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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,原告が,発明の名称を「伸縮可撓管の移動規制装置」とする発明について,特許出願をしたものの,特許庁より拒絶査定がされ,不服の審判(不服2009-5363号事件)を請求したのですが,結局,特許庁は,拒絶審決(本願補正発明は,進歩性がなく独立特許要件を満たさないから補正却下。補正前発明も進歩性なし。)をしたため,これに不服の原告が知財高裁に出訴したものです。

 これに対し,知財高裁3部は,審決を取り消す判決を下しました。

 これも新傾向の一つだと思います。

2 問題点
 これを何故取り上げたか?それは,私がずっと感じていた,飯村さん(3部全体?)の考えというのは,おそらく,発明を生み出す元となった解決すべき課題を非常に重視している考えではないか,という点について,改めてやっぱりそうだよなあと思わせたからです。

 だって,解決すべき課題について,何らかの方策で解決したからこそ,発明が生じたわけですからね。課題さえあれば,あとは何とかなる~,正しい問題点さえわかれば結論なぞどうでもよい!みたいな話に通じるかもしれません。

 さて,論点となった相違点2を摘示しておきます。
[相違点2]
 取付片の内側に配設した他方の係合部材が,本願補正発明では,『前記流体輸送管に対して圧縮方向に,かつ前記タイロッドを変形させる異常荷重が作用したとき前記ナットのネジ部の変形または破壊により前記異常荷重を吸収する』ものであるのに対して,引用発明では,(通常の)『ナット15』である点。」(審決書7頁16行~27行)

3 判旨
「当裁判所は,引用発明における,ボス12(取付片)の内側に配設した係合部材であるナット15に代えて,刊行物2記載の発明における低強度の締結ナット26Aを採用することにより,本願補正発明の相違点2に係る構成に想到することは,当業者において容易であったとはいえないから,これを容易であったとした審決の判断は,誤りであると判断する。
本願補正発明が,特許法29条2項所定の要件を備えているか否かを判断するに当たっては,本願補正発明とこれに最も近い特定の引用発明とを対比し,本願補正発明の相違点に係る構成(技術的事項)について,当業者の出願時の技術常識等に照らして,引用発明から出発して容易に到達できたか否かを検討することによって判断される。ところで,以下のとおり,引用発明には,本願補正発明が目的としている技術的事項(「解決課題」及び「課題を達成するための手段」)についての記載は全く存在しないから,引用発明を基礎として,本件補正発明に至ることはないというべきである。・・・・

そうすると,たとえ地中に埋設する流体輸送管や管継手等には地震や地盤沈下などによって変形や破損を引き起こすような大きな圧縮力に対する対応を図ることが課題として周知であり,かつ,低強度ナットに係る技術的事項が周知の技術であったとしても,引用例(刊行物1)に,審決が引用した先行技術である引用発明から出発して相違点2に係る本願補正発明の構成に到達するためにしたはずであるという示唆等が記載されていたと解することはできない。」

「特許法29条2項への該当性を肯定するためには,先行技術から出発して当該発明の相違点に係る構成に到達できる試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく,当該発明の相違点に係る構成に到達するためにしたはずであるという程度の示唆等の存在していたことが必要であるというべきところ,刊行物1の段落【0040】の記載は,刊行物2に記載された技術を適用することについて,「相違点に係る構成に到達したはずであるという程度の示唆等」を含む記載ということはできない。」

4 検討
 3部の考え方としては,以下のとおりでしょうか。

 まず,課題を重視し,それを中心として技術的思想というものがあるはずだから,これを把握する。
 次に,その技術的思想が本願発明と主引例などとで異なる場合は,原則として,進歩性有り。
 他方,それでも想到容易とされるためには,かなり具体的な示唆が主引例に存在しないといけない(そんな示唆があればそもそも新規性でNGではないか,という疑問はありますが。。)。

 要するに,従前,進歩性の審査基準などで,抽象的に動機づけとなりうるものとして挙げられていた部分について,予測可能性を高めるためか,具体的に判示してきているなあという感があります。
 これくらいしつこく知財高裁が示しているところからすると,この部分は審査基準化してもよいかもしれませんね。

 ただ,審査基準の改訂って,特許庁は相当嫌がるんですよね。そりゃそうですよね,いかにも面倒臭そうですからね。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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