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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,被上告人(原告,控訴人で自然人)が,特例有限会社である上告人(被告,被控訴人)の臨時株主総会での本件各決議(①Dを取締役に選任する旨の決議,②Dを代表取締役に選任する旨の決議並びに③本店の所在地を変更する旨の定款変更の決議及び本店を移転する旨の決議)には決議の方法等につき法令違反があると主張して,上告人に対し,会社法831条1項1号に基づき,本件各決議の取消しを請求する訴えの事案です。

 事実の概要は,このとおりです。
「(1) 上告人は,特例有限会社であり,その発行済株式の総数は3000株である。
上記3000株のうち2000株は,Aが保有していたが,Aが平成19年に死亡したため,いずれもAの妹である被上告人及びBが法定相続分である各2分の1の割合で共同相続した。Aの遺産の分割は未了であり,上記2000株は,被上告人とBとの共有に属する(以下,上記2000株を「本件準共有株式」という。)。
(2) Bは,平成22年11月11日に開催された上告人の臨時株主総会(以下「本件総会」という。)において,本件準共有株式の全部について議決権の行使(以下「本件議決権行使」という。)をした。上告人の発行済株式のうちその余の1000株を有するCも,本件総会において,議決権の行使をした。」

 ま,要するに,2000株を共有する姉妹なのに,権利を行使する者一人を定めず,勿論その者の氏名なども通知することなく,姉妹の一方が,2000株全部の議決権行使をしてしまったわけですね。

 ほんだから,怒った姉妹の片方が,法令違反で決議取消しじゃ!と訴えたわけです。
 
 まずは,一審です。横浜地裁川崎支部平成24年6月22日の判決は,被上告人(原告,控訴人で自然人)の請求を棄却しました。
 次に二審の東京高裁平成24年11月28日(平成24(ネ)5048 )は,逆転で,被上告人(原告,控訴人で自然人)の控訴を認容し,原判決を取消しました。
 ほんで,慌てた会社の上告人(被告,被控訴人)が上告受理の申立てをしたのが,本件というわけです。

 これに対して,最高裁第一小法廷(櫻井さんの合議体ですね。)は,上告を棄却しました。つまりは,高裁の結論とおりでよし,要するに,決議を取り消すほどの瑕疵はあったということです。

 まあ,昨日,会社法がらみで,実に注目すべき判決が2つ出ております。
 一つは,これ。
 もう一つは,例のアートネイチャーの新株の価格の事件です。アートネイチャーの方も面白い話なのですが,こちらはニュースにもなっているし,ひねくれ者の私としては,ニュースになっていない方を取り上げました。それに,法律の解釈としてこっちの方が面白いですもん。

 いやあ久々の最高裁ですね。

2 問題点
 問題点は,判旨にもあるとおり,「会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたままされた本件議決権行使が,同条ただし書の上告人の同意により適法なものとなるか否かが争われている。」ということです。

 会社法106条です。
 「(共有者による権利の行使)
第百六条 株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなけ れば、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

 まあ端的に言えば,このただし書きの解釈が問題となるわけです。

 この本文の趣旨はわかりますよね。共有状態の株式については,誰が代表者か決めとかねえとようわからんじゃんって所です。
 あ,ちなみに共有って,2000のうち,こっからここまでがBさんで,残りの1000が被上告人のもの~ってわけではないですからね。それじゃあ共有じゃありません。もう既に分割されているわけです。
 そうではなく,共有者は2000全部を使用できたりするのですね。ただ,持ち分に応じてできることとできなかったりすることがあります(民法249条~)。
 まあ,実に法的というか,ある意味数学的な話です。実際は,何もないのに概念だけ存在するってものです。

 また脱線しそうですが,お金,数,言葉,この3つは実に不思議なものです。本当はそんなものないのに,あるように勘違いさせて,それで上手く成り立っているってやつです。

 お金ってあるじゃん,いやそうですがただの紙ですよね,原価1円かそこらの和紙でできた唯の印刷物ですよ,こんなの。
 だのに,皆が勘違いして,これがお金だ,これが交換価値の権化だと思うからこそお金なわけですね。いやいやいや,日銀が発行して政府の裏付けがあるじゃないですか,は?だからこそ逆に勘違いしやすいだけでは?
 みんながそう思えば,トシちゃん銀行券だってお金になりますよ~。勘違いしないだけですからね。ビットコインってまさにこんなやつです。
 でもそのことを指摘する専門家って少ないですなあ。

 数もそうです。1とか2とかの現物を私は見たことがありません。いやいやいや,りんごがね1個とか人が2人とか,現物ありますやん,これで無いって何で言えますの。は?存在するのはりんごだったり,人だったりするだけでは?数そのものの現物がどこにもないって言ってるだけです。つーか,数ってそんなもんです。

 ま,言葉もそうですよね。

 おっとと~元に戻りますかね。法的な概念もこんなものです。だからどう考えるか,フィクションの建て方が違うと結論も違うって所です。

 まずは,106条を素直に読むと,原則-例外で立てられております。原則は,代表者を定め,会社に通知しないと権利行使できないってことです。
 そうすると,その例外だから,会社がいいと言えばいいんじゃないの~つまりは,権利行使できるってなるんじゃなーいってなります。

 立法者の方々も色んな解説を読むとこのような立法趣旨で立法した旨述べているようですね。例の弁護士ランキングでバブル的人気を誇った方などです。

 一審の横浜地裁川崎支部は,被上告人(原告,控訴人で自然人)の請求を棄却しておりますので,この説を取ったのでしょうね。

 ま,確かにフライングされた共有者の片割れには何らかの不利益がある場合が多いでしょうが,それはもうお金の問題で処理すればいいじゃね,別に決議自体取り消さんでもいいじゃろ,っていう価値観はあり得る所です。

 立法自体そんな感じですもん。
 でも,よーく考えると,例えば,今回共有持ち分は法定相続前提で同じだったのですが,そうじゃなく,1:1999のようなときに,1の方がフライングして,それに会社が同意してOK~ってのは何かこれはこれで行き過ぎのような感じがします。
 だって,そうすると,グダグダ決めかねている間に,ダマで株主総会を開催して,経営者側に都合のいい実質的に少数株主(上でいう1の人)だけを出席させるようにしても,OKだということになりますよね。会社がOKなら何でもいいんだもーん♪ちゅうことです。

 つぎの考えは,そういうことで,条文はそうだけど,ちょっとひねろうよという説です。

 本件の二審の東京高裁は「原審は,会社法106条ただし書について,同条本文の規定に基づく権利を行使する者の指定及び通知の手続を欠いていても,株式の共有者間において当該株式についての権利の行使に関する協議が行われ,意思統一が図られている場合に限って,株式会社の同意を要件に当該権利の行使を認めたものであるとした。その上で,原審は,本件は上記の場合には当たらないから,上告人が本件議決権行使に同意していても,本件議決権行使は不適法であり,決議の方法に法令違反があることになるとして,本件各決議を取り消した。」

 つまりは会社がいいならいい場合をちょっと限定しましょうよ,って感じです。協議が行われて意思統一が図られている場合,つまりは,形式的な面はNGだけど実質的にはOKなときには,106条ただし書きでバッチリ!になるとしたわけです。

 でもこれはこれでちょっとなあって感じもします。条文には,協議とか意思統一とかありません。事案の妥当な解決は図れますが,解釈としてはちょっと離れ過ぎって気がしますね。

 ま,最高裁は,この結論自体は是認したのですが,理由は少し違います。ああ,法律の解釈って深いなあ,面白いなあって感じです。
 見てみましょうかね。

3 判旨
「5 会社法106条本文は,「株式が二以上の者の共有に属するときは,共有者は,当該株式についての権利を行使する者一人を定め,株式会社に対し,その者の氏名又は名称を通知しなければ,当該株式についての権利を行使することができない。」と規定しているところ,これは,共有に属する株式の権利の行使の方法について,民法の共有に関する規定に対する「特別の定め」(同法264条ただし書)を設けたものと解される。その上で,会社法106条ただし書は,「ただし,株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は,この限りでない。」と規定しているのであって,これは,その文言に照らすと,株式会社が当該同意をした場合には,共有に属する株式についての権利の行使の方法に関する特別の定めである同条本文の規定の適用が排除されることを定めたものと解される。そうすると,共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま当該株式についての権利が行使された場合において,当該権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは,株式会社が同条ただし書の同意をしても,当該権利の行使は,適法となるものではないと解するのが相当である。
そして,共有に属する株式についての議決権の行使は,当該議決権の行使をもって直ちに株式を処分し,又は株式の内容を変更することになるなど特段の事情のない限り,株式の管理に関する行為として,民法252条本文により,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決せられるものと解するのが相当である。
6 これを本件についてみると,本件議決権行使は会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたままされたものであるところ,本件議決権行使の対象となった議案は,①取締役の選任,②代表取締役の選任並びに③本店の所在地を変更する旨の定款の変更及び本店の移転であり,これらが可決されることにより直ちに本件準共有株式が処分され,又はその内容が変更されるなどの特段の事情は認められないから,本件議決権行使は,本件準共有株式の管理に関する行為として,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決せられるものというべきである。
そして,前記事実関係によれば,本件議決権行使をしたBは本件準共有株式について2分の1の持分を有するにすぎず,また,残余の2分の1の持分を有する被上告人が本件議決権行使に同意していないことは明らかである。そうすると,本件議決権行使は,各共有者の持分の価格に従いその過半数で決せられているものとはいえず,民法の共有に関する規定に従ったものではないから,上告人がこれに同意しても,適法となるものではない。」
 
4 検討
 わかりますか?
 立法者,横浜地裁:会社同意でただし書きの例外発動→何でもOK
 最高裁:会社同意でただし書きの例外発動→本文の原則排除するだけ→大原則の民法に戻る=大原則をクリアしていないとNG(会社OKしてても)

 こんな感じですね。東京高裁は,若干ぶっ飛んだ条文解釈をしたのですが,最高裁は,共有でしょ,その原則は民法でしょ,だったら,「この限りでない」って,その民法に戻るだけっしょ,と解釈したわけです。

 いやあ,条文の解釈って条文から離れ過ぎるってのは,やはりダメなわけです。離れないようにっていうことで,民法に戻るというのはある意味盲点だったのかもしれませんね。
 それに,最高裁平成9年1月28日の判決もあり,これとの整合性もバッチリって感じもあります。

 今回は,最高裁の解釈でよろしいのではないかと思いますね。いやあ,人のトラブルには大して興味はないものの,法律自体は好きだというはぐれ者の私なんかには実に面白い事案ですね~。
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