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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 知財ではありませんので,念のため。
 本件は,貸金業者との間で締結した基本契約に基づき,継続的に金銭の借入れと弁済を繰り返した人が,各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の制限を超えて利息として支払われた部分(以下,この部分を「制限超過部分」という。)を元本に充当すると過払金が発生するとして,貸金業者に対し,不当利得返還請求権に基づき,過払金71万1523円の返還等を求める,いわゆる過払い金請求の事案です。

2 問題点等
 過払い金請求は,電車のつり革広告やテレビCMでもよく見かけることと思います。
 しかしながら,知財をやっているような方にとって,なかなか中身が何のかはよくわからないことと思います(企業の知財部に勤めている方や弁理士の方がサラ金などからお金を借りるのは考えにくいですからね。)。
 私も,イソ弁時代にはまったく縁の無かった分野です。独立開業した後は,企業だけでなく個人の方もお客さんとして見えられますから,依頼があれば受任しております。

 さて,ではどうやって,過払い金が生じるのでしょうか。
 出資法により年利29.2%を超える利息の契約は,そもそも犯罪です(もうすぐ,ここが20%になる予定です。)。
 他方,利息制限法によると,「元本」の額によるのですが,「元本」10万円未満だと年利20%が上限,10万円~100万円未満だと18%が上限,100万円以上だと15%が上限の利息です。
 しかしながら,従来貸金業者は,出資法以下利息制限法以上の,例えば,24%もの利息をとっておりました。ですが,日本人は正直・従順ですので,サラ金から,この額で返せと言われれば,せっせと返し続け,いつまで経っても全然返し終わらないなあ~となっていたのです。
 そこで,弁護士などに依頼して,これを利息制限法とおりに計算し直すと,せっせと返し続けた分が返しすぎていたことになることも多く,この部分を不当利得として返還請求するのが,過払い金請求ということになります。

 以上の次第ですから,利息制限法1条1項所定の三つの利息のうち,過払い金請求をする場合,一番低い15%で計算し直したいですよね。それを超えた部分が過払い金になるのですから。
 ただ,返済し続けてますから,初めは200万円借りたけど,返したので残債が50万円になり,さらに返して残債が5万円になり・・とすると,それぞれに対応する利息も15→18→20%と変化し,徐々に過払い金の割合も減少するかのように思えます。
 このような場合,適用の利息はどうなるの?ってのが問題点です。翻って言うと,適用利息を決めるには元本を決めなければなりませんから,利息制限法1条1項の「元本」の解釈問題とも言えます。

 いつものとおり,前置きが長いですね~。いったい誰に説明しているんでしょうか。
 さて,この問題の解答として,大きく3つ説があるようです(例えばQ&A過払金返還請求の手引第3版)。
 一つは,基本契約を締結したときの極度額(例えば200万円)で適用の利息は固定とする説,残元本で適用の利息も変わるが20→18→15%と変わることはあってもその逆はないとする説,残元本で適用の利息も変わるとする説,があるようです。
 最初の説からあとの説に行くに従って,過払い金請求者に不利になります。例えば,最後の説だと,100万円を借りた場合で15万円の利息までしかOKでないのに,1万円返して99万円になったら17万8200円の利息までOKになります。年利換算の単純計算で約3万円も過払い金請求が低額になってしまう可能性があります。他方,最初の説は,若干ボリ過ぎの感がします。

 さて,最高裁はどう判断したのでしょう。この問題点について,最高裁の判決はいままでなかったようです。ちなみに,原審の福岡高裁は,最後の説を取っていたようです。

3 判旨等
「継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入れと弁済が繰り返され,同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合には,各借入れの時点における従前の借入金残元本と新たな借入金との合計額が利息制限法1条1項にいう「元本」の額に当たると解するのが相当であり,同契約における利息の約定は,その利息が上記の「元本」の額に応じて定まる同項所定の制限を超えるときは,その超過部分が無効となる。この場合,従前の借入金残元本の額は,有効に存在する利息の約定を前提に算定すべきことは明らかであって,弁済金のうち制限超過部分があるときは,これを上記基本契約に基づく借入金債務の元本に充当して計算することになる。
そして,上記取引の過程で,ある借入れがされたことによって従前の借入金残元本と新たな借入金との合計額が利息制限法1条1項所定の各区分における上限額を超えることになったとき,すなわち,上記の合計額が10万円未満から10万円以上に,あるいは100万円未満から100万円以上に増加したときは,上記取引に適用される制限利率が変更され,新たな制限を超える利息の約定が無効となるが,ある借入れの時点で上記の合計額が同項所定の各区分における下限額を下回るに至ったとしても,いったん無効となった利息の約定が有効になることはなく,上記取引に適用される制限利率が変更されることはない。」

4 検討
 最高裁は,2番目の説のようですね。条文の文言と,まあその必要性というよくあるパターンですね。
 実務もこの2番目の説が多いのではないでしょうか。したがい,この最高裁により,実務変更ということはそう多くないと思います。
 利息制限法の計算し直しには,エクセルのマクロを使うことが多く,東弁の或る弁護士の方が作成されたものが一番多く出回っていると思います。
 その説明では、利息の入力について,一度20→18になったら,返済により10万円未満になっても18のままでよい,などとされておりますので,このとおりやっている方が多いものと推測されます。

 さて,この過払い金請求ですが,サルでもできる,簡単,楽ちん,などということから,多くの弁護士や司法書士が集っているのはご存じのとおりです。
 しかし,私はマニアックな性格のものですから,それほど簡単とは思えません。現に,このように最高裁でようやく結論を見た論点もあるのですから,機械的に,返済により10万円未満になっても18のままさ~そのままさ~♪(浜田省吾かいな)なんて,事務員にやらせていてはこんな論点の存在すら気づきません。それじゃあおもしろくないですね。
 一旦無効っちなったんじゃき,二度と有効っちなっわけねえじゃろうが,と知ったかぶってきりっと説明してあげましょうね。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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