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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 首記は,訴訟等における営業損害ってやつが何かをやさしく書いてあるという評判の本です。
 出版されてすぐに,あ,これいい企画だなあと思って読みたかったのですが,定価で買うって,何か癪じゃないですか~しかも私あんまお金ないですから~♡。

 なので,ちょっと時間を置いて安く入手できる方法と機が熟することを待って,最近買ったのですね。

2 で,読んだ結果,やはりこれは良かったですね。勿論,私は日商簿記で2級まで持っているので,細かい話はもう知っていることだらけです。

 でもねえ,この本,いちばん重要なことを分かりやすく,きちんと書いているのです。何故,営業損害→限界利益説かってことをです。

 これねえ,知財でも重要ですよね。弁理士の人でも,特許法102条に言う利益って限界利益のことを言う,◯!ってね,そこまでは知ってます。
 でも,限界利益ってどういうことか,そして,どうしてそのようになるのか(ある費目を控除するわけですね。),そのことをきちんと分かっている人(弁理士は勿論,弁護士も。)に私は出会ったことがないのです。

 思い詰めた私は公認会計士に聞こうと思ったのですが,何せ公認会計士の知り合いがあんまりいない!たまに居たときも,今度は営業損害のとき限界利益で何故いいのか,聞くのを忘れたりするのですね。ああ,こりゃこりゃ。

 この本で漸くその根源的な所の簡明な説明があり,実に納得いきました。

 ほんで,やはり限界利益と同様に,簿記2級合格以来ずっと思っていた疑問,つまり,限界利益がすぐ分かるという優れた使いみちがある直接原価計算でのPLが主流じゃなく,全部原価計算でのPL(企業の決算書でのPLはこっちです。)が何故主流なのか,その理由まで書いてありました。

 種明かしみたいなもんだから,ここではその理由は書きませんよ。買って読んで頂戴(私も本を出したから分かるけど,本当大変なんだよね。)。
 ま,そりゃそうだなあっていう理由ですけどね。

3 ま,気に入らない所もちょっとはあります。

 営業利益の判決について,知財関係の判決が沢山あり,その関係上,知財についての箇所もちょっとあります(p45~。ここは弁理士も必見でしょうね。知財やる弁護士も見ていた方がいいですよ。どうせ会計分からないんでしょうし。)。

 そこでの説明が特許法102条2項の説明のみなのです。通説的には,102条1項の「利益」も限界利益説のはずですから,こっちを使っても良かったと思います。それにそうすると,原告側の利益を基準に出来るので,所謂営業損害と同じなのですよ~と言いやすいと思いますのでね。

 2版が出来るときは是非検討してもらえるとありがたいです。

4 とは言え,やはり本当に分かっている人がきちんとした説明をするとこうも分かりやすい,典型ですね。
 
 知財の本にも102条の論点で多少説明しているものはありますが,何の費目を控除するかの説明だけで,何故(why)限界利益説が妥当なのかという説明までしているものは一つもありません。

 当然のことだから省いている?いえ,違うと思います。本当は分かっていないからです。
 本当は分かっていない専門家って多いですよ~。

 何故その費目控除するの?いや前の判決でもそうだったから,ってのもあるでしょう。変動費だからっていう答えはマシな方ですね。
 でも,じゃあ何故変動費を控除するの?それにそもそも変動費って何よ?って聞くと,答えられる裁判官,弁護士,日本に何人居ますかね?!

 皆さん,分かっていないのに分かっているふりをする,皆さん,実に良い本ですからね。読んだ方がいいですよ。ムフフフ

 あ,そう言えば今週末,弁理士会の中央知的財産研究所主催の公開フォーラムが開かれます。お題は,「損害賠償論―更なる研究」です。実にタイムリーです。去年のことがありますから,再録はないと思いますね。なので,こりゃ行くっきゃないでしょ。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーのエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。次は何かな。
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