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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,発明の名称を「餅」とする特許第4111382号(出願日:平成14年10月31日,登録日:平成20年4月18日)の特許権者である被告(越後製菓)に対し,原告ら(たいまつ食品,マルシン食品,丸一オザワ)が,平成24年3月30日,本件特許について無効審判を請求した(無効2012-800039号)ものの, 特許庁は,平成25年1月29日,不成立審決をしたため,これに不服の原告らが知財高裁に出訴した(①発明未完成,②実施可能要件違反,③明確性要件違反)審決取消訴訟の事件です。

 これに対して,知財高裁2部(清水さんの合議体ですね。)は,原告らの請求を棄却しました。要するに,無効じゃないよ,ということですね。

 昨日予告してましたが,本日は切り餅特許の審決取消訴訟にしました。第二弾と言いましたが,正確に言うと,当事者が違うので,第二戦と言った方がいいですね。

 つまりは,越後製菓(特許権者)が,佐藤食品以外と戦っているわけです。これは審決取消訴訟なのですが,自分に火の粉が降りかかってこないと無効審判なんて(その後の審決取消訴訟も)起こすわけありませんので,越後製菓が,たいまつ食品,マルシン食品,丸一オザワら(いずれも,新潟県の餅のメーカー)に権利行使したであろうことは容易に推測できるわけです。
 いやあアグレッシブだなあ~♫

2 問題点
 問題点は,上記のとおり,①発明未完成,②実施可能要件違反,③明確性要件違反というものです。ただ,これ見ただけでわかりますが,弱火ですよね。何でも言えばいいちゅうもんじゃないですわな。
 やはり,引用発明を探してきて,29条1項とか2項を主張しないと,相手方をビビらせることはできませんよ。特に最近は,なるべく有効にしよう,有効にしようというテレパシー?が裁判所からヒシヒシと感じられますので,よっぽどしょうがないよね,ここまで引用発明と似てたら,くらいじゃないとダメなわけです。

 それが,まず,発明未完成ときたものです。原告らが,審決で主張したものは,「本件発明は,構成A及びBである「切り込み部又は溝部」(スリット)を設けることで,スリットの「上側が下側に対して持ち上がって,最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に,膨化した中身が,サンドされている状態に膨化変形することで,膨化による外部への噴き出しを抑制する」という構成(構成C)の技術内容が,当業者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていないため,発明として未完成のものである。 」というものです。

 発明未完成というのは,私の本当によく参照する特許法概説にもいろんな類型が載っていますが,要するに,理論的には不可能じゃないんだけど(この意味で永久機関は当てはまらない。),願望だったり,漠然としたものだったり,するものです。例えば,UFOの発明なんかそうなのでしょうね。

 で,特許査定もされ,実施もされているものが,発明未完成なわけねーだろーってことになりますよね。あ,こりゃこりゃ。

 次の記載不備関係ですが,これもうーんって感じです。
 原告らが,審決で主張したものは,「 甲2及び3の実験結果及び報告書から,スリットの存在が必ずしも膨化に伴う噴き出しの抑制に結び付かないといわざるを得ず,餅の焼き方や材質などについての付帯条件が必要であるところ,本件明細書の発明の詳細な説明には,付帯条件の記載がなく,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
  「膨化した中身」を餅としての実体を有する澱粉質のものと解釈した場合,「最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形する」ための具体的な技術が,本件明細書の発明の詳細な説明には,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 」らしいです。これは実施可能要件の所ですが。

 実験報告で,とにかく効果がねえとか,色々やらないと効果がねえとか言うパターンありますが,これは負け筋ですよね。特許権者から,逆の実験報告が出るに決まっているし,真偽不明になった場合は,大体効果があるよね,いや別に100%で100発100中の効果じゃなくてもいいんだし~♫ということで,特許権者に有利に判断されるだけですもん。

 いまどきの記載不備って,よっぽど変な記載,二日酔いで明細書書いた?新人に書かせてチェックしなかった?外内の明細書を機械翻訳してそのまま出しちゃった?程度のものしか無効になりませんからね。

 取り敢えず,判旨に行きますか。

3 判旨
 発明未完成の論点
「 以上のとおりであるから,側周表面に所定の切り込みを設けた切餅をオーブントースターで焼くことにより,「焼き上げるに際して前記切り込み部又は溝部の上側が下側に対して持ち上がり,最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形」し,そのような状態に膨化変形することで「膨化による外部への噴き出しを抑制する」ことができるといえる。
  したがって,本件発明の技術内容は,当業者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されているといえる。
  よって,本件発明が未完成で,特許法29条1項柱書にいう「発明」に該当しないものということはできない。 」

4 検討
 ま,判旨はいいですかね。

 ただ,今回改めて特許庁の経過情報検索をしてみたところ,佐藤食品から,改めて,無効審判が2件(記載不備と進歩性が1つと,先願がもう1つ)請求されております。ただ,これらの無効審判は何れも有効審決が下されており,そのまま出訴されております(平25行ケ10106,平25行ケ10282,いずれも知財高裁2部に係属中)。

 ですので,既に,越後製菓と佐藤食品との第2ラウンドもゴングが鳴って,絶賛対戦中なのです。で,今のところ,有効審決ということですから,やはり越後製菓有利に推移しているという状況です。

 ま,しかし,この越後製菓,アグレッシブですね~。ある程度の規模の会社で,ある程度のパテントポートフォリオのある会社は,本当権利行使した方がいいということですかね~。そうすりゃあ私も,この越後製菓の代理人と同様に,儲かるチャンスもあるということにもなりますもんね。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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