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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 東京は今日も雨ですね~。昔,エンジニア時代に長崎の諫早市にあるソニー長崎によく行ってた頃は,本当長崎って雨が多いなあと思ったのですが(恐らく時期的なもの。),東京もここ最近雨が多いです。
 北関東の方は大丈夫ですかねえ。

 さて,ちょっと前の予測とおり,職務発明の指針の素案が発表されております。こちらから見れます。

 ざっと見て,特にまずい点があるというわけではありません。なかなか妥当な所じゃないでしょうかね。ただ,気になる点が何点かありましたので,その辺と実際の条項がどうなっているか見てみましょう。

2 気になった点その1 労働法関係
 相当の利益の定めって,就業規則にも定めることができます。で,就業規則というと,当然労働法との兼ね合いが問題になってきます。
 つまり,労働法的には適法とみなされるようなプロセスを経た相当の利益の定めって特許法的はどうよ?って所ですね。

 これについては,総論の以下の部分に載っています。

一 総論
2 基準の策定、形式及び内容
(四) 法第三十五条に規定されている契約、勤務規則その他の定めの中には、労働協約や就業規則も含まれ、基準を労働協約や就業規則で定めることもできる。この場合、労働協約や就業規則が有効に成立していれば、これらの基準に定められた内容について労働法上の効力が発生するが、そのことをもって直ちに同条第五項の不合理性の判断においても不合理性が否定されるわけではない。当該不合理性の判断は、基準の労働法上の有効性とは別に、同条第五項に基づいて判断される。
(五) 例えば、労働協約において基準を定め、その基準により決定された内容の相当の利益を与える場合は、法第三十五条第五項の不合理性の判断は、「基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況」、「策定された当該基準の開示の状況」、「相当の利益の内容の決定について行われる従業者等からの意見の聴取の状況等」を考慮して行われる。したがって、労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第十四条に規定する労働協約の効力発生要件(書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印すること)が満たされていることをもって直ちに同項の不合理性が否定されるものではない。もっとも、労働協約は、労使により対等な立場で締結されることを前提としていることから、労働協約の締結に至るまでの過程においては、使用者等と従業者等との立場の相違に起因する格差が相当程度是正された状況において、使用者等と労働組合の代表者との間で実際の話合いが行われることが多いと考えられる。このような場合には、労働組合の代表者に話合いをすることを委ねている従業者等と使用者等との関係においては、協議の状況としては同項の不合理性を否定する方向に働く。
(六) また、例えば、就業規則において基準を定め、その基準により決定された内容の相当の利益を与える場合においても、法第三十五条第五項の不合理性の判断は、「基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況」、「策定された当該基準の開示の状況」、「相当の利益の内容の決定について行われる従業者等からの意見の聴取の状況等」を考慮して行われる。したがって、基準を含む就業規則が、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第九十条(使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。)にしたがって作成されていることをもって直ちに法第三十五条第五項の不合理性が否定されるものではない

 不合理性が否定されるものではない~と締められていますので,労働法的にOKでも特許法的にはまだまだとされるのでしょう。これはある意味当然で,労働法は,基本最低限を定めたものですので(労働基準法~なんか名は体を表すですもんね。),特許法的には不十分なことが大アリになりそうです。

3 気になったことその2 利益の算定
 裁判例でも今のところ実績報償が中心ですが,私の著作「知財実務のセオリー」でも少し書いたように,おおよそこの位だろうということを予め決めるということは有効です。
 このように,実績ベースではなく期待値ベースにすると,実はすごく或る点に違いが出るのです。非常に重要な点なのですが,本に書いてありますので,このブログでは勿体つけて書きません。本を読んで下さい(p201-202)。

 今度の指針でもそのことはやはり有効であることが確認的に載っていました。これも「一 総論」の所です。

3 相当の利益の内容の決定方法
(一) 相当の利益の内容が売上高等の実績に応じた方式で決定されなければ、法第三十五条第五項の総合的な判断の結果として、不合理と認められるというわけではない。例えば、特許出願時や特許登録時に発明を実施することによる期待利益を評価してその評価に応じた相当の利益を与えるという方式であっても、同項の総合的な判断において、直ちに不合理性を肯定する方向に働くことはない。この場合、従業者等に付与する当該期待利益と実際に使用者等が得た利益が結果的に乖離したとしても、同項の不合理性の判断において、乖離したという一事をもって直ちに不合理性を肯定する方向に働くことはない。

4 気になった所その3 労働法関係2
 上記の労働法関係と同じ問題意識です。実際の協議の際のことですね。
 以下のところに載っております。

ニ 協議について
2 協議の方法
(五) 従業者等が代表者を通じて話合いを行うことも、使用者等が代理人を通じて話合いを行うことも協議と評価できる。例えば、労働組合の代表者が基準の策定に関し使用者等と話合いを行うことについて労働組合に加入している従業者等を正当に代表している場合には、その代表者と使用者等との話合いは、労働組合に加入している従業者等と使用者等の間の協議と評価される。当該代表者がある従業者等を正当に代表していない場合には、使用者等と当該従業者等との関係においては、協議は行われていないこととなる。この場合、協議があったものと評価されるためには、通常は、代表者によって代表されていない従業者等の求めに応じて個別に話合いが行われることが必要と考えられる。・・・
(八)使用者等と従業者等との協議は、使用者等又はその代理人と、従業者等又は従業者等から委任を受けた代表者との間で行われることが原則であるが、従業者等から委任を受けた代表者との協議について、仮に一部の従業者等の個別の委任がなかった場合であっても、使用者等と当該代表者との間で十分な利益調整がなされ、当事者間の交渉格差が払拭されたときは、当該一部の従業者等との協議の状況について法第三十五条第五項の不合理性が肯定される方向に働くものとは必ずしも言えないと考えられる。例えば、使用者等において多数の従業者等が加入する労働組合が存在し、当該労働組合が従業者等の利益を代表して誠実かつ公正な交渉を行ったような場合には、非組合員である従業者等との協議の状況について同項の不合理性が否定される方向に働くことがあり得る。

5 気になった所その4 アリバイ作り対策
 こういう風に指針がいくら決められても,形だけの協議~形だけの意見聴取なんてやられたらたまったもんじゃありません。でも,会社も商売でやっているので,その危険はつきまといます。ある意味合理的なインセンティブです。

 そのことが以下のところに載っています。要するに,まじめに対応(回答など)しないと形式的,なおざり対応としちゃいますよ~ってことですね。

3 協議の程度
(三) 使用者等が予め設定した時間の経過により協議を打ち切った場合であっても、設定された時間内に、使用者等と従業者等との間で実質的に協議が尽くされたと評価できる場合には、その協議の状況としては法第三十五条第五項の不合理性を否定する方向に働くものと考えられる。また、設定された時間内に十分な話合いができなかった場合であっても、その後に書面や電子メール等で従業者等が意見を述べることができ、使用者等がこれに回答する、という仕組みが設けられている場合は、協議が尽くされたと評価できる場合もあるものと考えられる。
(四) 協議において、使用者等が自己の主張を繰り返すだけで、その主張の根拠(資料や情報等)を示さないなど、十分な話合いを行わずに協議を打ち切った場合には、その協議の状況としては法第三十五条第五項の不合理性を肯定する方向に働くものと考えられる。

四 意見の聴取について
2 意見の聴取の方法
(六) 共同発明者間で意見が食い違うような場合には、共同発明者間で意見をまとめて一つの意見にしない限り、正式な意見として聴取することはしないとされている場合には、個別の発明者はそれぞれの意見を自由に表明することが拒絶されているに等しいか、又は実質的に困難な状況に置かれていたと認められる。このような場合、当該共同発明者からの意見の聴取はなされていないと評価されるか、又は形式的に行われたとしても意見の聴取の状況としては法第三十五条第五項の不合理性を肯定する方向に働くものと考えられる。

6 まとめ
 今のところはこんな所です。ま,素案ですので,あまり深入りしても,二度手間や無駄になる可能性もありますので,こんな所でしょうかね。
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