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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 今日はお休みなのですが,日経に面白い記事が載っておりましたので,これでいきましょう。

全額出資子会社の「パナソニックIPマネジメント」(大阪市)を9月1日付で設立した。本社の「知的財産センター」で手掛ける業務のうち戦略の立案はその まま残し、特許出願などの実務を新会社に移す。約550人の従業員を出向させ、本社のセンターの従業員を約280人に減らす。」ということらしいです。

 ここで分かるのは,パナソニックの知財部員は830人もいるのだなあということと,ぴったり2/3くらいの人員を外出しするということですね。

 で,ポイントは今回パナソニックでの話ということです。というのは,以下の理由があるからです。

 まず,出願数ですが,このブログでちょっと昔に書いたように,2013年は9,276件だそうです。これは日本一の出願数なのです。

 つぎに,弁理士の数です。135人で,これまた日本一です。普通の事務所で一位なのが志賀国際特許事務所で,そこが97人ですから,ある意味とんでもない話です(ちなみに二位も日立製作所という事務所じゃない所です。)。
 これは法曹の人に例えるなら,今インハウスの多いとされている三菱商事とかヤフーとかでインハウスが500人とか1000人になりました~っていう話を想像してみるとわかると思います。そのような状況は,少なくとも今の法曹の状況とくらべても実に画期的に違う時代になったと感じさせるのではないでしょうか。つまり,今の弁理士の状況というのは,そういう状況なのです。
 私は弁理士の業界も弁護士の業界も両方わかるのですが,弁理士業界は弁護士業界よりも進んでいる所がたくさんあります。特にインハウスの状況は,数年先の弁護士の業界を写しているものと思いますので,参考になると思いますよ。

 最後に,これも重要な話です。パナソニックがどこの事務所を使っているかという話です。これは,暇人弁理士のためのIPIブログさんからのデータですが,2012年のデータ(恐らく2011年の出願公開のものと思います。)で,自社出願(外部の事務所を使わない。)が40%以上なのですね。当時最も多い北斗特許事務所でも10%ちょいという感じです。

 この3つのデータから,簡単に以下のことが推測されます。パナソニックの日本一の出願数は,社内弁理士等の内製に起因するものである,ということです。

2 ということですので,今般知財部門を分社化するということは,この出願スキームをそのまま外出しするということですね。謂わば,パナソニックの仕事しかやらないだろうけど(今のうちはね。),株式会社制の日本最大の特許事務所が誕生したというわけです。

 て書くと,非弁問題に詳しい弁護士なんかからすると,いやいやいや,今まで内製できたのは自社の出願だからであって(弁理士が135人ですが,それだけじゃ外の事務所の管理や中間処理には対応できないと思います。ですので,今現在でも無資格者にも明細書を書かせているのではないかと推測されます。),自分の出願ならば弁理士資格は要らないけど,分社化するとパナソニックの出願は他人の出願になり,そのままやると弁理士法違反になるぞ!なんてピンと来ると思います。

 そう,これは重大な話ですよね。
 でも,これねえ,信託のスキームを使って,これも回避したのです。特許を受ける権利を信託譲渡してもらえば,自社の出願となり,弁理士法違反を回避できるのです。

 ただ,そうすると,更に信託に詳しい弁護士なんかからすると,いやいやいや,こういう士業とかの取締法を潜脱させないようにするために,信託の仕事って免許制だから(あと特別法によるかですね,JASRACのように。),分社化した所は免許受けてんの?って,またまたピンと来ると思います。

 勿論,これも重大な話なのですが,信託業法の51条を見て下さい。
(同一の会社集団に属する者の間における信託についての特例)
第五十一条  次に掲げる要件のいずれにも該当する信託の引受けについては、第三条及び前条の規定は、適用しない。
一  委託者、受託者及び受益者が同一の会社の集団(一の会社(外国会社を含む。以下この号及び第十項において同じ。)及び当該会社の子会社の集団をいう。以下この条において「会社集団」という。)に属する会社であること。・・・

 委託者はパナソニック,受託者は新会社,受益者もパナソニックですからね。そうすると,簡易な手続きだけで,信託業法違反も回避できるのです。

 よく考えたな~って感想は無意味です。日本の法制度というのは,基本官僚の老後のケアのためにあるものです。ですので,こういうでかい会社が自分の都合のいいように,構造改革という名の人員削減を進める場合には,スムーズにスキーム構築ができるようになっているのです。まあ,そのうちパナソニックの新会社に経済産業省などの元官僚がたくさん天下ることでしょうよ。
 そう,世の中の99%はプロレスであると豪語したのは,この私ですが,まさにそのとおり,ブックとおりに進んでいるだけです。

 哀れなのは,新会社の明細書書き工場でも,明細書書きマシーンと化している有資格者や無資格者の皆さんです。
 というのは,明細書書きの内製化って,コスト的なメリットはかなりあると思うのですが,1つだけ大きなデメリットがあります。それは正社員となるため,なかなかクビに出来ないということです。
 外の事務所でしたら,明細書の質が悪いとか,対応が悪いとか,大して接待してくんないとか色んな理由で切る事ができます。ところが,正社員だと,日本の場合,労働法の解雇規制が非常に厳しいため,出願数に応じて明細書書き屋を臨機応変に増減できないわけです(特に減の場合)。
 しかし,分社化すると,この解雇規制すら潜脱することができます。まあ,実際潜脱しないんだろうけど,仮に解雇で揉めたとしても,本体のパナソニックは何ら傷つかない,って所が味噌ですよ~♡。

 上記に色々述べましたが,今回の分社化の最大の目的は,実はここにあると思います。出願数に応じて人員を素早く変更する,そう生産数に応じて機械の配置を変更するようにね。

 さてさて,無責任な第三者としては,ブック破り,八百長破りを自分から仕掛けるには,それ相応の実力が必要だということを最後にアドバイスしておきましょう。ムフフフ。
 
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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