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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,名称を「ローマ字表」とする発明について特許出願(特願2004-311548号)をした原告が,特許庁より,拒絶査定を受け,これに対する不服の審判請求をしたものの,拒絶審決(29条1項柱書違反)を下されたたため,これに不服として,審決取消訴訟を提起したものです。

 これに対して,知財高裁第2部(塩月さんの合議体です。)は,原告の請求を棄却(審決のとおりでよいということ。)しました。

 あまり見ないパターンです。そう,今回は,おもしろ判決紹介のパターンです。ですので,知財関係に全く興味の無い方も読み飛ばさなくても大丈夫です。

2 問題点
 特許というと,知財部のある大企業勤めの人,弁理士や特許事務所勤めの人,知財関係の弁護士,のような方には,言わずもがなのものですが,全人口からすると,きちんとわかっている人の方が圧倒的に少数派だと思います。

 ですので,一般の方には,こういうのが特許をとれ,他方,こういうのは特許をとれないというのが,わからない場合もあると思います。特に,後で詳細に述べますが,弁理士に出願を依頼しないような場合には顕著でしょう。

 発明は,特許法上,定義があります。
 特許法2条1項「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
 私は,弁理士試験のときに,かなりの条文を覚えたのですが,他の条文は,ほぼ忘れました。しかし,この条文だけは,いまだに一字一句間違えずに,言えます。まあそれほど重要だということです。

 で,上に書いた一般の方は,この定義のことなど知りませんから,何だかそれっぽいアイデアが浮かんだら,それが特許で保護されると思ってしまうのですね。

 今回の場合は,「自然法則を利用した」というところに当たるかどうかということですね。
 そして,自然法則とは,別に,最近話題の「標準理論」とか大袈裟なものである必要はなく,水が高いところから低いところに流れる,という経験的,原初的なのものでもよいとされております。ただ,簡単でも,自然の法則でなくてはならず,ゲームの規則だとか,スポーツのルールだとか,自然のものでない,人為的なものについては,「自然法則の利用」に該当しないとされております。

 ということは?まあ発明の名称を見ても結果は明らかですね。

3 判旨
 「特許法29条1項柱書は,「産業上利用することができる発明をした者は,次に掲げる発明を除き,その発明について特許を受けることができる」と定め,その前提となる「発明」について同法2条1項が,「この法律で『発明』とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と定めている。そして,ゲームやスポーツ,語呂合わせといった人間が創作した一定の体系の下での人為的取決め,数学上の公式,経済上の原則に当たるとき,あるいはこれらのみを利用しているときは,自然法則(law of nature)を利用しているとはいえず,「発明」には該当しないと解される。
 かかる見地から本件出願に係る請求項1~3をみるに,そこに記載の事項は,いずれも,人為的な取決めないしは人間の精神活動のみに基づく取決めであって,自然法則を利用しているとはいえず,特許法2条1項,29条1項柱書にいう「発明」には該当せず,特許を受けることはできない。」

4 検討
 本件,中身を見ると新しいローマ字の記載方法のようですが,それだとやはり特許は無理でしょう。

 ところで,実は,この判決と同日に,やはり法上の発明でないとした判決が下されております(平成24(行ケ)10096号)。これも塩月さんの合議体です。

 紹介するときに,これか首記の判決か,どちらか迷ったのですが,首記の判決の方が,若干筋がいいので,こちらを選びました。

 まあしかし,どちらも出願のときに代理人(弁理士)をつけていませんし,今回の訴訟も本人訴訟です。
 私は反人権派の金権弁護士なので,はっきり言いますが,こういうのはそもそも出願しないで欲しいと思います。特許庁や裁判所って税金で賄われているわけですから,この類の件で,審査官や裁判官の手を煩わすというのは,国家のリソースの無駄使いですよ。
 特許法は,第一条に,「・・・産業の発達に寄与することを目的とする。」とあります。弱者救済とか消費者保護とかじゃありませんよ!(当たり前)。
 そして,出願の際に,弁理士に頼むこともできない者がした発明が,産業の発達に寄与できるわけがありません。いや別に貧乏なのが悪いと言っているわけではありません。貧乏でも,きちんとした発明であれば,その出願をフォローする制度はありますし,そんな制度を使わずとも,出資者も見つけることができるでしょう。他方,そうではなく,本人出願するしかないというものは,それ相応の価値しかないというわけです。

 ですので,出願するときに,弁理士に相談して,弁理士がいい顔しなかったら,そもそもそういうのは出願しない方がいいのではないかと思うわけです。それに相談だけなら大したお金もかかりませんし。

 いいですか,お客さん!(突然猪木風)。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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