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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,インターネット上の電子掲示板(ブログのようですね。)にされた匿名の書き込みによって権利を侵害された(名誉毀損のようです。)とする方々が,その書き込みをした者に対する損害賠償請求権の行使のために,書き込みをした者にインターネット接続サービスを提供した経由ブロバイダに対し,プロバイダ責任制限法4条1項に基づき,書き込みをした者の氏名,住所等の情報の開示を求めた事案の上告審です。

2 問題点等
 インターネット上での掲示板やブログのコメント欄等には,雑多な書き込みがなされます。まさにピンからキリまでです。非常に精度の高い内部者情報と言えるものから,便所の落書きや単なる愉快犯的なものまで様々です。

 ところが,一旦そのような書き込みをされてしまうと,各検索会社のクローラーで検索されてしまい,その検索結果等をコピペして更に別の掲示板に書き込みされ,またそれが各検索会社のクローラーで・・・ということにより,情報の拡散が起こってしまいます。
 それ故,権利侵害情報の場合,情報の拡散等を防止するためには,早い段階で最初の書き込み者を突き止め,根本から絶つことが必要なのです。

 しかしながら,インターネットの書き込み情報は匿名でなされる事が多く(それ故の無責任書き込みなのでしょうが),最初の書き込み者を特定することは非常に困難です。そのようなことから,プロバイダ責任制限法が設けられ(2002年施行),これによって掲示板管理者等に対し,書き込み者の情報の開示が請求できることになりました。
 ところが,本件のように書き込み者が匿名で或る掲示板等に書き込んだ場合,掲示板管理者等には,その書き込み者の氏名,住所,メルアドなどの書き込み者を特定する情報などないのが通常です。あるのは,書き込み者の使った経由プロバイダのIPアドレス等だけでしょう。
 そうすると,さらに,経由プロバイダに対して,いついつこれこれのIPアドレス等で或る掲示板に書き込んだ者の情報を開示してくれと頼まない限りは,書き込み者の氏名,住所,メルアド等はわかりません。経由プロバイダでしたら,匿名の書き込み者とインターネットの接続契約等がされており,書き込み者の氏名,住所,メルアドなどの情報も接続契約等によって所持しているはずだからです。
 そのため,迂遠ですが,再度経由プロバイダに対して,プロバイダ責任制限法に基づき,書き込んだ者の情報を請求することになります。

 前置きが長くなりましたが,ここまで来て,いよいよ最高裁の判断した論点になります。プロバイダ責任制限法に基づき情報を開示することになるのは,条文上,「特定電気通信役務提供者」に限られます。掲示板の管理者等がこれに該当することは明らかですが,経由ブロバイダもこれに該当するかは,否定説もありました。
 というのは,経由プロバイダは,書き込み者がいかに違法情報を書き込んだとしてもこれを把握し,削除できるという立場にはないからです。だって,書き込み者と掲示板の間を単に「経由」してあげているだけに過ぎないんだもーん,通信の秘密は憲法(21条2項)にも規定されているよーん,ということですから。それ故,経由プロバイダとしては,わしは「特定電気通信役務提供者」じゃないもんねー,開示なんかしないよ,と押し通す場合もありました。

3 本件判決の判旨
「最終的に不特定の者に受信されることを目的として特定電気通信設備の記録媒体に情報を記録するためにする発信者とコンテンツプロバイダとの間の通信を媒介する経由プロバイダは,法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に該当すると解するのが相当である。」

4 検討
 最高裁がかかる結論を導いたのは,条文の文言の自然な解釈に加え,経由プロバイダ以外に書き込み者の情報を把握している者が存在しないことから,そのような解釈の必要性が非常に大きかったためと思われます。
 本判決の射程については,かかる理由が妥当する範囲は結構広いと思われますから,一般の方と直接インターネット接続契約を締結している者は全て,例えば,パソコン用のプロバイダ,iモードを初めとする携帯電話のキャリア,インターネット接続を売りにしているCATV各社など,が含まれるのではないかと考えます。

 ところで,プロバイダ責任法の論点が最高裁まで上がってきたのは,初めてではないでしょうか。
 上告人は,経由プロバイダでしたから,上告棄却で敗訴になってしまいましたが,今後の実務に与える影響は大きいと思えます。という意味では,上告人に拍手,そしてその代理人にも。ちなみに,上告代理人は,ダウンタウンのような名前のいわゆる四大渉外事務所の1つの弁護士の方々のようですね。

 なお,この判決については,判決日である昨日の夕刻には,すでに裁判所のHPにアップされておりました。
 業者のデータベースにこれが登載されるのは,1ヶ月以上かかるはずです。また,判例雑誌には,コメントとともに載りますが,さらに数ヶ月あとです。しかも,読者は専門家でしょうから,しょーもないコメントなんかあんまり役に立ちません。
 そういうことからすると,裁判所のHPは本当に使えますね。


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