忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 連休中とは言え,今日は月曜。日経紙で法務面の特集がある曜日です。で,今日の記事には職務発明の記事も載っていました。

 大体日経の職務発明の記事というと,特許庁(経産省)側の大本営発表をそのまま書いた手抜き記事(その割には日経の記者さん達の給料は凄く良いようですので,貧乏弁護士をインハウスで雇ってあげればいいと実に思うのですが。)か,経団連べったりの提灯持ち記事かのどちらかで,まあ,その首の上についているのが飾りじゃなきゃ,もっと使えばいいのにね,この私のように,と思う記事ばかりでした。

 でも,今回の記事はきちんと書いています。署名記事だからでしょうかね。瀬川記者のようです。

企業側は、社員が外国企業に転職した際、自分が手掛けた発明を転職先に渡して特許出願させる問題点も指摘。発明に関する権利が最初から企業側にあれば、外国企業が取得した特許を無効にしやすくなると主張している。これに対し、小委員会では有識者などを中心に、個人の権利を奪うのは行き過ぎではないかとの慎重論も残っている。

と載せてますから,少なくとも出来レースの既成ルートでは書いていない所は評価できます。私も,小委員会の議事録を逐一チェックして,クソ野郎が誰か,このブログで実名を出して糾弾して行こうと思います。特許界のひねくれストーカーの面目躍如です。

2 ところで,最近,弁護士ドットコムで私に聞いたという前提の記事が載っています。
 まあ,これは,世の中の99%はプロレスであると豪語したのは私ですが,こちらで,コメントを用意してそれを弁護士ドットコムの方で加工して記事にしているわけです。恐らくそれは,普通の新聞等と同じと思います。で,出来としてはそんなに悪くはないのですが,実際私が当初にどのようなコメントを用意したか,自分のブログというメディアを持っている私としては,それも公開する意義があると思うのですね。

 ということで,以下は,私の現時点における,職務発明の改正に対する考えとなります。

*******以降 弁護士ドットコムへの当初コメント******

1 職務発明という制度がどういう制度かは前回説明したとおりです。

 その議論などを踏まえ,昨年7/4に経産省が「職務発明制度に関する調査研究委員会」を発足させました。そして,本年3/24に具体的な法改正の方針を決定する「産業構造審議会知的財産政策部会 特許制度小委員会」の第一回目の委員会が行われました。

 この委員会の委員の顔ぶれを見ると,前の「職務発明制度に関する調査研究委員会」から横滑りしてきた委員もいるようですが,特筆すべきは,職務発明の経験もある現役の発明者が数名含まれていることです。日本的な会議の慣行からするとかかる発明者がどれほどの発言をするか疑問ではあるのですが,一定の評価はできると思います。

 しかしながら,報道を見ると,職務発明が法人帰属となることはもはや既定路線で,発明者の利益をどう守っていくか(発明報酬基準の義務付けなど)に関心が移りつつあるような感さえ致します。要するに,本来的には,職務発明が法人帰属となれば,相当対価の請求権も失われるのですが,社内規定等による発明報酬として代償させることで,発明者の利益にも配慮するというものです。ただ,これは発明者の利益にも配慮しているというアピールに過ぎず,法改正を促進するためだけのもののようです。

 ですが,まず,議論は端緒についたばかりであり,法人帰属となるかそれとも従来とおりのままとなるかは,未だ決定されていないことに注意です。

 次に,法人帰属を望んでいるのは経団連をはじめとする産業界ですが,彼らの主張はあまりに一方的かつ合理的な理由はないことが判明しております。

この点について,前回の説明では,産業界の主張として,①例えば,製薬会社は,発明者からの訴訟リスクがあるため研究開発拠点を日本に置けないという問題があり,②現行制度では,エンジニアだけに厚く,営業職や経理その他の職種を相対的に冷遇している問題があることを紹介しました。

私の方では,その前回の説明の際にも,これらの問題については反論しましたが,更に以下のとおり,反論できます。

①の問題ですが,製薬会社が,研究開発拠点を日本に置けなかったのは,発明者からの訴訟リスクがあるためではなく,別の理由がメインのようです。例えば,本年2/17の日経新聞には,研究環境が改善したため新薬の開発が日本に回帰しつつある,と報道されております(http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD1604L_W4A210C1MM8000/)。

従前,製薬会社が,研究開発拠点を日本に置けなかったのは,発明者からの相当対価の請求の訴訟リスクがあると言われていたのですが,結局,産業界が主張していた訴訟リスクなどは,ありもしないものだったのです。 

また,②の問題ですが,そもそも考え違いがあると思います。例えば,営業担当者が,新規な売れる営業方法,経理担当者が新規な効率的記帳方法を創作したとしても,原則としてこれらは保護されません。他方,半導体のエンジニアが新規な半導体を創作したり,通信のエンジニアが次世代携帯電話のプロトコルの新規なアルゴリズムを創作した場合は,特許で保護されます。

何故か?自然法則を利用した技術的思想の創作(発明のこと)は保護され,そうでない思想の創作は少なくとも産業財産権としては保護されないからです。つまり,エンジニアだけに厚く,営業職や経理その他の職種を相対的に冷遇しているように見えるのは,特許が法律で保護されているからです。ですので,一見,現行制度では,エンジニアだけに厚く,営業職や経理その他の職種を相対的に冷遇しているように見えるのは,特許制度に内在する問題なのです。従って,この問題を解決するには,職務発明制度を改正するのではなく,特許制度自体を廃止すればよいのです。

しかし,企業側は,営業担当者や経理担当者を慮って特許制度を廃止すれば良いなどとは主張しておりません。本当に,彼らのことを思うならば,差別の原因となる特許制度自体を廃止するに越したことはない筈だというのに,そういう主張はしないのです。むしろ,今まで優遇されていた分を冷遇されていた者に還元するのではなく,自分の懐に入れよう(職務発明の法人帰属化)としているだけ悪質とも言えます。 

さらに,この2つの問題とは別に,産業界には前科があります。つまり,産業界の要望がそもそもおかしかった例があるのです。

実は,現行の特許法113条から120条は削除されておりますが,ここには昔,特許異議の申立てという制度がありました。これは,特許付与後の一定期間,広く大衆から異議の申立てができるという制度だったのです。しかし,産業界からの要望で,H15年法改正で削除されてしまいました。

ところが,今年(H26年)の通常国会には,この特許異議の申立てという制度の復活を盛り込んだ特許法の改正案が提出されます。削除されてから10年少ししか経ってないのに,です。では,この特許異議の申立ては誰が要望したか知っていますか?これも産業界なのです。つまり,産業界は,自分が削除してくれとしきりに望んでその通りになったくせに,たった10年で今度は復活してくれと望んでいるわけです。

要するに,産業界というのは近視眼的な物の見方を行うだけで,きちんと考えていない所だということです。今回も拙速に職務発明の法人帰属を要望してその通りになったとしても,10年後に今度は元に戻せと言うに決まっています。 

以上のとおり,産業界の主張はあまりに一方的かつ合理的な理由はないことが判明しております。本来,まともに取り上げることさえ憚れるような話だと思います。 

上記の委員会は,毎回議事録が取られ,それが公開されることが決定しております。上記の特許異議の申立ての削除が検討された際の特許制度小委員会では,誰が賛成し,誰がきちんと反対したか,現時点でも明瞭に同定することができます。今回も,議事録をきちんと確認し,各委員がどのように発言しまた発言しなかったかを後々のために厳しくチェックする必要があるでしょう。あるべき職務発明の制度を議論するのはそのチェック後でも遅くないと思います。

*****************ここまで****************


 いかがでしたでしょうか。さすがに弁護士ドットコムもこれはそのまま載せられないなあと思ったのではないでしょうか。
 いやあ,岩永先生って過激ですね~と思った方はまだまだ甘い。これはボリュームで言うと,10のうち3です。これでもかなり気を遣って書いたのですけどね。

 とにかく,インチキをさせないためには,監視しかありません。それには台湾の大学生を見習うことが必要ですね。


PR
881  880  879  878  877  876  875  874  873  872  871 
カレンダー
11 2017/12 01
S M T W T F S
2
3 5 6 9
10 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
iwanagalaw
HP:
性別:
男性
職業:
弁護士
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーのエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。次は何かな。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]