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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,特許権者たる被告が有し発明の名称を「携帯型歯面爪面清掃研磨器」とする特許第3442359号の請求項1ないし4及び6につき,原告が無効審判請求(進歩性なし)をしたところ,特許庁が請求不成立の審決(進歩性あり)をしたことから,これに不服の原告がその取消しを求めた事案です。

 これに対して,知財高裁1部(新所長の中野さんの部ですね。)は,原告の請求を棄却しました。要するに,審決とおりでOK(進歩性あり)ということですね。

ちなみに,クレームは,以下のとおりです。
【請求項1】携帯されるとともに,研磨の使用時に手で把持される本体(ボディ)と,
本体に内蔵され,バッテリを収容するバッテリホルダと,
本体に内蔵され,そのバッテリにより駆動されるモータと,
前記本体に形成され,そのモータにより回転駆動される回転出力部を含む連結部と,
その連結部に着脱可能に装着されるとともに,研磨対象面に接触しつつ回転する研磨ロータを備えたヘッド部材と,
前記本体に形成され,前記連結部から取り外した前記ヘッド部材を格納する格納スペースと,
その格納スペースに格納される前記ヘッド部材を外側から被い隠すように前記本体に着脱可能に装着されるカバーと,
を含むことを特徴とする携帯型歯面爪面清掃研磨器。

相違点は,以下のとおりです。
<本件発明1と甲1発明の相違点1a>
本件発明1では,「歯面爪面」の「研磨」に「使用」される「歯面爪面清掃研磨器」が,「前記本体に形成され,そのモータにより回転駆動される回転出力部を含む連結部と,その連結部に着脱可能に装着されるとともに,研磨対象面に接触しつつ回転する研磨ロータを備えたヘッド部材と」を含むのに対して,甲1発明では,「歯磨き」に使用される「電動歯ブラシ」が,「歯ブラシTのブラシ面を歯の整列方向に沿うように歯に当てた状態で歯ブラシTが該歯ブラシTの軸を中心として所定の揺動角θで間欠的に揺動するようにモータMにより駆動される原動軸12の回転を従動軸10に変換する変換機構13とを有し,従動軸10と歯ブラシTとの連結は,先端ハウジング2内に設けられた支持筒7内に従動軸10と歯ブラシTを挿入することにより行い,歯ブラシを歯に当接するのみで,上の歯に対しては,歯ブラシを上方から下方に向けて掻き下げるように揺動し,下の歯に対しては,歯ブラシを下方から上方に向けて掻き上げるように揺動することになり,歯と歯の間に存在する異物を確実に除去する歯磨きができる」点。
・<本件発明1と甲1発明の相違点1b>
本件発明1では,「カバー」が,「前記本体に形成され,前記連結部から取り外した前記ヘッド部材を格納する格納スペースと,その格納スペースに格納された前記ヘッド部材を外側から被い隠すように前記本体に着脱可能に装着される」のに対して,甲1発明では,「キャップ3」が,「歯ブラシTを先端ハウジング2内に設けられた支持筒7に取付けた状態で覆う」点。

2 問題点
 さて,本件の争点は,進歩性のあるなしですが,引用発明は歯磨きの発明ですから,結局,本願の研磨との違いがポイントになってくると思います。

3 判旨
相違点1aについて
「原告は,甲1ないし甲6にも,歯面に付着したたばこのヤニ等の歯面の付着物(色素沈着等)の層を「研磨」により除去することが記載されており,本件発明1と相異するものではない旨主張する。
しかし,前記(2)のとおり,甲1ないし甲6に開示されたものは,本件発明1のような「研磨器」に関するものではなく「歯ブラシ」に関するものであって,歯面に付着したたばこのヤニ等の歯面の付着物(色素沈着等)の層を「研磨」で除去することは記載されていない。
また,歯科専門医が行う「研磨」と一般人が行う「磨き」とを同一視することはできず,この点に関する原告の主張は理由がない。」
「原告は,歯ブラシと研磨ロータは,ともに歯を清掃するツールにすぎず,ブラシ以外の材料を使用し歯面に接触しつつ回転運動するものが本件特許出願前公知であることを勘案すると,甲1には,「研磨ロータを備えたヘッド部材を含む携帯型歯面爪面清掃研磨器」に相当する構成が開示されていると主張する。
しかし,前記(ア)bのとおり,甲1には,歯面に付着したたばこのヤニ等の歯面の付着物(色素沈着等)の層を「研磨」で除去することは記載されていない。また,そもそも,甲1発明は「電動歯ブラシ」に関する発明であって,「爪面清掃研磨器」に関する発明ではない以上,甲1発明に本件発明1に係る「携帯型歯面爪面清掃研磨器」についての構成が開示されているということはできない。」

4 検討
 昨日のプロレスの話ではないですが,司法にも流行廃りがあります。
 そんなことが本当にあるのかと思われる方は,憲法の教科書などを見てもらうとよいと思います。教科書には,流行廃りとは書いておらず,格好つけて司法積極主義や司法消極主義と書いておりますが,要するに,最高裁の憲法判断について,強弱の流行廃りがあるということです。
 あるときは,積極的に身を乗り出し,あるときは知らんぷりを決め込むというわけです。

 ですので,憲法ほど大げさでない知財法への裁判所の判断に流行廃りがあるのは,むしろ当然ですよね。
 現在は,進歩性消極主義から進歩性積極主義への端境期と言えるかもしれません。

 本件くらいの技術分野の違いは,従前だと大したことないと判断されていたと思います。進歩性なしというより新規性なしでアウトになっていたことさえ推測できます。
 ところが,何故か最近は,随分みっちり細かい違いまでも判断しているような感じがします。

 まあ細かい違いを緻密に判断すること自体は悪くはないと思います。しかし,結果として,進歩性が認められやすくなっていること自体については,これが妥当なのか不当なのか,私は結論が出せずにいます。
 というのは,世の中一方通行ではありませんし,特に知財法のような経済法の場合,多数のパラメータが複雑に絡み合っているからですね。




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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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