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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 首記は,本日の日経紙の記事からです。珍しいですね,意匠の話ですもの。
 しかし,この記事の内容を読むとちょっと誤解しそうなところがあります。というのは,今までだって画面のデザインは保護されていましたから~。意匠法の意匠の定義を見てみましょう。

第二条  この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。第八条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
2  前項において、物品の部分の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合には、物品の操作(当該物品がその機能を発揮できる状態にするために行われるものに限る。)の用に供される画像であつて、当該物品又はこれと一体として用いられる物品に表示されるものが含まれるものとする。

 この2項は,近時,平成18年改正法(H19.4.1から施行)で加わったものです。
 これは,「平成18年意匠法等の一部改正 産業財産権法の解説(発明協会)」によると,「昨今の情報技術の発展に伴い登場してきた画面デザインについては,ある物品に一般に想定される使用目的や機能を実現するために必要不可欠であり,機器の一部を構成するものも数多く創作されているが,現行法のもとでは保護されない場合が生じている」(同書14頁)とあるように,まさに画面デザイン等を保護するために加わったものなのです。

 では何故?再度似たような法改正などをしようとしているのか?(もしかすると法改正ではなく,審査基準のみの改正で対応するのかもしれませんが。)ここがポイントになってくるわけです。

2 意匠って,上記のとおり,物品との結合なのですね。つまり,同じデザインでも物品が違うと意匠は違います。
 同じ車のデザインでも,自動車とおもちゃでは物品が違いますので,意匠は違うということになります。つまり,自動車の意匠の登録だけでは,おもちゃに対して,侵害だ!とは言えないのですね~。
 このように,意匠というのは単なる抽象的なデザインではなく,物品との結びつきの強いものなのです。これは,意匠がそもそも,「物」の外観を保護しようという趣旨に基づくものだからです。他方,物との結びつきがないものについては,そりゃ著作権で保護すればよい,ということになりますね。

 しかしながら,日本ていうのは,何でもそうですが,決めたら決めたとおり何でも杓子定規にやらないと済みませんから,この物品との関連性を強く求めております(上記の条文でもわかりますね。)。

 他方,諸外国の意匠制度は,勿論,物の外観を保護するものなのですが,さほど,物品との関連性を求めておりません。
 例えば,米国は,意匠法という法律はなく,特許法(USC35)の中の171条くらいから,patents for designsということで(通称デザインパテントと呼んでいます。),普通の特許と並列して保護しているのですが,物品(article of manufacture)というのが,そもそもアバウトで,しかも,日本でいう「結合」などという文言もありませんので(design for article of manufacture),物品との関連性はかなり薄いのですね。ですので,アイコン等も従来から保護されております。

 さらに,ヨーロッパの場合は,製品(product)にそもそも無体物まで含まれるということらしいですので,アイコン等が保護されるのは当然ですね。

 ということで,杓子定規の日本が若干他の国と違うということで,最初のポイントに戻るということです。

3 更に,こういう風に法改正,審査基準を変えるというのは,記事にもありますが,国際的な出願制度に加わりたいということがあるようです。

 それが,ヘーグ協定ですね。
 特許には特許協力条約(PCT)があり,商標にはマドリッドプロトコルという,国際的な出願制度があります(国際的な特許制度等と言うわけではありませんからね。何度も言いますが,そんな制度は現在ありませんし,未来永劫無いと思っております。詳しくは,こちらですが,詐欺的投資を持ちかけるときによく使われるので,要注意です。)。

 これらは,多国に出願しようとするときに,非常に便利です。この意匠版がヘーグ協定なわけです。このヘーグ協定,商標のマドリッドプロトコルのようなセントラルアタックすらありませんので,加入すれば,非常に便利な制度です。 
 ただしかし,意匠の場合,上記のとおり,初めの保護対象からして日本と他の国で違いましたので,なかなか便利な制度に加入できなかったわけですね。

 若干脱線気味ですが,これは,物品との関連性を重く見るかという論点とは別に,意匠の制度趣旨の違いも大きいです。つまり,私が弁理士試験受験生のころ,盛んだった,混同説,創作説,等等の争いですね。

 米国は,上記の通り,パテントの一部ですから,創作的な考えに立っています。
 他方,欧州は,商売の一環ということで,商標的な面もあります。つまり,各国によって,特許的な制度やら商標的な制度やらまちまちで,ヨーロッパ中心のヘーグ協定にはなかなか参加が集まっていないというのが現状です。

 さて,我が国の法制度は,創作的だと言われておりますが,上記の改正で加わった意匠法24条2項の規定「登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。」が,需要者基準であることから,完全に創作的な制度ではないのではないかという疑義も生じております。
 というのは,明白に創作的な特許の進歩性の基準が,「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者」という創作者基準であるのに,意匠法はそうでないからですね。

 まあともかくも,少なくとも保護の対象は統一して,便利な制度に加わりたい,ここが今回のポイントなのだと思いますね。

4 追伸
 特許庁で思い出しましたが,特許庁のHPはリニューアルしたのはよいのですが,私がよく使うfirefoxではかなり変な表示になります。このためだけにいちいちインターネットエクスプローラを立ち上げるのも面倒なので(サファリでも大丈夫なようです。),庁の担当者の方,何とか対応してください。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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