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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 首記は昨日の日経紙の夕刊1面の記事です。
 ほうほうと眺めてみると、これは大本営発表そのままのパターンですね。

 日経紙の特許の記事には2パターンあります。
 今回のように全く頭を使わずお上の発表をそのまま記事にしたパターン。おそらく日経紙の記事の大半はそうでしょうね。別に日経紙に限らず、どこの新聞もそうでしょうが。

 他方、少なからず、頭を使った記事もあります。この前の法務インサイドの記事などそうです。こういうのがもっと増えるとよいのですが、C/Pを考えると致し方ないところもあります。

2 記事は、「具体的には、本来の発明者でない者が出願して取得した特許の名義を、真の発明者に変更できるようにする。」とあります。わかったようなわからない話ですね。
 だから~、頭を使わないで書くとこのようになるのです。

 例えば、特許3287107号の筆頭発明者は、私です。しかし、出願人は当時勤めていた会社(法人)です。この場合、形式的には、本来の発明者でない者が出願して取得した特許になりますね。日本の特許制度上、法人はそもそも発明者に成り得ませんから。じゃあ,真の発明者である私に変更していいのですかね~。
 ね,この記事は、発明者という点に拘泥し、しかも制度の正確な理解がないため、いっこんがちゃあらん記事になっているのです。

3 整理しましょう。まず、特許の名義は2つあります。
 そのうちメインなものが、出願人です。通常、名義というとこちらになります。これは、登録後特許権者となるもので、特許の財産権的側面を総取りすることになる地位です。従い、管理・処分、特許庁との応答は、この出願人が行うことになります。
 重要なことは、発明者でなくても出願できる点です。ただし、特許を受ける権利という特許権の孵卵期的権利を正当に保有していないとダメです。
 これがNGの場合、冒認出願ということになります。さきの特許3287107の場合、私をはじめとする何人かの発明者が、当時所属していた会社に特許を受ける権利を譲渡したということになります。さらに、この権利を再譲渡することも当然可能です。

 次に、サブの名義は、
発明者です。財産権が特許を受ける権利であり、特許権であるのに対し、発明者の権利は人格権のみです。場合によっては、相当対価の請求権が発生することがありますが、それは別の議論です。
 著作物の場合、人格権は恐るべき効力がありますが、特許の発明者の権利は、大したことはありません。名前をきちんと公報等に載せろ、補正しろ、というくらいです。

ですので、名義が変なパターンは3つあるということになりますね。
A 出願人◯ 発明者×
B 出願人× 発明者◯
C 出願人× 発明者×

 Aのパターンは、例えば、出願の過程で、字が間違ったとか、ミスで一人漏れたとかいうもので、特許を受ける権利は正当に引き継がれていた場合です。この場合は、日経の記事の範疇ではなく、現在でも補正等をすればよいだけです。

 Bのパターンは、結構あると思います。下請け、共同開発などで、立場の大きい会社が、データだけもらってダマで出願するパターンです。下請け会社などはその後の取引のことなどありますので、泣き寝入りするのが殆どでしょう。本来、これも冒認なのですが、後で泣く泣く譲渡の追認証に印を押すことで、瑕疵は治癒されることになります。
 しかし、下請け会社などが泣き寝入りしなければ、日経の記事の範疇に入るものです。

Cのパターンは、まさに横取りですね。特許を多く出願するような会社では、さすがにここまで酷いものはあまりありません。例外的です。

4 以上のとおり、冒認かどうかは、発明者が誰か、そこから特許を受ける権利をどのようにして取得したか、という2つのことを認定しないといけません。
 法改正により、何らかの手段で出願人の名義を変更できるようになったとしても、その何らかの手段はかなり骨が折れる作業になります。個人的には、より一層契約の重要性が増すのかなという気がしております。


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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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