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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 知財,特に特許をやっている法的専門職には,結構刺激的なタイトルです。
 中身も刺激的ですね。要するに,特許権も著作権もイノベーションを阻害するので,必要悪ですらない,不必要悪だ!というところではないでしょうか。それに関する実例を踏まえながら,著者達の主張を論証していくと言った内容の本です。

 経済学者が書いた本ですので,経済学の知識が若干必要な所はあります。ただ,それがないとちっとも読んでもわからないというわけではなく,いわゆるコモンズの話や特許や著作権の歴史に触れたことのある人ならわかると思います。

 内容は,いつものとおり,あまり突っ込まずにおきましょう。

2 最近,知り合いの弁理士の方に,弁護士業界の中で,最近話題になっている話ないの?と聞かれて,ちょっと困りました。
 ちょっと前なら,職務発明,無効の抗弁,均等論など,弁護士の好きそうな話題がそれこそたくさんあったと思いますが,侵害訴訟の低値安定化に伴って,興味津々的な話題は皆無ですね。もちろん,違う!という先生方もいらっしゃるかもしれませんが,ニュースになるのは,犬が人を噛んだ話的なものばかりです。

 そのような状況下で,強いて挙げれば,この本と共通する,「特許と独占」というのが,弁護士業界でのまあまあタイムリーな話題と言えるのかもしれません。

 例えば,中山先生最新著書の「特許法」p6-11などの話は,今回の本の問題点とぴったりです。また,判例タイムズ1329号p45の村上政博教授の独禁法との調整の話も,今回の話と縁がないわけではありません。さらに,今年のノーベル化学賞の日本人受賞者の方々の,特許はとっていなかった発言などもありました。

3 普通に考えても,著作権はまだしも,特許の場合,取得に費用がかかりますし(1件につき,日本で100万円,米国で1000万円の単位。),権利行使するにも,高額の弁護士費用(私はそんなに高くありませんが。)がかかりますし,防御側だと実入りが無い分,さらに費用がかかることにもなります。

 それでも権利行使が可能であれば,原告にはお金が入ることになるのですが,業界全体から見れば,??の部分は確かにありますね。これは,正直に認めます。

4 さて,昨今経済情勢がシュリンクしつつありますので,減少した売上げを,不労所得よろしく特許の権利行使でカバーできないかと思っている経営者の方等も多いのではないでしょうか。ですが,上記のように,特許にはそもそも費用がかかります。そして,権利行使もうまく行かないことも多いものです。

 他方,最近,弁理士も弁護士も,本業の出願業務や訴訟業務がシュリンクしており,そのため知財のコンサルが大流行です。となると,上記のような経営者(特に,中小企業。)に営業をかけるでしょうね。

 ですが,よく考えてくださいね。上記のような状況の下,中小企業で,特許をとって権利行使をしたところで,何かの役に立つのでしょうかね?
 今回の本にも書いてあるように,中小企業で特許が役に立つのは,運良く既存の大企業に,特許又は会社ごと買われるときくらいなものです。
知財の弁護士がそんなことを言うのかと思われるかもしれませんが,筋の通らないことは大嫌いなものですので,致し方ありません。

 私は,まだまだ駆け出しの弁護士ですので,クライアントには大企業ではなく中小企業の方が多いのです。それ故,中小企業にとって本当に役立つ知財戦略(出願するばかりが能ではありません。)をよくよく考えた方が良いと思いますね。ですので,今回の本は,バリバリの大企業の知財部の方より,中小企業の経営者が読むべきだと思います。

5 以上のとおり,考えさせるところがあり,なかなかおもしろい本なのですが,その評価の全てを減殺する事がありますので,これを最後に指摘しておきます。

 それは,最初のページのさらに前のページにあります。

 Copyright © Michele Boldrin and David K. Levine 2008

 おわかりですね。今回の本に関し,著作権の放棄はないのです(訳者に関しても同じです。)。
 ですので,著作権なんてfuckだ(ここまでは言ってないか・・),と言いながら,私が,自炊してこの本の全文をこのブログにpdfにして貼り付けたり,勝手に複製して売り始めたら,それこそ,あっという間にどこかの大手渉外事務所から内容証明が飛んできて,著作権侵害訴訟に巻き込まれることになります。

 それってないんじゃないの~。自分らの著作は,イノベーションとは関係ないから例外だ!とでも言うのでしょうかね~。久しぶりにメタ言語の話を思い出しましたよ。自己言及するから,こんなことになるんだよなあ。

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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーのエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。次は何かな。
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