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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 結構大きな話にも関わらず,あまり話題になっていないので,取り上げます。

 独禁法は,いわゆる競争法ですから,知的財産法とは,ある意味水と油のようなところがあります。
 というのは,一方は,独占はいかん,大きくなりすぎるのはいかんというもので,他方は,独占して,そしてどんどん大きくなりなさいよ,という風に見えるからですね。例えば,独禁法100条による特許権の取消などあります。

 しかし,両者とも健全な競争を通じて,事業活動を盛んにし,又は産業の発達に寄与することを目的としているようですから,すごい大きな視点で見ると,そんなに違いはない,とも言えるわけです。

 ともかくも,そのような状況がありますので,知財の弁護士で独禁法もそこそこ詳しいという方は多いのではないかと思います。弁護士の場合,何せ独禁法だけではおそらく食べてはいけないので(主として,公取委という行政機関がエンフォースメントをするためでしょうね。),この分野を専門としている弁護士は少ないと思います。
 ですので,独禁法に詳しい弁護士が,必要なんだけど見つからないというときは,知財の弁護士を探してみるというのは手です。

2 さて,そんな半分営業みたいな話はどうでもよいとして,近時独禁法に大きな改正がありました。平成21年改正により,それまで課徴金の対象とならなかった不公正な取引方法(一番多い違反類型だと思います。)も,課徴金の対象となったのですね。

 それはそれでよいのですが,問題となるのは,従前,不公正な取引方法とされるためには,公取委の指定への該当が必要だったのですが(一般指定とか,特殊指定とかいうやつです。),これが今回課徴金の対象とされたため,そういう不明確なことはやめよう!ということで,原則として,公取委の指定なしに法文に直接規定されるようになった点です(独禁法2条9項)。

 それはそれでよいのですが,さらに問題となるのは,その不公正な取引方法のうち,優越的地位の濫用(旧2条9項5号,旧一般指定14項)については,全体が法文に格上げされたため(新2条9項5号),じゃあ具体的にどのようなものが優越的地位の濫用にあたるか,ようわからんということになった点です。
 というのは,条文自体は新しいわけですから,判決等の蓄積がないことになるのですね。そして,今回の話はここです。

 さらにさらに問題となるのは,課徴金の対象とならない不公正な取引方法については,その他大勢みたいな形で旧2条9項が,そのまま新2条9項6号となっている点です。ただ,今回の話はここではありません。

3 前置きが長くてしかも複雑ですから,早くも付いていけない人,続出でしょうね。私もまだ完全に理解しきれておりません。

 さてさて,今回は,上の2番目の問題について,解釈指針がないと大変だということで,設けられたものです。意見募集などを経て,ようやく1週間前の11/30に公表されたのです。一応例など載ってますので,参考になると思います。時間がない方には,プレゼン資料の方がよいかもしれません。

 いやあ,疲れますね。稚拙な立法の典型例ですな。

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1 このブログをスタートして,丸4ヶ月経ちました。変った趣向でもないかしら~ということで,今回は,理系的発想で法律を見るとどうなるかという話をしたいと思います。

2 好きな法律の1位は,このブログを読んでいる方には,至極当然の「手形・小切手法」です。正確に言えば,「手形法」ということになりますね。
 実務で使ったことは殆どないのですが,個人的に私淑する坂井先生の言を借りれば「手形法は,小さくまとまった珠玉のような法律である。」のとおりだと思います。文語体で書かれており,読みにくいことこの上ないのですが(昭和7年公布),まさに「一個のまとまった体系」です。頭の良い,センスの良い立法者が立法するとこうなるという見本のような法律です。

 2位も当然,「民法」ですね(正確には,724条まで)。
 手形法とは逆に,極めて条文数が多いのですが,個々の条文は,要にして簡であって,近時立法された法律とはあらゆる意味において,レベルが違い過ぎます。やはり往時の立法者の頭の良さ,センスの良さがにじみ出ております。残念なのは,近時,口語体となってしまったことでしょうか。

3 さて,嫌いな法律の方に行きましょう。
 2位は,会社法です。センスの良かった商法を改正し,何だかわけのわからない代物となっております。

 そして,栄えある第1位は,金融商品取引法ですね(昔は,証券取引法と言っておりました。)。日々こんな法律を扱わざるを得ない方々も多いとは思いますが,まあご愁傷様としか言いようがありません。私もたまに仕事で見ないといけないことがあるのですが,拷問ですね。

4 上記は,一応私の主観によるものです。しかし,私も法律家のはしくれですから,何故このような主観判断となったのか,ちょっと分析してみました。
 1つめは,長いか短いかですが,民法はそれ自体長いので,当てはまりません。
 2つめは,なじみがあるかないかですが,会社法は,少なくとも手形法と同じくらいなじみがありますので,これも当てはまりません。
 3つめです。法律の構造を見ると,好きな法律に挙がったものは,定義規定がありません。ところが,嫌いな法律に挙がったものは,定義規定があります。どうやら,この辺にポイントがありそうですね。

5 架空の立法をしてみましょう。
 五反田公園規則「犬を連れて入ってはならない。」 
 よくあるパターンですね。このような規則があると,必ず問題になるのが(というか,ここもよくあるパターンですが。),「犬」とは何か,子犬はどうだ,キツネはどうだとか,文言解釈,拡大解釈・・・の話です。
 ここではその話はスルーして,そのような解釈問題が生じることを防止するため,改正で,定義規定を置くことにしたとします。

 改正五反田公園規則1条「この法律で,犬とはネコ目イヌ科の哺乳類をいう。」(広辞苑から拝借しました。)
 同2条「犬を連れて入ってはならない。」 

 しかし,どうですか。哺乳類って正確にわかりますか?公園をよく使うちびっ子に,哺乳類って何?って尋ねて答えが出ますかね。むしろ,犬そのままの方がわかるのではないでしょうか。

 そうすると,こうなるでしょうね。哺乳類の定義を置こう!っと。
 再改正五反田公園規則1条1項「この法律で,犬とはネコ目イヌ科の哺乳類をいう。
 同1条2項「この法律で,哺乳類とは,脊椎動物の一綱であって,温血で肺によって呼吸し,基本的に胎生で,雌は皮膚腺の変化した乳腺から乳を分泌し仔を哺育する動物をいう。」(やはり,広辞苑から拝借しました。)
 同2条「犬を連れて入ってはならない。」 

 複雑怪奇なものが好きな人以外は,さらに混乱してきたのではないでしょうか。
 そうすると,そうだ!わかりにくいのは例がないからだ!と。
 再再改正五反田公園規則1条1項「この法律で,犬とはネコ目イヌ科の哺乳類をいう。
 同1条2項「この法律で,哺乳類とは,脊椎動物の一綱であって,温血で肺によって呼吸し,基本的に胎生で,雌は皮膚腺の変化した乳腺から乳を分泌し仔を哺育する動物をいう。哺乳類の例については,五反田公園規則細則で定める。
 同2条「犬を連れて入ってはならない。」 
 五反田公園規則細則「五反田公園規則1条2項で定める哺乳類の例としては,犬,猫とする。

 おやおや,犬の定義をしていたのにもかかわらず,結局犬で定義しています。トートロジーですね。
 まあその前に,何だかイソップ寓話のような有様ですね。

6 上の例は極端でわかりやすい例でした。このような例に触れると,定義規定の本質が結局どういうものかということがわかったことと思います。

 法律も言葉で書かれていますから,言葉の一種には違いありません。
 そして,言葉は,言葉でしか語ることができません(前期ウィトゲンシュタイン的でしょうか。)。
 とすると,法律用語の定義をしたところで(二次的解釈),その定義規定で使われている用語をさらに定義する必要があることは明白です(三次的解釈)。
 そうすると,解釈が解釈を,定義が定義を生むという無限連鎖に陥ることになり,言葉の要素の有限性から,それは結局トートロジーに帰着するだけとなります。

 辞書を使うことができるのは,或る程度その言語に精通した者だけということと同じです。辞書を引いてわからない言葉が出て,それをまたその辞書で引いて・・・という作業が,あるところで中断するのは,アプリオリにわかっている言葉(前提とされる言葉)にそのうち行き着くからです。

 法律でもそれは変わりません。定義による二次的解釈で留まる場合は,まあこの定義があればわかるんじゃねえの,というある意味フィクションに基づくものです。施行令や施行規則まで定義の定義がある場合も,まあこの定義の定義があればわかるんじゃねえのというこれまたフィクションに基づくものです。
 だとしたら,どうせフィクションなのだから,法律の条文のみ提示して,あとはそれぞれ各自の解釈(現実には,判例・通説の解釈,一次的解釈)でとどめておいた方がシンプルなだけ,いいんじゃないの,というのが私の考えです。
 頭の悪い,センスの悪い立法者に付き合わされるのは,御免被りたいですね。

7 現在行われている民法の改正が,このイソップ寓話のパターンにならないか,私はこれを危惧しております。
 もちろん,教条的,信仰的とも言える現行立法への盲信(憲法9条だとよくいますね。)から,民法の改正はならん!と言うつもりもないですが,頭の悪い,センスの悪い立法は何としても避け,「手形法」的立法を期待する次第です。

 おっと,結構長く書いてしまいましたね。


私が、特許法の改正に極めて後ろ向きなのは、言うまでもありませんが(債権法の改正にはさらに後ろ向きです。)、唯一、首記の件だけは早急に改正して欲しいと思っております。といっても、特許法ではなく、民事訴訟法なのですが。

 特許権やプログラムの著作権などの技術系知財の侵害訴訟(法上は、特許権等に関する訴えというようです。)の第1審は、東京地裁か大阪地裁のどちらかの専属管轄です(法6条1項)。東日本が東京地裁で、西日本が大阪地裁です。そして、控訴審は、知財高裁の専属管轄です(法6条3項)。

 したがい、我が地元の酒造メーカーが、別府の酒造メーカーを特許権侵害で訴えようとした場合は、大阪地裁に訴えを提起しなければなりません。
 大分地裁中津支部でも別府支部でもないのです。
 地元の顧問弁護士に相談に行っても、なし大阪でせんとわありいんかえ、飛行機代が要るっのんじゃねんかえ、ということに驚かされることになります(かといって大阪地裁のすぐそばの北浜あたりの弁護士に頼むと、飛行機代を払っても地元の弁護士に頼んだ方がはるかに安かったりしますが。)。

 他方、意匠権や商標権などの非技術系知財の侵害訴訟(法上は、意匠権等に関する訴えというようです。)の第1審は、民訴の大原則とおりです。それに加えて、東日本は東京地裁、西日本は大阪地裁の競合管轄を認めており、柔軟です(法6条の2)。そして、控訴審も原則とおりです(第1審を東京地裁に選んだ場合は知財高裁で、大阪地裁を選んだ場合は、大阪高裁になりますが。)。

 したがい、上記と同じシチュエーションでも、権利が商標権であった場合、大分地裁中津支部での訴え提起はOKです。専門的判断が欲しいのならば、大阪地裁も選ぶことができます。
 ただ、その後の控訴審は、中津支部の場合、福岡高裁ということになりますね。

 現状がわかってもらったことと思います。
 民訴の管轄は、法曹は一度は勉強しているのですが、知財を専門としていない限り、上記のことをよくわかっていない弁護士や民事裁判官が殆どです。たまに同期の飲み会でこのようなことを話題にすると結構びっくりされたり、そういうことだったのかという顔をされます。

 大体予想はつくでしょうが、何を問題と考えているのかを次にお話します。
 まず、技術系知財の侵害訴訟を東京地裁と大阪地裁の2つの専属管轄とするのは、やめてもらいたいということです。
 九州の人が大阪で訴え提起をしなければならないのはいかにも手間です。特許出願は、インターネット出願で全国どこでも簡単にできますが、出訴はそんなことはありません。訴訟には、いろんな訴訟がありますが、一審をこのようないびつな専属管轄にしているのは、技術系知財の侵害訴訟のみです。
 控訴審が、知財高裁の専属管轄で統一されているのですから、一審は、出訴しやすさ等を考えた方が良いと思います。ただでさえ、特許侵害訴訟は、低とまりなのですし。
 もちろん、専門的判断を重視する方もいらっしゃるでしょうから、その場合は、東京地裁と大阪地裁の競合管轄も認めればよいのです。要は、第1審は、現行法の改正前の状況にせい!ということですね。

 つぎに、非技術系知財の侵害訴訟の控訴審を各地の高裁の管轄でよしとするのは、やめてもらいたいということです。最高裁は法律審ですので、高裁が適法に認定した事実を元に判断するのみですから、高裁で事実認定がてんでバラバラだと、最高裁では原則として是正できません。
 そのようなことを無くすことが、知財高裁の設置理由の1つだったと思うのですが、なぜか非技術系知財の侵害訴訟は、控訴審が知財高裁の専属管轄ではないのです。意味不明ですね~。
 ですから、非技術系知財に関しては、1審はそのままでよいので、控訴審は知財高裁の専属管轄にするべきでしょうね。

 まとめると、技術系知財、非技術系知財を問わず、1審は民訴の原則とおりで、東京地裁と大阪地裁の競合管轄を認めることとし、控訴審は、知財高裁の専属管轄にすべきということです。

 私見ですが、どうも知財の国策は、自意識過剰というか、自己満足というか、ユーザー側の視点が実は乏しいと思っている次第です。抜本改正もこんなところから始めてはいかがでしょうか。
本日午後の衆議院本会議にて,首記の法律が賛成多数により,可決成立しました。
 ご存じのとおり,今回の刑事訴訟法等の改正は,重大犯罪(人を死亡させた罪)について,公訴時効を撤廃するなど,見直すものです。
 例えば,死刑に当たる罪については,公訴時効はなくなりました。殺人,強盗殺人等ですね。
 同時に,刑法上の刑の時効についても,死刑については,規定が削除されました。

 近時の刑事訴訟法の改正については,裁判員裁判に対応するもの以外は,ほぼ全て犯罪被害者のためのものと言ってよいと思います。
 私が,司法試験のための勉強をし始めたころは,犯罪被害者と言えば,参考人等の証拠扱いが主で,著名な基本書である田宮刑訴でも,2p弱の記載(「以上,現行法では被害者に関わる規定は僅かであって,その保護のため十分な配慮がなされているとはいえない。個人的な復讐を公的レベルの制裁に吸収するのが刑事法の進化のあかしであったから,これはある意味でやむをえないものがあるが,吸収されているはずの被害者の利益が十分顧慮されないおそれもあり,また,権利意識の高揚した今日の時代に,被害者にだけ沈黙を強いることは当をえないといえる。」との記載はあります。)に過ぎず,隔世の感があります。

 ただ,刑事の被疑者・被告人と犯罪被害者の両方扱う私のような弁護士にとっては,やはりバランスが大事だなあと思うところがあります。
 弁護士のバッジに表象されているように,何事もバランスですね。古くは,儒教,倫理学でも中庸を旨としているではありませんかな。
 弁護士の中には,極端対極端で,結果として中庸に至れば良いという考えの方もいらっしゃいます。しかし,そのような考えは,そもそも中庸とは異なるような気がします。もちろん,そのような弁護士の方からすれば,私のようなものは,弁護士ではなく,弱ごしだということになるのでしょうが。

 本改正法については,即日公布かつ施行ということになっております。いかなることが惹起されるか注視していきたいと思います。

 今日は,あまりおふざけできませんでした。おふざけできる楽しい話題を切に願うところです。
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理論物理学者を目指したのはもう30年以上前のこと。某メーカーでの液晶ディスプレイのエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。次は何かな。
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