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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 特許の無効審決(特許法36条6項1号のいわゆるサポート要件違反)に対する審決取消訴訟の判決です。
 発明は、名称を 「赤身魚類の処理方法 」とするものです。

 審決は、上記のとおりサポート要件違反であるとしましたが、その規範は、「特許請求の範囲に発明として記載して特許を受けるためには,明細書の発明の詳細な説明に,当該発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載しなければならないというべき・・・
・・・本件特許発明は,特定の低温処理工程等を主要な構成要件のひとつとするものであるところ,このような発明において,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するためには,発明の詳細な説明は,その特定の低温処理工程等を構成要件とする方法によって,上記の課題を解決できることを,特許出願時において,具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載するか,又は,特許出願時の技術常識を参酌して,当該方法であれば,上記の課題を解決し得ると当業者において認識できる程度に,具体例を開示して記載することを要するものと解するのが相当である。
とするいわゆる知財高裁大合議パラメータ事件の判決に沿ったものです。

2 問題点等
 審決が上記のとおりなので、もう問題点はわかりますよね。
 平成21(行ケ)10033号(知財高裁平成22年01月28日判決)
との関係性です。
 10033号は、パラメータ事件判決の射程をかなり限定し、特許庁実務に衝撃を与えました。
 この判決は、飯村さんの3部でした。さもありなんという気がしますね。

 他方、今回の判決は、1部、所長の塚原さんですね(ところで、塚原さんは定年が迫っております。しかし、4/1のキリの良いときに退職されなかったところを見ると、最高裁の裁判官の可能性があるのかもしれません。本題とは関係ない話でした。)。
 典型的サポート要件の論点に対して、所長の合議体はどう判断したのか、それが問題です。

3 判旨
 「特許法36条6項は,その柱書きにおいて「第2項の特許請求の範囲の記載は 次の各号に適合するものでなければならない。 」とし、その第1号において、「 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。 」と規定している(以下「サポート要件」ともいう 。)。
そして,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,サポート要件の存在は,特許出願人又は特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である。」
として、従来の大合議パラメータ判決とおり、厳しい要件であるとして、「本件特許は,特許法36条6項1号所定の明細書のサポート要件を充たしていないから,これと同旨の審決に誤りはなく,原告の請求は棄却を免れない。」と、原告の請求を棄却しました。

4 検討
 サポート要件について、3部は緩やか、1部は厳しいということになりますかな。
 訴訟は、個別具体的な事件の解決をするのみですから、事実が異なるのに、結論や理由を比べることに本来は大した意味はありません。さらに司法府の独立ということもあります。
 しかし、こうあからさまに違うと??という疑問が生じるのは、禁じ得ませんね。望ましくは、最高裁に行くことがもっとも良いので、この原告さんに頑張ってもらいましょう。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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