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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,平成24年12月16日施行の衆議院議員総選挙(本件選挙)について,岡山県第2区の選挙人である被上告人が,衆議院小選挙区選出議員の選挙(小選挙区選挙)の選挙区割りに関する公職選挙法の規定は憲法に違反し無効であるから,これに基づき施行された本件選挙の上記選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟です。

 原審(広島高等裁判所 岡山支部 平成25年03月26日 判決)は,「以上によれば、本件区割基準及びこれに基づく本件区割規定は、本件選挙時、憲法の投票価値の平等の要求に著しく反する状態に至っていたことは明らかである。 ・・・したがって、国会は、合理的期間内に本件区割規定を是正しなかったというべきであるから、本件区割規定は、憲法の投票価値の平等の要求(憲法が定める国民主権・代表民主制の原理、憲法14条、44条但し書など)に違反し、違憲といわざるをえない。 ・・・以上検討したところによれば、本件区割規定は憲法に違反し無効であり、本件区割規定に基づいて施行された本件選挙のうち岡山県第2区における選挙も無効であるといわざるを得ないから、原告の請求は理由がある。 」として,「平成24年12月16日に行われた衆議院議員選挙の小選挙区岡山県第2区における選挙を無効とする。 」!オーイエー!との判決をしました。
 かなりのラディカルな判決で,当時話題になりましたね。

 そして,最高裁は,「原判決を破棄する。被上告人の請求を棄却する。」との判決を下しました。要するに,逆転で,選挙人である原告ら(被上告人)の負け,選挙の無効は認められなかったというわけです。ちなみに被告(上告人)は,岡山県選挙管理委員会 ですからね。

 ま,本日散々新聞などで出ている「12年衆院選は違憲状態、最高裁判決」の判決です。

2 問題点
 問題点は,憲法違反があるかどうかですが,具体的には,原告らの主張によると,「〈1〉憲法前文、第1段落、第1文の「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」、「ここに主権が国民に存することを宣言し、」 の定め、〈2〉憲法56条2項、〈3〉同59条、〈4〉同67条、〈5〉同60条2項、〈6〉同61条、〈7〉同44条但し書、〈8〉同13条、〈9〉同 15条、〈10〉同14条」のようです。
 単純に,憲法14条1項だけではないですからね。

 憲法56条2項は両議院の議事を,憲法59条は法律の成立要件を,憲法67条は内閣総理大臣の指名を,憲法60条2項は予算の議決について衆議院の優越を,憲法61条は条約締結の承認についての衆議院の優越を,憲法44条但し書は両議院の議員と選挙人の資格の非差別を,憲法13条は幸福追求権等を,憲法15条は参政権を,憲法14条は法の下の平等を,それぞれ規定したものです。

 一人一票じゃないとこれだけの憲法の規定に違反するということになるのですね~,ワーオ大変!

 ただ,人の数って,選ぶ方も選ばれる方も,デジタルで,1単位ですよね。今回の立候補者は,2.3人ですとか,√5人ですとか,なりません。しかも,選挙区割は,行政単位を元にしており,それは古代からの分水嶺とか,川とか,を区分けの基準としたもので,それなりに尊重すべきものです。
 しかも,形式的に日本全国1:1,とにかく何でも1:1にしたら,東京を初めとする大都市は,多くの議員を選出できるのに,うちの実家のある田舎なんて,大分だけで一人か0人,昔の甲子園の代表みたいになってしまいます(昔は熊本と代表枠を争っていたのです~)。
 そうすると,田舎の意見は悉く認められませんわな。都会の意見ばかり認められ,熊とか猪しかいない所に道路通してどうすんだよ~と,便利で快適な所はますます便利に快適になるだけ~。果たしてこれが平等なの?という本末転倒になりかねません。

 実は,今回の訴訟を裏で糸を引いているのは特定の弁護士のグループなのですが,その代表である日弁連会長を選ぶ選挙も日本全国の弁護士の投票の価値は1:1にはなっていないのです。
 私なんかのへそ曲がりからすると,ヒトの所よりも自分の所を何とかせーや,暇人ども奴,と思いますけどね。

 どういうことかというと,投票自体の最多得票だけでなく,日本全国にある各弁護士会での最多票を獲得した弁護士会(総数52)が1/3を越えないと(つまりは18会)会長になれないのです。
 要するに,東京や大阪で大きな票を取ると,それですでに最多得票は得られます(日本の人口以上に,弁護士は偏在しておりますので。)。
 でも,そうすると,地方はどうなるでしょう?東京や大阪の大派閥の会長候補者がそのままですね,まさに出来レース,八百長,インチキ,になってしまいます。そこで,地方を無視させないように,地方の弁護士会などが反乱を起こした場合は当選できないようにしたのです。

 これが最初に現実のものになったのが,前々回の会長選です。最近は政治家になった宇都宮健児氏と,山本剛嗣氏が立候補して,最初の投票で,最多得票だったのは,山本剛嗣氏だったのです。しかし,最多票を獲得した弁護士会がたったの10会(宇都宮氏は42会)だったので,再投票という憂き目にあい,そこで勝ち馬に乗れか何か?で寝返った人が多くいたようで,今度は最多得票自体も宇都宮氏に負けたという大笑い~のことがあったのです。

 現在の山岸会長が受かった選挙でも,やはりこの点が問題となり,決着後,日弁連の会則を変えようとしたようですが,地方の反対にあって頓挫したようですね。

 つまりは,弁護士会自身も田舎VS都会という問題をはらんでいるわけです。
 例えば,「偽善と欺罔」(別名自由と正義)本年6月号によると,最大の弁護士会は東京弁護士会で,6952人もいます。他方,最小の弁護士会は函館弁護士会で46名しかいません。その差は100倍以上です。
 そうすると,上記の国盗りゲームで,東京弁護士会の過半を獲るには3477票必要ですが,函館弁護士会では,たった24票で済むのです。ちゃんと計算すると,約145倍!すげーえ,格差です。
 まさに憲法違反!と言えるかもしれませんよ,一人一票実現国民会議の皆さーん,次はここを争ってはどうでしょうね。

 かなり,議題を逸れましたが,結局こういう問題の根幹は,都会と田舎の争いなのです。
 更に,身も蓋も無いことを言えば,都会で稼いだ金を田舎にどれだけ配分するか,そのバランスが問題となっているだけです。
 1:1にとにかく近づけるだけ近づけばよい,という意見は都会重視です。都会に人が多く,付加価値も大きいのだから,それ相応に自分の所に還元するのは当然だ,というわけです。ま,新自由主義的といえばそうですが,一定の合理的な意見です。

 他方,いやいや色々あるでしょ,そんな単純にいかんのよ,国会の裁量とかもあるしね,適当な範囲でいいんじゃないの,という意見は田舎重視です。単純計算した割合よりもより多くの配分を田舎へもたらそうというわけですから。

 ですので,結構大きな話なのです。単純に選挙の区割りを変えたらどうのこうのという話が本質じゃないのですね。地方(田舎)が活性化して,どんどん人が増え,そこで稼げるようになれば,解消する話なのです。そこが実はこの話の本質なのです。

 いろんな訳知り顔の識者が,憲法問題だ~,民主主義の根幹だ~,とか言いますが,それは上っ面しか見ていない証拠です。
 ある意味,職務発明の帰属をどうするか?という問題と一緒です。日本という国で,冨をどうやって生じさせ,それをどうやって増やすのか,そういう大きな問題の一端が,チョビっとずつ色んな所で現れている,というわけなのです。

3 判旨
「 本件選挙は,このように平成21年選挙時に既に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていた本件選挙区割りの下で再び施行されたものであること,前記2(6)のとおり選挙区間の較差は平成21年選挙時よりも更に拡大して最大較差が2.425倍に達していたこと等に照らせば,本件選挙時において,前回の平成21年選挙時と同様に,本件選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ない。
  (3)ア  衆議院議員の選挙における投票価値の較差の問題について,当裁判所大法廷は,これまで,①定数配分又は選挙区割りが前記のような諸事情を総合的に考慮した上で投票価値の較差において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているか否か,②上記の状態に至っている場合に,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとして定数配分規定又は区割規定が憲法の規定に違反するに至っているか否か,③当該規定が憲法の規定に違反するに至っている場合に,選挙を無効とすることなく選挙の違法を宣言するにとどめるか否かといった判断の枠組みに従って審査を行ってきた。こうした段階を経て判断を行う方法が採られてきたのは,単に事柄の重要性に鑑み慎重な手順を踏むというよりは,憲法の予定している司法権と立法権との関係に由来するものと考えられる。すなわち,裁判所において選挙制度について投票価値の平等の観点から憲法上問題があると判断したとしても,自らこれに代わる具体的な制度を定め得るものではなく,その是正は国会の立法によって行われることになるものであり,是正の方法についても国会は幅広い裁量権を有しており,上記の判断枠組みのいずれの段階においても,国会において自ら制度の見直しを行うことが想定されているものと解される。換言すれば,裁判所が選挙制度の憲法適合性について上記の判断枠組みの各段階において一定の判断を示すことにより,国会がこれを踏まえて所要の適切な是正の措置を講ずることが,憲法の趣旨に沿うものというべきである。このような憲法秩序の下における司法権と立法権との関係に照らすと,上記①の段階において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っている旨の司法の判断がされれば国会はこれを受けて是正を行う責務を負うものであるところ,上記②の段階において憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったといえるか否かを判断するに当たっては,単に期間の長短のみならず,是正のために採るべき措置の内容,そのために検討を要する事項,実際に必要となる手続や作業等の諸般の事情を総合考慮して,国会における是正の実現に向けた取組が司法の判断の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものであったといえるか否かという観点から評価すべきものと解される。
  イ  そこで,本件において,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったといえるか否かについて検討する。
 本件旧区割基準中の1人別枠方式に係る部分及び同方式を含む同区割基準に基づいて定められた選挙区割りについては,前掲最高裁平成19年6月13日大法廷判決までは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていないとする当審の判断が続けられており,これらが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているとする当裁判所大法廷の判断が示されたのは,平成23年3月23日であり,国会においてこれらが上記の状態にあると認識し得たのはこの時点からであったというべきである。
  これらの憲法の投票価値の平等の要求に反する状態を解消するためには,旧区画審設置法3条2項の定める1人別枠方式を廃止し,同条1項の趣旨に沿って平成22年国勢調査の結果を基に各都道府県への選挙区の数すなわち議員の定数の配分を見直し,それを前提として多数の選挙区の区割りを改定することが求められていたところである。その一連の過程を実現していくことは,多くの議員の身分にも直接関わる事柄であり,平成6年の公職選挙法の改正の際に人口の少ない県における定数の急激かつ大幅な減少への配慮等の視点から設けられた1人別枠方式によりそれらの県に割り当てられた定数を削減した上でその再配分を行うもので,制度の仕組みの見直しに準ずる作業を要するものということができ,立法の経緯等にも鑑み,国会における合意の形成が容易な事柄ではないといわざるを得ない。また,このような定数配分の見直しの際に,議員の定数の削減や選挙制度の抜本的改革といった基本的な政策課題が併せて議論の対象とされたことも,この問題の解決に向けての議論を収れんさせることを困難にする要因となったことも否定し難い。そうした中で,平成22年国勢調査の結果に基づく区画審による選挙区割りの改定案の勧告の期限を経過した後,まず憲法の投票価値の平等の要求に反する状態の是正が最も優先されるべき課題であるとの認識の下に法改正の作業が進められ,1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項の規定の削除と選挙区間の人口較差を2倍未満に抑えるための前記0増5減による定数配分の見直しが行われたものといえる。
  このような上記0増5減による定数配分の見直しの内容を現に実施し得るものとするためには,1人別枠方式の廃止及び定数配分と区割り改定の枠組みを定める法改正の後,新たな区割基準に従い区画審が選挙区割りの改定案の勧告を行い,これに基づいて新たな選挙区割りを定める法改正を行うという二段階の法改正を含む作業を経る必要があったところ,前者の改正を内容とする平成24年改正法が成立した時点で衆議院が解散されたため,平成23年大法廷判決の言渡しから約1年9か月後に施行された本件選挙は従前の定数と選挙区割りの下において施行せざるを得なかったことは前記のとおりであるが,本件選挙前に成立した平成24年改正法の定めた枠組みに基づき,本来の任期満了時までに,区画審の改定案の勧告を経て平成25年改正法が成立し,定数配分の上記0増5減の措置が行われ,平成22年国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口較差を2倍未満に抑える選挙区割りの改定が実現されたところである。このように,平成21年選挙に関する平成23年大法廷判決を受けて,立法府における是正のための取組が行われ,本件選挙前の時点において是正の実現に向けた一定の前進と評価し得る法改正が成立に至っていたものということができる。
  もとより,上記0増5減の措置における定数削減の対象とされた県以外の都道府県については,本件旧区割基準に基づいて配分された定数がそのまま維持されており,平成22年国勢調査の結果を基に1人別枠方式の廃止後の本件新区割基準に基づく定数の再配分が行われているわけではなく,全体として新区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備が十分に実現されているとはいえず,そのため,今後の人口変動により再び較差が2倍以上の選挙区が出現し増加する蓋然性が高いと想定されるなど,1人別枠方式の構造的な問題が最終的に解決されているとはいえない。しかしながら,この問題への対応や合意の形成に前述の様々な困難が伴うことを踏まえ,新区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備については,今回のような漸次的な見直しを重ねることによってこれを実現していくことも,国会の裁量に係る現実的な選択として許容されているところと解される。また,今後の国勢調査の結果に従って同条に基づく各都道府県への定数の再配分とこれを踏まえた選挙区割りの改定を行うべき時期が到来することも避けられないところである。
  以上に鑑みると,本件選挙自体は,衆議院解散に伴い前回の平成21年選挙と同様の選挙区割りの下で行われ,平成21年選挙より最大較差も拡大していたところではあるが,本件選挙までに,1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項の規定が削除され,かつ,全国の選挙区間の人口較差を2倍未満に収めることを可能とする定数配分と区割り改定の枠組みが定められており,前記アにおいて述べた司法権と立法権との関係を踏まえ,前記のような考慮すべき諸事情に照らすと,国会における是正の実現に向けた取組が平成23年大法廷判決の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものでなかったということはできず,本件において憲法上要求される合理的期間を徒過したものと断ずることはできない
  (4)  以上のとおりであって,本件選挙時において,本件区割規定の定める本件選挙区割りは,前回の平成21年選挙時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものではあるが,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,本件区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできない 。」

4 検討
 ちょっと,長く引用しました。だって,大法廷判決ですよ~。

 最高裁は,こういう一人一票の事件は,「①定数配分又は選挙区割りが前記のような諸事情を総合的に考慮した上で投票価値の較差において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているか否 か,②上記の状態に至っている場合に,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとして定数配分規定又は区割規定が憲法の規定に違反するに 至っているか否か,③当該規定が憲法の規定に違反するに至っている場合に,選挙を無効とすることなく選挙の違法を宣言するにとどめるか否か」で判断すると判示しております。

 つまり,①違憲状態にあるか,②合理的期間内に是正無く違憲か,③違憲だとしても無効はどうか,と判断していくということです。

 そして,今回は,①は当てはまるけど,②は当てはまらない,としたわけです。つまりは,合理的期間の徒過はないわけです。
 その判断として,違憲状態を知り得たのは,H23.3.23のこの前の大法廷判決で,そこから選挙(H24.12.16)までは1年9ヶ月,そして,改正法成立がH25.6.24という時間経過の中では,まあまあしょうがないかなあとしたのですね。

 上記のとおり,私は,1:1の形式的平等を何が何でも実現というのは反対です。この判決でも判示しているように,改正法後の今でも1.998倍の較差はあるようですが,ま,そのくらいでいいんじゃないの,と思いますけどね。
 日経の今日の春秋の「ぬるい結論」に典型的に現れているような感想が大多数とは思いますが,まちっと熟慮した方がいいと思いますね,いや本当。

 あと,最高裁の判決は非常に読みやすいですね。悪文でならす弁理士の皆さんも,本当よい法律文章を学びたかったら,最高裁の判決を読むべきですね。明細書って,これって英語の機械翻訳?というようなわけのわからん文章が平気で書かれていますからね~。いやあ,レベル低いっすよ~。
 文章って人に読んでもらうためのものだから,そこんトコロ勘違いないように,ヨロシク!
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