,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音である場合並びに商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれるものとする。」と書いてあります。

 このブログを見ている知財関係者は多いと思いますので,いちばん馴染みのあるのは,特許管理士でしょうね。弁理士会が会を挙げての撲滅に乗り出して,見事この公序良俗違反で討ち取ることができたものです。

 最近では,剽窃系ですね。よく中国で日本の有名な商標が勝手に出願・登録されて,本家なのに,取り戻しとか登録取り消しに苦労した~っていう例を聞いたこともあるんじゃないですかね。
 でもね~,いまだ日本でも多いのですよ。欧米のこれから来るであろう,アパレルとか商品のブランドを先駆けて日本で取っておいて(そこまで特許庁の審査官もわからない~。フランス語とかドイツ語とかで,辞書で引いて載っているだけだとブランドかどうかなんてわかりませんからね。),日本に進出してきたときに,正規代理店とか日本法人とかに高く売りつける~なんてそこそこ聞きますからね。所謂商標ゴロってやつです。

 こういうのも公序良俗違反でNGとなりえます。

 兎も角も,この公序良俗違反って,くらって一番恥ずかしい拒絶,異議,無効事由じゃないですかね。

 で,本件その一番恥ずかしい事由が問題となったのです。何故か~というとだな~。

3 判旨
「ア 商標法4条1項7号は,商標登録を受けることができない商標として,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」を規定しているところ,ある商標を指定商品又は指定役務について使用することを特定人に独占させることが著しく社会的妥当性を欠くと認められるような場合には,当該商標は,同号に該当するものと解するのが相当である。
イ これを本件についてみるに,前記前提事実,前記2の認定事実及び弁論の全趣旨(当裁判所に顕著な事実を含む。)を総合すれば,①本件商標を構成する「PITAVA」の文字は,医学分野の学会発表や研究報告において,「Pitavastatin」(原告商品及び被告各商品の有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」について,塩に関する記載を省略した「ピタバスタチン」の英語表記である。)の略称として用いられている「Pitava」を大文字で表記したものであること,②被告各標章を構成する「ピタバ」の文字は,被告商品の有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」について,塩に関する記載を省略した「ピタバスタチン」の略称として用いられるものであること,③原告は,平成15年9月以降,ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする原告商品を製造販売してきたが,同商品の販売に当たり,本件商標を使用したことはないこと,④原告は,本件特許権の存続期間が平成25年8月3日をもって満了し,同年12月以降,原告商品に対する後発医薬品の製造販売が開始されたことを受けて,当該後発医薬品の錠剤自体に「ピタバ」との記載を付している会社(キョーリンリメディオを除く。)に対して,商標権侵害訴訟を提起したこと,⑤上記後発医薬品(被告各商品を含む。)の錠剤に「ピタバ」との記載がされた趣旨は,取違えを回避することを目的とした厚労省通知及び日本ジェネッリク製薬協会の要請に従おうとしたものであることが,いずれも認められる。
 そうとすれば,原告による本件商標に係る商標登録出願は,本件特許権の存続期間満了後,原告のライセンシー以外の者による後発医薬品の市場参入を妨げるという不当な目的でされたものであることが推認されるばかりか,本件商標を指定商品「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」に使用することを原告に独占させることは,薬剤の取違え(引いては,誤投与・誤服用による事故)を回避する手段が不当に制約されるおそれを生じさせるものであって,公共の利益に反し,著しく社会的妥当性を欠くと認めるのが相当である。
 なお,付言するに,原告のような先発医薬品を製造販売する者が後発医薬品の市場参入を阻止したいと考えること自体は,無理からぬところであるが,その手段は,特許権など医薬品それ自体に関する権利の行使によるべきであって,化合物の一般的名称である「ピタバスタチンカルシウム」の略称として用いられる「PITAVA」の文字を標準文字で書してなる本件商標と,薬剤の取違えを回避するため被告商品の錠剤表面に印字された「ピタバ」(有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」の略称として用いられることは,前示のとおりである。)との文字からなる標章(被告標章)とが類似する旨主張することは,公益上,容認することができないというべきである。」

4 検討
 まあ,上記の判旨を見て下さいな。
 要するに興和としては,ゾロ品(後発医薬品のことを先発医薬品会社は,侮蔑をこめてこう言うのですね。)を商標で食い止めたかったというわけですわ。

 漸く,わかりましたよ。こんな筋の悪い事件を何度も何度も何度も起こした理由がねえ。
 しかし,原告の代理人見るとわかりますが,超一流の事務所ですね。こんな事務所でもこの手の事件受けるんだねえって感じですね。

 ま,上記判旨のなお書見てください~。嶋末さんのところもよっぽど腹にすえかねたんですね~。とは言え,今回被告が公序良俗違反というのを引っ張りだしたおかげで,事件の真の様相が明らかになったのは良かったと思いますわ。

 知財と言っても実に人間臭いもんですなあ。
 と言っても私は人間嫌いですから,人間臭いものもあんま好きじゃないですけどね。ムハハハ。

 あと,商標的使用の方ですが,この事件でも,原告の主張から書いてあります。他の抗弁事由については,被告の主張から書いているのにも関わらず,ですよ。

 本当,改正法は4/1を過ぎて施行されておりますので,今後どうすんのかなあ。商標法26条1項5号までは抗弁で,6号だけは請求原因になるっていうのも有りかもしれんなあ,立法者の意図とは違っても。

5 追伸
 毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーでございます。
 
 本日はここ北品川の運河に来ております。今日も東京は暑いですね。水木金と,30度近い暑さとなっております。まあ私は暑いの好きなので,どうってことない温度です。
 それに,こういう運河沿いを歩くと結構涼しくて乙なもんです。
 そうそう,現在の元ソニーの本社の模様です。
 
 随分,小さくなりましたね。恐らく殆ど建て壊しは終了したのではないかと思います。シャープといい,人も会社も生成し消滅する定めなのですね~ムホーン。
 
 で,山本橋です。桜も草も青々しています。消滅するものあれば,生成するものもあるってことです。
 いやああっちいあっちい,今日もビールが旨そうだ~。おっと,今年の健康診断の日が決まったから気をつけないといけないなあ。

1 商標制度に新しいタイプの商標が加わって10日余り,個人や業者を初めとしていろんなウェブサイトで,その評価や論評等も見られるようになりました。

 でも,こういうのって,行政の制度ですので,大元の行政から出る報告書にしくものはなし~ってことで,4月1日からの10日間でのまとめが発表されました(音以外ですね。)。それが首記のものです。

 で,この中に発表資料がpdfでまとまっているのですが,これが実に参考になります。

 今後,新タイプの商標を出願する際には必ず目を通しておいて方がいいと思いますよ。

2 ですので,単なる紹介じゃあつまらないので,ちょっとコメントもいれておきましょう。

 まず新タイプの商標それぞれの出願数です(4/1-4/10)。
  音  色彩  位置  動き ホログラム
  166  203  103  37   3

 まず,びっくりするのが,色彩ですね。すごい出願数です。確か審査基準の説明会の説明だと,原則として識別力なし~高いハードルがありますよ~という話だったのですが,皆さんチャレンジャーですね。
 識別力なしというのは,逆に言えばそのようなものを自分の権利とできればすごく価値があることですので(私が,「理系弁護士」の登録商標を手にしたらどうなるか考えてみましょう。),ダメ元でのチャレンジもあったのでしょうね。

 それでもびっくりです。

 あと,ホログラムって意外と出願ないのですね。まあ,わざわざ出すほどのことはないってことでしょうかね。
 
 ということで,色彩とホログラムの,この出願数の差を見るにつけ,今のブランド戦略が見えてくるって言うのは言い過ぎでしょうかね。

3 つぎに,別紙に公報を抜き出した一例がたくさん載っており,これがこの発表資料の肝ですね。
 例えば,色彩ですが,久光製薬(2015-29831)や大幸薬品(2015-29858)はわかりますよ。でも,円谷プロダクション(2015-29855)やはたまた日本精工(2015-29891)って・・・なかなかアグレッシブです。ベアリングの梱包に色をつけるんですかねえ,よくわかりません。

 あ,ほんで色彩といえば,これ,ルブタンですが,ちゃんと出願しております(2015-29921)。指定商品は,当然「25 類 女性用ハイヒール靴」ですね。
 あとプラレールって一部赤いやつやら緑のやつもあるのですが,まあそういうのはいいのですかね(2015-29940)。

 位置の商標については,これは勘違いしているのではないかと思われる出願が多いのですが,これは私の勘違いですかね。
 審査基準にも,「原則として、位置そのものについて、要部として抽出することはしない。」「標章に自他商品・役務の識別機能が認められない場合
商品に付される位置等によって需要者及び取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察しなければならない。」とあります。
 ですので,標章に識別力がないとなかなか登録できないのではないですかね。逆にこれで識別力があるなら,位置の商標じゃなく色彩の商標でいいんじゃな~いというのもありますが。

 まあ実に興味深いです。このままの資料で,登録できたかどうかまとめて欲しいものです。

 動きの商標とホログラムの商標は特段面白みはありません。もともと識別力のあると思われる標章を動かしたり,ホログラム化しているだけですからね。

 兎も角,このサイトと発表資料は,実務家必見です。商標にさほど詳しくなくても,興味のある担当者などもですね。調査のやり方まで載っており,いやあ経産省系は親切だなあと思いますね,いやお世辞抜きに。

 単なる役所のくせにどっかの偉そうにしている所は本当見習って欲しいもんですよ。

4 追伸
 毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーでございます。
 本日は,ここ山本橋に来ております。
 
 東京は今日も雨!です。もう散歩もコース取りが大変です。濡れにくいコースはあることはあるのですが,飽きてしまいますからね。

 桜も葉桜となったのですが,こうもジメジメした天気が続くと本当嫌になってしまいますねえ。しかも降りが結構強いのですよ。

 明日くらいはいい天気になって欲しいですニャー。

 
 
1 概要
 本件は,原告(シャープ)が商標権者である下記の商標(本件商標権)の指定商品の一部の登録について,被告(JST)が商標登録無効審判請求をしたところ,特許庁が指定商品の一部の登録を無効とする審決(商標法3条1項3号に該当)をしたことから,原告がその取消しを求めた審決取消訴訟の事案です。

 これに対して,知財高裁1部(所長の設樂さんの合議体ですね。)は,原告の請求を棄却しました。つまりは,審決とおりでよし!ということですね。

 例のシャープのIGZO商標の関係のやつです。報道だとこんな感じですかね。ある意味予想とおりです。

 商標権は,以下のとおりです。
商標 IGZO(標準文字)
 登録番号 商標第5451821号
 指定商品(ただし,後記の商標権分割前のもの。そのうち,下線部分が本件無効審判請求の対象となった指定商品である。)
 第9類「電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,電池,電線及びケーブル,配電用又は制御用の機械器具

 ポイントはIGZOが標準文字だということです。

 審決を見てみましょうかね。
「(1) 「IGZO」の文字は,本件商標の登録査定時前において,研究者など一部の限定された者にとどまらず,液晶ディスプレイや半導体の分野のエレクトロニクス業界において,「In(インジウム),Ga(ガリウム),Zn(亜鉛)及びO(酸素)の複合物からなる酸化物」を表すものとして,広く知られていたといえる,
(2) 本件商標の指定商品において,「電子応用機械器具及びその部品」には,半導体素子や電源回路の半導体等が含まれ,また,「電気通信機械器具」には,前記液晶ディスプレイ・パネル等が含まれる,さらに「電池」や「配電用又は制御用の機械器具」には,蓄電池や蓄電器等が含まれるものであって,これらの関連商品として,蓄電状況を表示するモニターや停電時に視認しやすい液晶パネルを有した商品がある,そして上記商品は,事業者間での取引に供される機械器具の部品,あるいは関連商品といえ,最終消費者ではない事業者が需要者(取引者を含む。)となる商品が多々含まれるものである,
(3) 以上を総合すると,本件商標の登録査定時において,本件商標を構成する「IGZO」は,上記商品を構成する原材料の一つを示すものとして使用され,少なくとも上記(2)の商品に係る事業者(取引者・需要者)の間において認識されていたといい得るものである。そうすると,本件商標は,請求に係る指定商品に使用した場合,その商品の原材料を表したものとして認識されるものであるから,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであるというのが相当であり,本件商標は,請求に係る指定商品について,商標法3条1項3号に該当し,その余の点について判断するまでもなく同法46条1項1号に基づき,登録を無効とすべきものである」

 原告が商標権の分割をしていますので(商標法24条),若干ややこしいのですが,大勢に影響なしって所です。

2 問題点
 問題点は,上記の審決のとおり,商標法3条1項3号の該当性ですね。

 商標法3条1項3号です。
その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

 こういう商標に該当すると登録を受けられないことになっております。所謂記述的商標はダメ!ってやつです。

 有名なのは,「熱処理をしていないビール風味の麦芽発泡酒」に「本生」という商標を使用しても,「これに接する需要者をして,単に商品の品質を表示したものと認識させ,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといえる。これを特定人に対して,自他商品の識別目的で,独占使用させることは適当でないと解する。」と判断した知財高裁平成18年(行ケ)10374号 (平成19年3月28日判決)ですね。

 こんなやつ誰の商標かわからず(識別力なし),しかも皆が使えるようにしないといけない(品質などを記述しただけなので。独占適用性なし。)ということで,登録できないようになっているわけです。

 なので,今回のIGZOもこういう所が問題になったわけです。

 あ,そうそう,商標には標準文字という制度があります(商標法5条3項)。特別なフォントや飾り文字やロゴ付きのものは,目で見てパッと目立ったり,印象に残ったりすることもありますが,他方,容量を食ったり,それじゃあねえよ,こっちのこのフォントなんだよっていう面倒な場合もあります。なので,出願人があんまり拘らない場合は,ふつーうのフォントでいいわけです。
 出願を受ける特許庁としても,面倒くさくなくていいですよね。

 標準文字は,そんな制度なのですが,逆に奇をてらってるわけではないので,いざ登録になった場合,ロゴ付きや飾り文字の商標に比べて,権利範囲は広いのではないかと言われております(上記の条文にも,「普通に用いられる方法で表示する」ってありますもんね。)。
 でも,その分,登録のハードルは高いのです。

 本件の場合,以前このブログでも書いたとおり,なかなかこの審決の判断を打ち破るのは難しいと思われましたが・・・,判決に行きますかね。

3 判旨
「(1) 商標法3条1項3号は,自己の業務に係る商品について使用をする商標について,「その商品の産地,販売地,品質,原材料・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は,商標登録を受けることができないと定めている。同号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは,このような商標は,①商品の産地,販売地その他の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,②一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁〔ワイキキ事件〕参照)。
 また,上記3号の趣旨からすれば,商標登録出願に係る商標が3条1項3号にいう「商品の原材料を普通に用いられる方法で表示する商標」に該当するというためには,必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する材料を現実に原材料としていることを要せず,需要者又は取引者によって,当該指定商品が当該商標の表示する材料を原材料としているであろうと一般に認識され得ることをもって足りるというべきである(3号にいう「商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する商標」につき同旨,最高裁昭和61年1月23日第一小法廷判決・裁判集民事147号7頁〔ジョージア事件〕参照)。
(2) そこで,本件各商標の3条1項3号該当性について検討する。
ア 本件商標は,「IGZO」を標準文字で表してなるものである。そして,上記2の認定事実によれば,①「IGZO」の語は,平成7年に,新規な物質として公表された「In(インジウム),Ga(ガリウム),Zn(亜鉛)及びO(酸素)からなる酸化物」(本件酸化物)を指す語として紹介され,使用されるようになったこと,②平成16年頃からは,本件酸化物についての研究,開発がディスプレイ分野や半導体分野のエレクトロニクス業界の企業等で活発に行われるようになり,平成22年1月に東京工業大学で開催された国際ワークショップには,国内の多数の企業関係者が出席し,本件酸化物(半導体)に関する研究内容を紹介したこと,③本件商標の登録査定時には,既に,多数の大手企業が,本件酸化物に関する研究開発を実施し,1000件以上の本件酸化物に関する特許出願をしていたのみならず,本件酸化物(材料)自体の製造や,本件酸化物を用いた半導体素子を製造する設備の展示会等での展示や受注,本件酸化物を使用した技術の開発,実用化に向けた試作等を行っていたものであり,ディスプレイ分野や半導体分野のエレクトロニクス業界に属する企業等において,半導体材料としての本件酸化物への関心が高まっていたこと,④具体的には,本件酸化物を使用したTFTは,当時,液晶テレビ,スマートフォン等の製造に使用される液晶パネルや有機ELパネルの機能を大幅に向上させることが可能なものとして注目されるとともに,多くの新しい特徴を持つ期待の新材料として,ディスプレイの分野だけではなく,太陽電池,不揮発性メモリー,紫外線センサーの分野での利用も見込まれていたほか,電子荷札(ICタグ)に使用するRFID(無線自動識別)チップ,パワー半導体,小型の電子ペーパーなどの携帯端末における利用の技術開発も進んでおり,本件酸化物を用いた半導体素子の応用開発,研究がされ,今後幅広い範囲の電子デバイスの性能を向上させ得るものとして期待されていたこと,⑤このような本件酸化物の研究開発の進展,広がりに伴って,本件酸化物を指す語としての「IGZO」の語も,本件商標の登録査定時には,既に上記のとおり幅広い企業の特許出願書類中において使用されるようになっていたのみならず,上記企業による製品の開発状況等を報道する新聞,雑誌や企業広報等においても,本件酸化物を指す語として「IGZO」の語が使用されるようになっていたことが認められる。
 以上によれば「IGZO」の語は,本件商標の登録査定時には,技術者だけではなく,ディスプレイや半導体を用いる分野のエレクトロニクス業界に属する企業等の事業者において,新規な半導体材料である「インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物(本件酸化物)」を意味する語として,広く認識されていたものといえる。
イ そして,本件商標(IGZO)が,その指定商品である「液晶テレビジョン受信機」(本件商標4),「ノートブック型コンピュータ」(本件商標5),「ノートブック型コンピュータ,タブレット型携帯情報端末を除くコンピュータ」(本件商標6),「タブレット型携帯情報端末」(本件商標7),「スマートフォン」(本件商標8),「携帯電話機」(本件商標9)について用いられた場合,これらの指定商品は,いずれもその構成部品の一つとしてディスプレイパネルを含むのが通常であり,また,ディスプレイパネルの性能が商品の品質に重要な影響を及ぼすものであるから,これらの指定商品に係る商品を製造,販売する企業等,すなわち,これらの指定商品の取引者であり,また,需要者の一部にも含まれる者である事業者は,本件商標の表示する本件酸化物が,各指定商品のディスプレイパネルに使用されているものと一般に認識するものといえる。したがって,本件商標4ないし9は,取引者及び需要者が,本件商標4ないし9の指定商品が,商標の表示するもの(本件酸化物)を原材料の一つとしているであろうと一般に認識するものであるから,指定商品との関係で自他商品識別力を有するということができない
 また,本件商標1の指定商品は,「①携帯電話機,スマートフォン,タブレット型携帯情報端末,液晶テレビジョン受信機を除く電気通信機械器具及び②タブレット型携帯情報端末,コンピュータ,ノートブック型コンピュータを除く電子応用機械器具」,本件商標2の指定商品は,「①電子応用機械器具の部品,②電池,③配電用又は制御用の機械器具」であるところ,これらの指定商品に係る商品には広範囲の機械器具やその部品が含まれ得る。例えば,本件商標1の指定商品のうち,上記①の電気通信機械器具に係る商品には,電気通信機械器具の部品であるディスプレイパネル自体が含まれるほか,ディスプレイパネルがその構成部品の一つとして通常含まれるデジタルカメラやビデオカメラ,半導体素子がその構成部品の一つとして通常含まれる無線通信機械器具等も含まれ,上記②の「電子応用機械器具」に係る商品には,電子計算機用ディスプレイ装置が含まれるほか,半導体素子がその構成部品の一つとして通常含まれる電子式卓上計算機,電子辞書等も含まれる。また,本件商標2の指定商品のうち,上記①の「電子応用機械器具の部品」に係る商品には,トランジスタを含む半導体素子や電子回路自体が含まれ,上記②の「電池」に係る商品には,ディスプレイパネルを構成部品の一部とすることがある蓄電池が含まれ,上記③の「配電用又は制御用の機械器具」には,ディスプレイパネルや制御のための半導体素子がその構成部品の一部として通常含まれる配電盤が含まれる。さらに,前記認定事実のとおり,本件商標の登録査定時において,本件酸化物が,現代の多くの電子デバイスにおいては必要不可欠な構成部品である半導体素子の新規な材料で,かつ,その性能が従来の材料にはないものとして,ディスプレイに限らず,今後幅広い範囲の電子デバイスの性能を向上させ得るものとして期待され,注目されていたこと,本件酸化物を用いた半導体素子はその用途が研究開発中の新規なものであり,エレクトロニクス業界に属する事業者にとっても具体的な電子デバイスへの適用の仕方は特定されていなかったことからすれば,本件商標を,本件商標1及び2の指定商品の器具等について使用すれば,これらの指定商品に係る商品を製造,販売する企業等,すなわち,これらの指定商品の取引者であり,需要者の一部にも含まれる者(なお,本件商標2の指定商品のうち,「配電用又は制御用の機械器具」の主たる需要者は,一般消費者ではなく,事業者であることは原告も自認しており,その余の同商標の指定商品及び本件商標1の指定商品に係る商品にも,事業者が主たる需要者となることが明らかな商品が多数含まれている。)である事業者によって,当該商品が本件商標の表示する材料(本件酸化物)をその原材料として含んでいるのであろうと一般に認識され得るものといえる。そうすると,本件商標1及び2も,それらの指定商品との関係で自他商品識別力を有するということはできない。
ウ さらに,前記のとおり,本件酸化物が,現代の電子デバイスにおいては必要不可欠な構成部品である半導体素子の新規な材料であり,かつ,その性能が,ディスプレイパネルを代表とする幅広い範囲の電子デバイスの性能を向上させ得るものとして期待,注目されており,ディスプレイ分野や半導体分野に関連するエレクトロニクス業界の幅広い企業等において実用化に向けた研究開発がされていたことからすれば,本件商標は,ディスプレイパネルや半導体素子が原材料として認識され得る本件各商標の指定商品に係る商品の取引に際して,必要適切な表示として,何人もその使用を欲するものであるといえるから,特定人によるその独占使用を認めることが公益上適当であるともいえない。」

4 検討
 上記のとおり,本件の商標は,識別力もないし,独占適用性もないってわけですね。まあ,審決に+して独占適用性の話が加わったのがポイントかもしれません。
 そうすると,今回の事件で3条2項の適用を主張してもダメだったのかなあと思いますね。

 3条2項って要するに,シャープがずっと使い続けたため,もうIGZOと言えばシャープのアレだという風になった場合ですね。
 ただ,3条2項って条文上は,識別力のことしか書いていないようにも見えます。つまり,識別力が生じてしまえば,どんなに独占適用が不適な言葉であっても,商標登録できるようにも読めるわけです。

 とは言え,IGZOと言えばシャープのアレとなるような識別力が生じる場合には,きっとシャープしかその言葉を使っていないでしょうから,独占適用性も識別力の中に解消され,大きな問題にはならないのかなあと思います。逆に言えば,独占適用が不適なら,みんな使うでしょうから,シャープしかその言葉を使うようなことにはならないってことですわ。

 ということもあり,今回,シャープは3条2項の主張はしなかったようです。まあ,この標準文字のIGZOについては,負けて元々,取れれば儲けものくらいのスタンスなのではないかなあと思います。

 これも前にこのブログでも書いたのですが,シャープが標準文字のIGZOを使うのを止められたわけではありませんから。他の会社や組織も使えるわけなので,シャープが使えない理由もないってわけです。
 知的財産権って,基本でっち上げの権利ですので,権利がなくなれば,そこが穴ぼこになるわけでありません。誰でも使える公共財になるだけです。

 ま,IGZO自体は,私のような元・半導体のデバイス・プロセスエンジニアからすると非常に面白い素材であり,デバイスですので,末永く活躍して欲しいものです。

5 追伸
 今日も散歩はしたのですが,別の話です。

 年度末ですので,様々な整理をしていたりもするのですが,偶然面白いものを見つけました。
 
 サラリーマン時代の名刺です。同じものが何枚かあったので,恐らく最後の名刺なのだと思います(異動していないのに,所属の部署名がよく変わったのですね~。)。

 いやあ懐かしいですね。もう14年も前になるとはびっくり~,ということは今頃,初体験の短答目指して勉強してたころっていうわけですね(溜まっていた有給を使うため,3月は全休したはず。)。

 昔ソニーに居たっていうのは,あながちウソじゃないってことですかね(そこは誰も疑ってませんかね。)。
1 本日は結構寒い東京です。

 そんな中,先ほどまで虎ノ門にあるニッショーホールにて,特許庁主催の首記の説明会に行ってました。

 いやあ,結構な人でした。ニッショーホールの定員は,500名くらいなのですが,ほぼ満員でしたね。しかも,今回,東京は2回めで,1月にもあったのです。それでこの調子~♪
 さらに3月に3回めがあるのですが,これも既に満員~特許法の改正よりもよっぽどの関心ぶりですよね(ま,そりゃ当たり前ですな。救済規定の新設なんか別にそんな勉強する必要はないし,異議申立ても復活するだけでほぼ昔のままと言っていいですからね。)。

 やはり,商標法の場合,保護の対象が増えるわけですから,そりゃあ切実ってやつです。

2 で,今回は別に改正法そのものの説明会ではありません。法曹に言わせれば,単なる一行政機関の解釈であり法規範ではない,末端のマニュアルの改訂の説明会に過ぎないものです。

 でも,そんなマニュアルの改訂と言えども,実務はこれで動いているわけですので,商標登録出願等がメインの商標実務家には非常に大事な話です。実際,保護の対象が増えたのは小売役務商標以来かもしれませんが,それ以上の,役務商標が保護の対象になって以来の大改正かもしれませんね。

 特に商標の場合,特許以上に商標の審査基準で動いている所があります。
 というのは,特許の場合,クレーム解釈が構成要件充足性のときと,無効の抗弁とで異なります。他方,商標の場合,権利侵害を判断する場合の類否と,登録性を判断する場合の類否で同じ基準を使います。そして,登録性を判断する場合の類否の基準って,審査基準にたくさんたくさん載っております~,これは権利侵害の判断のときも参照せざるを得ない,すなわち裁判所も実は参照している~ってやつです。

 そんな重大なものの改訂ですから,こりゃちょっとでも商標の実務をやっている人は何が何でも聞く必要があるわけです。勿論,自分で勉強してもいいとは思いますが,自分でやると改正法適用の4/1に間に合わないのでは~ということもありますよ~要注意ですよ(後で述べます。)。

 内容は,まああんまりつっこみません。行った者の財産だし,何より,そんなこと言ってたっけ?で間違ったことを私が言ってる場合に,おまえを信じて権利取得に失敗したじゃんっていうときの責任は取れませんもんね。
 
 とは言え,若干サービスで書いておきますと,色彩のみからなる商標は,相当にハードルが高そうです。立体商標の導入時にもかなりハードルが高いのではと思われたのですが,それ以上だと思います。改訂審査基準の全趣旨からすると,色彩のみからなる商標は,原則として,登録できないと感じられましたね。それほどです。

 あと,今回5つの新タイプの商標が加わります。上で言った色彩のみからなる商標,音の商標,動きの商標,ホログラムの商標,位置商標です。

 このうち,色彩のみからなる商標と,音の商標は,商標の定義自体の法改正によって加わったものです(商標法2条1項)。他方,それ以外の動きの商標,ホログラムの商標は,強いて言うなら,改正商標法5条2項1号にて加わったものでしょう。
 では,位置商標は?これ改正商標法5条2項5号ですかね。だとすると,経済産業省令が必要なのですが,これがようわかりません。つまり,位置商標の根拠は何なのでしょうね。今一番の疑問はそれです。

 さらに言えば,何故,5つの新タイプの商標のうち,色彩のみからなる商標,音の商標については,定義を変えたのに,残り3つについては定義を変えなかったのか?というのも若干疑問です(まあ残り3つは,結局従来タイプのマイナーチェンジということなのだと思いますが。)。

 こういう所が私のコメントとしておきましょう。

3 あと,重要な所は,文書に載っていない部分かもしれません。これは今回の説明を行った特許庁の商標審査基準室の木村室長が最後に述べておったことでしょう。

 一つ目は,従前の改正と異なり,特例措置はないってことです。つまり,4/1でヨーイドンで先願主義に従って処理するということです。
 恐らく,色彩のみからなる商標については,4/1に結構殺到するのではないでしょうか。そのとき,協議できなきゃくじびきで決めるのですよ(商標法8条)。今から綿密な準備をする必要があります。

 2つ目は,音の商標の,やはり入念な準備です。
 音の商標については,商標法5条4項により,「物件」を願書に添付しないといけません。でも,この物件(音の入った,つまり録音ファイル等のことです。),電子出願では対応できません。手続補足書により,別途郵送ないし窓口手交しないといけないらしいです。しかも,出願から3日以内じゃないといけないらしいですよ。
 音の商標を狙っている当事者は,準備に要注意ですね。

 どうですか~,これらのことすら4/1までにきちんと把握しておくためには,やはり説明会に行く必要があるかも~って感じでしょ。いやあ4/1前後の商標実務者(特許庁の審査官も含めて)は,とんでもないことになりそうだなあ。

4 追伸
 上記の位置商標の根拠について,特許庁に質問しました。
 そうすると,今回の説明講師の木村室長自らの回答がありました。木村室長ありがとうございます。

 改正商標法5条2項5号

 商標法施行規則第4条の7

 法律の方は,やはり,商標法5条2項5号ということですね。で,対応する経済産業省令は,商標法施行規則4条の7ということです。

 この経済産業省令は,改正前ということで,なかなか見れないのですが,このパブコメ案そのままになると思いますので,とりあえずそれを見ておけばよいでしょう。

 さーて改正までほぼあと1ヶ月ですよね。どうなるんですかなあ。
1 概要
 本件は,引用商標の商標権者である被告(自然人)の請求に基づき,原告(法人)の有する本件商標がその指定商品の一部に関して商標法4条1項11号(他人の先願登録商標と同一又は類似の商標)に該当するものとしてその登録を無効とした審決の取消訴訟です。

 これに対して,知財高裁2部(清水さんの合議体ですね。)は,訴えを却下しました。
 え!何かの聞き間違いではなく,却下です。前訴の蒸し返しに当たるという判断です。ポカーン。

 この判決を取り上げた理由は,上のとおりです。こういう事例で,却下って何よ?!ってことが気になったからです。さらに言えば,毎年,年明けに一弁の知財系の委員会で判決の紹介をやるのですが,大体私の判決紹介って面白判決の紹介になるのが通例なのですね。何と言っても,へそ曲がりなもんで。
 で,そこで紹介するのに,今のところ一番相応しいかなあって感じもあったからです。

 兎も角も商標はこんな感じです。
 原告の無効にされそうな登録商標です。
 
 
 ①登録番号 商標登録第5244937号
 ②出願日 平成20年11月28日
 ③登録日 平成21年 7月 3日
 ④登録時における商品及び役務の区分並びに指定商品
第14類 身飾品,キーホルダー,宝石箱,宝玉及びその模造品,貴金属性靴飾り,時計
第18類 かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,革ひも,毛皮
第25類 被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴 
 なお,平成25年11月8日,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」についての登録を無効とする旨の審決が確定しております。

 引用商標です。

 
 ①登録番号 商標登録第5155384号
 ②出願日 平成18年10月30日
 ③登録日 平成20年 8月 1日
 ④商品及び役務の区分並びに指定商品
 第14類 貴金属,キーホルダー,身飾品(「カフスボタン」を除く。),貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその模造品,宝玉の原石,時計
 第18類 かばん類,袋物,傘,革ひも,原革,原皮,なめし皮,毛皮
 第25類 洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,乗馬靴

2 問題点
 問題点は上記のとおり,前訴の蒸し返しかどうかですね。

 ま,その前に,訴訟の審理がダブるということは,既判力の話ですから,これをちょびっと。
 民事訴訟法114条第1項です。

 「第百十四条  確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。

 ま,この既判力ってやつの作用によると,訴訟物が同一の場合,基本的に請求棄却になります。それがこの条文の話です。

 で,本件の場合,前訴が,上記のとおり,同じ登録商標についての一部の指定商品に関してのものだったのですね。判決によると,経緯は以下のとおりです。

 「⑴ 被告は,平成24年8月6日,本件商標の指定商品中,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」(以下「別件審判の請求に係る指定商品」という。)についての登録無効審判請求をした(無効2012-890067号。以下「別件無効審判請求事件」という。)。被告は,後記引用商標の商標権者である。
 特許庁は,同年12月3日,本件商標の指定商品中,別件審判の請求に係る指定商品についての登録を無効とする旨の審決(以下「別件審決」という。)をした。
 原告は,別件審決の取消しを求めて審決取消訴訟(平成25年(行ケ)第10008号。以下「別件審決取消訴訟」という。)を提起したが,知的財産高等裁判所は,平成25年6月27日,原告の請求を棄却するとの判決を言い渡した(以下「別件判決」という。)。
 原告は,別件判決を不服として,上告及び上告受理申立てをしたが(平成25年(行ツ)第391号,同年(行ヒ)第411号),最高裁判所は,同年11月8日,上告棄却及び上告不受理の決定をし,別件判決及び別件審決が確定した。

 ということで,審決取消訴訟の訴訟物って難しいのですが(審決の違法性一般),少なくとも今回の争いは,前訴で争いになっていない指定商品についてですから,審理対象のダブリはないのですね。

 こういうのは,よくあるパターンで,一部の凄い重要な指定商品について無効審判を起こして,OKそうなら他の商品についても無効審判を起こしちゃえ~♡というやつです。ですので,審理対象の指定商品がダブることはそもそもあり得ないわけです。

 で,前訴に続いて,審決では,引用商標と類似だよね~だから,商標法4条1項11号に該当するよね~って話になったわけです。

 ですので,原告としては,この審決に違法性がある!と主張しただけであり,裁判所としても,違法性がなく取り消すほどでなければ,請求棄却でいいし,取り消すほどの違法性があれば請求認容となる,ただそれだけのように思えるわけですね。

 ですが,今回の判決は~~。

3 判旨
「1(1) 前記第2の2において認定した事実及び証拠(甲3,乙1)によれば,①原被告間における別件無効審判請求事件において,本件商標と引用商標との類否(商標法4条1項11号)が主要な争点となったこと,②別件審決は,請求人である被告及び被請求人である原告の各主張を踏まえながら上記争点について検討した上で,本件商標は,引用商標に類似する商標であり,商標法4条1項11号に該当するものである旨認定し,本件商標の指定商品中,別件審判の請求に係る指定商品についての登録を無効とするという結論を導いたこと,③原被告間における別件審決取消訴訟においても,本件商標と引用商標との類否が争点となり,別件判決は,別件審決の類否判断の誤りを指摘する原告主張の審決取消事由及び被告の反論を踏まえつつ,別件審決の前記認定の当否を検討した上で,同認定に誤りはなく,原告主張の審決取消事由はすべて理由がない旨判断し,原告の請求を棄却したこと(なお,本件商標が引用商標に類似するとの判断において,別件審判の請求に係る商品のみに限定されるような事情は認められない。),④別件判決及び別件審決は,いずれも確定したことが認められる。
(2) 他方,前記第2の2及び3のとおり,原被告間における本件無効審判請求事件においても,本件商標と引用商標との類否が争点となり,本件審決は,請求人である被告及び被請求人である原告の各主張を踏まえながら上記争点について検討した上で,本件商標は,引用商標に類似する商標であり,商標法4条1項11号に該当するものである旨認定し,本件商標の指定商品中,本件審判の請求に係る指定商品についての登録を無効とするという結論を導いたことが認められる。
そして,本件審決取消訴訟は,原告が,被告との間において,本件商標と引用商標とが類似するという本件審決の上記認定は誤りである旨主張して本件審決の取消しを求めるものであり,争点は,本件商標と引用商標との類否である。
2⑴ 本件審決取消訴訟は,本件審決の取消しを求めるものであり,別件審決の取消しを求める別件審決取消訴訟とは訴訟物が異なる。
 もっとも,前記1のとおり,本件審決及び別件審決はいずれも,原被告間における本件商標の登録に係る無効審判請求事件につき,本件商標が引用商標と類似し,商標法4条1項11号に該当する旨を認定した。したがって,本件審決取消訴訟及び別件審決取消訴訟のいずれも,原被告間において,上記認定をした審決の判断の当否を争うものであり,①当事者及び②本件商標と引用商標との類否という争点を共通にしている。
⑵ この点に関し,本件審決取消訴訟における原告の主張の骨子は,前述したとおり,両商標の外観につき,「ジョリー・ロジャー」又は「頭蓋骨と骨のハザードシンボル」から由来する「基本的構図」という概念を掲げ,「基本的構図」が既に出所識別力を失っているとして,それ以外の構成要素によって類否を決すべきであるというものであるのに対し,別件審決取消訴訟における原告の主張の骨子は,そのような概念を用いず,頭蓋骨及び骨片の位置,眼窩部の形状などといった両商標間の9つの相違点を個別に挙げるというものであり(乙1),両主張の内容に差異があることは,明らかである。
 しかしながら,上記差異は,本件商標と引用商標との類否について異なる観点から検討したことによるものにすぎず,いずれの主張も,両商標が類似している旨認定した審決の判断の誤りを指摘するものであることに変わりはない。そして,本件審決取消訴訟と別件審決取消訴訟との間に,各商標の外観など類否判断の前提となる主要な事実関係について相違があるとは,認められない(前述したとおり,特定の指定商品についてのみ妥当するような判断もない。)。
⑶ 以上によれば,本件審決取消訴訟は,実質において,本件商標と引用商標との類否判断につき,既に判決確定に至った別件審決取消訴訟を蒸し返すものといえ,訴訟上の信義則に反し,許されないものというべきである(最高裁昭和51年9月30日第一小法廷判決・民集30巻8号799頁,同昭和52年3月24日第一小法廷判決・集民120号299頁,同平成10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1147頁参照。)。
 したがって,原告による本訴の提起は,不適法なものとして却下を免れない。」

4 検討
 どうですか~お客さん~。
 そりゃ,登録商標としては同じだから,類否の判断も原則として同じになるでしょうよ。でもさあ,これは無いんじゃないの~,本当。

 上記に判例として挙げた最高裁昭和51年9月30日って,農地買収処分の無効を前提としての,買戻契約に基づく所有権移転登記手続等を求める訴が前訴で,後訴は買収処分自体の無効に基づく所有権移転登記の抹消登記手続に代る所有権移転登記手続等の請求なのですね。

 そうすると,司法試験の答案流に書くと,①実質的に同一の紛争に関わること(蒸し返し),②後訴の主張が前訴でなされた主張と同視できる事情,③訴え提起までの時間の経過等を考え,信義則に照らして許されない場合には,不適法却下もやむ無しってなると思います。

 これを本件で当てはめると,①商標って特許と異なり,「商標登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる。この場合において、商標登録に係る指定商品又は指定役務が二以上のものについては、指定商品又は指定役務ごとに請求することができる(商標法46条1項柱書)。」なので,そもそも同一の紛争じゃないと思いますよ。商標て,自分の使うものだけ消せればよく,だからこそ,指定商品に分けて無効審判を請求するなんて本当よくやります。それ故,指定商品が違ってたら同じ紛争になるわけがない。
 ②だから,実質的に同じ主張としても,前訴でもできた主張になんかなるわけがない,ですよね。③しかも登録はH21年だから,まだ判決の時点で5年程度です。

 何これ!おかしいんじゃないの。ちゃんと請求棄却にすりゃあいいのに。
 裁判所に,何か省エネ指令でも出ましたかね。判決は,長々書いちゃいかん!訴訟要件で切れるやつはそれで切るように,以上!
 てか?昔の横浜地裁での揉め事(しゃべりすぎる裁判官)と真逆ですな。

 こんなんで信義則違反なんて言われたら,審決取消訴訟なんて起こせないよ!これねえ,原告が本人訴訟なもんで,なめられましたかな。いやあ,本当酷いって思いますね。上記のとおり,この事案で,却下の答案なんか書いたら,民訴だけで落ちるんじゃねえの~って思いますけどね。実におかしな判決だと思います。あーまた血圧が上がりそうだ。

5 追伸
 隣の家に塀ができたってね〜カッコイいー〜。
 ソニーの昔の本社に塀ができたってね〜とりこわっしー〜。
 
 ということで,いつものとおり,散歩ついでにソニー通りからの写真です。植込み削除に続き,囲いができました。いやあ本当に取り壊すのですね〜。

 取り壊しの模様も,追って追跡〜♡
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理論物理学者を目指したのはもう30年以上前のこと。某メーカーでの液晶ディスプレイのエンジニアを経て,弁理土に。今は,弁護土です。次は何かな。
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