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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,発明の名称を「ウインドパークの運転方法」とする発明について,平成14年9月21日に国際出願(パリ優先権で,平成13年9月28日ドイツ国に出願。)した原告が,我が国で拒絶査定を受け,さらに,拒絶査定不服審判(不服2008-15132号事件)を請求すると共に,特許請求の範囲を補正した(本件補正)ものの,結局,被告特許庁が,拒絶審決をしたことから(進歩性なし),これに不服の原告が審決取消訴訟を提起したものです。

 これに対して,知財高裁3部(飯村さんの合議体)は,審決を取消しました(要するに,進歩性あり。)。

 とてもよくあるパターンなのですが,久々,阻害要因の判断が見られたので,取り上げました。

2 阻害要因は,何回か,ここでも紹介しました。例は,ラジカセで,こんな感じの話です。

 審査基準にも,「2.8 進歩性の判断における留意事項(1)」で,「刊行物中に請求項に係る発明に容易に想到することを妨げるほどの記載があれば、引用発明としての適格性を欠く。しかし、課題が異なる等、一見論理づけを妨げるような記載があっても、技術分野の関連性や作用、機能の共通性等、他の観点から論理づけが可能な場合には、引用発明としての適格性を有している。」とあります。

 例えば,A発明(刊行物a)とB発明(刊行物b)の組み合わせで,本願発明を論理づけようとしても,例えば,刊行物bに,この発明Bは,Aとは相性が悪く,とても組み合わせできない~♪と書いてあれば,いくらAとBで技術分野の関連性があったしても,ダメ!ってわけです。

 ただ,書いていない場合には,どうなるか(審査基準での後半部分の話ではあります。),というところが問題となるわけです。

3 判旨
「審決が認定した本願発明と引用発明の相違点2は,第2の3(2)ウ(イ)記載のとおりである。本願発明は,相違点2に係る構成を採用することにより,ウインドパークの電力網の周波数や電圧の変化を回避するとの効果を実現する発明である。
 前記のとおり,引用発明は,風力発電施設の全出力電力を送電網の最大許容送電量とするために,風力発電施設が送電網の最大許容送電量よりも高い全出力電力が出せるようにした上で,個々の風力発電設備の出力電力を定格出力電力の0から100%の範囲内で調整するという構成を備えた風力発電施設の運転方法である。引用発明の解決課題は,従来,全ての風力発電設備から常に定格出力電力が得られるとは限らず,風力発電施設全体の最大電力出力を連続して出すことができなかった風力発電施設において,常に送電網の最大許容送電量を出力できるようにして,送電網の送電網構成部品が最適化された態様で利用できるようにすることである。
 したがって,引用発明と本願発明とは,解決課題において,相違する。
 また,課題解決手段をみると,引用発明では,常に送電網の最大許容送電量を出力できるようにしたものであるのに対し,本願発明では,電力網の周波数や電圧が基準値より高いか又は低いときに,ウインドパークの供給電力を低減する,すなわち,ウインドパークの供給電力を,送電網の最大許容送電量との関係によらず,電力網の周波数や電圧により制御するものである点において,両者は,課題解決手段において相違する。
 そうすると,本願発明の課題解決手段は,引用発明の課題解決手段を採用することに対する妨げになるから,引用発明に相違点2に係る構成を組み合わせることには,阻害要因があるといえる。」

4 検討
 引用発明は,多数の風力発電機を設置し,それらの合計の最大出力を変電所制限値よりも大きくしておいて,運転時には,個々の風力発電機の出力を上下制御して,変電所に送電するときの全体の出力を一定値に保つというものです。
 他方,本願発明は,そうではなく,変電所に送電するときの全体の出力を下へ制御するというものです。

 それ故,判旨のとおりで,本願発明と引用発明とは,課題もその解決手段も違うのですね。さらに言えば,阻害要因なし,と言うより,正面から,動機づけなし!と言った方がよい事例だと思います。

 何故,飯村さんの合議体がこう言ったかと言いますと,原告がそのような主張をしているからなのですね。いくら行政事件と言っても,弁論主義の適用は一応ありますから,そう言われたらそう応えるよね,というところだったのでしょう。

 阻害要因の事例としてはあまり参考にならない事件かもしれませんが,事案の解決ということでは,まあまあおもしろい事件ではないかなあと思います。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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