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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 本件は,名称を「メディアプレーヤーのためのインテリジェントなシンクロ操作」とする発明についての特許権(特許第4204977号)を有する原告(アップル)が,被告ら(サムソン)が別紙被告製品目録記載1ないし8の各製品を輸入,販売等する行為が同特許権の間接侵害(特許法101条5号)に当たると主張して,被告らに対し,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金の一部請求として,連帯して1億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(平成23年9月1日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた,特許侵害訴訟の事案です。

 これに対し,東京地裁民事40部(東海林さんの合議体です。)は,原告の請求を棄却(要するに,特許侵害なし。)しました。

 漸く,HPに判決がアップしましたね。結局大山鳴動して鼠一匹の話でしたが,折角ですので,復習,復習です。

 なお,問題となっているクレームは何個かありますが,本件発明1のみ紹介しておきます。

  A1 メディアプレーヤーのメディアコンテンツをホストコンピュータとシンクロする方法であって,
  B1 前記メディアプレーヤーが前記ホストコンピュータに接続されたことを検出し,
  C1 前記メディアプレーヤーはプレーヤーメディア情報を記憶しており,
  D1 前記ホストコンピュータはホストメディア情報を記憶しており,
  E1 前記プレーヤーメディア情報と前記ホストメディア情報とは,前記メディアプレーヤーにより再生可能なコンテンツの1つであるメディアアイテム毎に,メディアアイテムの属性として少なくともタイトル名,アーチスト名および品質上の特徴を備えており,
  F1 該品質上の特徴には,ビットレート,サンプルレート,イコライゼーション設定,ボリューム設定,および総時間のうちの少なくとも1つが含まれており,
  G1 前記プレーヤーメディア情報と前記ホストメディア情報とを比較して両者の一致・不一致を判定し,両者が不一致の場合に,両者が一致するように,前記メディアコンテンツのシンクロを行なう方法。
 
 特徴は,方法の発明の特許であり(発明には3種ありますからね。違いは実施行為です。読んでてここで躓くようなら,勉強不足!),技術分野としては,スマホやタブレットとパソコンを接続し,いわゆる同期♫をさせるときの技術に関するものです。いわゆるスワイプだの,ピンチアウトだの,というスマホ等の操作・表示に関する技術ではない,ということに注意です。

2 問題点
 問題点は,素人さんには結構マニアックな話で,サムソンの実施行為が,上のクレームの用語にあたるかどうか,という話です。でも,玄人からすると,今回そんなに難しい話ではありません。

 結局,今回の技術は,「本件発明は,従前のデータファイル等の一般的なファイルについて用いられていたファイル名や更新日などの情報の比較によるシンクロ方法には,シンクロが必要か否かの判定についての信頼性に課題があり,また,その処理が遅く非効率であったことから,特にメディアファイルについて,そのような課題を克服し,効率的でインテリジェントなシンクロを実現するために,上記のような一般的なファイルに備わるファイル情報ではなく,タイトル名,アーチスト名などの属性,あるいは,ビットレート,サンプルレート,総時間などの品質上の特徴という「メディア情報」に着目し,そのような「メディア情報」の比較に基づいて,メディアアイテムをシンクロする方法を採用した発明である」と裁判所も認定しているとおりです。

 更に,敷衍すると,従来,同期するとき,同期対象のファイルの特定に,ファイル名やファイルサイズを用いていたので,時間がかかってしょうがなかった~,これを今回の特許でアップルは,そういうかったるい情報でなく,アーティスト名とかによる「メディア情報」で特定するようにしたので,すんげぇ早い~♫,というわけです。

 ですので,サムソンの使っている技術にも,「メディア情報」による特定が含まれるのならば,特許侵害の可能性が高くなりますが,そうでないなら,非侵害の可能性が極めて高くなるわけですね。

3 判旨
 「ウ 本件発明における「メディア情報」の意義
(ア) 本件発明の特許請求の範囲には,「メディア情報」に関し,メディアプレーヤーにより再生可能なコンテンツの一つであるメディアアイテム毎に,メディアアイテムの属性として少なくともタイトル名,アーチスト名及び品質上の特徴を備えるものであること(構成要件E1及びE2),その「品質上の特徴」には,ビットレート,サンプルレート,イコライゼーション設定,ボリューム設定及び総時間のうちの少なくとも一つが含まれること(構成要件F1及びF2),さらに,「メディアプレーヤー」は,プレーヤーの「メディア情報」を記憶し,「ホストコンピュータ」は,ホストコンピュータの「メディア情報」を記憶していること(構成要件C1,C2,D1及びD2)がそれぞれ記載されている。
 また,本件明細書等の発明の詳細な説明には,「メディア」ないし「メディアアイテム」について,「メディアアイテムは,曲についてのメディアファイルに関しえ」る(段落【0010】),「オーディオ,ビデオまたは画像のようなメディア」(段落【0013】),「メディアアイテムはオーディオアイテムには限定されない。例えばメディアアイテムは代替として,ビデオ(例えば映画)または画像(例えば写真)に関するものでもよい」(段落【0070】)との記載があり,「メディア情報」について,「メディア情報は,メディアアイテムの特徴または属性に関する」(段落【0040】),「メディア情報データは,対応するメディアアイテムの属性または特徴に関する」(段落【0055】)との記載がある。
 これらの特許請求の範囲及び本件明細書等の記載からすると,本件発明における「メディア」ないし「メディアアイテム」とは,音楽,ビデオ,画像などのメディアプレーヤーで再生可能なコンテンツを意味し,「メディア情報」とは,そのようなメディアないしメディアアイテムの属性又は特徴をいい,そこに少なくともタイトル名,アーチスト名及び品質上の特徴を備えるものをいうと解することができる。・・・・

 しかし,前記第2,2(5)イ記載のとおり,被告各製品は「Kies」というソフトをインストールしたパーソナルコンピュータとの間で,保存してある楽曲ファイルのシンクロを行うもの(被告方法)であるところ,証拠(乙1ないし6,8及び9)によれば,被告各製品は,「Kies」というソフトをインストールしたパーソナルコンピュータとの間で音楽ファイルのシンクロを行うに当たり,ファイル名とファイルサイズを用いて,それぞれの音楽ファイルの一致・不一致を判定しているものであって,タイトル名,アーチスト名及び総時間の比較を行っておらず,音楽ファイルのタイトル名,アーチスト名及び品質上の特徴である総時間の全てが異なっても,ファイル名及びファイルサイズが同一である限り,音楽ファイルのシンクロが行われないことが認められる。」

4 検討
 要するに,被告サムソンで使われていた技術って,アップルの特許でいう従来型の技術だったわけですね。ですので,これは均等論も苦しいなあってところで,構成要件該当性のところで切られても致し方無いという気がします。

 大きく騒がれた割には,技術もそんな画期的な根幹のものではないし,侵害訴訟で駄目なよくあるパターンって感じですね。

 ですので,それだけじゃ面白くなく,法曹その他関係者に興味があるのは,どこの代理人を使っているのだろうという点ですので,そちらに行ってみましょう。皆さん,結局むっつりスケベ,あんたも好きね~♫ですからね。

 まず,アップル側は,モリソンフォースターです。筆頭代理人は,知財高裁の判事出身の先生ですが,この方はおそらく助っ人でしょうね。テレビではこの方が写っておりました。あと,アップル側は,そういう違う事務所の大物弁護士を他にも揃えていたりします。

 他方,サムソン側は,大野総合の先生と,長島大野常松の先生での連合軍です。ただ,代理人の順番から見ると,長島大野常松の先生方が助っ人でしょうね(やはり,知財高裁の判事出身の先生です。テレビで写っていたのも,この方でした。)。こちらもアップル側に負けず,かなりの布陣です。

 ただ,判決を見ると,代理人が誰でもこの結果じゃね~♫という感じのするものですね。ちょっと,技術の解析が甘かったか,楽観論でやり過ぎたか,わかりませんが,控訴してもひっくり返らないと思われる事案です(上記のとおり,均等論は無理!)。

 相変わらず辛口で失礼~,it takes a nation of millions to hold me back!~♫

5 追伸(10/15)
 本日,本件に関し,アップル側が控訴したそうです。引くに引けない,というわけでしょうが,これ,上記のとおりですので,あまり勝ち目がないと思いますよ。逆にこれでアップルが勝ったら,どこまでアメリカポチなんじゃ,司法までかよ,と言われかねないと思いますけどね。

6 追伸(2013/6/25)
 本日,本件について,控訴審の結果が出たそうです。ま,予想とおりですね。
 いやあ,上記のとおりですので,私ってば,結構冴えてますね~っちゅうか誰でもわかるかな,こんなもん。

 報道によると構成要件該当性がないみたいですね。裁判長が塩月さんということは,2部ですかね。

 しかし,これで最高裁に行くのかなあ。行ったとしても変わらないと思いますけどね。

 
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