忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 いやあ今日も暑いですねえ。
 実は本日は午前中,裁判所に行く用事がありまして,昼飯を食って散歩がてら,ちょっと歩いた次第です。

 ということで,毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーでございます。
 本日はここ港区役所前に来ております。
 
 いい天気です。
 もうちょっと気温が低いと,裁判所から五反田まで歩いて帰った所ですが,さすがにこの暑さでしょ。浜松町までですね。ということで,その間にある所の写真なわけです。
 実は,捕まえられるセミを物色していたのですが,上の方の枝に居て捕まえられる位置に居なかったので,ポケモンにターゲットを変更したという具合です。ムフフフ。

 ムフフフじゃなくて,早く本題行けって。まあそう慌てなさんな,大した話じゃないですから。それに私はへそ曲がりなものでして・・・。

2 で,セミも捕まえ損ねたことだし,そろそろ行きますか。
 発端は,今日の日経です。
 6面ですかね。グローバルオピニオンの欄です。
 CAFCの元長官,レーダーさんの話が載っていました。

 ま,レーダーさんは知財関係者なら誰でも知っていますよね。でもよく考えると不思議なもんで,知財以外の企業法務の分野で,外国の裁判官が普通に知られているって,ほぼないですよね。つまり,いかに知財というのが本質的に渉外事件かということがわかります。
 
 あ,そうそう,29部にこの前まで居た嶋末部長のバディでもある私と同期同クラスの裁判官のAさん,知財部に来る前にちょっと留学していたのですが,それが確かレーダーさんの所だったと思いますね。いやあ彼は出世すると思いますよ~。ムフフフ。

 いやいや,ムフフフじゃなくて,早く本題行けって。まあそう慌てなさんな,大した話じゃないですから。それに私はへそ曲がりなものでして・・・。

 ということで,そのレーダーさんの話に,ニセJIPAC(東京国際知的財産仲裁センターのこと)の謎が全部書いてありました~。

技術に国境はない。多くの企業が、国をまたいだ特許紛争に巻き込まれる恐れがある。既存の機関で効率的に対応できないのであれば、自ら立ち上げようと考えた。アジア各国の企業や政府関係者、裁判官などに相談したところ、日本の特許庁がビジョンを共有してくれた。中国や米国の企業関係者の間でも、「日本なら中立性が高く、安心できる」と利用に興味を示す声が高かった。   
 そこで9月に東京でアジア初の、知財に特化した国際仲裁機関「東京国際知的財産仲裁センター」を開設する調整をした。民間組織だが、特許庁の協力を仰いだほか、欧米やアジアの元判事など知財専門家を十数人、仲裁人として登録する。従来の紛争解決手段と最も差異化した点のひとつが、申し立てから判断までの期限を「1年以内」と短く設定したことだ。

 ははーんですね。糸を引いていたのは,特許庁でしたか~(今日の記事の特許庁からの閲覧は多そうだなあ~。)。

 実は,特許庁,今年の通常国会に提出する特許法等の改正で,新しい仲裁組織を作ろうと目論んでいたわけです。
 このブログの過去の記事によると,去年の春先に日経にリークしていたようですね。

 ところが,私が当該記事で書いたように,これじゃあJIPACと丸かぶり,何考えてんだよ,バーカ,というわけでした。で,多くのみなさんが私と同様に考えたようで,敢え無く,この改正案を取り下げたわけです(代わりに,判定をちょっとマイナーチェンジするという方向になったわけです。)。

 ですが,特許庁は新しい仲裁組織を全く諦めてなかったようです。
 まず,6月の終わりに,日経の1面に,「東京国際知的財産仲裁センター」の記事が載りました。このブログでも多少触れております。

 しかし,詳しい内容がさっぱりわからなかったわけです。ところが,今日のレーダーさんの上記の話のとおり,「民間組織だが、特許庁の協力を仰いだほか」とあるとおり,レーダーさんとつるんで新しい仲裁組織を立ち上げたわけです。

 うーん,やはり,特許庁と言えども,官僚,抜け目のない奴らですね。まあ,基本的に,日本の諸制度って公務員とやめた公務員のためのものですから(例えば,ロースクールや法テラスのことを見ればわかります。),それはそうなのですね。

 でもねえ,悪口ばっか言っても仕方がありません。

3 レーダーさんのこの話を読むにつけ,私は一つのことを考えました。
 何か?それは知財高裁です。

 どうして,知財高裁は,「東京国際知的財産仲裁センター」たり得なかったのだろうってことです。
 
 この記事の最後にアメリカの知財だとこの人!という記名記事が載っています。でも,いつものとおり,トンチンカンではありません。
 その記名記事のとおり,仲裁だと判決の公開みたいなことはしません。判例足り得る先例みたいなものにもなり得ません。
 これは大きなデメリットです。

 さらに仲裁のデメリットがあります。嫌だという人を連れて来れないってことです。
 記事の中ではアップルとサムソンの事件を例にとっています。
 アップルとサムソンの場合,取引がありました。なので,契約も当然あるでしょう。その契約の中で,仲裁条項を作り,そこで,新しく日本にできる「東京国際知的財産仲裁センター」で紛争を解決する,これは可能な方策です。

 でも,いつもいつも紛争というのは,契約の当事者間で起きるわけではありません。というか,多くの場合,当事者間以外で,全く通り魔的に勃発するのが紛争です(だからこそ,契約の当事者じゃない相手方にミサイルをぶっ放せる物権的な特許権が有効なんだし,お金は不法行為ベースなわけですよ。)。

 そうなった多くの場合,仲裁で紛争を解決できるわけじゃないのですね。
 勿論,権利者も実施者も,わかりました,「東京国際知的財産仲裁センター」でやりましょう,うんそうだね,みたいになればいいですよ~。でも負けた場合でも控訴できない,判断の先例性とかもない,そんな仲裁というものに,みんながみんな,わんさかわんさか,うちも私もって来ますかね?ってことですよ。

 だからこそ,中立な日本にある,知財専門の「裁判所」である知財高裁が,非常に意義があったのです!
 まあしかし,知ってのとおり,知財高裁のプレゼンスはとてもとても低いものです。上手くやれば少なくともドイツ程度のフォーラム・ショッピング人気は出たと思いますけどね・・・・。

 なので,本当,知財高裁発足時に,思い切って技術系裁判官を導入していれば良かったのではないかと思いますね~。そうすれば,今の調査官を使った審理より早いことは確実です(少なくとも調査官に聞くタイムラグが省ける)。
 奇しくも,面接で二島弁護士が言い放ったものとは逆の方向に進んでいればなあ~ということです。

4 ではさらに遡行は進み,特許庁が裏で糸を引いていたとしても,なぜそこまで仲裁組織にこだわるのか?,ここは問題です。

 これはもう,現状の司法ルート(地裁知財部→知財高裁)に,不満があり,そこではダメだというものがあるのでしょうね。

 勿論,これは裁判所だけではなく,既存の弁護士やら弁理士やらにも,おまえらじゃダメだ!という引導を渡しているわけです。

 話は飛びますが,幕末の英雄というと,今大河ドラマでもやっている西郷さんが有名ですが,個人的には高杉晋作が好きですね。
 で,その高杉晋作は色んなことをやっておりますが,彼の一番の功績は,下関戦争での後始末じゃないかと思います。
 下関戦争というのは,攘夷だとかのバズワードに惑わされて,よせばいいのに,マジで夷を排斥したわけです(関門海峡を通過する列強の船に大砲を撃って,逆にコテンパンにのされたという,まあある意味大笑いな事件です。)。ほんで,その負けの和議の交渉役を務めたのですね,高杉晋作が。

 で,列強は,長州藩の小さな島の租借を要求したわけです。香港やマカオのように。それをあーだこーだ言って拒絶したのが高杉晋作だったのですね~。
 つまり,そこで山口県の島が香港みたいになったとしたら・・・とは言え,今や沖縄はアメリカの租借地ですから,そういうことを考えるとま別に変わらんかったかもね~。ムフフフ。

 兎も角も,窮地を脱したい,何とか勢力を拡張したい,だからといって,夷人の力を借りると,あとでとんでもないことになる気もしますよ~。
 でも,特許庁に駆け込んだ会社の人達からすると,ばかやろう,クソみたいな日本の訴訟システムなんてぶっ壊れてくれた方がいいんで,代わりに外国人メインでもきちんとした仲裁が残ってくれりゃそれでいい,とそれくらい追い込まれているのかもしれません。

5 さてさて,ということで,「東京国際知的財産仲裁センター」の謎は解けました。

 あとはこの組織がきちんと評価されるものに育っていくのか,それとも知財高裁のようになり,ああ日本にあるものは何でも腐るのねになるのか,見物ですね。
 そう,あっしには関わりのねえことでござんす,からね。

 
 
PR
1594  1593  1592  1591  1590  1589  1588  1587  1586  1585  1584 
カレンダー
07 2018/08 09
S M T W T F S
2 4
5 7 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
iwanagalaw
HP:
性別:
男性
職業:
弁護士
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーのエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。次は何かな。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]