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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 判決のアップはそこそこありましたが,面白い判決は無かったのと,さすがに4日続けて判決だと読んでいる人も飽きるだろうということで,昨日行った弁理士会の研修の話にします。

 ま,要するに,ヨーロッパで,これは恐らく世界初の国際特許と言ってよいだろう,という制度ができたので,その研修に行ったということです。

2 国際特許というのは,インチキ臭い宣伝文句ならば,これまでもたくさんありました。

 通販番組や通販サイトで,国際特許取得!とか書いている場合もありますね。これは不競法でいう誤認惹起行為か,景表法でいう優良誤認と言えますね~訴えたい場合は私までどうぞ~♫

 ま,それは置いといて,とにかくこれまで国際特許というのは無かったのです。

 いや,よく似たので国際特許出願というのはありますよ。特許協力条約(PCT)に基づいたもので,日本の特許法184条の3以降(弁理士なら,イヤヨで有名ですね。)に規定までされております。
 でも,これ,出願だけなのです!出願して,権利付与の段階は,自分が特許をとりたい国を選び,その国でvalidationをしないといけないわけです。つまり,国際特許出願は,数多い国国への出願の束であり,それが実際に特許になるときは,各国ごとに付与されるという大原則とおりのものなのです。

 だって,そうですよね。ある国で特許侵害となってもある国では特許侵害にならないかもしれません。何故かって,そりゃ各国ごとに法制度が違うからです。日本のように民法のある制定法の国もあれば,アメリカのように民法のない判例法の国もあります。
 国際特許なんて,謂わばそういう法制度自体を統一しなきゃ具体化できるもんじゃないので,ちょっと考えただけでもなかなか無理そうだ,というのがわかると思います。

3 ただ,いま,国ごとの統一が進んでいる地域がありますよね。それはEUです。国際特許出願のひな形とも言えるEPOによるEPも,商標におけるOHIMもヨーロッパ原産です。
 単にドイツとフランスによる三度目の世界大戦を防ぐ試みも,捨てたもんじゃないってことですかね。

 ほんで,ついに,出願だけでなく,権利付与の段階,そして権利行使の段階も国際的に統一した(施行はちょい先のようですが。)わけです。

 内容は,私のような半可通より,どこかきちんとした所を見たほうがよいです。例えば,ここかな。
 
 とは言うものの,ポイントは,国際特許出願で,新たにUP(unitary patent)という指定を認めるというようなイメージかなあと思います。ですので,旧来のEPも残りますし,各国毎に単独に出願して権利付与されたい,というのも残ります。

 で,法制度の違いの話をしましたが,重要なのはクレームの言語です。ある言語での概念を他の言語で1:1に写しとることは不可能です。
 これを回避するのが数学だと言えますが,クレームは残念ながら数式だけで構成されることは少ないわけです。つまりは,言語の違いは,法制度の違い以上にシビアなわけです。
 とは言え,翻訳すればいいだけの話ではあるのですが,その翻訳料が高い!これが実質的な足かせになっていたのです。

 そこで,UPは英語のクレームの場合,翻訳はドイツ語かフランス語で出せばいいとのことです。数多い指定国の言語に翻訳し直すということは避けられます。

 結構使えるのかもしれません。

4 で,法制度,言語という国際化に関するハードルが出てきましたが,やはり問題は権利行使時です。

 いくら国際特許となったとしても,ドイツの侵害はドイツの裁判所で,イギリスの侵害はイギリスの裁判所で,となったら結局同じです。国際特許なんですから,一個特許をとったら複数の国で効力が有り,ということはすなわち1つの所で裁判をすればよい,ということにならないと実効化できません。

 そこで,UPと同時に,裁判所も統一するわけです。これがunified patent court(UPC)です。EUの場合EU法がありますので,法制度の問題もある程度クリアできるというのが大きいと思います。

 ただ,講義を聞いても,この法制度というか法源の問題はよくわかりませんでした。
 つまり,EU法に厳格な特許法の規定があるのだろうか,ということです。侵害や有効性は各国によってそんなに違いませんが,間接侵害,均等論,消尽論などなど,各国で今もバラバラなのに,その論点まで規定しているのだろうか?ということです。

 これについては,Agreement on a Unified Patent Court and Statuteがその役目をするのかもしれませんが,ま,私の拙い英語力と半可通力では,問題点を指摘するのが精一杯です。一次資料で確認したい人はこちらです。

5 ちなみに私,現在,EP関係の仕事は全くありません。弁護士になってからでも1回もありません。USPに関わる仕事は時々あるのですが,EPはないですね~。ですので,実務でEPのことをやっていたのは,ソニーの知財部時代まで遡らないといけません。

 にも関わらず何故このような研修に出るか?そりゃやはり一応特許の専門家と称しているのですから,此のくらいは知っておかないと,いうことです。
 矜持のレベルがそこら辺のミーちゃんハーちゃんと違うのですよ。

 で,最後に今回の研修の苦言を。

 1つ,場所がわかりづらい。同時翻訳の設備がある所がここしかなかったのはしょうがないとして,会場をグーグルで検索すると,近所の違う場所が出てしまいます。私はそこに行ってしまいました。

 2つ,何故かアメリカの弁護士が来てました。恐らく司会がアメリカかぶれで有名な前弁理士会長だったので,アメリカの弁護士(しかもじいさんで,時機に後れ過ぎ)も呼んだのでしょうが,無駄無駄。会費からじいさんのチケット代も出ていると思うと泣けてきますよ。
 他方,EPのMargotさんは良かったですね。日本の特許庁を代表しての毛沢東カットの方もなかなか良かったです。

 3つ,研修が始まる直前,会場の後方で,持ってきたコーヒーがぶつかったか何かでこぼれ,研修に来てた弁理士同士で大もめしておりました。そんなぶつかったら溢れるようなやつを持ってくるなよ,しかも弁理士同士でもめんな!恥ずかしい。

 兎も角,色々勉強になった研修でしたね。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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