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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,第1審判決別紙物件目録記載の建物(本件建物)を上告人(借主)に賃貸した被上告人(貸主)が,本件建物の賃貸借(本件賃貸借)は借地借家法38条1項所定の定期建物賃貸借であり,期間の満了により終了したなどと主張して,上告人に対し,本件建物の明渡し及び賃料相当損害金の支払を求める事案です。

 原審(東京高裁平成21(ネ)6078号,平成22年03月16日判決)は,「上告人代表者は,本件契約書には本件賃貸借が定期建物賃貸借であり契約の更新がない旨明記されていることを認識していた上,事前に被上告人から本件契約書の原案を送付され,その内容を検討していたこと等に照らすと,更に別個の書面が交付されたとしても本件賃貸借が定期建物賃貸借であることについての上告人の基本的な認識に差が生ずるとはいえないから,本件契約書とは別個独立の書面を交付する必要性は極めて低く,本件定期借家条項を無効とすることは相当でない。」と判断し,本件賃貸借は定期建物賃貸借であり,期間の満了により終了したとして,被上告人の請求を認容すべきものとしたわけですね。

 これに対して,最高裁は,「原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。被上告人の請求を棄却する。」との判決を下しました。つまり,逆転で,貸主敗訴,借主勝訴となったわけです。

2 問題点
 問題点はひとつだけです。借地借家法38条2項所定の書面とは,契約書とは別個の書面であることが必要か?ということです。
 仮にそうだとすると,本件では,別個の書面を交付しての説明がないから,本件賃貸借は定期建物賃貸借には当たらず,普通の賃貸借となり,期間の満了では終了しないことになります。

 借地借家法38条1項2項は,こうあります。
第三十八条  期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
 2  前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

 まあこの借地借家法38条,定期建物賃貸借の趣旨はわかりますよね。
 従前,あまりに借家人等の保護が厚く,例えば,建替え,またはビジネス替え,その他の理由で出ていってもらいたい場合に,かなりの立退き料を積まないと出ていってもらえませんでした。他方,とは言うものの,やはり今住んでいる所を出ていった場合,つぎに借りられるところがない,というような人も保護しないといけないわけです。
 そこで,平成の初め,借家法と借地法を併せて,借地借家法に全面改正する際に,従前の賃貸借とは異なり,やむを得ない事情等の限られた理由での一時使用的な賃貸借を認めたのでした(旧38条)。

 そして,更に,ビジネス界からの要請で,平成11年の改正で,現行法のように,やむを得ない事情がなくても期間満了で出ていってもらえる制度を作ったわけです(新38条)。これが,定期建物賃貸借です。完全にビジネスの場合は,貸主借主とも,予見可能性が高く,これでいいとは思うのですね。

 ただ,定期建物賃貸借か普通の賃貸借かの違いで,効果が全く異なりますので,定期建物賃貸借に当たるためには,厳しい要件のハードルをかさないといけません。これが38条1項2項です。典型的には,原則として公正証書によって契約書を巻かないといけなかったりします。更には,「その旨を記載した書面」の交付と説明が必要なわけです。

 ただ,この「その旨を記載した書面」,契約書と別個の書面でなければならないかは,条文上明らかではありません。
 別に,説明してりゃあいいんじゃねえーの,BtoC場面じゃないわけだし,契約書と同じ書面でも,実害ないっしょ,と考えれば,原審や一審のように,別個の書面でなくOKとなり,定期建物賃貸借として有効となります。

 他方,いやいやそもそもの趣旨は,普通の賃貸借と異なり,定期建物賃貸借であり,期間満了で絶対立ち退かないといけないわけなのだから,要件は,はっきり,きびしく,しないといけなくなって,別個の書面じゃないとまずいんじゃないの~となるわけです。

 そして最高裁は?ということになります。

3 判旨
「 4  しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
  期間の定めがある建物の賃貸借につき契約の更新がないこととする旨の定めは,公正証書による等書面によって契約をする場合に限りすることができ(法38条1項),そのような賃貸借をしようとするときは,賃貸人は,あらかじめ,賃借人に対し,当該賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて,その旨を記載した書面を交付して説明しなければならず(同条2項),賃貸人が当該説明をしなかったときは,契約の更新がないこととする旨の定めは無効となる(同条3項)。
  法38条1項の規定に加えて同条2項の規定が置かれた趣旨は,定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って,賃借人になろうとする者に対し,定期建物賃貸借は契約の更新がなく期間の満了により終了することを理解させ,当該契約を締結するか否かの意思決定のために十分な情報を提供することのみならず,説明においても更に書面の交付を要求することで契約の更新の有無に関する紛争の発生を未然に防止することにあるものと解される。
  以上のような法38条の規定の構造及び趣旨に照らすと,同条2項は,定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って,賃貸人において,契約書とは別個に,定期建物賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了することについて記載した書面を交付した上,その旨を説明すべきものとしたことが明らかである。そして,紛争の発生を未然に防止しようとする同項の趣旨を考慮すると,上記書面の交付を要するか否かについては,当該契約の締結に至る経緯,当該契約の内容についての賃借人の認識の有無及び程度等といった個別具体的事情を考慮することなく,形式的,画一的に取り扱うのが相当である。
  したがって,法38条2項所定の書面は,賃借人が,当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず,契約書とは別個独立の書面であることを要するというべきである。

4 検討
 最高裁は,別個の書面でないといけないとしました。
 まあ,プロ同士(本件は,貸主も借主も会社でした。)なんだし,厳しいハードルを課されてもやむを得ないかなあと思います。

 ところで,私は,今回の事件のような不動産関係の事件はあまり扱いません。まあお客さんからのご依頼があれば,やるとは思いますが,要するに,依頼はないわけですね。ですので,通常,この手の事件のことをブログには書きません。

 じゃあなぜ書いたか,それは今裁判所のHPが見れないのですね。
 
 先週の金曜の夕方の早い時間は裁判所のHPは見れたのです(その時に閲覧して,運良くキャッシュが残っていました。そこで,判決の全文も,判決の要旨等のページも保存できたわけですね。)。

 ところが,夜になって,岡Jのfacebookの書き込みを見てビックリ。低能なシナ人により乗っ取られたというではありませんか。そのシナ人の細工はそのうちなくなりましたが,連休明けても,裁判所のHPには,「 Network Error (gateway_error)  An error occurred attempting to communicate with an HTTP or SOCKS gateway. The gateway may be temporarily unavailable, or there could be a network problem.  For assistance, contact your network support team.」とあるだけです。

 英語の上,専門用語ですので,詳しい意味はよくわかりません。
 ですので,大体訳すと,「しばらく旅に出ます。青鬼」だと思います。まあ旅から帰ってくるのを待ちましょう。
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