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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 A社(平成22年6月1日に原告B社に吸収合併されました。)及びC社は,平成16年1月30日,名称を「コンクリート部材のための接続装置」とする本願発明を共同出願したものの,平成20年8月1日に拒絶査定(不明確,進歩性なし)を受けたため,これに対する不服審判を請求しました。しかし,特許庁は,同じ理由で,平成22年6月28日,拒絶審決を下したのです。
 そこで,B社とC社は,拒絶審決取消訴訟を提起したということになります。

 よくあるパターンですね。
 とは言え何故取り上げたのか?,それは,この判決が訴えの却下という結論だったからです。

2 問題点
 問題点はただ一つと言ってよいでしょう。それは,共同出願人の一人であるC社が,不服審判係属中の,平成22年3月15日,東京地方裁判所で破産手続開始決定を受けたことです。
 かかる場合の,その後の手続き如何?という話なわけですね。

3 判旨
「上記第2の事実に照らすと,C社が破産手続開始決定を受けたことにより審判手続は当然に中断し(破産法46条,44条1項),また,同社と原告B社は共同して拒絶査定不服審判請求を行ったのであるから,共同審判請求人の一人であるC社について生じた中断は,請求人全員についてその効力を生じている(特許法132条4項)。そうすると,本件審判手続の審理を担当する審判官は,同社と原告B社の両社について審判手続が中断したまま審決をしたものであるから,本件審決は,重大かつ明白な瑕疵があるものとして無効ということになる。

無効な審決であっても,審決が成立し,送達された外観が形成されている以上,これを排除するため,審決の取消訴訟提起が可能な場合もあり得るが,その場合であっても,C社の財産に関する管理処分権を有しているのは破産管財人であるから,破産管財人がB社と共同で審決取消訴訟を提起すべきである。

しかるに,本件訴訟は,原告の一人として,破産管財人ではなく管理処分権を有しない破産会社であるC社の前代表取締役を代表者とし,当然のことながらその訴訟代理人になり得ない弁理士3名を訴訟代理人と表示して提起されたものであるから,全体として不適法であり,その不備を補正することができないものである。・・・・

なお,特許庁審判官は,審理終結後であったとしても,破産管財人に審判手続を受継させて本件審決を破産管財人に送達するか,又は本件審決が無効であることを前提にして,破産管財人に審判手続の受継をさせて,新たな審決をするかを,破産管財人の意向も聴取した上で判断すべきである。」

4 検討
 結構おもしろかったので,ほぼ全文引用しました。弁理士や知財部の人からすると何がおもしろいのだろう?という話になりますが,弁護士の場合,違うおもしろさがあるのですね。

 例えば,東京・大阪で有名な知財の弁護士の方は,倒産法関係でもまた有名だったりします。知財と倒産法は企業法務という括り以外あまり共通点がないのですが,車の両輪のように,この2つの領域を専門としている弁護士の方は多いですね。私も結構そうなりつつあるのですが,何故だかはよくわかりません。

 さて,本題に戻ることにして,法律の明文等で確認します。
 まず,拒絶査定の不服審判は,共同出願人の全員で請求しなければなりません(特許法14条)。ですので,ここまでは,B社(旧A社)とC社に不備はありません。
 ところが,C社が破産手続開始決定を受けたことから,しっちゃかめっちゃかになったわけです。

 すると,判旨にもあるとおり,審判手続は,当然中断になるわけです。代理人がいてもダメです。これは結局破産者(C社のこと)の管理処分権がなくなるからですね。
 破産法46条は,同法44条の訴訟の中断についてを行政手続に準用しておりますが,伊藤眞先生の「破産法・民事再生法」(有斐閣)によると,「ここで予定されているのは,・・・特許法などの特別法にもとづく不服審査手続である。」ということですから,今回はドンピシャというわけです。

 そうすると,本来は,破産管財人に管理処分権が移りますから,破産管財人が審判手続を受継することになるのでしょう。そして,審決を受けた後も,破産管財人とB社で訴訟を提起すべきだったのでしょうね。

 なお,特許法178条3項などの,訴訟提起期間の問題もありえますが,今回,審決が「無効」ということで,無いことになりますので,審判の中断のところまでは遡ることになると思います。

5 派生論点
 今回,いまだC社の破産手続が終結しておらず,その意味では,遡り等ができて,良かったのですが,すでに,終結してしまっていた場合,どうするのでしょうね。

 結構ありえると思いますよ。例えば,知財部を有し,弁理士にも依頼する大手企業と,たまたま共同開発で一緒になったベンチャー企業とで,特許出願するような場合です。
 このような場合,特許出願は大手企業にお任せということが多いでしょうから,出願から拒絶査定不服審判を提起するまでの期間(例えば,5~6年かかるでしょう。),大手企業の知らぬままベンチャー企業があの世行きになっている場合もありえますよね。また,拒絶査定不服審判までは持ちこたえたものの,審判請求から審決までにあの世行きになる場合だってありえます(今回も審判請求から審決まで2年弱かかっております。)。

 小さい会社の破産手続は,1年かからない場合が結構ありますし,特許担当者が辞めて他の会社に移ってしまっていたような場合,破産管財人とその補助者だけでは,特許出願等を見逃してしまう場合は,ありえます。

 そうした場合,どうするのか?
 そもそも拒絶査定不服審判は,共同でやらないといけませんから,あの世に行った会社とでは,共同出来ず,名義変更すらできないことにもなります。
 物権変動の対抗要件として,登録が必要な自動車,不動産に関しては,この名義変更に関し,少々の実務があるようですが,特許の場合はよくわかりません。
 リーマンショックにより憤死した会社の特許出願の処理はこれからだと思いますので,各代理人及び知財部の方は要注意だと思います。

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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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