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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
  本件は,意匠に係る物品を「ゴルフボール」とし,原告を意匠権者とする意匠第1300582号について,被告が意匠登録無効審判請求をしたところ,特許庁がこれを認容する審決(公知意匠に類似する無効事由あり)をしたことから,これに不服の原告がその取消しを求めた事案です。

  これに対して,知財高裁(2部)は,原告の請求を棄却しております。

2 問題点等
  意匠というのは,意匠法2条1項に,「この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。第8条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。」とあるとおり,平たく言えば,物のデザインですね。

  ただ重要なことは,定義に「物品」とあるとおり,抽象的なデザインではなく,物品と一体となったデザインを保護するということです。つまり,自動車のデザインの意匠権があるとしても,それと全く同じデザインのおもちゃに対し,権利行使できないということです。自動車とおもちゃは,全く別の物品ですからね。

  また,意匠権は,特許権と同様,審査を経て権利が発生します。したがい,デザイン完成から権利発生まで,結構時間がかかるのです。

  以上のようなことから,意匠権が争いになることは非常に少ないのが現状です。実は,意匠の権利範囲はそう狭くないのですが,まあ仕方ありません。

  したがい,これを取り上げたのは,単純に,珍しいからです。

3 判旨
(1)引用意匠認定の誤り1
「そして,後記のとおり,ディンプルの大きさや配列を適宜調整することによって,384個の六角形のディンプルを,辺を共有するようにして密に配列することが不可能ということもできないから,結局,原告の取消事由1の主張は採用することができない。」

(2)引用意匠認定の誤り2
「そうすると,一部のディンプルの大きさや形状を調整することにより,384個の六角形のディンプルを辺を共有するようにして密に配列することが不可能であるとか,密に配列することができずディンプル同士が離れる箇所が多数生じ最低限の変形や修正では対応できない等とは,必ずしもいうことができない。」

(3)対比の誤り1
「前記イのとおり,引用意匠(引用例の図2)は,実際にゴルフボールに適用して製造する際には,適宜ディンプルの大きさ及び形状を調整する必要があるものの,引用例の図2の記載からは,384個の六角形のディンプルが,隣接するディンプル同士が辺を共有するようにして,ボールの球面全体に密に配設された状況を容易に看取することができ,上記記載自体は明確なものである。」

(4)対比の誤り2
「前記アのとおり,審決が引用意匠のディンプルを六角形のものと認定したことに誤りがあるとはいえないから,上記認定を前提に本件意匠との対比を行った判断に誤りはなく,原告の取消事由4の主張は採用することができない。」

(5)対比の誤り3
「前記イのとおり,審決が引用意匠を384個の六角形のディンプルを辺を共有するようにして密に配列したものであると認定した審決に誤りはなく,上記認定を前提に本件意匠との対比を行った判断に誤りはない。」

4 検討
  本件意匠の特徴は,総数362個のディンプルのうち12個が五角形,のこりが六角形であるという点です。他方,引用意匠は,384個の六角形のディンプルであるというところに特徴があります(この認定自体の争いはありましたが。)。

  しかし,知財高裁は,五角形が目新しいとしても,わずかなので,目立たず,美感への影響はわずかと認定しました。

  特許では,クレームの文言(言葉)の解釈が争いになりますが,意匠では図の解釈が争いになるというわけですね。ですので,意匠の事件を扱うには,美的なセンスが必要です。特許庁の審査官でも,特許→理系タイプ,商標→文系タイプ,となるのですが,意匠→美大生という感じで,他の部署と大きく違います。私もたまに,意匠や形態模倣の事件を扱うこともあるのですが,センスがないせいか,非常に難しく感じますね。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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