忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 本件は,平成18年11月15日,発明の名称を「斑点防止方法」とする発明につき特許出願をした原告が,平成22年7月13日,拒絶理由通知を受け,同年8月25日,手続補正をしたものの,同年12月7日,再び拒絶理由通知を受け,平成23年1月27日,2度目の手続補正をしたものの,同年5月31日,拒絶査定を受けたので,同年7月21日,不服の審判(不服2011-15748号)を請求するとともに,手続補正をしたのですが,やはり特許庁は,平成24年8月20日付けで,拒絶審決(進歩性なし)を下したため,これに不服として,審決取消訴訟を提起したものです。

 これに対して,知財高裁2部(塩月さんの合議体ですね。)は,審決を取り消しました。要するに,進歩性はある,ということです。

 いやあ,すごい,ド典型な教科書事例ですね(あ,進歩性が肯定される場合の。)。こういう美味しい案件が,訴訟段階で来ないかな~♪
 ということで,取り上げたのも,ド典型だから,というわけです。

2 問題点
 問題点は,ただひとつ,特許における最大で最高で,最緊急の課題,そう進歩性です。

 さて,クレームは以下のとおりです。
 「填料としての炭酸カルシウム及び/又は古紙由来の炭酸カルシウムが存在する製紙工程において,紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止する方法において,
 製紙工程水に塩素系酸化剤とアンモニウム塩との反応物を添加する方法であって,
該塩素系酸化剤とアンモニウム塩との反応物を原料系と回収系との双方に添加することを特徴とする斑点防止方法。」


 ま,要するに,填料(白くしたり,スベスベにしたり,透けないようにするためのもの)の炭カルで,斑点が生じることがあるので,それを防止するための発明のようです。

 私は一応,その昔,特許庁審判部の特許性検討会の化学部会のメンバーだったことがあり,多少化学は詳しいのですが,炭カルって,色んな用途があるんですなあってところです。いやあ化学業界,紙は化学じゃないか~,兎に角,そういう業界の便利屋ですね。

 引用発明は以下のとおりです。
 「パルプスラリーの濃原液に,次亜塩素酸ナトリウム及び臭化アンモニウムを混合した混合物を添加する,水性システムにおける微生物を殺害し,そして生物汚染を阻害するための方法。」

 で,引用発明との一致点・相違点は以下のとおりです。

 一致点
 「製紙工程水に塩素系酸化剤とアンモニウム塩との反応物を添加する方法。」
 相違点1
 「補正発明においては,「填料としての炭酸カルシウム及び/又は古紙由来の炭酸カルシウムが存在する製紙工程において」と限定がされているのに対し,引用発明においては,そのような限定がされていない点。」
 相違点2
 「補正発明においては,「紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止する方法において」及び「斑点防止方法」と限定されているのに対し,引用発明においては,「水性システムにおける微生物を殺害し,そして生物汚染を阻害するための方法」と限定されている点。」
 相違点3
 「塩素系酸化剤とアンモニウム塩との反応物の添加箇所について,補正発明においては,「原料系と回収系との双方に」添加するのに対し,引用発明においては,「パルプスラリーの濃原液に」添加する点。」

 ま,要するに,使う薬剤は同じなんだけど,引用発明は微生物由来の斑点を防止するもので,本願発明は炭カル由来の斑点を防止するという目的に大きな違いがあり,そのため,構成として,薬剤添加の工程に若干の違いが出ている,ということですかね。
 多少わかる技術分野だと,要旨の把握も早いですな~♪

 とするとですね~,結論もみえましたね。

3 判旨
 「補正発明と引用発明とは,製紙工程水に,塩素系酸化剤とアンモニウム塩との反応物を添加する点で共通するものである。しかし,引用発明は,パルプスラリーの濃原液における微生物を殺害し,生物汚染を阻害するものであり,炭酸カルシウムが存在する製紙工程において,紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止するものではない。
 刊行物1には,循環水における微生物の増殖は,紙シートの欠陥を引き起こすこと(【0002】【0003】)が記載されているが,その具体的な内容は明らかではなく,刊行物1の実施例の例6(【0039】~【0041】,表6)においても,パルプスラリーの濃原液に各種の薬剤(生物殺生剤)を添加した場合における,微生物の生存計数が示されるのみである。刊行物1には,炭酸カルシウムが存在する製紙工程において,微量スライムが炭酸カルシウムを凝集させることにより,紙に炭酸カルシウムを主体とする斑点が発生すること,また,製紙工程水に上記一致する反応物を添加することにより,このような斑点を防止できることについては記載も示唆もない。したがって,刊行物1は,引用発明に係る方法を,炭酸カルシウムが存在する製紙工程において実施することにより,紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止することを動機づけるものではない。」
「・・・以上のとおり,周知例1,2には,炭酸カルシウムが存在する製紙工程において,製紙工程水に上記反応物を添加することにより,紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止できることについて記載も示唆もない以上,引用発明に係る方法を,炭酸カルシウムが存在する製紙工程において実施することにより,紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止する動機づけは認められない。」
 「・・・そうすると,引用発明に係る方法を,炭酸カルシウムが存在する製紙工程において実施し,紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止する方法とすること,すなわち,引用発明において,「填料としての炭酸カルシウム及び/又は古紙由来の炭酸カルシウムが存在する製紙工程において」と特定するとともに(相違点1),「紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止する方法において」及び「斑点防止方法」と特定すること(相違点2)は,当業者が容易に想到することとはいえない。」

4 検討
 特許庁としては,填料による斑点も,微生物由来の斑点も,結局同じ~だと言いたいところ,知財高裁としては,そう味噌もクソも一緒にするんじゃない,もっと分析的に考え給え,というところだったのでしょうね。

 ま,そのとおりだと思いますよ。仮に,実際は,填料による斑点も微生物由来による斑点が一緒のものだったとしてもね。

 え,それじゃあ,そんな権利が発生したら,権利行使される側が困るんじゃないのという意見もあると思います。
 でもね,権利行使される側としたら,いやあこの斑点は微生物由来なんですよと言い訳すれば良いだけの話,まさか審判・訴訟でこれだけ争っているのに,後で微生物由来の斑点を除く趣旨じゃない~,これも権利範囲内だ~なんて口が裂けても言えませんからね。ムフフ。

5 追伸
 世の中の99%はプロレス!そう豪語するのは私なのですが,出来レース電車道一直線の報道がありました。
 「職務発明の特許権を企業へ」,です。

 これによると,法人発明ないし契約で処理,ちゅうことになるのでしょうね~(一次資料はこちらです。pdf注意。)。

 ということで,行ってみよう(いい湯だな~♪に合わせて)。

 チャバンババンバンバン,いい芝居しろよ

 チャバンババンバンバン,人に言うんじゃねえぞ

 チャバンババンバンバン,もう決まってんだからな

 チャバンババンバンバン,また来週~♪
 
 


PR
667  666  665  664  663  662  661  660  659  658  657 
カレンダー
06 2017/07 08
S M T W T F S
1
3 5 7 8
9 11 12 13 15
16 17 19 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
iwanagalaw
HP:
性別:
男性
職業:
弁護士
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]