忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 今日の日経紙の中の方に,首記のとおりの結構面白そうな話が載っておりましたので,これでいきましょう。

 メインは,この中の記事,「ソニーは国内企業向けに、特許の海外出願にかかわる業務を請け負うサービスを始める。間接業務受託大手のインフォデリバ(東京・港)と新会社を設立し、自社の特許出願業務部門を移管するとともに、他社からも請け負う。新会社は通常よりも3割程度安い料金で出願業務を手がける。」のとおりです。

 こういう記事って,読み手の属性によって感じ方は色々でしょうね。
 まず,ライトユーザー,一般的な日経紙の読者だと,へえ,ソニーがそんなことやるんだ~とか,ほおさすがソニーですね,とかそんなもんでしょう。

 次に,このブログの一方のメイン読者である法曹関係者だと,え,そんなことしていいの?弁理士法とか弁護士法とか,そういう非弁行為との関係はどうなってんの?という所じゃないでしょうか。

 さらに,このブログのもう一方のメイン読者である特許関係者だと,ふーん,日本技術貿易みたいなことをやるのね~,でも何で今更?という所じゃないでしょうか。
 さらにさらに,私のようなソニーの知財部出身者だと,え!,知財部リストラ!と受け取るのではないかと思います。

 ま,テキストというのは,常に開かれており,相対的で多義的です。これは新聞の記事に限らず,小説や映画や,そして法律だってそうです。私に言わせりゃ,自然だってそうです。
 私はよく文系の法曹から,理系のものと違って,法律って説がたくさんあったり,論理的に明解じゃない所があるからねえと言われますが,ふん,自然科学だって相対的なもんで,説の争いなんかしょっちゅうだし,論理的に不明解のことも多いっすよ,と答えております。勿論,程度の問題はありますけどね。

 おっと,また議題を外れそうですが,こういう小さい記事1つを取っても面白い所はあるということです。

2 で,上で4つの感じ方を例示しましたが,現実に議論したくなるものって2番めと3番めのやつですね。それを敷衍しましょう。

 まず,こういうことをやって非弁行為にならないか,ですが,これはなりません。といいますのは,端的に言うと,日本の特許庁への代理業務ではないからです。それはそうだけど,日本以外の外国だって,その国の代理人じゃないとその国の特許出願手続をしちゃあいけないんじゃないの,と思われるかもしれません。
 それはそのとおりです。日本の特許庁にアメリカの資格があるからって,patent attorneyが出願代理すりゃあ非弁行為です。それと同じですよね。
 
 でも,記事のタイトルをよく見て下さい。これは支援なのです。
 具体的には,日本の明細書を出願したい国の言語に合わせて翻訳し(大体英語),技術分野等でその国の代理人を選び,翻訳と併せて出願書類を送り,審査に入れば拒絶理由通知等の応答を行うなど外国代理人とのやり取りをする,ということがメインになると思います。

 ですので,資格がないとできない業務じゃないのです。そもそも特許は属地主義の原則がありますし,一国の司法権等の及ぶ範囲ってその国だけですしね。

 ということで,次の,日本技術貿易の話に行きましょう。まあ,HPもありますし,特許の業界じゃあ非常に有名な所です。で,何をやっているかというと,上で書いたもの,まさにこの外国出願の支援業務で最大手という所です。

 そして,弁理士会にとっては目の上のたんこぶですね。弁理士会は特許管理士を初めとして非弁行為の撲滅に非常に力を入れておりました。特許管理士の問題は,その商標登録が公序良俗違反ということで,弁理士会の大勝利に終わったわけです。
 そして,弁理士会が次に目をつけたのが,資格がなくてもできるだろ~♫と大ぴらに外国出願をやっていた日本技術貿易です。

 実は,資格がなくてもできる事とはいえ,実際外国出願をどこに頼むかというと,結局日本の出願をした特許事務所に普通は依頼するのですね。ところが,出願数の多い大手企業では,特に値の張る米国出願について特許事務所に頼むのはコストが掛かり過ぎるなあという問題があるのです(まさに今回の記事です。)。
 で,企業の中の人材が豊富な所だと,特許事務所も通さず,支援の会社も通さず,直接外国の事務所に依頼するということができるのですが(私が昔いた会社もそうでした。私が自ら,patent attorney等への指示を出していたわけです。勿論,英文等で!!),そうじゃないと,やっぱどっか頼みたくなるんじゃないですかね。で,日本技術貿易はそういう所に目をつけて,業務を拡大していったわけです。

 そうすると,弁理士会としては面白くないわけです。本来は自分の所でやれた筈なのに,美味しい内外業務(アウトバウンドということです。結構粗利をふっかけられるらしいです。)の所を持って行かれちゃたまんね~どうにかせねば・・・ということで,弁理士法改正の度に,弁理士の業務として,外国出願関連業務を入れろ入れろと特許庁に言ってるのですが,当然,日本技術貿易等は大反対しますよね。
 勿論,専権業務(弁理士しかできない業務)に入れることはできず,所謂標榜業務(資格がなくてもできるけど,弁理士ができる業務。ま,専権業務が義務だとしたら,標榜業務は権利ですね,と言えば法曹の方にはわかりやすいですかな。)として,弁理士法に入れることを画策しているわけなのですが。

 で,今のところ,日本技術貿易側が結構押し込んでいますので,弁理士法の明文に外国出願関連業務は入ってきておりません。というのは,上記のとおり,日本技術貿易に何故頼むかという事を考えると,どういう所が頼むかすぐわかりますね。そうすると,知財協に入っているような会社も日本技術貿易の肩を持つわけです。やはり,知財部の永遠の課題は,出願コストの低減ですからね。

 ただ,出願コストの低減はわかりますが,それって,結局デフレ・スパイラルと同じで,自分で自分の首を締めていることに等しいわけです。
 今回の記事もそうですよね。コスト削減を図ったあげく,部署ごと外出しされたんじゃねえの,っていう感じですからね。ムフフフ。

 ま,今後共弁理士会と支援会社の鍔迫り合いが見ものです。

3 追伸
 本日は中秋の名月ということで,写真を撮りました。前の携帯だと,何じゃこりゃという感じだったのですが,おさすがiphone,少しはましな写真です。
つーか,満月の光量なら,特段問題ないのかな。

 兎も角も月は昇るし日も昇る by私
PR
735  734  733  732  731  730  729  728  727  726  725 
カレンダー
06 2017/07 08
S M T W T F S
1
3 5 7 8
9 11 12 13 15
16 17 19 22
23 28 29
30 31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
iwanagalaw
HP:
性別:
男性
職業:
弁護士
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]