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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護土の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,「SHIPS」の文字を書してなる商標につき商標権を有する両事件原告(シップス)が,①「SHIPS」の文字列を含むデザインを有する布地を製造・販売する被告ダイワボウテックス株式会社に対して,商標法36条1項,2項に基づき,別紙被告標章目録記載の標章(被告標章)を布地に付すこと及び被告標章を付した布地の販売等の差止め並びに同布地の廃棄を求め(甲事件),②被告ダイワボウテックスから購入した上記布地を販売する被告株式会社Y2に対して,同条項に基づき,同布地の販売等の差止め及び廃棄を求める(乙事件)事案です。

 これに対して,東京地裁民事40部(東海林さんの合議体ですね。)は,ほぼ全部の請求を認めました。要するに,商標権侵害あり!ってわけです。

 ここで,商標の事件を紹介するときの,最近のはやりはただ一つです。それは商標的使用の論点のときですね。ですので,今回もそういうことです。

 前提として,双方の商標を見てみましょう。
 まずは,原告の商標権からです。
 登録番号 第4862594号
 出 願 日 平成15年8月25日
 登 録 日 平成17年5月13日
 
 
 商品及び役務の区分 第24類
 指定商品 織物,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,織物製テーブルナプキン,ふきん,シャワーカーテン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製トイレットシートカバー

 被告の方の使用商標ですが,SHPSの文字列ですね(本当は,コピペしたかったのですが,容量不足でダメでした。判決を見てください。)。
 
 ほんで,被告の販売している布地に関して,「被告商品の図柄には,「SHIPS」の文字列で構成される被告標章が付されている。また,被告商品は,本件商標権の指定商品である「織物」に該当する。」ということでした。

 まあ,こういう前提で,指定商品の同一性は問題ないでしょう。また,商標の類似に関しても言い逃れするのは難しい感じです。あとは,これが商標的使用に当たるか,その他の抗弁事由等が成り立つかということになりそうですね。

2 問題点
 ということで,問題点は,上記のとおり,商標的使用に当たるかどうかです。
 ま,商標的使用自体はいいですよね。かなり詳しくちょっと前の事件で書きましたからね。
 
 で,主張立証責任についても重要だということを述べました。
 ちなみに今回も,判決において
「1 争点(1)(被告標章の使用が商標的使用に当たるか否か)について
〔原告の主張〕
(1) 被告商品において,被告標章(「SHIPS」の文字列)は,単なる図柄の一部として使用されているのではなく,それに接した者が独立の表示として明確に見て取れるように表示されており,出所表示機能を果たしているから,商標としての使用に当たる。・・・・

〔被告らの主張〕
(1) 被告商品に付された「SHIPS」の文字列(被告標章)は,単なる意匠を構成するものであり,商標として使用されているものではない。・・・」

 と,原告から先に書いておりますので,商標的使用は,原告の主張立証責任だと考えていることがわかります。
 ちなみに前の判決は,47部で高野さんの合議体でした。今回40部で東海林さんの合議体ですから,4つある東京地裁の知財部のうち少なくとも2つの部は商標的使用を原告の主張立証責任ある事実だと考えていることになります。

3 判旨
「(3) 商標的使用について
前記(2)のとおり,被告商品においては,30cm四方のデザインの一単位に一つの被告標章が配されているところ,証拠〈略〉によれば,被告標章は,そのデザインの中において,他の文字列から分離して表記されており,その「SHIPS」の文字列は,全て大文字で,かつ,「ANCHOR」の文字列とともに,他の文字列よりもやや大きい文字サイズであり,さらに,他の文字列がいずれも文又は句を構成しているのに対して,この「SHIPS」及び「ANCHOR」はそれぞれ一単語のみで独立して用いられていることが認められる。そして,「ANCHOR」の文字列は,それが意味するところの「錨」のマークの上に配置され,同マークの下の「Anchors can either be temporary or permanent.」の英文を含めて,一つの固まりとして一体的に表示されているのに対して,被告標章は,それが意味するところの「船」ではなく,「錨」のマークの下に配置され,同マークの上の「SINCE1981」の文字列を含めて,一つの固まりとして一体的に表示されている。
 このような被告商品における被告標章の配置,文字の大きさ及び表示態様からすれば,被告標章は,被告商品のデザインの中で,十分に独立して認識可能な標章として表示されているということができる。
 このことに加えて,被告標章が,一般に企業や団体の創業年又はブランドの設立年などを表す際に用いられる「SINCE」の表記を伴い,上記のとおり「SINCE1981」の文字列と一体的に表示されていること,及び,前記(1)のとおり,「SHIPS」の文字列からなる本件商標が服飾品のブランドとして広く一般消費者に認識され強い識別力を持つ商標であることを総合すると,被告商品において被告標章は,その需要者に対して,商品の自他を識別し,出所を表示する態様で用いられていると認めることができる。
 したがって,被告標章は,被告商品において,商標として使用されていると認めるのが相当である。」

4 検討
 被告の反論のポイントは,意匠的・デザイン的に使っているだけで,自他商品等を識別できるような態様で使用しているわけではないぞ!ということに尽きると思います。
 ただ,東京地裁が判断したように,意匠的・デザイン的使用と,自他商品等を識別できるような態様での使用というのは,相反するものではありませんよね。美感を起こさせるようなデザインって,その美感により他社の商品と区別できたりするなんて典型です。ですので,今回のように,「SHIPS」が布地の中でかなり目立つようなバーンとした形で使用されていると,なかなかそれが商標的使用じゃないとするのは難しいでしょうね。

 私がむしろびっくりしたのは,この被告の会社,子会社とは言え巨大なダイワボウグループの一員ですよね。なのに関わらず,この迂闊さ~♪いやあそのうち,ジバニャンとかフユニャンとかダークニャンとか巷で話題のうんちく魔すら無許諾で布地にプリントしそうな勢いですね。

 ところで,平成26年改正商標法の例の,
前各号に掲げるもののほか,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標
26条1項6号です。

 一体いつくらいからこの話が今回の改正に入ってきたかっていうのがよくわからないのですね。
 商標制度小委員会って,結構新しい商標(音とか動きとかの)ばっかメインだったようなのです。他方,その委員会の下に「商標審査基準ワーキンググループ」というのがあり,こちらで,結構議論が進んでいたように思えます。
 他方,パブリックコメントにも付したようで,去年の早い時期に,商標的使用については商標権者の立証責任にしてくれというコメントが2団体から上がっております。
 小委員会の方は,このタイミングくらいで以降の開催がありません。ワーキンググループも,このタイミングくらいで以降の開催が中断しております(改正法が出たのはその間)。

 今回の改正法がでたのは,閣議決定された今年の3/11と思います。つまり,パブリックコメ(去年の2/28)から1年間,ブラックボックスに入ったまんま出てきたら,主張立証責任が商標権者ではなく,使用者側にバーンと投げ出された条文になっていたわけです。パブリックコメで,2団体も立証責任は商標権者側にしとくれ~と出されたにも関わらずね。

 いやあ,私も迂闊でした。今年の改正法は,異議申立ての復活っていうことに,頭がカッカカッカしてたもんだから,こんな重要な改正について,成立後騒がないといけなくなりました。解せないのではあるが,実務とは異なる法改正~,今後どうなるんだろうなあ。

 
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1 概要
 本件は,第5類「薬剤」を指定商品とする商標権(出願年月日  平成17年8月30日,登録年月日  平成18年4月7日 ,登 録 番 号  第4942833号 ,登 録 商 標  「PITAVA」(標準文字) を有する原告(興和)が,被告( Meiji  Seika ファルマ)が薬剤に付した別紙被告標章目録1ないし3の標章(被告標章)が原告の商標権の登録商標に類似すると主張して,被告に対し,商標法36条に基づき,被告標章の使用の差止め及び被告標章を付した薬剤の廃棄を求める事案です。

 これに対して,東京地裁民事47部(高野さんの合議体ですね。)は,原告の請求を棄却しました。

 お,珍しい商標権侵害の事件の判決です。ま,最近の商標権侵害事件って,内輪もめか,剽窃した出願を大元に権利行使するかというはっきり言って信義則で解決するような事件ばかりなので,紹介する気も失せるのですが,これは正統派です。しかも,ちょっと法改正に関係する所なので,取り上げました。

 原告の商標権は,上記のとおり,標準文字の「PITAVA」です。他方,被告の方は,こんな感じです。
 

2 問題点
 問題点は,上記の被告の使用した標章の態様等が,所謂商標的使用に当たるかどうかです。

 で,この商標的使用については,このブログで何度か述べました。これが一番詳しいかもしれません。
 ほんで,それはそれでよいとして,問題なのは,要件事実です。

 ま,要件事実というと,私の同級生が頭に浮かんでくるかもしれませんが,知財の訴訟実務でそんなに問題になることはありません。だってもう決まっているんだもーん♪

 ですので,この商標的使用についても,裁判所は,判決に記載した争点整理で,
「   (1)  争点1(被告標章の使用が商標的使用に当たるか)について
    (原告)
    ピタバは,取引者,需要者,とりわけ医薬品を服用する患者において,ピタバスタチンあるいはピタバスタチンカルシウムと認識されているとはいえず,服用者たる患者は,被告標章を視認して他の薬剤と出所を識別するのであるから,被告標章は自他商品識別機能を奏する。
 被告は,ピタバがピタバスタチンの略称であることの根拠として研究報告や公開特許公報等を挙げるが,これらはピタバスタチンをロスバスタチン等と比較する等限られた使用例に過ぎない上,取引者,需要者,とりわけ患者の認識を示すものではないから,被告の主張には理由がない。患者は,自らの意思と支出において医薬品を購入するのであり,少なくとも医薬品が処方される過程に影響を与えるから,取引者,需要者に当たる。
 被告商品のパッケージであるPTPシートに「明治」と表示されているとしても,それによって錠剤の「ピタバ」の表示が自他商品識別機能を失うわけではないし,とりわけ一包化調剤として被告商品を交付された患者は,パッケージであるPTPシート等の表示を認識せず,錠剤の表示に基づいて薬剤の出所を識別するから,被告標章が自他商品識別機能を奏することに変わりはない。
    (被告)
    ピタバは,ピタバスタチンカルシウムの略称であり,錠剤に被告標章の印字あるいは刻印をしているのは,服用者が服用する際に他の薬剤と間違えないよう誤飲防止のためであるから,被告標章は,商標的機能,すなわち自他商品識別機能を有しない。
 ピタバスタチンの「statin」(スタチン)は,コレステロール値を下げる薬の総称の1つであり,これを除外したピタバは,ピタバスタチンカルシウムを想起させる略称として,需要者,取引者たる調剤薬局の現場において一般的に使用されている。このことは,特許庁審査官が原告の「ピタバ」の商標 登 録 出 願 を 拒 絶 し た こ と や , ピ タ バ ス タ チ ン を 「 ピ タ バ 」 な い し「PITAVA」と略称した研究報告,公開特許公報等があることから明らかである。被告商品は処方箋医薬品に該当するから,患者は,被告標章を出所表示として認識した上で任意に被告商品を選択して購入することはなく,取引者,需要者に該当しない。
    被告商品のパッケージであるPTPシートには,いずれも「明治」と表示されており,商標としての自他商品識別機能は,「明治」の部分にある。被告商品を購入する取引者,需要者に対しては,錠剤のパッケージ等の表示が商標的機能,すなわち,自他商品識別機能を奏しており,患者がこれをパッケージから取り出して服用しようとする際に取り出された錠剤に印字あるいは刻印された被告標章を見て自他商品を識別することはないから,被告標章の使用は商標的使用に当たらない。なお,原告が主張する一包化調剤の場合においても,患者は袋を開封してそのまま全ての薬剤を服用するから,被告標章により他の薬剤から選択して服用するようなことはしない。
としております。

 いや,これ当事者の言い分を要約してまとめただけでしょ,これが要件事実と何のつながりが?と思うかもしれません。弁護士だと絶対そんな抜けた感想は出ないはずですが,弁理士なら,何のことか全くピンと来ない人もいるかもしれません。

 これね,順番が大事なのですよ。原告から書いているでしょ,つまり原告に主張立証責任のあることだっていう意味です。
 判決をよく見てください。26条とか無効の抗弁とかは,ちゃんと被告から書いているのです。こういう所を見逃さないようにしないといけないわけです。神は細部に宿る!素人がボケっとするのはいいけど,プロならこういう所が大事です。

 ということは,裁判所は,商標的使用については,請求原因事実だと見ているわけですね。つまり,原告が,被告の上記の錠剤での使用態様が,商標的使用,つまり自他商品識別機能を奏するのだ!と主張し,他方被告が,いやいやこれは商標的使用じゃない,自他商品識別機能を有していない!と主張しているわけです。

 これは非常に重要な話です。何でかというと,仮に被告に主張立証責任があるとなると,被告が自他商品識別機能を有していないということを立証できないと被告の負け,つまり請求認容となってしまいます。でも,ないことの証明ってどうやるんでしょう??ないことの証明って難しいですよ。たった一つの反例で証明失敗になりますからね。
 刑事事件でアリバイというのがありますが,それを考えるとよくわかります。犯行現場に居なかったことの証明は出来ないわけです。ですので,犯行現場に「居なかった」証明ではなく,他の場所に「居た」証明をやるわけですね(被告人に立証責任が~♪というややこしい論点はさておき。)。

 いやいやいや,特許の無効の抗弁だって進歩性がないことの証明を被告にやらせてんじゃん,という話になると思うかもしれませんが,あれは条文を見てください。「容易に発明をすることができた」という肯定文です。ですので,被告に証明させてもいいわけですね。

 いやあここまで来ると何が言いたいか勘の良い人にはわかると思いますが,その前に判旨を見ましょう。

3 判旨
「 以上によれば,被告標章は,被告商品の有効成分であるピタバスタチンカルシウムの略称として被告商品(錠剤)に表示されているものであって,その具体的表示態様は,本件商標権の使用許諾を受けているキョーリンリメディオ株式会社のそれと何ら異なるものではない。そうすると,被告商品の主たる取引者,需要者である医師や薬剤師等の医療関係者は,被告商品に接する際,その販売名に付された会社名(屋号等)「明治」に加えて,被告商品のパッケージであるPTPシートに付された「明治」との表示や被告商品に併せて表示されている「明治」や「MS」の表示によってその出所を識別し,錠剤に表示された被告標章は,被告商品の出所を表示するものではなく,有効成分の説明的表示であると認識すると考えられる。 」

4 検討
 判決の結論は,よくあるパターンで,どうってことのない事例判決に過ぎません。でも,そういうよくある判決が,商標的使用を請求原因事実として扱っているということは非常に重要です。

 で,平成26年改正法です。商標法26条1項に新たに6号が加わります。
前各号に掲げるもののほか,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標

 そう,今まで明文の無かった商標的使用が,明文化されるのです。で,場所が問題です。これ,上記のとおり,26条ですので,当然,被告の抗弁,つまりは被告の主張立証責任のある事実になってしまいます。
 まあそれはしょうがないとしても,明文で,否定形で書かれていますよね。

 これねえ,実にまずいんじゃないかと思いますね。元々,商標的使用ってそもそも肯定的概念ですから,商標の定義(2条1項)か,使用の定義(2条2項)に読み込めるものだったわけです。だからこそ多くの裁判例で,商標的使用は,請求原因事実となっていたわけです。

 ところが,何でか知らんが,いきなりどさくさ紛れで,今般,法改正で抗弁事実となってしまいました。これねえ,本当罪深いですよ。実務とはまるっきり反対ですからね。
 そういう実務を知らずに,単なる座りの良さで26条に据えたというなら,もうバカ丸出しだし,他方知ってはいるけど,故意にやったというのでは更に最悪で,要するに,裏で何らかの深謀遠慮が働いたってわけですからね。

 全く不要な改正で,本当今からでも遅くないから削除して欲しいものですニャ。
1 首記は昨日配信された弁護士ドットコム経由の記事です。
 ま,前にここでも書いたとおり,こういうのは私の方で元となるコメントを用意して,それを弁護士ドットコムの方で適当に修正(特に縮小)して,公表するわけですね。

 ただ,前回のコメントもそうですが,やはり短くすると舌足らずの所が出ます。ですので,今回も私の元コメントをそのまま掲載しようと思います。自分のメディアを持っているとこういうときは実にいいですね。比較すると面白いかもしれません。

2 *以降 弁護士ドットコムへの当初コメント*

1 立体商標というのは,商標法2条1項に定義があるとおりです。
この法律で「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。

一  業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの

二  業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
 要するに,商売する人が使う識別標識(これが商標のことです。)のうちには,立体的形状も含まれるというわけです。ですので,ロゴやキャラクターの文字や図形の代わりに,立体的形状が構成として加わったのみで,通常の商標と変わりないと考えることもできます。

 しかし,通常の商標は,包装紙や,スマホ・パソコンの筐体や,ディスプレイ内のウェブ上などの,様々な媒体に付されると思います。ところが,立体商標の場合,このような媒体でなく,と言うよりむしろ媒体そのものが商標の役目をしていますから,多少考えにくい所があると思います。

 

2 さて,問題となるのは,この立体商標について,どのような場合に商標権侵害となるかだと思います。

 ちょっと考えると,例えば,今回のジャポニカ学習帳の場合,他社が今回の商標と似たようなデザインのノートを売り出したら,それが商標権侵害になりそうです。このような場合に商標権侵害といえるなら,真似する会社を片っ端から排除でき,企業にとって極めてメリットがありそうです。

でもちょっと待ってください。商標制度とはデザインを保護する制度ではないのです。デザインを保護するのは,意匠制度という別の制度になります。ですので,似たようなデザインのノートが出たから,即立体商標の商標権侵害と言えるかどうかは非常に難しい話だと思います。

 

この点について,特許庁の出している審査基準では,

「「9.(1) 立体商標の類否は、観る方向によって視覚に映る姿が異なるという立体商標の特殊性を考慮し、次のように判断するものとする。ただし、特定の方向から観た場合に視覚に映る姿が立体商標の特徴を表しているとは認められないときはこの限りでない。

() 立体商標は、原則として、それを特定の方向から観た場合に視覚に映る姿を表示する平面商標(近似する場合を含む。)と外観において類似する。

() 特定の方向から観た場合に視覚に映る姿を共通にする立体商標 (近似する場合を含む。)は、原則として、外観において類似する。

() 立体商標は、その全体ばかりでなく、原則として、特定の方向から観た場合に視覚に映る姿に相応した称呼又は観念も生じ得る。

(2) 立体商標が立体的形状と文字の結合からなる場合には、原則として、当該文字部分のみに相応した称呼又は観念も生じ得るものとする。」とあります。

また,最高裁判決では,「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによつて決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によつて取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」(最高裁昭和43年2月27日,氷山事件)とあります。

つまり,これらの審査基準や最高裁判決によると,類否つまり侵害が問題となるのは,平面商標(ジャポニカ学習帳の立体商標に類した絵や写真の商標ということ)や,他の立体商標(例えば,文房具屋や本屋の軒先での立体的な看板)などの,「商標」が相手ということになります。

要するに,似たようなデザインのノートが出たとしても,それが「商標」と言えない場合にはそもそも侵害とはならないということです。

 

実は,近時立体商標での商標権侵害の事件で判決まで出たものがありました(東京地裁平成25年()第31446号,平成26年5月21日判決)。これはエルメスのいわゆるケリーバッグの立体商標(5438059号)に対し,完全コピーの海賊品について商標権侵害が争われたという実に興味深い事件でした。しかし,海賊品の販売業者が,答弁書を出したきり,弁護士も付けずに欠席裁判で判決まで行ったため,上記の点,つまり「商標」でない場合には侵害とならないのではないかという点などが,十分に議論されませんでした。

 

その昔,立体商標が話題になったときは,不二家のペコちゃんや,ケンタッキーフライドチキンのカーネルサンダースの人形などだったため,仮にそれらを真似た人形を掲示した場合,立体商標の商標権侵害となることに異論はなかったと思います。その真似た人形は,通常「看板」であり,「商標」と言えたからです。

他方,今回のジャポニカ学習帳や,ちょっと前に話題になったスーパーカブの場合,実用品ですので,立体「看板」と言える人形の類と同様に考えることが果たして妥当かどうか実に難しいと思います。

 

上記のとおり,商標制度はデザインを保護する制度ではありません。自分の商売と他人の商売とを混同させないようにするための識別標識(商標)を保護し,ひいてはその商標に化体した信用を保護するためのものです。ですので,識別標識としての使用でない場合,つまりは「商標」でない場合には,商標権侵害とならないのです。そのため,「商標」と言えるかどうか疑義の残る実用品の立体的形状の場合,このハードルが厳しいものとなると思います。

例えば,ジャポニカ学習帳と全く同じレイアウト・デザインであったとしても,例えば「ドットコム学習帳」と大きく記載し(こういうのを「打ち消し表示」といいます。),これはジャポニカ学習帳ではない,レイアウト・デザインが似ていてもそれを「商標」として使っているわけではない,とアピールできれば,商標権侵害とならないと思います。何故か?それは商標制度が自分の商売と他人の商売を混同させないようにするためのものだったからです。たとえデザイン等が似ていても,大きく「ドットコム学習帳」とあれば,ショウワノート製ではないと分かり,混同しませんから。

 

兎も角も,これは現時点での私見であり,そのようなエクスキューズを付けないといけないほどの難しい問題だと思います。正確には,立体商標の商標権侵害が争点となり,双方にきちんと弁護士がついた上での最高裁判決などがないと決着が付かない難しい問題です。

ですので,現時点での企業のメリットというと,そういう商標がとれたという宣伝の効果と,弱気な同業他社に対する牽制の効果に留まると思っておいた方がよいと思います。


3 どうでしたか?結構短くなってますよね。弁護士ドットコムのもまとまってはいるのですが,若干短すぎるかなあと思っております。ま,これはこの程度にしておきますかな。

4 追伸
 昨日は何だかはっきりしない天気だったのですが,今日の東京は,爽やか晴天です。気温も若干上がっております。まさに絶好の散歩日和です。

 ということで,品川の運河の方へ散歩に行きました。屋形船が結構浮かんでおります。東京の屋形船といえば,ここ品川と,浅草と,あとは浜松町あたりが有名でしょうかね。そろそろシーズンオフに向かっているのかもしれませんがね。

 ところで,台風が太平洋上にあるのに,湘南はイマイチな波が続いております。結局先週も波が無くてサーフィンできませんでした。あーあ。今年もそうですが,去年も夏の間,あんまり波が無かったんですよね。

 今週末はどうでしょうかね。
1 今日は商標で。
 報道の方は,ここで。

 立体商標が何かは結構最近やりましたので,そういう細かい所はそのときの記事を見て下さい。

2 で,商標自体はこんなやつです。
 
 国語とか算数とか絵とかないと,何か不思議な感じがしますね。

 IPDLによると,以下のとおりです。

【登録番号】  第5639776号

【登録日】    平成25年(2013)12月27日

【出願番号】  商願2010-91895

【出願日】    平成22年(2010)11月26日

【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】16    学習帳


 これを見るとわかるのですが,登録になったのは結構前です。ですので,スーパーカブの立体商標でもそうなのですが,実用品で立体商標なんか取ってどうすんだろう??宣伝ですかね~あと勘違いした同業者の萎縮効果を期待する?くらいの話しかないのですが,それ以上に,なぜ今になって発表したんだろう?っていうのが謎です。

 公報が発行されたのさえ,今年の2/4です。来年から復活する特許の異議と異なり,商標の場合ずっと異議申立はあるのですが,これは公報発行の日から2月以内なので,4/4を過ぎればいいはず。
 ただ,ショウワノートが発表したのが,8/5ですので,公報の発行日から丁度6ヶ月を過ぎての発表なのですね。ですので,キリが良すぎ~何かありますね~。
 勿論,担当者が単純に商標の異議申立期間も6ヶ月と勘違いしてこうなった~という可能性もありますけどね。

3 というように,企業に纏わる色んな発表って実に気を使いますよね。
 勘違いの6ヶ月だったにせよ,そうじゃないにせよ,きちんと権利が固まるのを待ったということは言えそうです。

 審査を経て登録によって権利が発生する産業財産権って,ある意味,ソフトシェルクラブのように,最初は柔らかいのです。
 ですので,接着剤やコンクリートと同様,固まるのを待って,次の段階に移るってえのが隠れたデフォーです。
 
 ところで,来年からは,上記のとおり,特許の異議申立が復活します。実務家というよりも,企業の知財部には結構な影響があると思いますよ。そんな話も間に合ったので,「知財実務のセオリー」には書いております(ステマですなあ。)。

 ですので,登録された~嬉しい~権利行使しよ~♪なんて短絡的な権利行使は,来年からはやめた方がいいと思いますよ。少なくとも,公報の発行日から6ヶ月待ち,異議申立て出来なくなってから,警告書を出すとかした方が良いと思いますね~(無効審判ならしゃあない)。

 いやあタダなのに,実践的で役に立つね~,単なるネトウヨ,偏屈弁護士だけじゃあないってことですかな。

4 追伸
 ところで,東京は昨日も今日も無茶苦茶な暑さです。東京はついに昨日は36度を越えました。今日も35度は越えたようです。昼くらいに外出があると,大変ですよね。
 それもこれも台風11号からの暖かい風の吹き込みによるようです。しかもこの台風遅えんだよなあ。いやあ,遅いと湘南とかうねりが結構続いていいんだけど,オンショアが強すぎです。

 海から結構離れた,この五反田でもかなりの強い風が吹いてますからね。サーフィンするような場所は推して知るべしです。

 で,先ほど,大分の実家から連絡があったのですが,大分の方も今日は暑くていい天気らしいです。しばらくずっと雨だったらしいですが。
 でもまた,このくそ遅い台風11号が近づいてますので,何とも大変になるのでしょうけどね。

5 更に追伸
 上記の「知財実務のセオリー」,斜め読みしてたら,また誤植を発見してしまいました。これで4個目だ。
 これまでの誤植は結構許せるけど,この誤植はちょっと許し難いなあ。いやあ,「役務」ってえきむって読みます。やくむじゃないです。ですので,あ行でや行じゃないのです。

 弁理士試験の都市伝説で,役務をやくむと読んで,口述に落ちた~というのがありますが,いやあ自著でこんなことになるとは~。まあ最終的には私の責任ではあるのですが,出版社の人は読めなかったのね~♪ガックシ。


 






1 今日は商標ということで。これはNHKのニュースです。
 一番早いニュースは昨日でしたかね,いやあ驚きました。そりゃ識別力はあるだろうけど,権利行使とかどうすんだろう?という意味です。

 立体商標というのは,商標法2条1項に定義があるとおりです。
この法律で「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一  業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二  業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
 商売する人が使う識別標識(これが商標)のうちには,立体的形状も含まれるってやつです。
 
 まあそれ自体はわかると思います。立体的形状でも,これはあそこの製品だ~あそこの会社のものだとわかれば識別標識になりますのでね。

 ペコちゃんとか,カーネル・サンダースとか,コカ・コーラの瓶だとか,これまでもありました。
 でも,今回,色々考えるのは,こういう機能的であり,意匠的なものもあるんだなあということです。

2 そもそもスーパーカブのデザインは,ホンダに意匠権があったものです。そして,国内各社に権利行使し,中でもスズキに権利行使して訴訟までになったものはつとに有名です(東京地裁昭和43年(ワ)第11385号、昭和48年5月25日判決)。
 すげえ昔,今から40年以上前の判決ですが,知財やっている人はあることでよく知っていると思います。

 それは認容額の大きさです。実は,この認容額は,金7億6100万円もの高額だったのです。昭和40年代に知財の判決で,7億円を超える賠償額というのは今では一体いくらくらいに当たるのでしょうね。本当,すごいものです。
 確か,その後のエピソードで,裁判に勝ったものの,本田宗一郎は,スズキに賠償金の支払い自体を求めなかったということでも有名になったんじゃなかったでしたっけ(うろ覚え)。

 賠償金に関しては,その後,平成10年にシメチジン事件(俗にH2ブロッカー事件)で,損害賠償金25億5936万円と不当利得金5億円という高額のものが出ました。
 しかし,それまで25年もの間,知財における日本一の高額のものは,スーパーカブの意匠権のやつだったのですね。もっとも,スーパーカブの意匠権はすでにエクスパイアしている筈ですが。

3 で,元に戻りますが,要するに,立体商標を取ったのはいいけど,何に権利行使するのだろうって所がよくわかりません。

 商標自体は,こんなやつです。

 商願2011-010905ですね。指定商品は,12 二輪自動車のようです。

 例えば,審査基準には,こう載っております。

9.(1) 立体商標の類否は、観る方向によって視覚に映る姿が異なるという立体商標の特殊性を考慮し、次のように判断するものとする。ただし、特定の方向から観た場合に視覚に映る姿が立体商標の特徴を表しているとは認められないときはこの限りでない。
        (イ) 立体商標は、原則として、それを特定の方向から観た場合に視覚に映る姿を表示する平面商標(近似する場合を含む。)と外観において類似する。
        (ロ) 特定の方向から観た場合に視覚に映る姿を共通にする立体商標 (近似する場合を含む。)は、原則として、外観において類似する。
        (ハ) 立体商標は、その全体ばかりでなく、原則として、特定の方向から観た場合に視覚に映る姿に相応した称呼又は観念も生じ得る。
    (2) 立体商標が立体的形状と文字の結合からなる場合には、原則として、当該文字部分のみに相応した称呼又は観念も生じ得るものとする。

 つまりこの審査基準によると,立体商標との類否が問題になるのは,平面商標(スーパーカブに類した絵や写真の商標ってこと)や,立体商標(例えば,ガソリンスタンドやファミリーレストランの軒先にあるような立体的なデカい看板)くらいってことになります。

 じゃあ,一番コアとも思える,それこそ,スズキやヤマハが(カワサキは原付きは無かったはず),似たようなバイクを出したからって,それに権利行使は無理だと思いますよ。何故か?それは商標的使用じゃないからです。

 私のこのブログだって,ここまで,ホンダやスズキやヤマハやコカ・コーラやカワサキなどのブランド名をバンバン出してきました。
 それって商標権侵害?指定商品が違うからいい?

 違いますよ。単に説明で使っているだけ,だから侵害じゃないのです。商標的に使用していない,自他商品等を識別するような態様で使用しているわけじゃないでしょ,だから指定商品等が合致したとしても,商標権侵害にならないのです。

 ということは,いくら立体商標を登録商標にしたとしても,形態を真似したバイクに権利行使は無理!
 そりゃそうです。だって,バイクという乗り物に当たり前の使用法(乗ったり運んだり)をしているだけで,これが某社のバイクじゃ~!って使い方をしているわけじゃないでしょ。カタログに載せてもそれはやはり説明のためだから,無理じゃないかなあ。

 ま,勿論,立体商標での侵害訴訟の事例って,ひよ子事件があるくらいで(審決取消訴訟の方で決着がついてしまった。),きちんとした判決まで出たのをあまり見ませんので,実際どうなるかはわかりませんけどね。

 音の商標とかどうすんだろう?本当,権利行使まで考えて出願しないと金と時間の無駄でっせ,旦那。

 
1 今日も肌寒い東京です。先週の木曜に今季一番の暑さになったと思ったら,それ以降イマイチ寒い日の連続で,昨日も寒かったですね~。今朝も息が白かったですよ。全く,早く夏になれっちゅうのに。

 ほんで,締め切りに追われている中,面白い話があれば取り上げるということでしたので,こんな記事はどうでしょう。今朝の日経の法務面でした。

2 内容は,「シャープはこのほど、同社が液晶ディスプレーなどに使う「IGZO(イグゾー)」の登録商標を無効とした特許庁の審決を不服とし、知的財産高等裁判所に提訴した。・・・商標問題が起きたのは、IGZOに関する特許を保有する科学技術振興機構(JST)が昨年7月、登録商標の無効審判を特許庁に請求したのがきっかけだ。」ということです。

 特許電子図書館で検索すると,商願2011-44151の商標第5451821号ですね。商標は,標準文字の「IGZO」,指定商品は9類の「電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,電池,電線及びケーブル,配電用又は制御用の機械器具」のようです。

 JSTが無効審判を提起したのは,そのとおりで,指定商品中「気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,電池,配電用又は制御用の機械器具」について,です(無効2013-890052 )。

 そして,商標法3条1項3号,つまり記述的商標ということで,無効の判断がされたようです。
以上からすると、「IGZO」は、「In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)及びO(酸素)の複合物からなる酸化物の略語であって、1995年に東京工業大学の細野教授が国際会議において、「『酸化インジウム・ガリウム・亜鉛(IGZO)』と呼ぶ新型酸化物半導体」として紹介され、2004年に英国科学雑誌「Nature」に発表した論文が契機となって、国内ディスプレイメーカーなどが応用研究を始め、幅広い分野での開発が行われていることが認められる。  
 そして、本件商標の登録査定時前において、「IGZO」は、国内外の多くのディスプレイメーカーにより、例えば、高解像度・3次元・大型液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、(甲第2号証の1)、モバイル機器、高精細ノートPC、高精細液晶モニター(甲第6号証)、薄膜トランジスタ(TFT)、液晶テレビ(甲第10号証)、3Dテレビ、大型ディスプレー、(甲第9号証)、液晶パネル、大型有機ELパネル(甲第11号証)、電子荷札(ICタグ)に使用されるRFID(無線自動識別)チップ(甲第12号証及び甲第16号証)、電源回路の半導体(甲第15号証)、スマートフォン用中小型液晶パネル(甲第17号証)等の各種商品に使用し実用化するための研究開発が進められているものと認められる。  
 そうとすると、「IGZO」の文字は、本件商標の登録査定時前において、研究者など一部の限定された者にとどまらず、液晶ディスプレイや半導体の分野のエレクトロニクス業界において、上記酸化物を表すものとして、広く知られていたといえるものである。
(3)本件商標の指定商品において、電子応用機械器具及びその部品には、半導体素子や電源回路の半導体等が含まれ、また、電気通信機械器具には、前記液晶ディスプレイ・パネル等が含まれる。  さらに、電池や配電用又は制御用の機械器具には、蓄電池や蓄電器等が含まれるものであって、これらの関連商品として、蓄電状況を表示するモニターや停電時に視認しやすい液晶パネルを有した商品がある。  
 そして、上記商品は、事業者間での取引に供される機械器具の部品、或いは関連商品といえ、最終消費者ではない事業者が需要者(取引者を含む。)となる商品が多々含まれるものである。
(4)小括  以上を総合してみれば、本件商標の登録査定時において、本件商標を構成する「IGZO」は、上記商品を構成する原材料の一を示すものとして使用され、少なくとも上記(3)の商品に係る事業者(取引者・需要者)の間において認識されていたといい得るものである。  
 してみれば、標準文字で表された本件商標「IGZO」は、これを請求に係る指定商品に使用した場合、その商品の原材料を表したものと認識されるというのが相当であるから、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであるというのが相当である。  
 したがって、本件商標は、その指定商品中、請求に係る指定商品について、商標法第3条第1項第3号に該当すると判断されるものである。

 うーん,これって,知財高裁に行ってもなかなかひっくり返らないって感じがしますね~。やっぱ標準文字ですので,影響がデカ過ぎます。

 私もこの分野のエンジニアだったので,ITOが登録商標になったり,TFTが登録商標だったりすると,やっぱ変な感じがします。それに一番初めに言い出したのは,東工大の細野教授のようですし。

 他方,シャープも,標準文字のIGZO以外の飾り文字というかロゴ的なIGZOを出願して登録しており,これはJSTも不問です。
 ですので,標準文字のようなIGZOは真似しても,そりゃあOKということでいいんじゃな~いかと思える一方,シャープの利益もそんなに減じることもないので(ここら辺JSTは戦略的に無効審判を提起したと思えます。),こちらもこれでいいんじゃな~いと思えるわけですね。

 ま,とは言え,裁判官も人の子,どんでん返しがあるかもしれないことはいつものとおりです。

3 ついでにもう一つ。
 今日発売の週刊ダイヤモンド,「ソニー消滅!!」というおどろおどろしい特集だったので,買ってみました。

 ま,内容は見て頂くとして,一個苦言を。
 p36~37の記事,「旧本社のNSビル。早くも工事が始まっている」と写真入りで載っていますが,これは誤導ですね。典型的なマスコミの記事ってやつです。
 記事の写真でもよーく見るとわかりますが,旧本社のNSビルのはるか向こうの工事と旧本社のNSビルとを一緒に写しているのです。ちなみに,その工事は,パークシティ大崎のビルですので。
 
 こういう風に撮ると,きちんとした位置関係がわかります。これは旧本社前の歩道橋の上から撮ったものです。私の散歩コースです。

 ところが,週刊ダイヤモンドのようにこの上部だけを重ねて写すと,いかにも工事が進んでいるように見える!ってわけです。汚いやり方です。

 ま,私はソニーがどうなろうとどうでもいいのですが,卑怯なやり方は嫌いなのです。何故かって?そりゃあ,私が卑怯者なもので,キャラが被るんだよ!

 こんなやり方すると,記事の全部についても疑うよなあ。週刊ダイヤモンドを買うことはもうないかもしれません(と言っても,気はよく変わるのですが。)。

4 あと,まともな更新は,しばらくぶりなので,桜の模様も。
 
 いやあ,新緑の季節ですね。真ん中の工事中のビルは,パークシティ大崎のものじゃないと思いますが,この辺,本当再開発が活発なのですね。

1 概要
 本件は,欧文字の「KAMUI」の標準文字からなる商標を登録商標(本件商標)とし,指定商品を第28類「運動用具」とする商標(登録第5142685号。平成19年4月23日出願,平成20年6月20日登録,本件商標登録。)の商標権者である原告(カムイワークスジャパン)に対し,被告(中条)が,平成25年1月28日,本件商標は,商標法4条1項10号に該当すると主張して(商標法4条1項7号該当性も併せて主張),無効審判(無効2013-890005号事件。本件審判。)を請求したところ,特許庁は,同年7月5日,無効審決(商標法4条1項10号該当,本件審決。)をしたため,これに不服の原告が審決取消訴訟を提起したものです。

 これに対して,知財高裁1部(飯村さんの合議体ですね。)は,「前審決の確定効に反するものとして許されない」として,審決を取り消しました。

 何と珍しい, 商標法56条1項が準用する特許法167条の事件です。

 ということで,前の審決が重要ですね。
 前の審決は,被告が,平成21年7月2日,本件商標は,商標法4条1項10号に該当すると主張して,無効審判(無効2009-890077号事件。前審判。)を請求したものです(なお,併せて同項19号への該当性も無効理由として主張していたようです。)。
 この審決は,平成22年4月30日,不成立審決(前審決)で,同審決は同年6月10日に確定したのです。

 その理由は,被告の引用した被告使用の,前審判引用商標は,本件商標の登録出願時以前から,被告の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内の需要者の間に広く認識されていたとは認められず,本件商標は商標法4条1項10号に該当しないと判断したわけです。

 ただ,何でこうなったかというと,ゴルフをやっている人は知っているかもしれませんが,カムイブランドって二つあるのですね。カムイワークスというのと,カムイプロというやつです。前者が今回の原告,後者が今回の被告のブランドです。

 実はこの両者,本件で無効審判の対象となった登録商標について,商標権侵害訴訟でも争ってました。平成24年(ネ)10019号(知財高裁平成25年01月24日判決)です。やはり,原告と被告はここでも原告と被告となり,原告の請求が棄却され,控訴審でもそのままでした。
 その棄却理由は,被告に先使用権があったから!です。つまり,昔は一緒にやっていたわけですよ。この辺は侵害訴訟の一審,平成22年(ワ)32483号(東京地裁平成24年01月26日判決)に詳しいので,そこを見てください。かいつまむとこんな感じです。
 
 「原告と被告は,平成5年ころ,共同でゴルフクラブを製造,販売することを計画し,平成6年2月1日,ゴルフクラブの開発,製造,販売を目的とする共同企業体カムイクラフト(以下「カムイクラフト」という。)を設立し,製造したゴルフクラブに「KAMUIPRO」(カムイプロ)の名称を付けて販売した。そして,原告と被告は,同月28日,共同で「KAMUIPRO」の商標を,第28類の運動用具で出願し,同商標は,平成9年11月7日に登録された。
     当時,カムイクラフトが製造したゴルフクラブ「カムイプロ300」は,非常によく売れ,一大ヒット商品となった。

 原告と被告は,平成7年2月21日,カムイクラフトによる共同事業を解消し,カムイの新製品については,それぞれが権利を有すること,カムイプロ300の金型については,それぞれが50%の権利を有することを確認した。

 まあ,何でもそうなのですが,共同事業って,うまく行った方が,仲違いするんですよね~♫ほんで一旦仲違いすると,もう他人の手に負えないくらいこじれにこじれます。商標の訴訟ってこういうやつ本当多いです。
 ま,これは会社対会社ですが,家事事件って,ほぼこのパターンです。仲の良かった二人(元夫婦)や小さいころ遊んだ仲(兄弟など)なのに,何でか知らんけど,ほんのちょっとの金や,自分たちに似て出来の悪い子供などを巡って,まさに骨肉の争いを繰り広げるという,傍から見たら,勝手にやってれば,というやつと同じです。
 こんなのに首突っ込んで,殺されたり殺されかかったりする弁護士が居るのですから,もう~全く~って感じなのですが,今,事件数が伸びているのって,家事事件しかないもんで,選択の余地はないのかもしれませんねえ。

 私?私のようなヘタレ弁護士なんかじゃこんな犬も食わない事件など解決できませんよ~。法テラスなどにいる,弱い者の味方,正義の味方の弁護士の先生さま様に頼まないとね~ワハハハ。

 元に戻りますが,ま,この審決取消訴訟もその侵害訴訟の後始末の一環でしょうね。

2 問題点
 で,論点は,この審決取消訴訟での論点そのままです。つまり,特許法167条にいう「同一の事実及び同一の証拠」って何?ってことです。

 ですので,まず条文です。
 「(審決の効力)
第百六十七条  特許無効審判又は延長登録無効審判の審決が確定したときは、当事者及び参加人は、同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができない。」

 ま,これは同じことで何回も何回も審判を起こされちゃあたまんないから,ってやつです。その昔は,「何人も」となっていたのを,確定判決の既判力さえ当事者限りなのに,憲法違反じゃねえのというヤーヤー言いが居たもんで,平成23年の法改正で,上記のとおりになったものです。

 ま,今回は当事者が同じなので,文言的には,旧法新法にかかわらない問題ですけどね。

 ただ,「同一の事実及び同一の証拠」って言っても,通常,人間ってそんなバカじゃないので,まるっきり同じ証拠と同じ主張なんてしません。ちょっと加えたり引いたりと,ちびっと変えるわけですね。ということで,どの程度変えればいいのか,言い換えれば,実質同一の範囲はどこまでか,ということになりますね。

 ほんで,旧法時代は,現に改正されちゃったように,この条文を適用したくなかったわけです。何でか?適用すると,第三者の審判請求を制限することになるからです。だから,「同一の事実及び同一の証拠」も厳しく,キチキチ,デットコピー並の同じ場合のみに適用とされたようです。
 他方,新法になると,第三者の審判請求を制限することはありませんから,逆に当事者の蒸し返しは,大胆に制限したいですよね。そうすると,「同一の事実及び同一の証拠」も緩やかに,ちょっとくらい主張を変えたり,証拠を加えても,広く適用だ!としてもいいかもしれません。

 ね,改正の経緯からすると,どっちの方向で解釈するか,予想がつきそうですね。

 ちなみに,今回の審決は,「ア  前審判は,商標法4条1項10号及び19号違反の事実に基づき,本件商標登録を無効にすることを求めて審判請求をしたものであるのに対し,本件審判は,同項7号又は10号違反の事実に基づき,本件商標登録を無効にすることを求めて審判請求をしたものであるから,前審判と本件審判とは,同一の事実に基づいて審判請求をしたものでない。
イ  前審判と本件審判とでは,「KAMUI」単体商標の周知性に係る証拠のうち,被告ゴルフクラブの販売実績数のデータ,雑誌は同一であるが,①「使用プロ一覧」と題する書面(以下「使用プロ一覧表」という。)の記載内容が異なること,②カタログの発行年度が異なることから,同一の証拠ではなく,また,③本件審判における決算報告書は,前審判で主張した販売額を裏付けるためのものとして提出されたものであって,単なる補強証拠とはいえない。」として,一事不再理に反しないとしたのでした。

3 判旨
「 商標法56条1項が準用する特許法167条は,「特許無効審判・・・の審決が確定したときは,当事者及び参加人は,同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができない」旨規定する
  同条は,当事者(参加人を含む。)の提出に係る主張及び証拠等に基づいて判断をした審決が確定した場合には,当事者が同一事項に係る主張及び立証をすることにより,確定審決と矛盾する判断を求めることは許されず,また,審判体も確定審決と矛盾する判断をすることはできない旨を規定したものである。同条が設けられた趣旨は,①同一事項に係る主張及び証拠に基づく矛盾する複数の確定審決が発生することを防止すること,②無効審判請求等の濫用を防止すること,③権利者の被る無効審判手続等に対応する煩雑さを回避すること,④紛争の一回的な解決を図ること等にあると解される。
  そうすると,無効審判請求においては,「同一の事実」とは,同一の無効理由に係る主張事実を指し,「同一の証拠」とは,当該主張事実を根拠づけるための実質的に同一の証拠を指すものと解するのが相当である。そして,同一の事実(同一の立証命題)を根拠づけるための証拠である以上,証拠方法が相違することは,直ちには,証拠の実質的同一性を否定する理由にはならないと解すべきである。このような理解は,平成23年法律第63号による特許法167条の改正により,確定審決の第三者効を廃止することとし,他方で当事者間(参加人を含む。)においては,紛争の一回的解決を実現させた趣旨に,最も良く合致するものというべきである。 ・・・

 ア  同一事実について
  本件商標が商標法4条1項10号に該当するとの事項についての被告の主張事実は,被告が使用する商標は,本件商標登録の出願時には,被告がゴルフクラブに使用する商標として,日本国内の取引者・需要者に広く認識されており,その状態は本件商標の登録査定時においても継続していること,本件商標は被告が使用する商標と類似すること,本件商標の指定商品は被告の商標が使用されているゴルフクラブと類似することであり,その主張事実は,前審判及び本件審判において同一であると評価できる。
  なお,本件審判では,周知であるとの被告の主張に係る商標が,以下の①ないし③のいずれであるか必ずしも明確ではない。
  ①「KAMUI」単体商標のみ
  ②「KAMUI」単体商標及び「K∧MUI+くさび図形」商標
  ③①又は②に「KAMUIPRO」,「TYPHOONPRO」及び「KAMUI
TYPHOONPRO」の各文字からなる商標を含む
  しかし,本件審判において被告が周知であると主張する商標が上記のいずれであっても,それらは,前審判において判断の対象とした商標に含まれるというべきである。すなわち,
  ①「KAMUI」単体商標は,前審判における別紙前審判引用商標目録1,2及び4記載の商標に含まれる。
  ②「K∧MUI+くさび図形」商標は,前審判における別紙前審判引用商標目録4記載の商標に図形を付加した商標である。
  ③「KAMUIPRO」及び「KAMUI  TYPHOONPRO」の各文字からなる商標について原告が周知であると主張する部分は,いずれも「KAMUI」部分であると合理的に解される(「TYPHOONPRO」の文字からなる商標は,本件審決の判断の当否に直接関連するものではない。)。
  以上によれば,前審判と本件審判とでは,被告が周知性を有すると主張する被告使用の商標は,互いに同一と評価できる。
   (なお,本件審決は,前審判における無効理由が商標法4条1項10号及び19号該当性であるのに対して,本件審判における無効理由が同項7号又は10号該当性であるから,前審判と本件審判とは「同一の事実」に基づく審判請求ではないと判断する。しかし,同項10号所定の無効理由の存否について判断した審決が確定した後に,それと異なる無効理由を追加さえすれば,同項10号所定の無効理由の存否について判断した審決の確定効がなくなると解する審決の判断が,誤った理解に基づくことは明らかである。
  イ  同一証拠について
  前記のとおり,前審判と本件審判とでは,被告が使用する商標の周知性を裏付ける主張事実は,ほとんど同一であり,周知性を立証するための証拠は,そのほとんどが同一である。
  なお,本件審判では,前審判とは異なり,「被告の2000年版商品カタログ」(甲10),「カムイ社の出荷明細」(甲11-1-1ないし11-1-9),「カムイ社の平成15年度ないし平成18年度の決算報告書」(甲11-2ないし11-5),「使用プロ一覧表」(甲11-31)が,証拠として提出されている。そこで,上記各証拠の性質につき,念のため検討する(なお,本件審判で新たに提出された上記以外の証拠は,商標法4条1項10号該当性に関連するものではない。)。
  (ア)  「被告の2000年版商品カタログ」(甲10)
  前審判において,被告は,他のカタログ(甲53,54)を提出したが,前審決において,提出に係る当該カタログは作成年月日が確認できないとされたことから(甲112),本件審判において,作成年月日の確認ができるカタログを提出したと解される。
  (イ)  「カムイ社の出荷明細及び決算報告書」(甲11-1-1ないし11-1-9,11-2ないし11-5)
  前審判において,被告は,カムイ社が販売した被告ゴルフクラブの本数の表(甲11-1)を提出したが,前審決において,販売数の裏付けがないことなどから同表に記載された本数が採用されなかったため,本件審判において,同表の信憑性を裏付けるために提出された証拠と解される。
  (ウ)  「使用プロ一覧表」(甲11-31)
  前審判において,被告は,使用プロ一覧表(甲40)を提出したが,本件審判において,その形式を変更し,被告ゴルフクラブを使用するプロゴルファーの氏名等を追加記載したものを証拠として提出したと解される。
  上記によれば,本件審判で提出された上記各証拠は,前審決における被告の主張を排斥した判断に対し,同判断を蒸し返す趣旨で提出された証拠の範囲を超えるものではない。
  ウ  小括
  以上によると,前審判と本件審判とでは,商標法4条1項10号違反の根拠として主張されている事実において同一であり,また,これを立証するために提出された証拠も実質的に同一であると評価できる。
  したがって,本件審判における本件商標が同項10号に該当することを理由とする無効審判請求は,前審決の確定効に反するものとして許されないというべきである。本件商標が同項10号に該当するとして本件商標登録が無効であるとした本件審決には,上記の点における誤りがある。」

4 検討
 同一の事実については,同一の無効理由のことをいうのだから,また4条1項10号なので,同一としたわけですね。それに7号加えてもダメに決まっているだろ,バカか特許庁は,というのを法的に格調高く言ったのが,カッコのなお書です。

 次に,同一の証拠というのは,実質同一で足りるとしましたので,ほとんど同一で良いとしております。ただ,これは若干認定が粗いですね。ま,こんな粗い認定で足りるくらい,新たな情報を加えるようなものではなかったということでもありますが。

 ということで,「同一の事実及び同一の証拠」については,緩やかに~♫解釈したのが,今回の判決です。ま,方向としてはそれでいいんじゃないかと思います。

 ま,飯村さんの合議体ですので,法律の文言の解釈(特にここ)と,事例のあてはめは参考になるのではないでしょうかね。

 さて,今日は春分の日,お彼岸で,お休みですが,珍しく仕事をしております。普段,私は休日に仕事をしません。ワーク・ライフ・バランス?そんなケチ臭いやつには興味がありませんよ。だって,休日まで仕事をしてたら,平日にやることが無くなってしまいますもん。そそ,そんなに仕事がありませんからね~。ムフフフ。

 ただ,ちょっと今週は,珍しく週に2回も裁判の期日が入ったり(普段は,月に1回あるかないかくらいしか期日がないので,それだけでも10倍の頻度),それ以外にも外出が相次ぎ,ちょっと起案をやっておかないと,これは桜のころに呑気に花見が出来ねえやというわけですね。

  で,桜ですが,蕾はかなり膨らんでますね。ただ,花弁まで見えるのはごくわずか。これも一本の木で漸く一つ花弁が見えるやつを撮ったものです。一昨日18日は春一番も吹いて実に暖かかったのですが,昨日今日と東京は肌寒いです。
 来週は結構暖かくなるそうで,一気に咲くかもしれませんね。とすると,このブログも桜情報だけとなりそうです。

5 追伸(160215)
 この判決により,特許庁に戻った事件について,審決に不服として,さらに知財高裁で争われたようです(知財高裁平成27(行ケ)10132,平成28年2月9判決)。

 今度は,商標法4条1項7号の無効事由があると争ったようですが,それは認められなかったようです。
 ま,兎も角も,このかつての仲間同士という,骨肉の争いパターンはちょっとやそっとのことじゃあなかなか解決に至りませんねえ。まるで,キリスト教とイスラム教の間のようです。




 
 

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