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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護土の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 今日は月曜日,日経の法務面の特集がある日ではあるのですが,似たような特集の雑誌が続けざまに出たので,その話からということで行きましょう。

 一つは,弁理士会の会報であるパテント,もう一つはジュリストですね。
  

2 まずは新しい方のパテントから行きましょう。
 パテント2018年1月号の特集は,「オリンピック・パラリンピックと知財」です。重要なことは,「知財」です。そりゃ当然ですよね。だって,弁理士会の会報ですから。

 ところが,知財と関係のない話が結構あります。
 巻頭のハンマー投げの室伏広治氏へのインタビューです。短い上に知財の話はほぼありません。有名人にインタビューすりゃあいいってもんじゃありません。

 さらに,アンチドーピングの話,これも知財と全く関係ありません。誰だ!こんなの載っけようと言ったのは?
 別に,これが弁護士会の会報である「偽善と欺罔」(別名,自由と正義)に載ってるっていうんじゃ別に何の問題もないでしょう。でも,これ弁理士会の会報で,しかも「・・・と知財」という特集ですからね。
 原稿がとれりゃ誰でもいいってわけじゃありません。

 ま,あとの記事というか論文で,一読の価値があるのは,ユアサハラの青木先生のやつくらいです。さすがですね~。

 ほんで,更なる苦言です。
 アンブッシュマーケティング規制の必要性を説く記事が載っています。執筆者は,どこかで見た名前~♫そうだ,こんときの講演者です。
 いや別に世の中には色んな考えがありますから,スポンサーのために動く,あり得る話でしょう。私だって,弁護士やっているのは金のためだけですから。

 だけどねえ,弁護士会の講演のときは,自分の立ち位置をはっきり言ってました,この執筆者。
 オリンピックのトップスポンサーにも名を連ねている某清涼飲料水メーカーに18年いたインハウスで,今は某大手企業のジェネラルカウンシルに転職した~みたいなことをね。
 そうすると,ああ,そっちの利益代表なのね,そっちのポジショントークなのね,ってのが分かります。予測可能性があります。

 ところが,最悪なのは,パテントの紹介です。「ニューヨーク州弁護士」としかありません。これだと,客観的で中立的な有識者が,様々な事情を考慮した上で,アンブッシュマーケティングの必要性に一理ある~と言っている,と受け止められがちになってしまいます。
 これは卑怯です。そう,西村あさひ事件と一緒です。

 これが好対照なのは,ジュリストと比べるとよく分かります。ということで,次に行きましょう。

3 次は,ジュリストの方です。
 既に,最新号ではなく,一つ前の刊になります。これも2018年1月号です。
 特集は,「スポーツビジネスと知的財産」です。

 それぞれの記事というか論文のタイトルは以下のとおりです。
 ◇特集にあたって
 ◇スポーツビジネスの法的基本構造と知的財産の保護・活用
 ◇オリンピックと知的財産
 ◇プロ野球ビジネスと知的財産
 ◇サッカービジネスと知的財産
 ◇大学スポーツと知的財産
 ◇プロスポーツと放映権
 ◇プロスポーツと商品化権

 論文の一つ一つが非常にレベルが高く,読ませるものでした。何と言いましょうか,痒い所に手が届くって感じがします。取り敢えず,原稿を頼める所に頼んだ感が満載のパテントとはえらい違いです。

 で,上で問題になったアンブッシュマーケティング規制についても,ジュリストにも載っています。上から3番目の「オリンピックと知的財産」です。

 中身は,パテントの記事とそう変わりません。スポンサーマーケティングのビジネスモデルの維持,他国の状況,等々を説明しているわけです。
 で,ジュリストがちゃんとしているなあと思ったのは,執筆者の属性を明らかにしている点です。東京オリンピックパラリンピックの組織委員会の法務部長と法務課長であると明記しております。

 これは予測可能性がありますよね。そうか,そっちのドンズバの人達の考えか~そりゃ当然,規制必要説に立つわなあ~,客観的でも中立的でもない一方当事者の意見だもんなあってわかりますからね。

 ま,ここで私の意見を言っておきますと,私も金権弁護士なので,金で考えればいいと思います。オリンピックのトップスポンサーともなれば,トヨタで2000億円出したとのことです。

 ただねえ,今回全額をスポンサーが出しているわけじゃないでしょ。
 足りない分は税金でしょ。税金は誰が出すの?国民でしょ。じゃあ国民もスポンサーなんだから,その自由を制限するのはよくねえじゃんってことです。

 足りない分をスポンサーが全額出すなら文句は言わねえよ~♡
 足りない分が1兆円とすると,トップスポンサーに追加500億円,国内スポンサーにその半分の250億円ほど追加で出してもらえれば,1兆円は軽く埋まります。
 pay or zip!これでいいんじゃね。


 あと,個人的に参考になったのは,放映権の話です。森浜の池村先生によるもので,これは実に良かったですね。

 実は,私,ここでも何度か書きましたが,一昨年のリオ五輪で,某国の某マラソン代表選手の,ユニフォーム関係の知的財産について法務アドバイスをしたのですね。ま誰のことだかわかりますね。

 で,この度,この選手のドキュメンタリー映画が作られることになりまして,そのことについての法務アドバイスもしたのですね。まあ仔細は話せませんが,今回の池村先生の論文の問題点とバッチリ合います。勿論,私の考えとは違う所はあるのですが,実に参考になりました。
 こういう論点て,大企業クライアントを持つ大事務所しか縁がないように見えますが,意外と私のような弱小負け組弁護士でも触れる機会があるのですねえ~♫ムフフ。

4 ちょっとまとめましょう。
 こう2冊比べると,優劣がはっきり分かりますね。勿論,ジュリストが優です。

 まあパテントは,結局弁理士が暇な時間に手弁当で編集しているわけで,要するにプロの作ったものじゃありません。それでも特許とか,得意な特集のときはいいのですが,今回のような,偶に,オリンピック前だし~,みたいなときにはボロが出ます。

 そう見ると,ジュリストはやはりプロの人達によるもので,個々の論文自体のレベルも高いし,一本筋も通っているし,パテントより高い十分な理由があると思いますね(ジュリストは1426円,パテントは800円)。

 まあでも普段と違う新規な挑戦は素晴らしいことですから,パテントはこれに懲りずに挑戦し続けて欲しいものです,これほんとうです。

5 続いて,日経の話もちょっとしておきましょう。
 法務面は,連載記事の恐らく最終回です。「知財立国は成ったか(下)特許か秘匿か 基準明確に 国内外で効率よく取得」

 今回は東レとマツダと天池合繊(天女の羽衣で有名です。)の知財戦略の記事でした。

 まあ,これも個々の積み重ねが結局知財立国に繋がるかもということは分かるのですが,じゃあ知財立国は成ったかどうかという肝腎の話については,これじゃあよく分からないなあというものです。

 ちなみに,特許か秘匿かという話については,ここでも書いているし,何よりも拙著「知財実務のセオリー」でも詳しく書いています。
 その「知財実務のセオリー」の意義というか話題に成った点って,突き詰めると3つあるかなと思います。

 一つは,クレームチャートの紹介。こういう実務的ノウハウってあまり開陳されてませんでしたから。
 次は,進歩性の解説。基本書を書くような偉い先生の解説は抽象的過ぎて分かりにくかったようですね。かと言って,弁理士の書いたものは具体的過ぎてこれまた分かりにくかったようです。そういう所に「知財実務のセオリー」の意義があったわけですよん。
 そして,最後が特許とノウハウの選別基準です。本当に分かっている実務家なら,端的にピシッと言えることなのに,これまで何故かこれもピシッと書いた本がありませんでした。
 うちの事務所にも,ときどき,経済産業調査会からセミナーのFAXが来たりするのですが,2時間もその特許とノウハウの選別基準をセミナーするという,これって詐欺だろ!みたいなものすらあったのです(まあしかし,経済産業調査会の本って,自分の所でやったセミナーのレジメをちょこっと本にしたみたいなもんばっかで,本当ダメだなあ。)。

 なので,手前味噌でアレですが,「知財実務のセオリー」,手に入れていない人は早めがいいと思いますよ。既に,定価の新品,というのが難しいようです(重刷も重版も予定がなく,絶版状態ですからね。)から。

 で,そんな記事より,気になったのが,3面です。
 「弁理士の業務拡大へ法改正 ビッグデータ活用促す 」
 これはたまがりました。

 中身を見ると,「改正案では、データの保護策の策定やデータ売買・利用許諾に関する交渉、データ利用を巡る企業間の争いの解決などを新たな弁理士の業務として追加する。」とあります。

 この下線部の所なんて,弁護士法72条の例外じゃないとやれない話です,本来。なので,仮に弁護士72条の例外として弁理士法改正するというのであれば,実に大きな話です。
 恐らく専権業務ではなく標榜業務への追加になるとは思うのですが,この記事だけからははっきりしません。私は弁護士でもあるので,要注目って所です。
 
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理論物理学者を目指したのはもう30年以上前のこと。某メーカーでの液晶ディスプレイのエンジニアを経て,弁理土に。今は,弁護土です。次は何かな。
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