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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
0 はじめに
 昨日の流れから,せっかくですので,この判決の紹介です(明日は,一日九州出張という理由もあります。)。すでに現段階で,判例と呼んでもよいかもしれません。

1 概要
 本件は,破産管財人である上告人(弁護士)が,旧破産法の下において,破産管財人の報酬の支払をし,破産債権である元従業員らの退職金の債権に対する配当をしたところ,所轄税務署長から,上記支払には所得税法204条1項2号の規定が,上記配当には同法199条の規定がそれぞれ適用されることを前提として,源泉所得税の納税の告知及び不納付加算税の賦課決定を受けたことから,上告人において,主位的に,上告人の被上告人に対する上記源泉所得税及び不納付加算税の納税義務が存在しないことの確認を求めるとともに,予備的に,被上告人の上告人に対する上記源泉所得税及び不納付加算税の債権が財団債権でないことの確認を求めている事案です。

 これに対して,最高裁は,弁護士である破産管財人は,自らの報酬の支払について,所得税法204条1項2号所定の源泉徴収義務を負うものの(これは仕方ないかな。),他方,破産債権である所得税法199条所定の退職手当等の債権に対する配当について,同条所定の源泉徴収義務を負わない(良かった良かった),と判示したものです。

2 問題点
 破産管財人とは,ブッチャーです(プロレスラーではなく,字義そのままの)。条文上は,「破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する。」(破産法78条)となっておりますので,要するに,破産者の有していたすべての財産を破産者の意向など完全無視して,かき集め,お金に換え,これを債権者に配るという仕事です。
 高く売れるいい肉(一等地の不動産やまとまった額の預金など)があれば良いのですが,クズの肉ばかりだと全く話にならないということになります。

 そして,上記のとおりお金に関するすべての権限は管財人にありますので,破産者が会社の場合で,従業員の未払いの給与や退職金があり,かき集めた財産からこれを弁済可能な場合,弁済しますし,自分の報酬についても裁判所からの決定を待って,弁済することになります。

 その場合,若干の問題があります。源泉徴収です。
 サラリーマンの源泉徴収もそうですが,弁護士などに報酬を支払う場合,原則として,源泉徴収義務があります。

 この辺全く詳しくなかったのですが,税理士に頼むほどのブルジョア弁護士でないため(簿記2級もありますしね。),所得税の申告用にある程度勉強しました。

 さてさて,そうすると,お金に関する全ての権限は管財人にあるのですから(要するに,破産者の財産的人格が管財人に乗り移ったというわけです。),会社のやるべき給与や退職金の支払いに際しての源泉徴収義務があるのではないかがここしばらく問題となっていたのです。
 そして,東京の地裁20部実務は基本的に義務なし,他方,大阪では,今回の判決のもととなった下級審などもあり,義務ありとされていたのではなかったかと思います。

 したがい,今回の判決が出るまでは管財人をやる弁護士には戦々恐々だったと思います。法人破産で,いちいち元従業員の給与や退職金の源泉徴収をしなければならないとしたら,とんでもない仕事量です。おそらく,それに関しての,裁判所への問い合わせも増えますから,地裁の裁判官としても,お願いお願いと祈ったのではないかと思います。

3 判旨
管財人報酬について
「弁護士である破産管財人が支払を受ける報酬は,所得税法204条1項2号にいう弁護士の業務に関する報酬に該当するものというべきところ,同項の規定が同号所定の報酬の支払をする者に所得税の源泉徴収義務を課しているのは,当該報酬の支払をする者がこれを受ける者と特に密接な関係にあって,徴税上特別の便宜を有し,能率を挙げ得る点を考慮したことによるものである(最高裁昭和31年(あ)第1071号同37年2月28日大法廷判決・刑集16巻2号212頁参照)。
破産管財人の報酬は,旧破産法47条3号にいう「破産財団ノ管理,換価及配当ニ関スル費用」に含まれ(最高裁昭和40年(オ)第1467号同45年10月30日第二小法廷判決・民集24巻11号1667頁参照),破産財団を責任財産として,破産管財人が,自ら行った管財業務の対価として,自らその支払をしてこれを受けるのであるから,弁護士である破産管財人は,その報酬につき,所得税法204条1項にいう「支払をする者」に当たり,同項2号の規定に基づき,自らの報酬の支払の際にその報酬について所得税を徴収し,これを国に納付する義務を負うと解するのが相当である。」

元従業員の退職金について
「所得税法199条の規定が,退職手当等(退職手当,一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与をいう。以下同じ。)の支払をする者に所得税の源泉徴収義務を課しているのも,退職手当等の支払をする者がこれを受ける者と特に密接な関係にあって,徴税上特別の便宜を有し,能率を挙げ得る点を考慮したことによるものである(前掲最高裁昭和37年2月28日大法廷判決参照)。
破産管財人は,破産手続を適正かつ公平に遂行するために,破産者から独立した地位を与えられて,法令上定められた職務の遂行に当たる者であり,破産者が雇用していた労働者との間において,破産宣告前の雇用関係に関し直接の債権債務関係に立つものではなく,破産債権である上記雇用関係に基づく退職手当等の債権に対して配当をする場合も,これを破産手続上の職務の遂行として行うのであるから,このような破産管財人と上記労働者との間に,使用者と労働者との関係に準ずるような特に密接な関係があるということはできない。また,破産管財人は,破産財団の管理処分権を破産者から承継するが(旧破産法7条),破産宣告前の雇用関係に基づく退職手当等の支払に関し,その支払の際に所得税の源泉徴収をすべき者としての地位を破産者から当然に承継すると解すべき法令上の根拠は存しない。そうすると,破産管財人は,上記退職手当等につき,所得税法199条にいう「支払をする者」に含まれず,破産債権である上記退職手当等の債権に対する配当の際にその退職手当等について所得税を徴収し,これを国に納付する義務を負うものではないと解するのが相当である。」

4 検討
 結論は上に述べたとおりです。
 さて,今回の事案は,法人の破産で,従業員の退職金と管財人報酬についてですね。
 そうすると,この事案の対象ではない,法人の破産で従業員の給与と,個人の破産での管財人報酬については,いまだ論点となるということになります。

 まず,法人の破産で従業員の給与については,所得税法183条と199条が似ていること及び,今回の判決の理由(密接な関係なし)がそのまま妥当することからすると,源泉徴収義務なし,とするのが妥当でしょう。

 つぎに,個人の破産での管財人報酬については,確かに所得税204条1項2号に該当することは法人の場合と変わらないのですが,個人の場合,所得税法204条2項2号の例外規定があります。例えば,弁護士の方が個人の依頼者から事件を受任し,報酬の支払いの段になって,法人のように源泉徴収はしてもらっていないでしょ。それが,破産管財人になると源泉徴収義務が生じるというのでは,例外規定に反すると思います。ですので,この場合も,源泉徴収義務なしと考えるべきでしょうね。

 以上,新米管財人のやっつけ仕事ですので,間違いがあるかもしれませんが,平にご容赦を。

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