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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 首記は言わずと知れた判例百選の,特許法に関するものです。

 判例百選というと,実務家の諸氏からすると,まあ受験時代にはよく見たけど,今はあんまり見ないなあという方が殆どでしょうね。
 そりゃそうです。一般法の分野だと,判例百選ではとても対応できませんからね。その上,さらに詳細な判例集や,電子データ化された豊富なデータベースもあり,それを使用しなければ,日々の仕事を賄い切れませんし。ですので,判例百選は,まあ良くも悪くも学習用って感じでしょうね。

 ただ,特許の分野は違うところがあります。だって,そもそも判例集やデータベースも基本プアなものしかありません。というのは,結局,マーケットの小さいニッチな分野ですから,企業が大規模な投資をしても見合わないのですね。勿論,弁理士の方の数を入れれば,頭数は多いのですけど,弁理士の方はそんなに判決の情報が必要じゃあないですから~。

 ですので,通常はまあ初学者の学習用という百選も,特許に限れば,結構実務家も使うよ~♫というところになるわけですね。

2 そして,その4版目が昨日発売になったようです。前回の3版が2004年ですから,もう8年前!というわけです。ちなみに,この年,私が司法試験に受かった年で,夏はアテネオリンピックばっか見てましたね。今年もロンドンオリンピック見放題でしょうか~。

 さて,内容なのですが,ざっと見た限り,新しい判決がかなりあります。
 特に注目すべきは,以下のとおりです。

・まず,大野聖ニ先生ご担当の,「回路接続部材」事件です。
 これは,言わずと知れた新傾向判決ですね。評釈の中身は詳しくは触れませんが,例の進歩性シンポジウムで論点になった話(could,would,should?)やら非常に興味のある話があります。でも大野先生の言いたいことは,一番最後の部分だけだという気がしますが。

・次は,高橋隆二先生ご担当の,「日焼け止め組成物」事件です。
 これも,有名ですね。顕著で有利な効果を後付の実験報告書で認めたというアレです。高橋先生は,大野先生と異なり,なかなか私見を明らかにはしておりませんが,思考の整理にはよいと思います。

・さらに,神戸大の前田健准教授ご担当の,「性的障害の治療におけるフリバリンセンの使用」事件です。
 これは,実施可能要件とサポート要件の関係を一般的に判示し,その上で,サポート要件について緩和したともとれる判断をしたことで有名です。前田先生は,実施可能要件とサポート要件の関係について,表裏一体説と区別説の,二つの説があり,区別説をとったのだとすると,大合議判決(パラメータ事件)との整合性が問題になりうることを指摘しております。私と良く似た発想ですね。

 あとは,パラメータ事件の判決も漸く載っております(第3版に載っているかと思ったら,平成14年まででしたね~。)。知財高裁の判決が載ったのは今回からでした。

 ところで,文句というわけではないのですが,均等論のところはちょっと多すぎやしませんか~。実務で問題になるのは本当僅かな場合だけだっちゅうのに,今回8件も判決を載せています(全部で104個)。他方,実務で常に問題になる進歩性は4件のみです~♫
 先生方,易きに流れたら駄目ですよ~,進歩性の場合,当該判決と当該明細書と,そして引用例を全部見ないとわからないので,ダリい~なあというのは分からないでもないですが。まあこりゃ編集の方針かな。

 ともかくも,まとまった判例集としてもそんなに高い値段じゃありませんので(2,520円),実務家でも受験生でも買っておくべきでしょうね。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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